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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y28
管理番号 1141595 
審判番号 無効2005-89092 
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-07-21 
確定日 2006-07-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第4629717号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4629717号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4629717号商標(以下「本件商標」という。)は、「LEADING EDGE」の欧文字と「リーディングエッジ」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなり、平成14年4月23日に登録出願、第28類「釣り具」を指定商品として、同14年12月13日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第50号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「リーディング」の片仮名文字と「LEADING」の欧文字とを上下二段に左横書きした構成からなる、請求人が所有する登録第4522658号商標(以下「引用商標」という。)と類似する商標である。
そして、本件商標の指定商品は、請求人の周知・著名商標「リーディング/LEADING」が使用されている船竿を含む「釣り具」である。
したがって、本件商標にあっては、その「LEADING」、「リーディング」の文字部分に高い顕著性が存するものである。すなわち、需要者は、本件商標中、「LEADING」「リーディング」の部分に注意を惹かれ、当該部分が独立した要部として機能するものであるから、本件商標は、「リーディング」の称呼においても取引されるおそれのあるものである。そうとすれば、本件商標と引用商標とは、共通の称呼を生じ、称呼上類似するものである。
また、引用商標及び本件商標の指定商品は、共に「釣り具」である。
さらに、引用商標が、本件商標の先願・先登録であることは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標が、その指定商品について使用された場合には、需要者間で広く知られるに至っている商標「リーディング」「LEADING」(以下「請求人標章」という。)との間で、需要者をして、その商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれがある。
以下、詳述する。
ア 請求人は、釣り用品とスポーツ用品の製造・販売・修理を業として行っている法人である。設立は古く、今から約半世紀ほど遡る。昭和30年(1955年)にリールの製造を開始し、3年後の昭和33年(1958年)に大和精工株式会社を設立した。
昭和44年(1969年)に商号を現在の「ダイワ精工株式会社」に変更し、翌年の昭和45年(1970年)には東京証券取引所第2部に上場している。昭和47年(1972年)にはゴルフ用品の国内販売を始め、昭和51年(1976年)には東京証券取引所第1部に上場している。その後、昭和55年(1980年)にはテニス事業に進出し、現在に至っている。
現在では、請求人は、資本金約91億円、従業員約600名、全国の主要都市に営業所を有する大企業に成長している。特に、釣り用品の分野では、昭和52年(1977年)に釣り用品部門で売上高世界一の座に着いて以来、現在でも、竿、リールから餌までの取扱量は世界でトップを誇る、リーディングカンパニーであり続けている(甲第3号証の1ないし2)。
イ 請求人は、引用商標を第28類「釣り具」を指定商品として、平成12年(2000年)5月に登録出願し(甲第4号証)、同年10月に船竿「リーディング/LEADING」(以下「リーディング船竿」という。)シリーズの販売を開始した。
当該船竿は、柔軟性に富むうえ粘り強く、大型の乗りにも負けない強度とパワーを備え、かつ、感度に優れるという高品質を有することから販売当初から好評を博し、釣り用品部門において請求人が既に築いた信用力と相俟って、平成13年度には約4,200本といった抜群の販売本数を記録し、平成14年には、船竿の高級品(小売価格3万円〜5万円)の分野では10年に1度あるかないかと言われる、年間1万本以上の販売実績を残す大ヒット商品となった。
