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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200589039 審決 商標
無効200589025 審決 商標
無効200489106 審決 商標
取消200531137 審決 商標
取消200531005 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
管理番号 1139615 
審判番号 無効2005-89076 
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-08-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-05-27 
確定日 2006-06-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第4646915号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4646915号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4646915号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成14年2月22日に登録出願、第25類「アメリカ製の被服,アメリカ製のガーター,アメリカ製の靴下止め,アメリカ製のズボンつり,アメリカ製のバンド,アメリカ製のベルト,アメリカ製の履物,アメリカ製の仮装用衣服,アメリカ製の運動用特殊衣服,アメリカ製の運動用特殊靴」を指定商品として、同15年2月21日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由に引用した商標は、以下の7件である。
(ア)引用登録第2667318号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおり、「BeaR」の文字を横書きしてなり、平成3年10月16日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、同6年5月31日に設定登録、その後、同15年12月24日に商標権の存続期間の更新登録がされ、指定商品については、同16年5月12日に書換登録がされた結果、第5類「失禁用おしめ」、第9類「事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服」、第10類「医療用手袋」、第16類「紙製幼児用おしめ」、第17類「絶縁手袋」、第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」、第21類「家事用手袋」、第22類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿」、第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」となっているものである。
(イ)同じく、登録第4298088号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおり、「BEAR」の文字を横書きしてなり、平成8年7月19日に登録出願、第25類「被服,履物」を指定商品として、同11年7月23日に設定登録されたものである。その後、平成16年1月27日に、無効審判の請求(2004年審判第35048号)があった結果、本商標権について登録を抹消する旨の審判の確定登録が同18年2月20日になされているものである。
(ウ)同じく、登録第4345512号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(4)のとおりの構成よりなり、平成7年5月2日に登録出願、第25類「パーカ,絶縁材からなるジャケット,レザージャケット,防寒用帽子,履物」を指定商品として、同11年12月17日に設定登録されたものである。
(エ)同じく、登録第4376738号商標(以下「引用商標4」という)は、別掲(5)のとおりの構成よりなり、1995年1月24日アメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成7年7月24日に登録出願、第25類「パーカ,絶縁材からなるジャケット,レザージャケット,防寒用帽子,ヘッドバンド」を指定商品として、同12年4月14日に設定登録されたものである。
(オ)同じく、登録第4419411号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(6)のとおりの構成よりなり、平成8年3月6日に登録出願、第25類「アメリカ製のパーカ,アメリカ製のジャケット,アメリカ製のティーシャツ,アメリカ製のパンツ,その他のアメリカ製の下着,アメリカ製のジャージー生地からなる長袖シャツ,アメリカ製のデニム生地からなるズボン,アメリカ製のデニム生地からなるその他の被服,アメリカ製の防寒用帽子,アメリカ製の履物」を指定商品として、同12年9月22日に設定登録されたものである。
(カ)同じく、登録第4419412号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲(7)のとおりの構成よりなり、平成8年3月6日に登録出願、第25類「パーカ,ジャケット,ティーシャツ,パンツ,その他の下着,ジャージー生地からなる長袖シャツ,デニム生地からなるズボン,デニム生地からなるその他の被服,防寒用帽子,履物」を指定商品として、同12年9月22日に設定登録されたものである。
