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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) Y30 |
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管理番号 | 1141924 |
異議申立番号 | 異議2005-90035 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2006-09-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2005-01-19 |
確定日 | 2006-07-19 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第4812001号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第4812001号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4812001号商標(以下「本件商標」という。)は、「ガトーしらはま」の文字を標準文字で表してなり、平成16年3月15日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同年10月22日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立ての理由の要点 本件登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号及び同第19号に該当するから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきである旨主張し、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第20号証(枝番を含む。)を提出している。 (1)商標法第4条第1項第11号について 本件商標と別掲のとおりの構成からなる登録第4454328号商標(以下「引用A商標」という。)は、「ガトーシラハマ」(ケーキの白浜)又は「シラハマ」(白浜)の称呼及び観念において類似し、また、その指定商品も同一である。 (2)商標法第4条第1項第10号について 「ガトーしらはま」の文字は、平成元年頃から神奈川県秦野市のレストラン「ガトーしらはま」で使用され、その後、株式会社ガトーよこはまに引き継がれて使用され、“伝説の美味しいチーズケーキの復活”として人気商品の標章として、本件商標の登録出願時には我が国首都圏内の需要者間にすでに周知・著名であり、広く認識されているものであるから、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして、国内における需要者間に広く認識されている標章と類似の商標であって、他人の商品に類似する商品に使用するものに該当する。 (3)商標法第4条第1項第19号について 本件商標の権利者が、チーズケーキについて周知・著名となっている「ガトーしらはま」の文字を、レストラン「ガトーしらはま」の代表者が商標登録を得ていないことを奇貨として、標章「ガトーしらはま」の出所機能を希釈化させ、かつ、その使用者の評判を毀損させるため、先取り的に出願登録した不当なものである。 3 本件商標に対する取消理由の要点 当審において、平成17年10月27日付けで要旨以下の取消理由を通知 した。 (1)申立人の提出した証拠によれば、「ガトーしらはま」の文字は、1980年代中頃から神奈川県秦野市にあったレストランの名称として使用されたものであるとともに、当該レストランのシェフ(白浜博利)が提供するチーズケーキにも「ガトーしらはま」なる標章(以下「引用商標」という。)として使用されており、当該チーズケーキは首都圏の百貨店(約10店)で販売されて需要者間で人気を集めた。しかし、前記レストランは平成14年末に廃業するに至った。その後、当該チーズケーキの復活を要望する声があったこともあり、平成15年1月に、申立人が前記白浜シェフを工場長として製造を再開し、以来、神奈川県をはじめ近隣の都県において、引用商標を使用したチーズケーキが継続的に販売されていることが認められる。 (2)以上よりすれば、引用商標は、本件商標の登録出願前において、需要者間に広く認識されるに至っていたものということができる。 しかして、本件商標と引用商標との類否についてみるに、本件商標と引用商標とは、ともに「ガトーしらはま」の文字よりなるものであるから、称呼及び観念を共通にする類似の商標と判断される。 そして、本件商標の指定商品は、引用商標の使用商品「チーズケーキ」と同一又は類似のものである。 したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものである。 4 商標権者の意見の要点 前記3の取消理由に対して、商標権者は、要旨次のように意見を述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証(枝番を含む。)を提出している。 (1)取消理由の通知は、申立人の事実誤認の主張に基づくもので、事実誤認を前提としているのであるから理由がなく、撤回されるべきである。 (2)商標権者は、適法に、本件商標及び株式会社ガトーしらはまの営業に関する権利を取得したものであり、そのことを以下に詳述する。 第一に、営業にかかる一切の権利等取得の経緯について 曽根衣代(旧姓:鈴木)及び同秀樹(旧姓:鈴木)は、「株式会社ガトーしらはま」の代表者であった白濱博利(広利)に資金の提供をしていたが、同社が経営難に陥り、債務の弁済が困難となったことから、確約書における契約内容に従って、担保として記載されている引用A商標及び株式会社ガトーしらはまの営業に関する一切の権利を適法に取得したものである。その後、曽根衣代(旧姓:鈴木)は、引用A商標及び営業に関する一切の権利を、商標権者に譲渡している。 