ちなみに、平成14年度(2002年度)の、小売価格2万円以上の船竿の分野における、我が国の釣用品製造・販売メーカー上位6社の総販売本数13万3千本のうち、請求人の「リーディング船竿」の販売数は、その約8%を占める1万600本であり、船竿の分野では特別人気が高いアイテムであったことが容易に窺えるものである(甲第5号証及び同第6号証)。
「リーディング船竿」シリーズの人気は一時的なものではなく、平成14年(2002年)から 3年連続して年間1万本以上の販売実績を残している(甲第6号証)。
販売金額も釣り用品の分野におけるリーディングカンパニーである請求人の船竿の中で断トツの一位であり、販売構成比15%以上を占める基幹シリーズにまで成長している。
ウ 「リーディング船竿」シリーズの驚異的な売上には、当然に請求人の連綿盛大な宣伝広告活動が寄与している。請求人は、以下に示すように、様々な媒体を用いて宣伝広告活動を行っている。
(ア)「ダイワ船カタログ」-2000年秋版、2001-2002年版、2002-2003年版の3冊(甲第7号証ないし同第9号証)を提出する。これらは各々7万部以上発行されている。
(イ)「ダイワ釣用品総合カタログ」-2001年版、2002年版、2005年版の3冊(甲第10号証ないし同第12号証)を提出する。これらは各々30万部以上発行されている。
上記「ダイワ船カタログ」及び「ダイワ釣用品総合カタログ」は、全国の釣具店等の小売店及び船宿等に配布され、かつ、そこで顧客の利用に供されている。
(ウ)「つり情報(辰巳出版株式会社発行)」-2000年12月発行、2002年1月発行、2002年2月発行、2002年3月発行、2002年6月発行、2002年11月発行の6冊(甲第13号証ないし同第18号証)を提出する。
(エ)「つり丸(株式会社マガジンマガジン発行)」-2000年11月発行、2001年1月発行、2002年1月発行、2002年2月発行、2002年5月発行、2002年10月発行の6冊(甲第19号証ないし甲第24号証)を提出する。
上記つり情報誌「つり情報」及び「つり丸」においては、「リーディング船竿」シリーズの商品が広告され、また、「リーディング船竿」を用いたプロの釣師による実釣といった企画物も掲載されている。
(オ)業界新聞「釣具界(株式会社釣具界発行)」-2000年10月25日号(甲第25号証)を提出する。請求人が、「リーディング船竿」の販売を開始することが報道されている。
(カ)「リーディング船竿」は、請求人が放映スポンサーであるテレビの釣り情報番組においても紹介されている。具体的には、テレビ大阪をキー局とした全国ネットのテレビ番組「The Fishing」において、2000年10月23日、2001年10月20日及び2002年3月20日放映の番組の中で採りあげられている。
当該番組の内容は、プロの釣師が行う実際の釣りを通して、主に日本各地の釣り情報や特定の魚の釣り方等を紹介するというものであるが、上記3つの番組の中では、「リーディング船竿」を用いた釣りの模様が放映され、視聴者に「リーディング船竿」を使用したことが紹介されている。甲第26号証ないし同第28号証として、テレビ大阪のホームページから当該番組のラインアップに関する箇所を抜粋したものを提出する。
エ 以上述べたように、請求人の商品「リーディング船竿」は船竿の分野における大ヒット商品であるところ、販売本数ベースでみていくと、販売開始直後の平成12年には866本であったものが、直ぐに市場に受け入れられ、平成13年には4,180本、平成14年には10,000本を越えるという驚異的な増加を示しているものである。また、併せて平成12年の販売当初から活発な宣伝広告活動を行ってきているものであるから、請求人標章は、平成13年(2001年)から平成14年(2002年)にかけて、具体的には、遅くとも本件商標の登録出願日である平成14年4月23日の時点においては、需要者の間で広く知れわたっていたといい得るものである。
オ 本件商標は、「リーディング船竿」の人気が頂点に達しつつあった上記日付に登録出願されている。
そして、その後、被請求人が本件商標を使用している商品は、「リーディング船竿」と同じ船竿である。なお、使用されている商品が「船竿」である点については、被請求人の商品カタログから容易に理解できるものである(甲第30号証)。
すなわち、当該カタログからは、当該竿の全長が2.1〜2.4mであること、及び対象の魚が「イサキ、ハナダイ、ヒラメ、マダイ、ワラサ、メダイ、ブリ、ヒラマサ」等であることが認識できるところ、このような情報から、当業者あるいは釣りを趣味とする人であれば、当該竿が「船竿」であることが容易に認識できる。
