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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y25 |
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管理番号 | 1143276 |
審判番号 | 無効2005-89086 |
総通号数 | 82 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2006-10-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2005-07-13 |
確定日 | 2006-08-16 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4838730号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4838730号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,下着,エプロン,帽子、その他の被服,靴類,その他の履物」を指定商品として、平成16年8月23日に登録出願、同17年2月10日に設定登録されたものである。 2 請求人の引用商標 請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する国際登録第744594号商標(以下、「引用商標」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、第3類、第6類、第9類、第14類、第18類、第20類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、2000年(平成12年)6月15日を国際登録日として、平成13年12月7日に、その国内登録がされたものである。 3 請求人の主張 請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求める。」と申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。 (1)請求の理由 (ア)本件商標は、先端がやや丸くなった線が、右上方から左下方に延び、左下方でやや細い線となって右上方に至り、右上方で左部と接することなく渦を巻くように楕円の内側に巻き込んだ形状でその先端は右に向いており、全体として右に45度程度傾いた楕円状の渦巻きとして認識される形状である。 一方、引用商標は、太い線で上方から下方に延び、下方でやや細い線となって上方に円弧を描いて延び、上方から左部に接さずに巻き込むように円弧を描いてなり、その先端は右に向いており、全体として楕円状の渦巻きとして観察されるものである。 上記構成よりすると、両商標は、図形の傾きや線の太さ等、微細な相違はあるものの、いずれも左回りに渦を巻いた楕円状の図形である点において、その構成の軌を一にするものであり、そのような図形として看者の記憶に強く印象づけられるものである。 そして、時と所を異にして、離隔的に接する場合は、必ずしも、常に図形の細部まで正確に記憶されているとは限らず、図形の傾きや線の太さ等の細部の相違をもって両商標を明確に区別できるとは限らない。 さらに、本件商標の指定商品である「被服、履物」等の取引分野においては、いわゆるワンポイントマークとして、商品に縫いつけたり、刺繍する等して使用されることも多く(甲第5号証)、その場合においては、比較的小さく表示されるため、微細な構成上の差異は曖昧なものとなり、印象が希薄なものとなる。 よって、本件商標と引用商標とは、いずれも左回りに渦を巻いた楕円状の図形を表したという発想上及び構成上の同一性を有するものであるから、相紛れるおそれのある外観上類似する商標である。 (イ)本件商標の指定商品中、「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,下着,エプロン,帽子、その他の被服,靴類」は、引用商標の指定商品第25類「Clothing for women and men,including woven and knitted clothing,and clothing made of leather and imitation leather,in particular blouses,shirts,T-shits,sweatshirts,jackets,pullovers,tops,bustiers,trousers,skirts,twinsets,suits,coats,underwear,swimwear,headgear,scarves,headbands,jogging and fitness clothing,gloves,belts for clothing,shoes」(和訳:「織物製及びニット製の被服を含む男性用及び女性用の被服並びに革製及び擬革製の被服,特にブラウス,ワイシャツ類及びシャツ,ティーシャツ,スウェットシャツ,ジャケット,プルオーバー型セーター及びプルオーバー型シャツ,上半身用衣類,ビュスティエ,ズボン,スカート,ツインセット,スーツ,コート,下着,水泳着,帽子,スカーフ,ヘッドバンド,ジョギング用及びフィットネス用被服,手袋,被服用ベルト,靴及び運動用特殊靴」)に類似するものである。 (ウ)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号違反の無効理由を有するものであるから、本件商標の指定商品中の上記商品「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,下着,エプロン,帽子、その他の被服,靴類」についての登録を無効とすべきものである。 (2)答弁に対する弁駁 被請求人は、答弁書において、本件商標は、楕円状の曲線を略等間隔の隙間を渦巻き状にして、かつ、全体として右斜め45度に傾斜したもので、一見して、星雲のようなイメージを奏するものであって、また、連続する曲線の端が太くなっており筆止めしているように見える印象があることから、アルファベットの「O」を筆記体で描いたイメージを奏する引用商標とは、類似しない旨主張する。 しかしながら、本件商標に接した需要者が、本件商標から「星雲のようなイメージ」を看取するとは思われず、これは被請求人の主観的な主張に過ぎない。 本件商標からは、何ら特定の観念は生じ得ず、本件商標に接した需要者は、専ら、その外観に注目し、これを記憶するものと考えられる。 よって、本件商標と引用商標とは、ともに楕円状の曲線からなり、曲線の一端が楕円の内側に巻き込む円弧を描いてなり、全体としての楕円形渦巻きとして認識される点で、外観が共通しているため、特に、時と場所を異にする離隔観察を行った場合には、相紛れるおそれのある類似する商標であるといえる。 また、被請求人は、甲第5号証の一部に表された商標が、引用商標と同一の商標ではないと主張する。 しかし、かかる相違は些細なものであり、引用商標との同一性を妨げるようなものではない。 商標法第4条第1項第11号の類否判断の際に、願書に記載された商標を基準として行うのは当然のことであるが(商標法第27条第1項)、商標の類否の判断は、商品又は役務の取引の実情を考慮して行うこととされている(特許庁商標課 編「商標審査基準」商標法第4条第1項第11号の項)。 したがって、甲第5号証に示されたような実際の使用状態にかんがみて、本件商標と引用商標とが混同を生ずるおそれがあるか否かを判断するのは、通常の注意力を有する需要者が、被請求人が主張するような微細な相違をもって、本件商標と引用商標を明確に区別できるとは限らず、混同を生ずるおそれがある。 以上に述べたとおり、被請求人の答弁の理由は、成り立たず、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、商標法第46条第1項第1号により、無効とされるべきものである。 4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、証拠方法として、乙第1号証を提出した。 答弁の理由 (1)本件商標は、楕円状の曲線を略等間隔の隙間の渦巻き状にして、かつ、全体として右斜め45度に傾斜したもので、一見して、星雲のようなイメージを奏するものである。また、連続する曲線の端が太くなっており筆止めしているように見える印象がある。 これに対して、引用商標は、釣鐘状の楕円の上部で渦を巻くようにしたもので、一見して、アルファベットの「O」を筆記体で描いたイメージを奏するものである。 したがって、本件商標と引用商標とは、外観を異にするとともに、隔離観察をした場合に、看者には、異なる印象として残るものである。 (2)請求人提出に係る甲第5号証は、引用商標の使用状態を示したものと思われるが、請求人が外国(ドイツ連邦共和国)国籍であるから、国外で引用商標を使用していることはあるとしても、我が国内で使用しているものか否か不明である。 すなわち、使用場所、使用時期が特定されておらず、甲第5号証は、証拠能力に欠けるものである。 さらに、引用商標と甲第5号証の使用商標とは、商標の態様において相違するものであり、引用商標と同一の商標の使用とは認められない。そもそも、商標法第4条第1項第11号は、願書に添付した登録を受けようとする商標(甲第2号証)と、引用商標(甲第5号証)とを、比較して判断すべきものである。 5 当審の判断 本件商標は、別掲(1)に示すとおり、右斜め上を起点に左周りに、渦巻き状に一回転半させた楕円状の曲線を右斜め傾斜した形状で描き、起点と終点とは、太く筆止めした形状よりなるものである。 一方、引用商標は、アルファベットの「O」の文字を描くように、上から下にかけて左周りに、渦巻き状に一回転半させた楕円状の曲線を描いてなるものであるが、起点部分をやや細く描き、下辺にかけての線をかなり太く、下辺部分は細く、右上辺にかけての中央部の線をやや太く、右上辺から中に巻き込んだ線を細く描き、終点部は筆止めした形状で描いてなるものである。 そして、本件商標の図形は、右斜め45度に傾斜した構図であって、やや不安定な形状の図形として記憶されるのに対して、引用商標の図形は、直立し、かつ、どっしりとした安定感のある図形として記憶されるものと見るのが相当である。 そうとすれば、両商標は、上記の差異を有することにより、看者に与える印象は、かなり相違し、両商標を時と所を異にして離隔的に観察する場合にあっても、それぞれ異なったものとして、看者に印象を与え、記憶されると見るのが相当であるから、外観において相紛れるおそれはないものというべきである。 さらに、本件商標と引用商標から特定の称呼、観念は生じないこと明らかである。 してみれば、本件商標と引用商標とは、その称呼、観念及び外観のいずれにおいても、類似する商標とはいえない。 そして、両商標は、他に類似すると見るべき共通点は、見いだし得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものということはできないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別 掲 (1)本件商標 (2)引用商標 |
審理終結日 | 2006-03-15 |
結審通知日 | 2006-03-22 |
審決日 | 2006-04-06 |
出願番号 | 商願2004-77343(T2004-77343) |
審決分類 |
T
1
11・
26-
Y
(Y25)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
大場 義則 |
特許庁審判官 |
内山 進 柳原 雪身 |
登録日 | 2005-02-10 |
登録番号 | 商標登録第4838730号(T4838730) |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 佐野 惣一郎 |
代理人 | 加藤 義明 |