このように、商標権者は、適法に、引用A商標及び株式会社ガトーしらはまの営業にかかる一切の権利を譲受したものであり、これらに基づいて商標登録出願をし、本件商標を取得したものである。 商標権者は、「株式会社ガトーしらはま」の引用A商標及び営業に関する権利の譲受に際しては、商標に化体した信用、すなわち、同社に化体している財産的価値も含めて譲り受けたものであり、その対価として資金を提供したものである。 そもそも、商標権が財産権として譲渡の対象となる所以は、かかる信用が化体していることに他ならないものである。 してみれば、「ガトーしらはま」に化体した信用(周知性)をも商標権者が適法に譲受したと理解することが相当であり、申立人が主張する「他人」に該当するものではない。 第二に、営業に関する権利の取得の時期について 株式会社ガトーしらはまの債務に関し、曽根衣代の申し立てに対して、横浜地方裁判所が債権差押を命じている。 このように、白濱博利が曽根衣代(旧姓:鈴木)及び同秀樹(旧姓:鈴木)に債務の弁済をしていないことから、差押が命じられたものであり、従って、引用商標及び一切の営業に関する権利は、曽根衣代氏(旧姓:鈴木)に移転している。 そして、申立人が主張する営業権の譲渡は、白濱博利による二重譲渡にすぎないものである。 なお、今般の意見書は、曽根衣代(旧姓:鈴木)及び同秀樹(旧姓:鈴木)の協力のもとで証拠資料を提出し、意見を述べているものである。 (3)以上のとおり、本件商標は、商標登録出願前において、需要者の間に広く認識されるに至っていた「他人」の未登録商標にかかるものではないと判断することが妥当であり、よって、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。 5 当審の判断 申立人の提出に係る甲第5号証ないし甲第20号証(枝番を含む。)を総合勘案すれば、「ガトーしらはま」の文字は、1980年代中頃から神奈川県秦野市にあったレストランの名称としての使用であるとともに、当該レストランのシェフ(白濱博利)が提供するチーズケーキにも「ガトーしらはま」からなる引用商標が使用されており、当該チーズケーキは首都圏の百貨店(約10店)で販売されて需要者間で人気を集めていたが、前記レストランは平成14年末に廃業するに至った。その後、当該チーズケーキの復活を要望する声があったこともあり、平成15年1月に、申立人が前記シェフを工場長として製造を再開し、以来、神奈川県をはじめ近隣の都県において、引用商標を使用したチーズケーキが継続的に販売され、「ガトーしらはま」の当該チーズケーキの味を再現していたこともあり、主に若い女性の人気を集めていることが認められる。 以上のことから、引用商標は、本件商標の登録出願前において、需要者間に広く認識されるに至っていたものということができる。 そして、本件商標と引用商標とは、ともに「ガトーしらはま」の文字よりなるから、「ガトーシラハマ」(ケーキのしらはま)の称呼及び観念を共通にする類似の商標と判断され、かつ、本件商標の指定商品は、引用商標の使用商品「チーズケーキ」と同一又は類似のものである。 そうとすると、本件商標が商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるとの理由により、その登録を取り消すべきものとした先の取消理由は妥当なものである。 なお、商標権者は、前記3の取消理由の通知は、申立人の事実誤認の主張に基づくもので、事実誤認を前提としているのであるから理由がなく、撤回されるべきである旨述べているが、引用商標に関しては前記認定のとおり、本件商標の登録出願前において、需要者間に広く認識されるに至っていたものということができるものであるから、この点に関する商標権者の主張は採用できない。 また、商標権者は、適法に、引用A商標及び株式会社ガトーしらはまの営業にかかる一切の権利を譲受したものであり、これらに基づいて商標登録出願をし、本件商標を取得したものである旨述べているが、商標権者の提出に係る確約書(乙第1号証)及び金銭借用証書(乙第2号証)によれば、株式会社ガトーしらはま及び白濱博利両名と鈴木衣代及び鈴木秀樹両名の間に、金銭貸借関係が存在し、その返済金に関する約束不履行の場合に、株式会社ガトーしらはまの上記引用A商標等全ての権利を鈴木衣代に無償にて譲渡することの確約がなされていることは推認し得るものの、債権差押命令(乙第3号証ないし乙第5号証)は、曽根衣代を債権者とし、株式会社ガトーしらはまを債務者とするものではあるが、請求債権の内容を確認できないこともあり、当該債権差押命令が、直ちに前記金銭貸借の不履行に基づいてなされたものであると認めることはできないものである。そして、商標権者は、前記乙各号証に基づき曽根衣代が適法に取得した引用A商標及び営業に関する一切の権利を、同人が譲り受けたものであると主張するのみであって、そのことを裏付ける証左を何ら提示していないものであり、他方、株式会社ガトーしらはまから申立人への営業権の譲渡の経緯を内容とする新聞記事(甲第13号証)と、当該新聞記事内容と整合し、株式会社ガトーしらはまから申立人に本件の移転がなされていることを確認できる引用A商標の登録原簿(乙第6号証の1)を総合勘案すれば、この点に関しても商標権者の主張を認めることはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、その登録は商標法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 引用A商標(登録第4454328号商標) |
異議決定日 | 2006-06-01 |
出願番号 | 商願2004-23799(T2004-23799) |
審決分類 |
T
1
651・
25-
Z
(Y30)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 藤平 良二 |
特許庁審判長 |
山田 清治 |
特許庁審判官 |
久我 敬史 澁谷 良雄 |
登録日 | 2004-10-22 |
登録番号 | 商標登録第4812001号(T4812001) |
権利者 | 上原 誠 |
商標の称呼 | ガトーシラハマ、シラハマ |
代理人 | 萼 経夫 |
代理人 | 吉田 芳春 |
代理人 | 館石 光雄 |
代理人 | 村越 祐輔 |