また、「釣り具」の商品分野において、「LEADING」の文字から始まる商標は、登録中のもの、登録出願中のものを合わせても引用商標と本件商標以外には存在しない。「LEADING」の文字を含む商標は、この2件を含めてたった3件である(甲第31号証及び同第32号証)。
以上の状況から分かることは、被請求人には、周知・著名な請求人標章に化体した多大なる業務上の信用にあやかろうとする不正の意図である。
すなわち、釣り具の分野においてそれまで無かった「LEADING」の文字から始まる商標を請求人が登録出願し、「船竿」に現実に使用し、周知・著名となった直後に、本件商標を登録出願し、しかも同じ「船竿」に使用する行為は、フリーライド以外のなにものでもない。事実、ある小売店に対し、被請求人の社員が、請求人の「リーディング船竿」シリーズの廉価版と称して被請求人の船竿「リーディングエッジ」を売り込んでいることを請求人の社員が確認している(甲第33号証)。
少なくとも、この種商品分野において「LEADING」の文字を含む商標が稀有であることからすれば、本件商標の使用により、周知・著名な請求人標章の持つ自他商品識別力希釈化するものであることは明らかである。
カ 請求人は、現に請求人標章に他の片仮名文字、欧文字を付加してシリーズ化しているものであるから(甲第6号証)、この種商品分野において周知・著名となっている請求人標章に「EDGE」「エッジ」を付加した本件商標からは、取引者・需要者をして、「リーディング船竿」のシリーズの商品であると誤認混同させるおそれが存するものである。
事実、一般需要者が、請求人の商品「リーディング船竿」と、 被請求人の商品「LEADING EDGE/リーディングエッジ」とを誤認混同しているとの情報が、小売店から請求人の営業サイドに多く寄せられ、請求人としても事態を放置できない状態となってきている(甲第33号証)。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の趣旨に反して登録されたものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 「請求人は、平成12年10月に請求人標章の使用を開始した事実を証する資料は未だ提出されていない。」との被請求人の主張については、平成12年9月29日発行の請求人カタログ(甲第7号証)及び平成12年10月25日発行の業界紙「釣具界」(甲第25号証)が、当該事実を証明する何よりの資料となる。
すなわち、上記請求人カタログ及び業界紙において、請求人標章とともに「リーディング船竿」を掲載する行為は、商標法に規定する使用行為に外ならない。
よって、請求人が平成12年10月から請求人標章の使用を開始したこと自体は明らかである。
なお、被請求人は、「甲第25号証は『発売することになった』旨報じるのみで、発売の事実を証するものではない」と主張しているが、上記甲第7号証及び同第25号証の如く、自社のカタログに掲載し、業界紙に広告している事実等からすれば、社会通念上、請求人が当該商品を発売する態勢にあるものと容易に理解できるものであり、また、請求人は現実にその時点から発売していた。
イ 被請求人は、「本件商標の登録出願後の販売数を根拠にしているものであり、何ら本件商標の登録出願前の周知著名性を裏付けるものではない。」と主張する。
しかし、請求人は何も平成14年度の販売実績のみをもって請求人標章の周知著名性を立証しようとしているのではない。
請求人は、販売を開始した平成12年から平成14年の4月前にかけて、「リーディング船竿」を掲載した「ダイワ船カタログ」(甲第7号証及び同第8号証)を各々7万部以上、同じく「リーディング船竿」を掲載したダイワ釣用品総合カタログ(甲第10号証及び同第11号証)を各々30万部以上発行し、これらを札幌、仙台、富山、東京、名古屋、大阪、福山、高松、福岡に所在する請求人の営業所が全国の釣具店に配布して積極的な営業を展開した。ちなみに全国の釣具店の数は約6800店である。
また、請求人は、平成12年から平成13年にかけて、「リーディング船竿」の展示会、説明会を積極的に開催し、その他雑誌、新聞、テレビ等種々のメディアを通して精力的に宣伝広告活動を行ってきたものであって(甲第13号証、同第14号証、同第19号証ないし同第22号証、同第26号証ないし同第28号証)、これらの宣伝広告活動の総合により釣具店等の取引者、及び「船竿」(釣り具)の需要者の間では、請求人標章は周知著名であったものである。