(キ)同じく、2000年商標登録願第140040号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲(8)のとおりの構成よりなり、第25類「被服,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成12年12月27日に登録出願されたものである。
以下、これら(ただし、「引用商標2」を除く。)をまとめていうときには、「引用各商標」という。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第63号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、その構成中の動物の図形部分は、その構成態様及び構成中の文字部分との関係から、「熊」(Bear)を描いたものと容易に認識し得るものである。
また、その構成中の「USBEAR」の文字部分は、前記した図形部分との関係から、「US」の文字と「BEAR」の文字とを結合したものと容易に認識し得るところである。
しかして、本件商標の構成中の「US」の文字は、「United States」の略として広く知られている語であり、かつ、「USAF」(United States Air Force)(アメリカ空軍)、「USGA」(United States Golf Association)(アメリカゴルフ協会)、「USTR」(United States Trade Representative)(アメリカ通商代表部)、「USPTO」(United States Patent and Trademark Office)(アメリカ特許商標庁)のように、「アメリカ」(アメリカ合衆国)を表示する語としても普通に使用され、広く知られている語である。
そして、本件商標の指定商品の分野においては、アメリカ製の商品、アメリカでデザインした商品又はアメリカの企業の取り扱いに係る商品が多数輸入され、販売されていることからすれば、これに接する取引者、需要者は、「US」の文字部分は、アメリカ製の商品であること、アメリカでデザインされた商品又はアメリカの企業の取り扱いに係る商品であること、すなわち、商品の産地等の品質を表示したものと容易に認識するというのが相当である。
そうとすれば、本件商標の文字部分において、自他商品識別標識としての機能を果たすのは、「BEAR」の文字部分にあるといわなければならない。
そうしてみると、本件商標構成中の「熊」の図形部分及び「BEAR」の文字部分より「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じるものである。
また、本件商標の「USBEAR」の文字部分からは、「アメリカの熊」の観念を生じるものである。
これに対して、引用商標1は、「BeaR」の文字よりなるものであり、引用商標2は「BEAR」の文字よりなるものであるから、それぞれより「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じるものである。
引用商標3は、熊の図形と、大きく書した「Bear」の文字及びその下段に小さく「U.S.A.,Inc.」と書してなるところ、下段に書された当該文字部分は、アメリカの法人であることを表示するにすぎず、熊の図形部分と上段に大きく書した「Bear」の文字部分とが自他商品識別標識としての機能を果たす部分といえるものであるから、これより「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じるものである。
引用商標4は、熊の図形と大きく書した「Bear」の文字よりなるものであるから、これより「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じること明らかである。
引用商標5は、熊の図形及びその輪郭線を延長した横長の輪郭内に、「Bear」の文字を書し、その下に「USA」の文字を配してなるところ、「USA」の文字部分は、アメリカ合衆国を意味し、指定商品との関係においては、商品の産地等の品質を表示するにすぎないから、熊の図形部分と「Bear」の文字部分とが自他商品識別標識としての機能を果たす部分といい得るものであり、これより「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じるものである。
そして、引用商標5の構成中の「Bear」の文字と、その下の「USA」の文字より「アメリカの熊」の観念をも生じるものである。
引用商標6は、熊の図形及びその輪郭線を延長した横長の輪郭内に、「Bear」の文字を書してなるものであるから、これより「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じること明らかである。
引用商標7は、熊の図形及びその輪郭線を延長した横長の輪郭内に、「Bear」の文字を書し、その横に「USA」の文字を横向きにして、下から上に向けて縦に書してなるところ、「USA」の文字部分は、アメリカ合衆国を意味し、指定商品との関係においては、商品の産地等の品質を表示するにすぎないから、熊の図形部分と「Bear」の文字部分とが自他商品識別標識としての機能を果たす部分といい得るものであり、これより「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じるものである。
そして、引用商標7の構成中の「Bear」の文字と、その右横の「USA」の文字より「アメリカの熊」の観念をも生じるものである。
