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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効200589076 | 審決 | 商標 |
無効200589025 | 審決 | 商標 |
無効200589039 | 審決 | 商標 |
取消200130013 | 審決 | 商標 |
取消200530508 | 審決 | 商標 |
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審決分類 |
審判 一部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25 審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25 |
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管理番号 | 1144952 |
審判番号 | 無効2004-89106 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2006-11-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-11-25 |
確定日 | 2006-10-06 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4391309号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4391309号の指定商品中「被服」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4391309号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成からなり、平成11年7月1日に登録出願、第25類「被服,ガー夕一,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品とし、平成12年6月9日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 (1)登録第2580800号の2商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成からなり、平成2年11月7日に登録出願、第17類「ベレー帽,その他の帽子,その他本類に属する商品」を指定商品として、平成5年9月30日に設定登録された登録第2580800号商標の商標権が平成14年10月23日に分割移転され、「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,下着,ねまき類,和服,靴下,たび,手袋(ゴム手袋,絶縁用ゴム手袋を含む。),えりまき,マフラー,スカーフ,ネッカチーフ,ショール,ネクタイ,ゲートル,エプロン,おしめ,溶接マスク,防毒マスク,防じんマスク,防火被服,布製身回品,寝具類」が指定商品となり、その後、平成15年4月22日に商標権の存続期間の更新登録がされ、平成16年8月11日に指定商品を第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,ショール,スカーフ,足袋,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー」とする指定商品の書換登録がなされたものである。 (2)登録第4007091号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成からなり、平成5年5月12日に登録出願、第25類「ガー夕一,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品とし、平成9年6月6日に設定登録されたものである(以下、「引用商標1」及び「引用商標2」を併せて「引用各商標」という。)。 第3 請求人の主張 請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第32号証を提出した。 1 請求の理由 (1)本件商標は、引用各商標に類似する商標であり、その指定商品と同ー又は類似する商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、指定商品中「被服」についての登録は、同法第46条第1項に基づき無効とされるべきである。 (2)本件商標と引用各商標の類否について ア 本件商標は、横向きで静止状態にあるカンガルーの黒いシルエット図形からなる。 