販売実績においても、平成13年度のそれは、実質6ヶ月の販売期間であった平成12年度のそれに比べ、約5倍の伸びを示しており、「リーディング釣竿」の市場での浸透度の異常な早さが窺われるものである。
なお、本件商標の登録出願前に発行された雑誌、新聞に、「リーディング船竿」が採りあげられ、あるいはその広告記事が掲載されている(甲第35号証ないし同第44号証)。
ウ 被請求人は、「テレビの釣り情報番組で請求人標章が取り上げられた回数はわずか3回で、しかもその取り上げられた時間は全く不明であり、到底周知著名性の根拠とすることはできない」旨主張するが、請求人標章の周知著名性は、その販売実績、請求人の宣伝広告活動の全体において判断されるべきものであって、個々の広告媒体のみで判断される性質のものではない。
ちなみに、上記3回の釣り情報番組で取り上げられた釣竿は「リーディング船竿」のみであり、内2回は「リーディング船竿」のみが取り上げられているものであるところ、30分の放映時間中、継続して「リーディング船竿」を使用し、竿操作時の竿のしなりや、魚が掛かった時のたわみやバランスを紹介している(甲第27号証及び同第28号証)。
また、請求人は、請求人標章の周知著名性獲得の事実を立証する証拠を補強すべく東京商工会議所の証明書(甲第46号証)及び釣り具小売業者の証明書(甲第47号証ないし同第49号証)を提出する。
エ 上記のように、遅くとも本件商標の登録出願時においては、請求人標章は周知著名であったものである。
オ 「被請求人に不正の意図が認められないことは極めて明らかである」旨主張し、「Leading Edge/リーディングエッジ」は「常に目標に向かって進む鋭さ」という意味合いから商標として採択したものであって、請求人標章とは無関係に採択したものであると述べているが、「Leading Edge/リーディングエッジ」の語自体、一般需要者間で広く知られているとは到底思えないものであるし、仮に請求人が主張する意味合いを有しているとしても、何故ゴルフ用語を関連性の無い釣り具の商標に採択したのか理解できないものである。
請求人標章及び本件商標は、同じ商品「船竿」について使用されているものであるところ、「船竿」の商品分野において、ゴルフ用語が使用されるようなことは通常考えられないものであって、船釣りをする釣人が、「常に目標に向かって進む鋭さ」という意味合いを理解するとも思えないものである。
また、上記したように、「リーディング船竿」の急激な市場での浸透度からすれば、請求人と同業者である被請求人が、請求人標章の存在を知らなかったとは到底認められないものである。すなわち、当業者の立場からすれば、市場調査もしないで新商品を開発するようなことはあり得ないばかりか、小売店情報等の販売情報は即日の内に入手できる現在、1年半以上も前から販売されている「リーディング船竿」(標章)の存在を知らなかったと主張すること自体、極めて奇異な主張である。
さらに、本件商標の使用態様は、甲第30号証として提出した被請求人の商品カタログに示すとおりであるが、この度、請求人の入手した被請求人のカタログ(2006年2月発行)においては、本件商標に係る商品は見当たらず、代わりに「Leaders Edge」の欧文字からなる商標が使用されている(甲第50号証)。
カ 「本件商標の登録出願当時彼此誤認混同を生じるおそれのなかったことは極めて明らかである」旨主張し、その根拠の一つとして釣り具販売店からの報告書(乙第12号証ないし同第49号証)を提出しているが、15の別人格の釣具店が全く同じ内容の報告をしていることに強い不信感を持つものである。各店舗により、その販売状況その他の事情は異なるはずであり、このような形式的な報告書には全く信憑性がないものである。
また、乙第1号証及び同第2号証の雑誌における「リーディング船竿」と被請求人商品の取り上げ方についても、メーカーは雑誌社からみれば広告主であることから、そのメーカー名を商品名と共に表示すること自体は極当たり前のことであり、このことのみで、当業界が「リーディング船竿」と被請求人商品を明確に区別して取り扱っていることにはならない。請求書においても述べたように、最終ユーザーが両商品を混同している事実が現実に存在している(甲第33号証)。
(2)商標法第4条第1項第11号について
被請求人は、商標が非類似である旨主張し、その根拠の一つとして「Leading Edge」なる語が本来ゴルフクラブのフェース面とソール面が作る部位を意味することを挙げているが、「Leading Edge」の語自体を一般需要者が了知しているものとは到底考えられないものであって、これを観念上一体のものと認識する蓋然性は非常に低い。