そうしてみると、本件商標と引用各商標とは、「ベアー」の称呼、「熊」の観念を共通にする互いに類似の商標であり、本件商標と引用商標5及び引用商標7とは、「アメリカの熊」の観念を共通にする類似の商標というべきものである。
また、本件商標と引用商標5ないし引用商標7とは、黒の輪郭線をもって描かれてなる特徴のある熊の図形とその輪郭線を延長した横長の輪郭内に、「熊」を意味する「BEAR」、「Bear」の文字を有してなる点において、構成の軌を同じくするものであり、しかも、本件商標と引用商標5及び引用商標7とは、熊の図形の輪郭線を延長させた横長の輪郭の外側に「USA」の文字を配してなる点において、構成が極めて近似したものと認識されるものであるから、時と所を異にして、これらに接するときは、かれこれ相紛らわしい外観上類似の商標というべきものである。
請求人は、引用商標5及び引用商標6を平成8年3月に出願し、使用を開始したものであり、引用商標7は、平成8年に使用を開始し、平成12年に出願をしたもので、その使用の形態は、黒の輪郭線をもって描かれた特徴のある熊の図形及びその輪郭線を延長した横長の輪郭内に、「熊」を意味する「Bear」の文字を書し、その輪郭の外側横に「USA」の文字を下から上に向けて縦書きして配してなるという特徴を有するものであり、請求人は、これを各種、雑誌において広告するとともに、偽商品対策のために新聞紙上の広告において、警告をもしていたものである(甲第9号証ないし甲第19号証)。
しかるところ、本件商標は、請求人の引用商標5ないし引用商標7の使用開始及び広告並びに警告が、新聞、雑誌に掲載された後に出願されたものであり、被請求人が主として衣料品等のファッションに関連する商品についてのブランドのライセンスを業とし、そのライセンスに係る商標が請求人の著名商標にフリーライドすることを目的としたものであるといい得るものであり、かつ、そのライセンス事業も極めて欺瞞的なものであることから見ると、明らかに請求人の著名な商標にフリーライドする目的を持って、引用各商標、出願商標(特に引用商標5ないし引用商標7)と構成の軌を一にする類似の商標を出願したといい得るところである。
さらに、本件商標と引用商標3、引用商標5及び引用商標7とは、黒の輪郭線をもって描かれた特徴のある熊の図形と「熊」を意味する英語「BEAR」、「Bear」の文字及び「アメリカ」(アメリカ合衆国)を表示する「US」、「USA」の文字をその構成中に有するところ、ともに「アメリカの熊」の商標であるかのごとく理解されるばかりでなく、黒の輪郭線をもって描かれたという特徴のある熊の図形よりなり、「熊」を意味する「BEAR」、「Bear」の文字を有し、「アメリカ」(アメリカ合衆国)を表示する「US」、「USA」の文字をその構成中に有するという商標の構成全体から受けるイメージも相似たものとなっているから、外観、観念が相まって、彼此相紛らわしい類似の商標というべきである。
そして、本件商標の指定商品と引用各商標の指定商品とは、同一又は類似の商品である。
したがって、本件商標は、引用各商標と外観、称呼及び観念上類似の商標であり、かつ、引用各商標の指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するばかりでなく、商標法第8条第1項にも該当する(引用商標7が登録されれば、商標法第4条第1項第11号に該当することとなる。)にもかかわらず、これに違反して登録されたというべきものである。
被請求人は、そのライセンス事業に係る広告(甲第20号証)において、「アメリカ生まれのカジュアルブランド日本に上陸!」と大書し、その下に本件商標を構成する「USBEAR」の文字と同じ綴りの「USBEAR」の文字よりなる商標(甲第21号証)、本件商標と同じ綴りの「USBEAR」の文字を構成中に有する商標(甲第22号証)等を表示しているところである。
この広告は、「アメリカ生まれのカジュアルブランド」であることを強調しているもので、誰が見ても、甲第21号証及び甲第22号証等の構成中の「US」の文字部分が、「アメリカ」(アメリカ合衆国)を表す意図のもとに表示されたものであることを容易に看取させ、理解、認識させるというべきものである。
そうとすれば、「USBEAR」の文字を有する本件商標のみならず、「USBEAR」の文字よりなる商標(甲第21号証)、本件商標と同じような構成よりなる商標(甲第22号証及び甲第23号証)は、「アメリカ」(アメリカ合衆国)産の商品、「アメリカ」(アメリカ合衆国)でデザインされた商品又は「アメリカ」(アメリカ合衆国)の企業の取り扱いに係る商品であることを強調して表示する意図を持って採択し、使用されているといわざるを得ない。
また、本件商標と略同じ構成を有する商標(甲第24号証ないし甲第26号証)及び本件商標の構成中の「USBEAR」の文字と同じ綴りの「USBear」の文字よりなる商標(甲第27号証)も、上記の商標(甲第21号証ないし甲第23号証)及び本件商標と同様に、その構成中の「US」の文字部分が「アメリカ」(アメリカ合衆国)を表す意図のもとに表示されたものであることを容易に看取させ、理解、認識させるというべきものである。
そして、これらの商標は、いずれも請求人の「Bear」、「USA」の商標を付した商品がヒットし、日本において偽商品が氾濫したため、請求人が偽商品対策として日本への出荷停止措置を執ったことが新聞で報道(甲第28号証及び甲第29号証)され、偽商品についての警告広告(甲第10号証ないし甲第19号証、甲第30号証)が掲載された後に出願がされ、登録されたものである。
