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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 110
管理番号 1141677 
審判番号 取消2005-31327 
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-09-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2005-11-01 
確定日 2006-07-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第2290675号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2290675号商標(以下「本件商標」という。)は、「GEM」の欧文字を横書きしてなり、昭和59年7月31日登録出願、第10類「医療機械器具」を指定商品として、平成2年12月26日に設定登録され、その後、指定商品については、同13年9月12日に第10類「医療用機械器具」とする指定商品の書換登録がされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標に係る指定商品「医療機械器具」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対し弁駁の理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1 取消の理由
本件商標は、その登録日(平成2年12月26日)から既に3年以上を経過しており、商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しない。
したがって、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録の取消しを免れないものである。
2 弁駁の理由
被請求人は、本件取消審判の対象となっている本件商標の使用事実を立証するために、乙第1号証ないし乙第5号証を提出している。
以下、かかる証拠の記載について、弁駁する。
(1)証拠の記載
(1-1)乙第1号証中のカタログ(「ME 2005 2006」)によれば、以下の商標が使用されていることが分かる。
・「カルジオファックス」なる片仮名文字を上段に、「cardiofaxV」なる欧文字を下段に併記した、「カルジオファックス/cardiofax V」
・「カルジオファックス」なる片仮名文字を上段に、「cardiofaxQ」なる欧文字を下段に併記した、「カルジオファックス/cardiofaxQ」
・「カルジオファックス」なる片仮名文字を上段に、「cardiofaxGEM」なる欧文字を下段に併記した、「カルジオファックス/cardiofaxGEM」
・「カルジオファックス」なる片仮名文字を上段に、「cardiofaxCE」なる欧文字を下段に併記した、「カルジオファックス/cardiofaxCE」
なお、乙第1号証中のカタログは、平成17年5月9日に納入されたという使用実績があることや、使用商標における「GEM」の態様と本件商標「GEM」との同一性(社会通念上の同一性)については、争わない。
(1-2)乙第2号証中のカタログ(「ECG‐9022」)によれば、以下の商標が使用されていることが分かる。
・「cardiofaxGEM」なる欧文字
なお、乙第2号証中のカタログは、平成17年8月25日に納入されたという使用実績があることや、使用商標における「GEM」の態様と本件商標「GEM」との同一性(社会通念上の同一性)については、争わない。
(1-3)乙第3号証の1ないし乙第3号証の3によれば、各種商談においてカタログを配布した使用実績があるが、これについては、争わない。
(1-4)乙第4号証中の医療機器添付文書によれば、以下の商標が使用されていることが分かる。
・「cardiofaxGEM」なる欧文字
・「カルジオファックス」なる片仮名文字に「GEM」なる欧文字を結合した「カルジオファックスGEM」
なお、乙第4号証中の医療機器添付文書は、2003年3月28日での使用実績があることや、使用商標における「GEM」の態様と本件商標「GEM」との同一性(社会通念上の同一性)については、争わない。
(1-5)乙第5号証によれば、特許庁が以下の認定をしたことが記載されている。
・「使用商標は、前記構成からみて、視覚上、前半の「cardiofax」の文字部分と後半の「GEM」の文字部分とに容易に分離して看取し得るものである。そして、全体より生ずる称呼も「カーディオファックスジェム」と極めて冗長にわたるものであり、かつ、意味上において、これら各文字部分を常に一体のものとして把握すべき格別の事情は存しない。かかる場合、取引場裡においては、適宜呼び易く親しみ易い文字部分を抽出し、その称呼をもって簡便に取引に資することが少なからず行われる実情よりすれば、各文字部分は、それぞれが独立して商品識別の機能を発揮し得るものといえる。したがって、使用商標中の「GEM」の文字部分は、それ自体単独に自他商品の識別標識として機能し得るというべきである。」(審決公報第33頁右欄下第1行〜第34頁左棚上第13行)