なお、被請求人は、本件商標から「リーディング」の称呼を生じない根拠として、その先願先登録にかかる登録商標と非類似の商標として登録された事実を挙げているが、商標の構成要素において大差があり、全く事案を異にする。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、答弁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第53号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人標章が周知著名でないこと
ア 請求人は、同人が「船竿」に使用する請求人標章は、周知著名である旨主張する。
しかしながら、請求人の主張する使用実績に徴すれば、請求人標章が周知著名とは到底認められないものである。
イ 請求人は、平成12年10月に請求人標章の使用を開始したと主張する。
しかしながら、その事実を証する資料は未だ提出されていない。ちなみに、甲第25号証は、「発売することになった。」旨を報じるのみで、発売の事実を証するものではない。
ウ 請求人は、平成14年度の請求人標章を付した船竿の販売数は1万600本である旨主張する。
しかしながら、平成14年度の販売数とは平成14年4月から平成15年3月までの販売数であるところ、本件商標は、平成14年4月23日に既に登録出願されているものである。すなわち、請求人は、本件商標の登録出願後の販売数を根拠にしているものであり、何ら本件商標の登録出願前の周知著名性を裏付けるものではない。ちなみに、甲第6号証は私的報告書であるところ、その作成名義人すら不明である。
エ 請求人は、請求人標章の宣伝広告活動を示す資料として、甲第7号証ないし同第24号証のカタログ等を提出している。
しかしながら、当該資料中、甲第9号証、同第12号証、同第17号証、同第18号証、同第23号証及び同第24号証は、いずれも本件商標の登録出願後に発行されたカタログ等にすぎず、何ら本件商標の登録出願前の周知著名性を裏付けるものではない。
オ 請求人は、テレビの釣り情報番組で請求人標章が3回取り上げられた旨主張する。
しかしながら、取り上げられた回数はわずか3回で、しかもその取り上げられた時間(秒数)は全く不明であり、到底周知著名性の根拠とすることはできない。
カ 以上から明らかな如く、本件商標の登録出願前における請求人標章の使用実績はほとんどないのが実態であり、少なくとも本件商標の登録出願前に、請求人標章が周知著名であったとは到底認められない。
イ 被請求人に、不正の意図はないこと
(ア)請求人は、被請求人には、請求人標章に化体した業務上の信用にあやかろうとする不正の意図がある旨主張する。
(イ)しかしながら、本件商標に係る「Leading Edge/リーディングエッジ」とは、本来ゴルフクラブのフェース面とソール面が作る部位(EDGE)のことであり、「常に目標に向って進む鋭さ(EDGE)」と云う意味合から商標として採択、すなわち請求人標章とは全く無関係に採択したもので、そもそもその段階では請求人標章の付された船竿の存在すら知り得なかったものである。
しかも、被請求人は当該標章に関し、平成14年4月23日に登録出願を行ない、特許庁の審査を経て、同年12月13日に商標登録を受けた後、換言すれば類似する先行商標が存在しないことの公的な確認手続を経た後、その使用を開始したものである。
(ウ)してみれば、請求人標章が周知著名でないこととも相俟って、被請求人に不正の意図が認められないことは極めて明らかである。
(3)「リーディング船竿」と誤認混同のおそれがないこと
ア 請求人は、本件商標が使用された商品と請求人標章が使用された「リーディング船竿」は、誤認混同が生じるおそれがある旨主張する。
イ しかしながら、例えば「つり情報」2005年6月1日号第35頁;辰巳出版株式会社発行(乙第1号証)に、「【シマノ】SHORT GAME 40-180」、「【ダイワ精工】 リーディングXA64 1903(「3」についてはギリシャ数字)」、「【美咲】マニアス マルイカスペシャル220&200」、「【エイテック】リーディングエッジ パラボライト 180&200、181&201(マル)」、「【サクラ】Sガイド付 まるいか竿」、「【KT関東】ライトマルイカ200」と紹介されているように、当業界においては、「リーディング船竿」と被請求人の商品「リーディングエッジ」とは異なるメーカー品として明確に区別して取り扱われている。
同様に、「つり丸」 2005年3月15日号第10頁;株式会社マガジン・マガジン発行(乙第2号証)にも、「ロッドは、LTビシメバル同様、ライトタックル専用ロッドがベター。左のロッドは、右からエイテック・リーディングエッジパラボライト181、ダイワ・リーディングXA64タイプ3(「3」はギリシャ数字)、他ダイワ・ソルティスト…などもおすすめ。」とのように、異なるメーカー品として明確に区別して紹介されている。