さらに、被請求人のこれらの商標の出願の経緯を見るに、当初「USBEAR」の文字よりなる商標(甲第21号証)を平成7年に出願し、次いで、黒塗りの熊の図形よりなる商標(甲第31号証)を平成9年に出願し、さらに、請求人の著名な登録商標と同様に、輪郭線で描いた熊の図形及びその輪郭線を延長した横長の輪郭線内に、「USBEAR」の文字を書した商標(甲第22号証)を平成13年に出願し、同じく、輪郭線で描いた熊の図形及びその輪郭線を延長した横長の輪郭線内に、「USBEAR」の文字を書した商標(甲第23号証)を平成13年に出願し、同じく、輪郭線で描いた熊の図形及びその輪郭線を延長した横長の輪郭線内に、「USBEAR」の文字を書し、その下に「USA」の文字を書した本件商標を平成14年に出願し、輪郭線で描いた熊の図形及びその輪郭線を延長した横長の輪郭線内に、「USBear」の文字を書した商標(甲第24号証)、輪郭線で描いた熊の図形及びその輪郭線を延長した横長の輪郭線内に、「USBear」の文字を書し、その横に「USA」の文字を書した商標(甲第25号証)、輪郭線で描いた熊の図形及びその輪郭線を延長した横長の輪郭線内に、「USBeaR」の文字を書した商標(甲第26号証)、「USBear」の文字を書した商標(甲第27号証)を平成15年に出願するというように、請求人の使用する著名な商標(甲第4号証ないし甲第7号証)、請求人の使用する商標(甲第8号証)及び商号に由来する商標「BEAR USA」(BEAR U.S.A)に段階的に似せた商標を出願し、登録を受けているというような経緯をたどっている。
これらの商標中、とりわけ本件商標及び甲第25号証の商標は、請求人の使用に係る著名な引用商標5及び引用商標7の商標(甲第6号証、甲第8号証ないし甲第19号証、甲第32号証ないし甲第39号証)(輪郭線で描いた熊の図形及びその輪郭線の延長した横長の輪郭線内に、「Bear」の文字を有する構成。)とは、輪郭線で描いた熊の図形及びその輪郭線を延長した輪郭内に、「BEAR」、「Bear」文字を含む文字を書してなる点及びその輪郭の外側の下又は横に「USA」の文字を書してなる点において、構成の軌を一にするものである。
また、被請求人の「USABEAR」と「アズエーベー」の文字よりなる商標(甲第40号証の1)中の「USABEAR」の文字は、請求人の商号の主要部である「BEAR USA」の文字の「BEAR」と「USA」の前後を入れ替えて表示したというべきものであって、かつ、そのライセンス契約においては、「アズエーベー」の片仮名文字を取り去って表示した態様で契約し、商標登録証(写)には片仮名文字を取り去った欧文字のみの商標を示す(甲第40号証の1ないし4)というように、請求人の著名な商標に似せてフリーライドしようとする商標の出願、使用をしているといわざるを得ない。
さらに、被請求人の輪郭線で描いた熊の図形及びその輪郭線を延長した横長の輪郭線内に、「USBeaR」の文字を書した商標(甲第26号証)は、その構成中の「USBeaR」の文字は、熊の図形との関係から、「アメリカ」を意味する「US」の文字と「熊」を意味する「BeaR」の文字とを結合したものと容易に認識され得るところ、「BeaR」の文字は、語頭の「B」と語尾の「R」とを大文字とし、中間の「ea」の文字を小文字とした極めて特異な構成となっているもので、請求人の「BeaR」の文字よりなる引用商標1をそっくり、そのままの構成、態様で取り込んだものであって、明らかに請求人の特異な構成、態様の登録商標のあることを知った上で、その構成、態様を模倣したといわざるを得ないものである。
被請求人が特異な構成よりなる請求人の引用商標1のあることを知っていたか否かについては、被請求人が引用商標1に対して、不使用取消審判(取消平10-30311号、取消平10-30312号)の請求をし、その審決の取消を求めた審決取消訴訟(平成11年(行ケ)361号、平成11年(行ケ)362号)を提起している事実があることから見ても、明らかに知っていたものといい得るところである。
以上述べたように、被請求人の上記一連の商標出願の経緯及びその使用の実情から見れば、明らかに請求人の著名な商標に化体されたグッドウィル(顧客吸引力)にフリーライドする意図を持って、被請求人は、商標を出願して、登録し、使用しているものと断ぜざるを得ないものであるから、本件商標も請求人の著名な商標に化体されたグッドウィル(顧客吸引力)にフリーライドする意図のもとに出願をして、登録をしたものといわざるを得ない。
このような事情をも考慮に入れて、市場において、取引者、需要者が彼此誤認し、混同を生じさせるおそれがある否か、市場において、取引者、需要者が彼此誤認し、混同を生じさせる手法をとっているか否か等の要素をも考慮して、類否判断がなされるべきものである。
そうしてみると、本件商標は、上述したとおり、請求人の引用各商標と類似するものであり、かつ、請求人の著名な商標に化体されたグッドウィル(顧客吸引力)にフリーライドする意図をもって、構成の軌を一にする商標を出願しているものであって、取引者、需要者が彼此誤認し、相紛れるおそれがあるから類似の商標というべきものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するにもかかわらず、これに違反して登録されたものというべきである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、「Bear U.S.A.,Inc.」の商号により、その商号に由来する黒の輪郭線で描いた熊の図形と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標を使用して、1994年より、アメリカ、日本においてジャケット、パーカ、靴等の製造、販売をしてきたところであり、その品質、デザインが若者を中心としたストリートファッションのアイテムとして大いにヒットし、これがアメリカの人気音楽番組「MTV」に取り上げられたことから、爆発的な人気を博したものである(甲第43号証及び甲第44号証)。