・「『cardiofax』商標のもと、数種の心電計を説明・紹介する製品カタログの1つであって見れば、該文字部分は、被請求人の取扱いに係る一連の心電計の商品群の系列表示程度のものとして認識されるにとどまり、進んで、携帯用又はブック型の商品の選択指標としては、むしろ、後半の『GEM』の文字部分をもって識別標識ととらえ、これより生ずる『ジェム』の称呼をもって取引に当たると見るのが取引の経験則より見て相当である。」(審決公報第34頁左欄第15行〜同第23行)
・「使用商標は、『cardiofax』が主要部分であって、『GEM』の文字部分は、識別力に乏しく印象力も弱いため、それ自体は独立して認識されない旨述べ、本件商標との同一性を否定するが、『GEM』の文字が医療機器の商品分野において、商品の品質、性能等を表示するものとして普通一般に通用しているという事情はなく、証左も示されていない」(審決公報第34頁左欄下第1行〜第34頁右欄上第6行)
・「『cardiofax』の部分は、請求人の取扱いに係る数種の心電計の系列表示のごとく理解されるに止まり、進んで、個別商品を識別するための標識(いわゆるペットネーム)としては、その機能を専ら『GEM』の文字部分に委譲しているというべきであって、それ自体は識別標識たり得ない」(審決公報第34頁右欄第10行〜同第15行)
(2)本件商標の使用について
本件商標「GEM」に対して、被請求人が使用を立証する使用商標は、「cardiofaxGEM」,「カルジオファックス/cardiofaxGEM」,「カルジオファックス GEM」であり、本件商標と同一といえないことから、本件商標の使用としては、認められるべきではない。
すなわち、本件取消審判において問題とすべきは、本件商標「GEM」が使用されているかどうかであり、本件商標を含む商標の使用によって本件商標が使用されていることにはならない。
本件商標を含む商標の使用によって、本件商標が使用されているといえるためには、(ア)「GEM」といえば需要者又は取引者が「cardiofaxGEM」を認識することを理由に「cardiofaxGEM」を使用すれば本件商標を使用したことになる、と被請求人が主張するのならばともかく、その逆である、(イ)「cardiofaxGEM」が「GEM」としての識別機能を発揮することを理由に「cardiofaxGEM」を使用すれば本件商標を使用したことになる、との被請求人の答弁の趣旨は、失当である(甲第3号証同旨)。
また、上記(ア)の事実を見いだす格別の事情もなく、上記(イ)の事実を見いだす事情もない。
以下、その理由について詳述する。
(ア)「GEM」といえば需要者又は取引者が「cardiofaxGEM」を認識する。
被請求人は、「cardiofaxGEM」の使用事実をもって「GEM」の使用を立証しようとするが、本件取消審判において問題とすべきは、本件商標「GEM」が使用されているかどうかであり、「GEM」といえば需要者又は取引者が「cardiofaxGEM」を認識することが、その前提となる。この点、被請求人は、「GEM」といえば「cardiofaxGEM」を認識するような主張は、一切しておらず、また、その証拠も示されていない。
一方で、「GEM」の文字部分は、被請求人が主張するように「宝石」の意味合いを持って一般に理解される平易な英語ではあるが、特に医療の分野において、「GEM」という語から想起されるものとしては、アイ・エム・アイ株式会社の商品である「血液ガス分析装置」の名称「GEMプレミア」や(甲第4号証)、イーライリリー・アンド・カンパニーが開発した抗癌剤の商品名である「ジェムザール(Gemzar)」の略号「GEM」が挙げられる(甲第5号証)。
かかる事情から、「GEM」という文字部分から、医療分野における取引者又は需要者は、被請求人の商品である「cardiofaxGEM」よりは、むしろ「GEMプレミア」や「ジェムザール」を想起するものと考えられ、とすれば、「GEM」は、被請求人の商品「cardiofaxGEM」の略称として通用しうるものであるとはいえない。
よって、「GEM」といえば需要者又は取引者が「cardiofaxGEM」を認識するような格別の事情は見いだせないことから、「cardiofaxGEM」の使用をもって本件商標の使用を立証する被請求人の主張は、失当である。
(イ)「cardiofaxGEM」が「GEM」としての識別機能を発揮する。
(a)被請求人は、「心電計」についての商品群商標として「cardiofax」という名称を使用しており、その名称の後に「GEM」「V」「Q」「CE」といった語を付し、各「心電計」の識別を行っているから、「GEM」の文字部分は、それ自体単独で自他商品の識別標識として機能している旨を主張している。
また、先の審決においても、「cardiofaxGEM」の中で、「cardiofax」商標は、被請求人の取扱いに係る一連の心電計の商品群の系列表示程度のものとして認識されるにとどまり、「GBM」の文字部分をもって識別標識ととらえ、「cardiofax」の部分自体は、識別標識たり得ないと認定している。