ウ また、被請求人の商品「Leading Edge」購入者から送付されてきた保証書請求カード(乙第3号証ないし同第11号証)の「ご意見・ご希望記入欄」に、例えば「リーディングエッジシリーズは、軽量で魚の食い込みもよく大変、気に入っています。これからも良い商品を作っていって下さい。」、「エイテックの製品にはほぼ満足している。」、「大変使いやすいです」、「最近の船釣りの傾向か?軽量短尺のロッドが好まれている様子なので期待しています。」、「リーディングエッジコアの2.7mを作ってほしい。」、「210-6LBSも購入しました。… 他社にはない、おもしろい商品を期待しています。」、「軽くするのは良いと思いますが、グリップをもう少し太くした方が使用しやすいと思います。」、「…セイバーZ・タイタスに続き買って良かった1本…」、「20年位前に買い求めました(朝凪)という竿を今でも最も良く使用しています。…今回も貴社製品を選ばせていただきました。」等と記載されていることからも明らかなように、商品「Leading Edge」は、被請求人の製品として需要者から高い評価を受けているものであり、当然の如く請求人の商品と誤認混同したとする情報は一件も寄せられていない。
エ さらにまた、上州屋等の釣り具販売店の報告書(乙第12号証ないし同第49号証)からも明らかな如く、請求人の商品「リーディングエッジ」は、ユーザーの指名買いの多いヒット商品であり、「リーディング船竿」とは明らかに異なるメーカーによる製品として認識されており、実際上誤認等の間違いが発生した例も皆無である。
オ そして、沼津商工会議所の証明書(乙第53号証)からも明らかな如く、本件商標が当業界において広く知られている商標であることとも相侯って、本件商標が使用された商品と請求人標章が使用された商品が、本件商標の登録出願当時彼此誤認混同を生じるおそれのなかったことは否定し得ない事実である。
カ 以上の事実に徴すれば、本件商標が使用された商品と請求人標章が使用された商品が、本件商標の登録出願当時、彼此誤認混同を生じるおそれのなかったことは極めて明らかである。
(3)よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)請求人は、本件商標は引用商標と称呼上類似すると主張する。
ア そこで、両商標の称呼を比較検討するに、本件商標が、欧文字「LEADING EDGE」を上に、片仮名文字「リーディングエッジ」を下に二段併記して構成されていることに徴すれば、前述の如く「Leading Edge」なる語が本来ゴルフクラブのフェース面とソール面が作る部位を意味し、しかも発音の目安となる片仮名文字が一体不可分に表示されていることとも相候って、本件商標から「リーディングエッジ」なる自然称呼の生じることは極めて明らかである。
(イ)しかるところ、請求人は、本件商標は周知著名な請求人標章を含むから、「リーディング」の称呼においても取引されるおそれがあると主張する。
しかしながら、前述の如く、請求人標章は、本件商標の登録出願前に周知著名性の全く認められない標章である。したがって、請求人の主張は、そもそもその前提を欠いており、全くの空論である。
したがって、本件商標から生じる自然称呼は前述の「リーディングエッジ」であり、「リーディング」なる称呼が生じることはない。
ちなみに、このことは、引用商標に対し、先願登録商標の地位を有する登録第2465570号商標「リーディングカンパニー」(指定商品:釣り具等)(乙第50号証)及び登録第4299504号商標「the leading dance scene\velfarre」(指定商品:釣り具等)(乙第51号証)が存在するのにかかわらず、引用商標が非類似の商標として登録された事実によっても明らかであり、かつまた商取引の経験則にも合致する。
ウ 他方、引用商標から「リーディング」なる自然称呼が生じることは、当該引用商標の商標構成から極めて明らかである。
エ 両称呼には「エッジ」の有無という顕著な相違があり、彼此明瞭に区別聴取し得るものである。
(2)よって、両商標は明らかに非類似の商標であり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものでない。

第4 当審の判断
1 甲各号証について
甲各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)請求人の商品カタログ「2000 ダイワ秋船カタログ」には、商品釣り竿の現物写真とともに、商標「LEADING-X」(「リーディング」の文字が小さく表示されている。)が記載されている。そして、同カタログには、2000年9月29日発行との記載がある(甲第7号証)。