そして、その人気の余波は、日本、イギリスにもおよび当業者のみならず需要者間に広く知られるに至っているものである。
請求人の商号に由来する、黒の輪郭線で描いたという特徴のある熊の図形と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標を使用した商品が、人気を博すにつれ、その商品そのものが「THE SOURCE MAGAZINE」(ヒップホップミュージック誌)等の各種雑誌でも掲載され、あるいは、記事として取り上げられて、ますますその人気が高まってきたものである(甲第32号証ないし甲第35号証、甲第44号証ないし甲第50号証)。
請求人は、その商品を普及するために、当該商品パンフレットを作成してアメリカ国内はもとより、日本、イギリスの商社、バイヤー等を通じて広く配布するとともに、「VIBE」、「ASAYAN」、「繊研新聞」等の雑誌、新聞に積極的に広告をしてきたことから、請求人の商号に由来する、黒の輪郭線で描いた特徴のある熊の図形と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標は、本件商標の出願前には、取引者、需要者間に著名となっていたものである(甲第9号証及び甲第10号証、甲第32号証、甲第36号証及び甲第37号証、甲第43号証、甲第46号証、甲第51号証ないし甲第53号証)。
請求人の黒の輪郭線で描いた特徴のある熊の図形と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標を使用した商品は、あまりに人気を博したことから、我が国において大量の偽物が出回ったため、一時日本への出荷を停止せざるを得ない状況に追い込まれた(甲第28号証)。
そして、平成8年4月25日には、偽商品を販売していた業者が摘発されたという新聞記事が掲載されたものである(甲第29号証)。
このような状況を打開するため、請求人は、1996年4月以来、新聞、雑誌に偽商品についての警告の広告、あるいは、注意喚起の広告を何度も掲載してきた(甲第11号証ないし甲第18号証、甲第30号証)。
上述したとおり、請求人の黒の輪郭線で描いた特徴のある熊の図形と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標は、著名となり、それを取り上げた新聞、雑誌等の記事において、「ベアユーエスエー」あいは、単に「ベアー」として紹介されるほどになっている。
請求人は、我が国において大量の偽物が出回ったことから、それまで使用していた商標が希釈化されつつあったため、偽物対策をも含め、商標の構成をより特徴的なものにすべく、平成8年(1996年)より、黒の輪郭線をもって描かれた特徴のある熊の図形及びその輪郭線を延長した横長の輪郭線内に、「Bear」の文字を書し、輪郭線の外側に「USA」の文字を配した構成よりなる商標に変更し、以来、これを使用してきており、本件商標の出願前には、需要者、取引者間に著名となっている(甲第9号証ないし甲第19号証、甲第32号証ないし甲第37号証、甲第47号証ないし甲第53号証)。
そこで、本件商標を見るに、本件商標は、請求人の使用に係る引用各商標と称呼、観念上類似するものであり、引用商標5ないし引用商標7とは、黒の輪郭線をもって描かれたという特徴のある熊の図形及びその輪郭線を延長した横長の輪郭内に、「熊」を意味する「BEAR」、「Bear」の文字を有してなる点において、構成の軌を同じくするものであるから、取引者、需要者が、時と所を異にして、これに接するときは、彼此相紛らわしい外観上類似の商標というべきである。
とりわけ、引用商標5及び引用商標7(変更後の使用商標)とは、黒の輪郭線をもって描かれたという特徴のある熊の図形と「熊」を意味する英語「Bear」の文字及び「アメリカ」(アメリカ合衆国)を表示する「US」、「USA」の文字をその構成中に有するものであり、しかも、ともに熊の図形の輪郭線を延長させた輪郭の外側に「USA」の文字を配してなる点において、構成が極めて近似したものと認識されるから、取引者、需要者が、時と所を異にして、これに接するときは、彼此相紛れるおそれが極めて濃いといい得るほどに、外観上類似する商標というべきものである。
そして、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、同一又は類似の商品であり、その品質、用途、形状、販売店、需要者等を共通にするから、引用各商標と類似する本件商標をその指定商品について使用するときは、該商品があたかも請求人の業務に係る商品であるかのごとく誤認を生じさせるおそれがあるといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するにもかかわらず、これに違反して登録されたものというべきである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
被請求人である株式会社セント・ローランは、主として被服、靴等のファッションに関する商品のブランドライセンスを業としている会社であることから、日本を含む世界各国の著名ブランドに精通していると推測されるところであり、前述した請求人の著名商標も当然知っていたといい得るところである。
そして、その業務に係るブランドライセンスリストに掲載されている商標は、著名な商標をその一部に取り込み、著名な商標にフリーライドする目的と見られるような商標が多く掲載されている(甲第54号証ないし甲第63号証)。