しかしながら、「cardiofaxGEM」のうち自他商品識別機能を発揮し得るのは、「cardiofax」の部分或いは「cardiofaxGEM」全体というべきであって、「GEM」の部分のみは、自他商品識別機能を発揮し得ない。
「自他商品識別機能」とは、「その商標により需要者が何人の業務に係る商品であることを認識できる機能」、すなわち、その商標を用いることによって、個性化された商品群の中から自社商品と他社商品との識別ができる機能のことをいう。
被請求人の主張する「各『心電計』の識別」のために用いている「GBM」「V」「Q」「CE」といった語は、自社の心電計「cardiofax」シリーズを、「GEM」「V」「Q」「CE」等に分類したにとどまり、「自社商品の識別」のために用いられるものであって、「自他商品の識別」を行っているわけではない。むしろ、「cardiofax」という語が、対外的な自他商品の識別力を有するのである。
以上より、「cardiofaxGEM」「カルジオファックス/cardiofaxGEM」,「カルジオファックス GEM」としてのみ取引されている当該商品について、「cardiofax」という名称と切り離した「GEM」の文字部分が、それ自体単独で被請求人の業務に係る商品であることを識別する機能を有しているとは考えられず、また、当該商品が「GEM」の文字部分を識別標識として取引されているとすべき格別な事情も見当たらない。
なお、「cardiofax」という名称の後に「GEM」「V」「Q」「CE」といった語を付して、各「心電計」の識別を行っているという被請求人の主張によれば、「GEM」「V」「Q」「CE」の語をもって商標の機能を持たせているものと考えられる。しかし、「V」「Q」「CE」の文字部分が、それ自体単独では自他商品の識別標識として機能し得ないことは明らかであるし、「GEM」も同様であると考えるのが自然である。すなわち、「GEM」「V」「Q」「CE」といった語は、あくまで「cardiofax」という商品に付随する、いわば符号のようなものであり、それ自体が単独で自他商品の識別標識として機能しているものではない。
乙第1号証に示された総合カタログによっても、「GEM」「V」「Q」「CE」の語は、同列に扱われており、「GEM」だけを特別に取り上げる事情は、見当たらない。しかも、各商標は、二段併記によって「カルジオファックス」なるカナ文字と「cardiofax」なる欧文字とが強調され、需要者又は取引者もかかる「カルジオファックス/cardiofax」部分によって、被請求人の商品を他社商品群と識別すると考えられる。
それにもかかわらず、「GEM」だけが特別な機能を有するという被請求人の主張は、失当である。
(b)「cardiofaxGEM」という名称が冗長であること、及び、このような場合、名称の一部を省略して呼称する傾向があることは争わないが、先の審決では、「各文字部分は、それぞれが独立して商品識別の機能を発揮し得るものといえる。したがって、使用商標中の「GEM」の文字部分は、それ自体単独に自他商品の識別標識として機能し得るというべきである。」とし、「cardiofax」自体は、識別標識たり得ず、後半の「GEM」の文字部分をもって識別標識ととらえ、取引に当たると見るのが取引の経験則より見て相当である」と認定している。
一般には、略称をする際に、冒頭部分を残し末尾部分を略することは日常多く経験するところであるが、その略称は、取引者、需要者間において通用性のあるものでなければならない。問題は省略形態にあるのではなく、それが略称として通用しうるものであるか否かにあるというべきである(甲第6号証)。
「cardiofaxGEM」という名称のうち、その末尾部分でなく冒頭部分を省略し、末尾部分である「GEM」を残すのであれば、末尾部分の「GEM」が冒頭部分の「cardiofax」よりも強力な識別力を有し、その「GEM」という略称が、取引者、需要者間において通用性のあるものである必要がある。ところが、先に述べたように、「cardiofax」と切り離した「GEM」の文字部分がそれ自体単独で識別力を有しているとはいえず、取引者、需要者間において通用性のあるものでなはい。
したがって、「GEM」だけが特別な機能を有するという被請求人の主張は、失当である。
(c)以上の点にかんがみれば、本件商標は、識別力の強い「cardiofax」と結合されることにより、本件商標としての独立性が失われてしまっているので、「心電計」の取引においては、本件使用標章は、「cardiofaxGEM」若しくは「カルジオファックス GEM」として認識され使用されるか、その主要部分である「cardiofax」若しくは「カルジオファックス」として認識され使用されることはあっても、本件商標「GEM」のみが独立して認識され使用されることはないといえる。
(3)まとめ
以上述べたように、被請求人の使用商標「cardiofaxGEM」及び「カルジオファックスGEM」の主要部分は、「cardiofax」及び「カルジオファックス」の文字部分であり、「GEM」の文字部分は、識別力を有していない。