上記と同様に商品釣り竿の現物写真とともに商標「LEADING-XL」「LEADING-X」あるいは商標「LEADING-X」が記載されたカタログが、2001年2月2日、2001年10月5日、2002年8月8日及び2002年8月9日に発行された(甲第8号証ないし同第11号証)。
(2)隔週刊行の雑誌「つり情報」(平成12年12月15日号)に、「リーディング-Xシリーズデビュー」として商品釣り竿の紹介記事が掲載され、「リーディング-X」あるいは「リーディング-X」として商品釣り竿の紹介記事が掲載された(甲第13号証)。
そして、平成14年1月1日、平成14年2月1日、及び平成14年3月1日号の上記の雑誌に、「リーディング-X」「リーディング-XL」を使用した商品釣り竿の広告が掲載された(甲第14号証及び同第15号証)。
さらに、そのほかにも、本件商標の登録出願日より前に発売された上記の雑誌に、上記商品の紹介記事や広告が掲載された(甲第35号証ないし同第40号証)。
(3)隔週刊行の沖釣り専門誌「つり丸」(平成12年11月15日発行)に、「リーディング-X」商品の紹介記事が掲載された(甲第19号証)。さらに、そのほかにも、本件商標の登録出願日より前に発売された上記の雑誌に、上記商品の紹介記事や広告が掲載された(甲第20号証ないし同第22号証)。
(4)平成12年10月25日付けの新聞「釣具界」には、「船釣りファン待望 リーディングX ソリッドパワースリムの1ピース竿」(「リーディングX」が大書してある。)の下、「ダイワ精工(株)では、この程、船釣りファン待望の・・(中略)・・『リーディングX』シリーズを発売することになった。」との記事と、「リーディングXアオリ130」及び「リーディングXサソイ150」なる商品の現物写真とが掲載された(甲第25号証)。
(5)平成12年10月23日、平成13年10月20日及び平成14年3月9日放送のテレビ番組の中で、釣りの模様が放映され、「リーディング船竿」が使用された旨の紹介がされた(甲第26号証ないし同第28号証)。
(6)雑誌「つりmagazine」の2001年1月号に、「リーディングXアオリ130」及び「リーディングXサソイ150」の商品紹介が掲載され、同2002年2月号に、「リーディングXアオリ120S」の商品紹介が掲載された(甲第41号証及び同第42号証)。また、平成13年3月2日付け「週間つりニュース」に、「リーディング-Xアオリ130/サソイ150」に関する記事が掲載され、同年10月12日付け「週間つりニュース」に竿「リーディング-XLカワハギ」に関する記事が掲載された(甲第43号証及び同第44号証)。
(7)「リーディング船竿」シリーズ全体の販売数は、平成12年度866本、平成13年度4,180本、平成14年度10,593本と急速な増加傾向を示している(甲第6号証)。
2 以上を総合すれば、平成12年10月以降、「LEADING」あるいは「リーディング」、さらに、これらにハイフン(-)介して「X」「XL」等の記号を付記した商標が継続的に使用され、雑誌、新聞、テレビ等を通じて相当に宣伝広告されたと認められるから、請求人標章は、商品「船竿(釣り具)」について継続して使用された結果、本件商標の登録出願時には既に、釣り具の需要者の間において広く認識されている商標となっていたというべきてある。
3 本件商標は、「LEADING EDGE」及び「リーディングエッジ」の文字からなるものであるところ、仮に当該欧文字「LEADING EDGE」が既成の英語の一であるとしても、特定の意味合いを表す語として、我が国の釣り具の需要者一般に親しまれたものと認めることはできない。
この点について、被請求人は、本件商標は本来ゴルフクラブのフェース面とソール面が作る部位(EDGE)のことであり、「常に目標に向って進む鋭さ(EDGE)」と云う意味合いから商標として採択したと主張するが、これについて何ら証拠の提出はなく、また、本件商標が当該意味合いをもって一般に親しまれたものと認めるに足りる的確な証拠も見いだせない。
そうすると、本件商標は、これを常に不可分一体の標章としてのみ看取されるとすべき理由はなく、視覚上で「LEADING」と「EDGE」とに分離して看取され得るものであるから、「LEADING EDGE」に接する者が、語頭部分の「LEADING」及びその表音の「リーディング」に注目する場合のあることを否定することはできない。