被請求人のライセンス事業の実情及びそのライセンスに係る商標の登録の状況及びそれらの商標についての無効審判、取消審判、異議申立、訴訟事件における判断、判決から見れば、被請求人は、日常的に著名な商標にフリーライドするライセンス業をしているというのが相当である。
また、被請求人は、「USABEAR」と「アズエーベー」の文字を2行に横書きしてなる商標(甲第40号証の1)のライセンスにおいても、「アズエーベー」の文字部分を取り去って、「USABEAR」の文字部分についての使用許諾契約をし、かつ、これについての被許諾人に対する平成12年4月21日付けの見解書に添付した商標登録証(写)において、「アズエーベー」の文字部分を取り去った「USABEAR」の文字のみからなる商標を表示するというように、極めて欺瞞的なライセンス事業を展開しているものである(甲第40号証の1ないし4)。
この商標(甲第40号証の1)については、請求人が取消審判を請求した結果、取り消されているものである(甲第41号証及び甲第42号証)。
以上述べたように、請求人の商標が著名であり、本件商標は、これと類似の商標であること、被請求人の事業の内容から見て、請求人の商標が著名であることを知っていたといわざるを得ないこと、被請求人は、著名商標にフリーライドするライセンス事業を展開していたこと、被請求人は、請求人の著名商標と紛らわしい商標となるように、欺瞞的な商標をライセンスしていたこと等を総合勘案すれば、本件商標は、他人(請求人)の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標を不正の目的をもって使用する又は使用させるために出願をし、登録したものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するにもかかわらず、これに違反して登録されたというべきである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第51号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、熊の図形中に「USBEAR」の文字を一体化し、その外側に「USA」の文字を付した商標である。
請求人は、引用商標1ないし引用商標7の商標から、「ベアー」の称呼、「熊」、「アメリカの熊」の観念が生じるため、本件商標と類似の商標である旨主張している。
しかし、請求人が証拠として提出した引用商標1は、通常の表記ではないので、乙第1号証ないし乙第3号証(枝番号を含む。)の判決に示されるとおり、造語あるいは略称とみることも可能であり、「ベアー」の称呼、「熊」の観念が確定的に生じるというものではないと判断されている。
また、「bear」、あるいは、「ベアー」の文字をその構成の一部として使用したものについては、極めて多数の商標登録、商標登録出願がなされ、極めて多数の商標が実際に使用されていることから、「bear」、あるいは、「ベアー」の文字だけでは、乙第4号証の1及び2に示される判決において、自他商品の識別力がないと判断されている。
この判決において、注目すべき点は、以下の判断である。
(a)熊ないしベアーは、一般の日本人がよく知っている動物であり、「被服、履物」の分野において、このようなよく知られている動物である熊を意味する英語の「bear」、あるいは、単に片仮名表記したにすぎない「ベアー」の文字をその構成の一部として使用したものについて、極めて多数の商標登録、あるいは、商標登録出願がなされ、また、極めて多数の商標が実際に使用されている。
(b)「被服、履物」について、「ベアー」のみからなる標章は、商標登録及び取引の実情を考慮すれば、特別の事情のない限り、自他商品識別機能を有しない商標であるというべきである。
(c)「被服、履物」においては、日本人によく知られた動物の名前である「ベアー」又は「bear」の文字だけでなく、これに他の文字あるいは図形を結合させた標章とすることにより、初めて、自他商品を識別する機能を生じさせることが可能となる。
これらの判断によれば、請求人の有する引用商標1及び引用商標2は識別力が疑われるものである。
また、引用商標3ないし引用商標7も、図形を結合させることによって、初めて、自他商品を識別する機能を生じさせることが可能となるものであり、当然、図形も含めた一体の商標として、本件商標との類否等を検討すべきである。
ところで、本件商標と色彩は異なるものの、略同一の構成からなる熊の図形が、乙第5号証のとおり登録されている。
また、「USBEAR」の文字も、乙第6号証のとおり登録されている。
本件商標は、これらの商標を組み合わせ、若干の変更を加えた形で登録されているものであり、欧文字の位置や構成は、若干異なるものの、略同じような構成を有する商標も、乙第7号証ないし乙第11号証のとおり登録されている。
このように、同じような商標が数多く登録されている事実は、取りも直さず、本件商標が無効理由を有していないことを如実に表しているものである。
そうであれば、熊の図形や文字は、もともと乙第5号証及び乙第6号証として登録されていることから、構成要素としても非類似であるばかりか、全体の構図も異なることから、称呼、観念及び外観のいずれにおいても、何ら類似することのない別異の商標である。
被請求人は、乙第5号証の商標に乙第6号証の商標を結合し、さらに、それぞれをバランスよく結合することによって、乙第7号証、乙第8号証、乙第10号証及び乙第11号証の商標や本件商標を作成したものであり、請求人の商標に段階的に似せた商標を出願して、登録を受けているものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号や同第19号に該当するものではなく、同第15号の商品の出所について混同を生じるおそれもないものである。