したがって、本件商標は、不使用を理由に取り消されるべきであり、請求の趣旨どおりの審決を求めるものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標の使用の証明
(1)被請求人は、本件商標をその指定商品である医療用機械器具に属する「心電計」ついて、昭和60年頃より継続して現在に至るまで日本国内で使用しているが、今回、平成17年8月に作成され、現在使用中である被請求人の「心電計」の商品カタログ「EEG-9022」を「登録商標の使用説明書(同カタログ作成者の証明書と被請求人100%出資子会社宛の請求書添付)」(乙第1号証)として、また平成17年5月に作成され、使用されている被請求人の総合的な商品カタログ「2005/2006ME機器総合カタログ」の表表紙・第14頁〜第19頁・第212頁〜第213頁を「登録商標の使用説明書(同カタログ作成者の証明書と被請求人100%出資子会社宛の請求書添付)」(乙第2号証)として提出し、本件商標の使用を証明するものである。
(2)乙第2号証の商品カタログは、第212頁〜第213頁に掲載のごとく、その作成時より被請求人及び日本全国130所以上の子会社の販売会社・営業所が直接にその取引先である病院、診療所等の医療機関及び医師等の医療機関関係者に頒布している。
そして、被請求人の取引先である「ケイアイ医科器械株式会社」「株式会社高田商会」「望星サイエンス株式会社」により、乙第1号証の商品カタログについては、平成17年7月末までに受領し、乙第2号証の商品カタログについては、平成17年10月31日以前より、それぞれの取引先である病院、診療所等の医療機関及び医師等の医療機関関係者に頒布していることが証明されている(乙第3号証の1ないし乙第3号証の3)。
(3)乙第6号証の医療機器添付文書は、薬事法第六十3条の2(添付文書等の記載事項)等に基づき被請求人により作成され、「心電計」(ECG-9010シリーズ)販売時に添付されているものである。乙第4号証は、第1頁左上に記載のごとく、2003年3月28日に改訂され現在まで使用されており、本件商標の使用を証明するものである。
2 本件商標の使用の態様
(1)本件商標は、乙第1号証及び乙第2号証の商品カタログに掲載のごとく、下記の態様にて使用されている。
cardiofaxGEM
上記のごとく、「cardiofax」の文字部分は、アルファベットの小文字にて同一大、同一書体で書されており、「GEM」の文字部分は、アルファベットの大文字にてこの三文字が同一大、同一書体で書されている。
(2)乙第2号証の商品カタログ第14頁〜第19頁に記載のごとく、被請求人は、「心電計」についての商品群商標として「cardiofax」という名称を使用しており、その性能によって、その名称の後に「GEM」をはじめとして、「V」「Q」「CE」といった語を付し、各「心電計」の識別を行っている。
「GEM」は、その「宝石」等の意味合いのごとく、被請求人の「心電計」商品群の中で、小型・軽量・薄型で持ち運びや使用性に富んだ特徴を強調し、印象付け、他の「心電計」と識別するために使用されている商標である。
このように他の「心電計」と識別するために、前述のごとく「心電計」の商品群商標である「cardiofax」の文字部分をアルファベットの小文字で書す一方で、「GEM」の文字部分は、アルファベットの大文字で、さらに「cardiofax」とは異なる書体で書すことで、両者を分離させ、「GEM」の文字部分を際立たせている。したがって、「GEM」部分は、それ自体単独で自他商品の識別標識として機能しているといえる。
なお、現在使用中の上記「GEM」の書体は、本件商標の態様と全く同一とはいえないが、両者ともアルファベットの大文字で書されたものであり、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標であるため、社会通念上、本件商標と同一と認められる範囲での使用である。
(3)本件商標は、乙第4号証の医療機器添付文書に掲載のごとく、下記の態様にて使用されている。
カルジオファックスGEM
上記のごとく、「カルジオファックス」の文字部分は、カタカナの大文字にて同一大、同一書体で書されており、「GEM」の文字部分は、アルファベットの大文字にてこの三文字が同一大、同一書体で書されている。
現在、乙第4号証の医療機器添付文書で使用中の上記「GEM」の書体は、本件商標の態様と完全同一とはいえないが、両者ともアルファベットの大文字で書されたものであり、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標であるため、社会通念上、本件商標と同一と認められる範囲での使用である。
(4)本件商標は、以前に不使用取消審判(平成6年審判第1862号)の請求を受けており(乙第5号証)、この審判において特許庁より該使用態様でも「本件商標の使用である」との審決を受けている。
(5)以上のとおり、本件商標は、被請求人により日本国内において、指定商品について使用されていることは、明らかである。
したがって、本件商標に対する審判請求の主張は、全くその理由が無く、本件商標は、商標法第50条の規定に該当しないことは明らかであり、答弁の趣旨とおりの審決を求めるものである。