そして、当該欧文字部分と請求人標章とは同一の文字綴りであり、同じ発音を生ずるものである。してみると、本件商標は、請求人標章を構成する文字をその一部に有するというのが相当であるから、請求人標章との類似性の程度は決して低いとはいい難いものである。
また、本件商標は、「釣り具」を指定商品とするものであるから、請求人標章の使用商品「リーディング船竿」と同一又は類似の商品に使用するものであり、かつ、その需要者を共通にするものである。
4 以上により、請求人標章の周知性の程度、本件商標と請求人標章との類似の程度、使用商品間の関連性の程度及び需要者の共通性等を総合勘案すると、本件商標は、その登録査定時はもとより登録出願時において、その指定商品に使用するときには、「釣り具」の需要者が請求人標章を想起し、連想して、請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品と誤信し、商品の出所について混同するおそれがあったものというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものというべきである。
5 被請求人は、保証書請求カード(乙第3号証ないし同第11号証)や釣り具販売店の報告書(乙第12号証ないし同第49号証)の記述をもって、「リーディング船竿」と誤認混同したとする情報は一件も寄せられていないし、被請求人商品「リーディングエッジ」が「リーディング船竿」とは明らかに異なるメーカーによる製品として認識されており、実際上誤認等の間違いが発生した例も皆無である旨主張する。
しかし、保証書請求カードの「ご意見・ご希望記入欄」は、購入者(需要者)に購入商品の感想等を求めたものであって、必ずしも「リーディング船竿」との関係について回答求めたものではないから、「リーディング船竿」との誤認混同について記述がないことも極めて自然というべきである。
また、釣り具販売店の各報告書の文言は、いずれも定型の不動文(同文)をもって表されたものであるうえ、例えば、被請求人商品を「リーディングエッジ『パラボライト』」「リーディングエッジ『コア』」、あるいは「LEパラボライト」「LEコア」と記載するなど、その内容においても、当該各報告がいかなる前提のもとでなされたか、にわかには得心し難いところがあるといわざるを得ない。さらに、販売店が、「リーディング船竿」と被請求人商品とを別メーカーによる製品として認識しているのは、商品を仕入れる者としては当然のことともいえ、これをもって直ちに、商標により商品の出所を識別する需要者の認識を同列のものとして論ずることはできないというのが相当である。
さらに、沼津商工会議所の証明書(乙第53号証)は、その記述内容に「株式会社エイテックが…平成14年12月13日より現在に至るまで継続して使用している商標です。…取引者および需要者の間に広く認識されていることを証明いたします。」とあるが、上記2のとおり、請求人標章が釣り具の需要者の間において広く認識されている商標となっていた日付(本件商標の登録出願時)以降であることが明らかであるし、また、該証明書をもってしては、直ちに本件商標が需要者の間において広く認識されている商標とも認め難いものである。
そして、甲第33号証の「陳述書」からも窺えるような需要者における商品の出所混同のおそれを払拭し得たとまでいうことはできないから、前記判断を左右することにはなり得ないというべきである。
なお、雑誌(乙第1号証及び同第2号証)に、メーカー名とともに並列的に掲載されたとの事実をもって、商標間で出所混同のおそれがないといえないことも、また同様である。
6 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定に基づき、その登録は無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-05-17 
結審通知日 2006-05-22 
審決日 2006-06-05 
出願番号 商願2002-33443(T2002-33443) 
審決分類 T 1 11・ 272- Z (Y28)
最終処分 成立  
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 寺光 幸子
小林 薫
登録日 2002-12-13 
登録番号 商標登録第4629717号(T4629717) 
商標の称呼 リーディングエッジ、リーディング 
代理人 石川 義雄 
代理人 鈴江 武彦 
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所 
代理人 小出 俊實 
代理人 幡 茂良 

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