他方、引用各商標は、やはり横向きで静止状態にあるカンガルーの黒いシルエット図形が大部分を占め、下方に「KANGOL」 の文字が配されている。 イ 本件商標と引用各商標を微細に観察するならば、本件商標が左向きでカンガルーの前足の部分が丸く描かれている点や引用各商標が右向きで胸の部分に小さな白抜き部分が存在し「KANGOL」 の文字が付されている点などにおいて差が見られるものの、両商標ともに横向きカンガルーの黒塗りシルエット図形であり、その首から背中、尾にかけてなだらかな曲線を描いており、その尾を仮想地面上につけて、大きな後ろ足を揃えてどっしりと垂直に立って静止状態にあるという点において両商標は構成の軌を一にしている。 本件商標と引用各商標は、構成上の基本的な要素において共通性を有し、その外観全体から直ちに受ける視覚的印象が著しく似通ったものなので、上記したようなカンガルーの前足や胸の部分における相違点や右向きか左向きかなどの差異は、需要者が両商標に離隔的に接した場合には明瞭に把握できない程度の微差であり、全く印象に残り難いものである。そして、簡易、迅速を重んじる取引の実際においては、このような両商標の構成上の細部の要素における微差は、外観全体から直ちに受ける視覚的印象には影響せず両商標は互いに類似する商標である。 ウ さらに、本件商標の指定商品における商標の表示方法は、例えば、被服の場合は、衿吊り(洋服をつるすために、後ろ中央の襟付けのの所につけたテープ)に、刺繍などにより表示する方法、あるいはタグやシールなどに表示する方法、又は、商標をいわゆるワンポイントマークとして、商品に縫い付けたり、刺繍するなどして使用されることも多く、その場合においては、比較的小さく表示され、細部における構成上の差異はー層曖昧なものとなり、印象が希薄なものとなる。 すなわち、例えば、本件商標や引用各商標の使用態様として、セーターや靴下などのワンポイントマークとして、商品に編み込まれたり刺繍されたりすることがよくあるが、セーターや靴下など凹凸上の編地における小さなワンポイントマークにおいて、カンガルーの小さな前足が円形であろうが、前足の先に切れ込みが入っていようがほとんど区別がつかない。まして、被服等の地色によっては、カンガルーの胸の部分に小さな白抜き部分があることなどは全く印象に残らない。 エ 上述の主張は、本件商標を実際に靴下にワンポイントマークとして使用した実例を示した甲第5号証、及び、引用各商標を同様にセーターや靴下に刺繍した場合の使用実例である甲第6号証の152頁を比較すれば、一見して首肯し得ることである。 すなわち、甲第5号証は、被請求人が別件の不使用取消審判に対する使用証拠として提出した実際の使用実例であるが、その写真に写っている本件商標のカンガルー図形と、引用各商標における使用実例である読売新聞社発行「The 一流品 THE BEST OF THE BEST‘99」(甲第6号証の152頁)に掲載されているセーターや靴下等にワンポイントマークとして刺繍されているカンガルー図形を比較した場合、靴下やセーターなどの凹凸のある編地に小さく刺繍されることによって、前足や胸などの細部における差異はほとんど印象に残らない。その結果、それらの商品を見た需要者の視覚に訴えてくるのは、「横向きで、首から背中そして尾までなだらかな曲線を描き、大きな後ろ足を揃えて静止状態にある黒塗りシルエット状のカンガルー」 の全体的な印象のみであり、本件商標と引用各商標は同じ出所から出ている商品であると混同することになる。 特に、引用各商標のカンガルー図形は、雑誌に掲載された広告(甲第7号証ないし甲第17号証)が示すように、ワンポイントマークとして使用される場合が多く、ワンポイントマークの刺繍が施される被服の地色が、縞柄であるとかワンポイントマークの色彩と似通っている場合などには、需要者は殆ど本件商標と引用各商標との見分けがつかない。すなわち、需要者が本件商標と引用各商標に同時に接して詳細に観察したならばその差異を看取できるとしても、普通の注意力で離隔的に接した場合には、カンガルーの前足がわずかに膨らんでいる程度の微差を区別するのは非常に困難である。 その結果、需要者は、両商標を付した商品の間で出所の混同を生じ、それまでに引用各商標に蓄積された業務上の信用も希釈化されてしまう。 特に、引用各商標は以下に示すように、カンガルーの図形のマークとしては、世界的に知られた周知商標であり、本件商標に接した需要者は、カンガルーの図形としては既に周知な引用各商標から出所した商品であると混同を生ずるおそれが非常に高いので、請求人のみならず需要者の蒙る不利益も計り知れないものである。 (3)KANGOL商標の周知・著名性について ア 1990年研究社発行の「英和商品名辞典」(甲第18号証)には、「KANGOL」 についての記載があり、同じく2000年3月に発行された社団法人日本輸入団体連合会の「外国ブランド権利者名簿」(甲第19号証)には、引用各商標及びその関連商標が掲載されている。 