上記乙第4号証の判決は、特許庁における「bear」、あるいは「ベアー」を構成要素とする多数の登録例を説明する上でも、極めて妥当な判断であり、本件商標と引用各商標の類否判断においても、当然斟酌されるべきである。
乙第4号証のような判断をすれば、「USBEAR」という一体の商標や「ベアー」又は「bear」の文字に、通常であれば、識別力が疑わしい文字を結合させた多数の商標が引用各商標と別異の商標として登録されている事実が明確に説明できる。
なお、請求人は、「アズエーベー」の文字を取り去った登録証を偽造している旨主張しているが、甲第40号証の4の見解書では、「アズエーベー」の文字が明示されており、見解書の作成者である被請求人の代理人は、何ら「アズエーベー」の文字を隠す意図は有していない。
「アズエーベー」の文字がないということについては、被請求人及び代理人は、関知しておらず、関知しているというのであれば、証拠を提出して、主張すべきである。
(2)ところで、請求人は、引用商標1ないし引用商標7は、著名な商標である旨主張しているが、この点についても、被請求人は、大いに疑問を有する。
すなわち、請求人は、著名な証拠として、甲第9号証及び甲第10号証、甲第32号証、甲第36号証及び甲第37号証、甲第43号証、甲第46号証、甲第51号証ないし甲第53号証を提出しているが、この程度の量で、著名であると判断することは、極めて危険である。
一般に、著名性を獲得していたことを立証するためには、極めて数多くの証拠が要求される。
ちなみに、被請求人の代理人は、著名性と関連する商標法第3条第2項の適用を受けるために、330もの証拠を提出したが、それでも認められていない乙第12号証の事例を担当している。
この中には、書体が異なるとの理由で採用されなかった証拠も存在するが、それらを除いても、270以上の証拠は、有効であるにもかかわらず、認められていない。
したがって、請求人の提出した証拠の量のみでは、著名性を獲得しているとは、到底認められないものである。
しかも、請求人の提出した証拠は、その使用態様が引用商標4であったり、引用商標5であったり、引用商標7であったり、単なる新聞記事等であったりというように、その使用態様がまちまちである。
さらに、証拠として提出している雑誌や新聞は、発行部数が不明な外国のものであったり、国内で一般によく出回っている雑誌でもない。また、新聞も業界の専門紙であって、一般の日刊紙でもない。したがって、発行部数もかなり少ないものと予想される。
このため、引用商標1ないし引用商標7は、著名な商標であるとは認められない。
(3)また、被請求人は、「USBEAR」からなる商標を、乙第6号証に示すとおり登録をしている。この「USBEAR」は、平成7年に出願をし、被請求人が使用している。
被請求人が使用している事実は、請求人により取消審判を請求され、使用している証拠を提出して、審決の取消を求めた乙第15号証の裁判より明らかである。
ところで、請求人は、引用商標の一部を「アメリカの熊」として、観念を共通にする旨主張している。
そうであれば、引用商標の一部は、「USBEAR」の商標権を侵害していることになる。
したがって、引用商標の一部については、商標法第4条第1項第15号を適用して保護すべきではない。
請求人は、「USBEAR」について、取消審判、裁判を行っているものであり、善意でないことは明らかである。
したがって、引用商標が仮に著名であったとしても、その一部の商標については、悪意の使用者である請求人を保護する合理的理由は全くなく、商標法第4条第1項第15号を適用すべきではない。
(4)さらに、請求人は、被請求人の行為を非難しているが、請求人自身は、第三者が請求人の使用前から使用して、著名となっている熊の図形を盗用しているものである。
すなわち、乙第17号証の熊の図形の外形を線とし、反転させると、乙第18号証のような形状となる。
この図形は、まさに請求人の熊の図形に瓜二つであり、明らかに、この図形を盗用しているものである。これを、例えば、請求人の引用商標のように「Bear」の文字と結合させれば、乙第19号証のような形態となる。
これは、請求人の引用商標4とほとんど同じといってもよい程酷似している。
乙第17号証の熊の図形は、長期間、世界中で愛用されている防寒ブーツに使用されているものであり、以前より数多くの需要者の目に触れているものと考えられる。
被請求人は、このような事実を示すために、乙第20号証ないし乙第23号証のホームページを証拠として提出する。
また、請求人は、ジャンパーの背中に大きく乙第24号証のような熊の図形を使用している。この商標は、乙第25号証の商標の熊の図形と非常に似ており、この熊の図形を盗用したとも考えられる。
このように、請求人自身、複数の熊の図形を盗用するような者であり、その行為は極めて悪質で、被請求人を非難する資格はないものと考える。
(5)ところで、商標法第4条第1項第15号にいうところの、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれの有無について、最高裁は下記のような判断基準を示している。
(イ)当該商標と他人の表示との類似性の程度
(ロ)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や
(ハ)当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情に照らし、