第4 当審の判断
先ず、請求人は、「請求の趣旨」で登録第2290675号(本件商標)の商標登録に係る指定商品「医療機械器具」についての登録を取り消す、との審決を求める、と記載しているが、本件商標の指定商品は、前記したとおり、既に、第10類「医療用機械器具」とする指定商品の書換登録(平成13年9月12日)がされたものであるから、以下、本件審判請求は、「医療用機械器具」についての取消審判として取り扱う。
1 被請求人より提出された乙第2号証によれば、以下のことが認められる。
乙第2号証には、商品カタログ(実物)が添付されており、カタログの表紙には、掲載商品の規格番号と認められる、「ECG-9022」が大きく表示され、その下に「心電計(解析機能付き)」と記載されている。同じく表紙の右上部及び中央の心電計(写真)には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「GEM」が表示されている。そして、カタログの最下部には、本件商標権者の英文字の商号略称と認められる「NIHON KODEN」の欧文字が表示されている。また、同カタログの裏表紙には、「規格 ECG-9022」と表示され、その下に心電計各部の仕様が記載され、他に、医療機器承認番号が表示されている。そして、製造販売者として「日本光電工業株式会社」の表示があり、裏表紙の最下部に、資料N0.と該カタログの作成年月と認められる「’05.8.」の数字が小さく表示されていることが認められる。
同じく、乙第2号証に添付された書面は、請求書(写し)と認められるところ、この請求書は、商品カタログの作成者(株式会社サンダイアル)から被請求人子会社である日本光電企画センタ株式会社宛に発行されたもので、納入日欄には「’05-8-25」と記載され、数量、金額の記載と共に、品名欄には、上記商品カタログに掲載する商品の規格番号と同じ「ECG-9022」の文字が記載されてあることが認められる。
2 前記1で認定した事実によれば、上記の商品カタログ及び請求書は、その記載内容から本件商標を付した商品「心電計」の取引において実際に使用されたと認め得るものである。
してみると、上記の乙第2号証に添付された商品カタログ及びその請求書により、本件商標と商品とが明確に把握できるから、本件商標が医療用器械器具に属する「心電計」について、本件審判の請求の登録前3年以内に本件商標権者によって、我が国において使用されていたことが認められる。
これに対し、請求人は、乙第2号証の商品カタログに使用されている商標は、「cardiofaxGEM」であり、本件商標「GEM」のみが独立して認識され使用されているものではない旨主張しているが、前記の商品カタログに表示されている「GEM」の文字は、他の文字に比し、大きく、かつ、デザインを施されて顕著に表示されているものであって、十分に独立して自他商品識別標識として認識され得る使用であり、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用したと見るのが相当であるから、請求人の上記主張は、採用することができない。
また、請求人は、被請求人が自社の心電計「cardiofax」シリーズに使用する「GEM」「V」「Q」「CE」等は、あくまで「cardiofax」という商品に付随する、いわば符号のようなものであり、それ自体が単独で自他商品の識別標識として機能しているものではない旨主張しているが、シリーズ商品の場合に個別商品ごとの商標を付して商品を区別することは一般に行われているところである。そして、例えば、「V」「CE」などのような欧文字の1字あるいは2字の場合はともかく、「GEM」のように欧文字の3文字からなる場合は、本件の指定商品の分野において、ありふれて使用されているというような事情もないから、自他商品の識別標識としての機能を有するものというべきであって、上記主張も採用することはできない。
そうすると、被請求人は、本件審判の請求の登録日(平成17年11月21日)前3年以内に日本国内において、本件商標の指定商品に含まれる「心電計」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたものと認め得るところである。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-05-25 
結審通知日 2006-05-30 
審決日 2006-06-12 
出願番号 商願昭59-85788 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (110)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 茂木 静代上田 克已涌井 幸一 
特許庁審判長 田代 茂夫
特許庁審判官 柳原 雪身
内山 進
登録日 1990-12-26 
登録番号 商標登録第2290675号(T2290675) 
商標の称呼 ジェム、ゲム、ジイイイエム 

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