イ また、1999年読売新聞社発行の「The 一流品 THE BEST OF THE BEST‘99」(甲第6号証の150頁)には「KANGOL」ブランドの紹介として、「1938年、ジャック・スプリリーガンが英国カンブリアで生産される羊毛を素材にベレーを中心とした帽子を製造したのがカンゴール社の起源。… 特に第二次世界大戦中、英雄モンゴメリー将軍が被って有名になった「モンテイベレー」 ほか、世界各国の軍用ベレー、学校指定の制帽に使われている。カンゴールの人気が世界的になったのは、80年代、ニューヨークのラップミュージシャンたちが愛用したのがきっかけ。ひいきのラップミュージシャンたちが被っていた「カンガルーの帽子」 がほしいと若者たちが言い出して以来、製品の大半にカンガルーのワンポイントマークが入るようになった。」「カンゴール帽子の愛用者として歌手のマドンナや人気バンド、オアシスのリアム・ギヤラガーがカンゴールを被ってステージに登場している。映画監督のクエンティン・タランティーノも大のカンゴールファン。日本でも公開された映画「ジャッキィー・ブラウン」では、ヒロインのジャッキー・ブラウンの扮するパム・グリアーやサミュエル・L・ジャクソンらがカンゴールのベレー帽を被って登場している」との記載があるように、カンガルーの帽子、すなわち、カンゴールといわれるほどにカンガルーの図形商標は著名であった。 ウ さらに、2003年SuperbrandsLtd.発行の「Cool Brand Leaders」(甲第20号証)にも引用各商標の歴史が紹介されており、カンゴールの商品は、ビートルズやマドンナなどのような著名な人物が愛用する商品なのである。 また、「1980年初頭迄カンガルーマークはブランドロゴに使用されていなかった。これは市場に介入し始めた偽者業者の影響だけでなく、聞き間違いによるミスという要因もあった。アメリカの人々はカンゴールのキャップやハットではなく、「カンガルー」をほしがった。この混乱を解決し、競争相手からブランドを引き離すためにロゴにカンガルーを加えた。」とあることから、カンゴールが偽者が出回るほどに著名であったことが判明する。引用各商標は、映画界、音楽界で著名な俳優たちに愛用されることにより、商標自体も益々著名になって現在に至っている。そして、当初著名であった帽子に限らず、その著名性はトータルファッションとしての様々な衣類関連商品に及んでいる。 エ そして、 2002年11月(株)シンコー・ミュージック発行の「WOOFIN‘」(甲第21号証)には、世界的に著名なHIP HOPブランドの特集として「KANGOL」が取り上げられており、80年代から「カンガルー印」といえば、「KANGOL」、「KANGOL」といえば「カンガルー印」といわれるほどに、KANGOLのカンガルー図形は著名であったのである。 さらに、当該雑誌においても、KANGOL社の歴史について言及し、その記載内容から、カンゴールの著名性が世界的であり、そのロゴのカンガルー図形が世界的に認知されていることが認められる。 オ さらにまた、1993年5月(株)商業界発行の「ファッション販売」(甲第22号証)にも、KANGOL社の歴史について言及し、その著名性についての記載がある。 力 我が国においても、1992年11月20日付の繊研新聞(甲第23号証)や1993年6月14日の同新聞(甲第24号証)が示すように、衣類を中心とするトータル・ファッションとして大々的に広告宣伝活動を行っており、その後も継続して数々の雑誌などに広告を掲載することにより(甲第7号証ないし甲第17号証)、ますますその周知度を高めていったのである。 そして、周知になればなるほど引用各商標を模倣した商標を付した商品などが出回るようになり新聞紙上で度々警告などを行なわなければならない状況であった。例えば、1992年12月18日付の繊研新聞(甲第25号証)に掲載された「謹告」の示す如きものである。 (4)上述のように、引用各商標は、カンガルーのマークによって周知となっているものであるので、本件商標と引用各商標とは、細部において僅かに異なるところがあるとしても、時と所を異にして使用される取引においては、外観上、相紛らわしい類似の商標である。そして、このことは以下に示す審決例や判例を見ても首肯できるところである。 ア 平成11年異議第90437号(甲第26号証) イ 平成12年(行ケ)第139号商標登録取消決定取消請求事件(甲第27号証) ウ 無効2001-35497審判事件(甲第28号証) エ この他の審決で、昭和54年審判8042号審決(甲第29号証)、不服2000-4268審決(甲第30号証)、平成5年審判第133359号審決(甲第31号証)、昭和52年審判第10141号審決(甲第32号証)が挙げられる。 (5)以上のように、本件商標と引用各商標とは、外観及び観念において類似の商標であり、また、その指定商品も同一又は類似するものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)被請求人は、本件商標は「ボクシングをするカンガルー」の図形であるから引用各商標と比較して、「誰の目から見ても明らかな相違点」があると主張している。 (2)しかし、被請求人が主張する「ボクシンググローブをはめている」点については、本件商標が野球のグローブをはめているようにも見えることは明らかであり、たとえ、「ボクシングをするカンガルー」が良く知られているとしても、野球のグローブをはめて守備をしているようにも需要者には見えるのが自然である。 (3)すなわち、被請求人が主張するような明らかに「ボクシングをしている図形」を表わすのであれば、本件商標のように座った状態ではなく乙第3号証の写真や、乙第7号証の写真や乙第10号証の第2頁の上方の写真の如く起立した姿勢で、相手に対して構えた姿態となるべきである。また、前足の形からグローブをはめていると認識できるものであっても、ボクシンググローブをはめているとして特定できるものではない。 したがって、被請求人が主張するように本件商標は「ボクシングをするカンガルー」の図形であることが明らかであると判断することはできない。 (4)そして仮に、被請求人が主張するように本件商標がボクシンググローブをはめて「ボクシングをするカンガルー」を表わすとすれば、引用各商標についても素手で「ボクシングをするカンガルー」として認識できるものであり、共に「ボクシングをするカンガルー」として認識できるため、外観及び観念が類似した商標と判断できるものである。 また、ワンポイントマークとして使用した場合などには、前足の部分の差異を判断することはー般に困難なものとなり、出所の混同が生ずるのは明らかである。 (5)被請求人は「ボクシングをするカンガルー」について乙第2号証ないし乙第11号証により周知性を主張しているが、これら証拠によって本件商標の登録査定時に周知であったとは判明せず、またこれら証拠と本件商標との関連も見い出せないので、本件商標が周知であったことにはならない。 (6)さらに、乙第12号証ないし乙第17号証として提示されているものは、いずれも外観・観念においてそれぞれ明らかに異なるものであって、相互の登録が可能であり、本件商標と同等に扱われるべきものではない。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、答弁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第17号証を提出した。 (1)請求人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するにもかかわらず登録されたものであり、同法第46条第1項の規定に基づき一部無効とされるべきものであると主張している。しかし、被請求人は、請求人の主張事実を認めることはできないので、以下にその理由を述べる。 (2)請求人は、本件商標と引用各商標1及び2の相違点を下記のように述べている。 本件商標 左向き、前足部分が丸く描かれている 引用各商標 右向き、胸の部分に小さな白抜き部分が存在、「KANGOL」の文字が付されている。 しかしながら、請求人は、その重要な相違点を敢えて述べていない。 すなわち、本件商標は、カンガルーがボクシンググローブをはめて、ボクシングをしている図形という点である。この点については、特許電子図書館の「図形商標検索」でウィーン図形分類「3.5.15.01 カンガルー」と「 21.3.23 ボクシング用グローブ」をAND検索した場合に、図形商標検索の検索結果(乙第1号証)のように本件商標が抽出されることからも明らかである。 請求人は、このような誰の目からみても明らかな相違点を敢えて触れず、他の相違点を主張しているものであり、その主張は妥当ではない。 ボクシングをするカンガルーは、テレビ、映画、雑誌、観光案内、土産、オーストラリアのスポーツのシンボル等で盛んに取り上げられており、需要者・取引者もよく認識しているものである。 ちなみに、被請求人は、下記のような条件でインターネットの検索サイトで検索を行ったが、数多くの結果を抽出した。 インターネットGoogleで検索した資料及び代表的なホームページ 「ボクシングをするカンガルー」の検索結果 92件(乙第2号証) 「カンガルー・ボクシングの記事」 (乙第3号証) 「グローブをはめたカンガルー」の検索結果 15件(乙第4号証) 「ボクシングカンガルー」の検索結果 989件(乙第5号証) 「書籍 ボクシング・カンガルーの冒険の広告」 (乙第6号証) 「土産 ボクシングカンガルーのボールペンの紹介」 (乙第7号証) 「オーストラリアンスポーツのシンボルボクシングカンガルーの記事」 (乙第8号証) 「カンガルーボクシング」の検索結果 1940件(乙第9号証) 「カンガルーボクシングのゲームの紹介(カンガルー再襲撃)」 (乙第10号証) 「カンガルー ボクシング」の検索結果 4660件(乙第11号証) (なお、前記検索結果は、全て1-10件目のみの頁を添付した。) このように、ボクシングをするカンガルーは、需要者・取引者によく認識されているものであり、本件商標に接する需要者・取引者も、ボクシングをするカンガルーとして認識するものである。 したがって、引用各商標とは、その観念や捉える認識が全く異なっており、印象も前記のような請求人の述べた相違点を加えれば、非常に異なるものである。 したがって、本件商標と引用各商標が外観、観念において類似しないことは明らかである。 (3)また、過去の登録例を見ても、本件商標や引用各商標と同一又は類似の商品を含む下記のような商標がそれぞれ登録されている。 このことから、本件商標は、引用各商標と何等類似しなことは明らかであると考えられる。 登録第1084408号(乙第12号証)、 登録第2060592号(乙第13号証)、 登録第2520356号(乙第14号証)、 登録第2030916号(乙第15号証)、 登録第2144484号(乙第16号証)、 登録第4168160号(乙第17号証)、 すなわち、乙第12号証ないし乙第14号証は、全体のシルエットが本件商標や引用各商標と、やや共通しているにもかかわらず登録されている。 また、乙第15号証ないし乙第17号証も、スポーツをしているカンガルーのシルエットが多少引用各商標と共通しているにもかかわらず登録されている。 このような登録例からみれば、本件商標と引用各商標も、ボクシングをするカンガルーの図形と立った状態のカンガルーの図形という点や前述した請求人主張の相違点を合わせれば、明確に区別が可能であり、何ら類似するようなものではない。 (4)なお、請求人は、引用各商標が周知・著名であることを主張しているが、引用各商標が、周知・著名であるという事情を加味したとしても、前述のようにボクシングをするカンガルーである本件商標とは、明らかに非類似のため、何ら混同するようなおそれもない。 また、請求人が類似する根拠として提出した過去の審決例も、ボクシングをするカンガルーと、立った状態のカンガルーとは、明確に異なるといった事情があるため、これらの審決例とは全く事情が異なり、本件審判の参考とはならないものである。 さらに、ワンポイントマークとして使用した場合の出所の混同も、前述したボクシングをするカンガルーという観念から見れば特に問題がないばかりか、商標法第4条第1項第11号にいうところの同一又は類似の問題とは異なるものである。 (5)以上、本件商標は、ボクシングをするカンガルーと、立った状態のカンガルーという明確な相違点があり、これに請求人が主張する相違点を加えれば、何ら類似するような商標ではない。 また、特許庁における登録例からいっても、本件商標と引用各商標は、非類似であり、無効理由を有するような商標ではない。 第5 当審の判断 (1)本件商標は、別掲(1)のとおり、左横向きカンガルーの黒いシルエット図形からなるものである。 他方、引用各商標は、いずれも、別掲(2)のとおり、図形と「KANG●L」の文字からなり、当該図形は、右横向きカンガルーの黒いシルエット図形からなるものである。そして、引用各商標にあって、図形と文字とはそれぞれ独立しても自他商品の識別機能を果たし得るものである。 そこで、本件商標と引用各商標の図形部分とを対比すると、両者は、左右の向きの違いを有し、前足が一方は丸くひとつであり、他方は二つであること、さらに頭部及び胸部における白抜き部分の有無に差異を有するものである。しかし、横向きで静止状態にあるカンガルーの黒いシルエット図形からなる点、その首から背中、尾にかけてなだらかな曲線を描いており、その後足及び尾を仮想地面上につけて、大きな後足を揃えて垂直に立った状態にあるという点を共通にしており、その基本的部分、すなわち、構成における軌を一にするものというべきである。 しかして、左右の向きの違い、前足や胸の部分等で差異を有するが、時と処を異にしてみたときには、かかる差異は、全体からみれば微差というべきであり、全体から受ける視覚的印象は似通ったものとなるものである。 (2)ところで、提出に係る甲各号証によれば、引用各商標は、1980年代から継続的に使用されて、「カンゴール」の称呼及びカンガルーの右横向きの黒いシルエット図形において、帽子等の需要者に、相当程度広く認識されていると認めることができる。 さらに、被服等の取引界において、図形商標をワンポイントマークとして使用することが普通に行われていること、それらはかなり小さな表示形態となること、及び、これには刺繍をもってする場合があることは、取引における一般的な実情というべきものである。また、この種商品の需要者は、恒常的な取引や商品の性格がアフターケアを期待するようなものではないこともあって、短い時間で購入商品を決定することも少なくなく、商品に付された出所標識をさほど厳格に検討して取引にあたるものともいえない。 (3)そうしてみると、本件商標と引用各商標とは、構成の軌を一にするものであるから、需要者の印象・記憶に強く残る部分は、ともに基本となる構成部分といわざるを得ない。してみれば、時と所を異にしたときには、殊に、ワンポイントマークとしての使用形態をも勘案すれば、上記差異にもかかわらず、本件商標は、周知な引用各商標と彼此相紛れる余地の高いものといわざるを得ない。よって、両者は、その外観において、商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあるものであり、類似する商標というべきである。 (4)被請求人は、本件商標が「ボクシングをするカンガルー」との明らかな認識をもって把握されるものであるから、引用各商標とは明確に区別が可能である旨主張する。 ア 確かに、カンガルーが対となってボクシングをしているような所作をする場合があること、シドニーオリンピックに際し、オーストラリアがカンガルーをマスコット人形としたことは、乙号証によって認めることができる。しかし、我が国において、それらが、ボクシングをするカンガルーとして、一般に広く定着しているとまでいうことはできない。 イ また、ボクシングをするカンガルーに関わるものとして示された乙号証の大部分は、「マチルダ:ボクシング・カンガルーの冒険」という著作物の紹介に係るものであって、当該著作物及びその主人公がボクシングをするカンガルーであることがある程度知られているとしても、上記の主人公が、一定の形態において定着しているとまではいえない。また、これと本件商標を構成する図形との関係は定かなものとはいえず、本件商標に接した者が上記の主人公を直ちに想起するともいえない。 ウ 本件商標を構成するカンガルーのシルエット図形は、前足部分に丸みをもたせて、それをつきだしているようにみえるものであるから、ボクシングのグローブを描いたという被請求人の主張を俄には否定することができないものである。 しかしながら、ボクシングのグローブと思しき図形部分を有するからといって、当該カンガルーのシルエット図形が、ボクシングをするカンガルーを典型的に描いたものとして、一般需要者をして、一義的に、ボクシングをするカンガルーとの観念をもって把握されるとまでは、全証拠によっても、これを首肯するには至らないものである。 そうとすれば、かりに、そのような印象をもって接する者がいたとしても、前記の外観上の類似性を凌駕して、両者を判然と区別し得るとする理由になるということはできない。 (5)また、被請求人は、登録例を挙げて、本件商標と引用各商標は、非類似であると主張する。 しかし、商標の類否は個別具体的になされるべきものであるうえ、挙示の登録例をもって上記判断を左右すべきものともいえないから、上記の主張は採用しない。 (6)以上のとおり、本件商標は、特定の称呼、観念を生じることのない図形商標というのが相当であるから、観念や称呼の明らかな相違を理由として、外観上で類似するにもかかわらず、引用各商標との間で、商品の出所の誤認・混同が惹起されることはないということはできない。 してみれば、本件商標は、その外観において、引用各商標に類似する商標というべきである。 また、本件商標の指定商品中「被服」には、引用各商標の指定商品と同一又は類似の商品が包含されていること明らかである。 (7)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、 同法第46条第1項に基づき、本件商標の指定商品中「被服」について、その登録を無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲(1)本件商標 別掲(2)引用商標1及び引用商標2 |
審理終結日 | 2005-11-11 |
結審通知日 | 2005-11-17 |
審決日 | 2005-11-30 |
出願番号 | 商願平11-59662 |
審決分類 |
T
1
12・
262-
Z
(Z25)
T 1 12・ 263- Z (Z25) |
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
野本 登美男 |
特許庁審判官 |
井岡 賢一 中村 謙三 |
登録日 | 2000-06-09 |
登録番号 | 商標登録第4391309号(T4391309) |
代理人 | 足立 勉 |
代理人 | 小山 輝晃 |