(ニ)当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものである(乙第26号証)。
この判断基準は、その後の下級裁判所の裁判にも踏襲されている。
そこで、この基準に照らして、本件商標が他人(請求人)の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるか否かを検討してみる。
まず、前記(イ)の類似性については、被請求人の有する乙第5号証ないし乙第11号証の登録例や乙第4号証の判決からみて、「ベアー」、「bear」の文字だけでは自他商品の識別力がなく、本件商標は、あくまで一連一体の商標としても既成の観念を生ずることなく、熊の図の印象も異なるものであることから、引用各商標とは類似性の程度が低いものと考えられる。
また、前記(ロ)の引用各商標の周知著名性については、前述(2)でも述べたように、疑問点が多く、認められないものと考える。
ところで、最高裁は判断基準の(ロ)においても「独創性」を挙げている。
そこで、引用各商標の独創性を考察してみるに、その文字部分は、一般の日本人がよく知っている動物で、しかも極めて多数の者が商標登録、商標出願並びに実際に使用しているため、既にその文字自体が識別力を失っている「Bear」の文字から成るにすぎないものであり、造語による商標と比べて著しく独創性が低いものである。
したがって、最高裁の判断基準(イ)及び(ロ)からすれば、本件商標を使用しても何ら混同を生ずるおそれはないものと考えられる。
次に、前記(ハ)の基準については、同じ指定商品であることから、これを満たすとしても、前記(ニ)の基準は、その注意力が著しく高くなっているものと考えられる。
本件商標や引用各商標の取引者、需要者は、乙第4号証の判決にも指摘されているように、極めて多数の商標登録、商標出願、実際の使用から、「ベアー」、「bear」の文字だけでなく、結合されている他の文字や図形を基に商品を区別する習慣が身に付いており、注意力が高くなっているものと考えられる。
ちなみに、被請求人が特許電子図書館において、特許庁における被服の類似群で「bear」、「ベアー」を検索すると、乙第27号証及び乙第28号証のような多数の検索結果が抽出された。
また、同じ類似群で「クマ」を検索しても、乙第29号証のような多数の検索結果が抽出された。
この中で、本件商標や引用各商標に印象が似た図形商標を乙第30号証ないし乙第51号証のとおり提出する。
特に、乙第47号証の熊の図は、引用商標3及び引用商標4の熊の図と極めて酷似しているにもかかわらず、文字の違いからなのか非類似として登録されている。
これは、特許庁においても、文字又は図形に、ある程度の相違があれば混同を生ずることなく、区別が可能であると認識して登録されていることに他ならないと考えられる。
実際の取引においても、このような数多くの登録例から、「ベアー」、「bear」及び熊の図に接したときの取引者及び需要者の注意力は著しく高まっているものと考えられる。
したがって、本件商標と引用各商標の文字や図形の相違があれば、何ら混同を生ずるようなことはないものである。
(6)以上述べたように、本件商標は、特許庁における登録例からしても無効理由を有するような商標ではない。
また、裁判所の判断からしても、請求人の主張には無理がある。
このように、請求人の主張は、特許庁や裁判所の判断とは相容れない独善的なものであり、何ら妥当性を有しない。
さらに、引用各商標の著名性の点にも疑いがあり、請求人自身の行為も非難されるべきである。

5 当審の判断
(1)引用商標7の著名性について
(ア)請求人の提出した各証拠によれば、以下の事実が認められる。
(a)雑誌「asayan」1996年1月号(甲第46号証)に、「ニューヨークで超話題のストリートブランド『Bear』のダウンジャケット」の記載とともに、「Bear」ブランド商品が掲載されており、別のページには、紙面の全面を使用した「Bear」ブランド商品の広告が掲載されている。
(b)雑誌「asayan」1996年2月号(甲第46号証)に、「N.Y.生まれの本格アウトドアブランド」として、「Bear」ブランドのダウンジャケットなどが掲載されており、別のページには、紙面の全面を使用した「Bear」ブランド商品の広告が掲載されている。
(c)雑誌「BOON」1996年2月号(甲第44号証)に、「N・Y・ブラック達は黒のダウンで完全武装!寒波到来とともに定番アイテムの流行が、日本襲来!!」「あまりの人気にメディアも混乱。ブームの秘密はMTVデビューにあり?」「・・・ノースフェイス、マーモットなどアウトドア系のビッグブランドと肩を並べるほど、広く認知されたのが、この『Bear』だ。・・・アメリカの人気音楽番組『MTV』でストリートファッションのマストアイテムとして取り上げられたのが大きな要因。」と記載されており、「Bear」ブランドのダウンジャケットが掲載されている。
(d)平成8年4月8日発行「繊研新聞」(甲第28号証)に、「ベアー・U・S・A社偽物排除へ強硬手段」「春夏物対日輸出を停止『今日本で売られているのは偽物』」「ベアー・U・S・Aは一昨年から販売して以来、米国や日本などで人気を集めているカジュアルウエア。」と記載されている。
(e)平成8年4月25日発行「繊研新聞」(甲第29号証)に、「偽ブランド品摘発/奈良県警」「・・・アメリカの『ベアー』など海外人気ブランド・・・」と記載されている。
(f)平成9年10月17日発行「繊研新聞」(甲第10号証)に、「この冬、Bearで差をつけろ!!」と記載された「Bear」ブランド商品の広告が紙面の全面を使用して掲載されている。
(g)平成9年10月22日発行「繊研新聞」(甲第50号証)に、他のメーカーの商品と並んで、「変わるヒップホップ系ブランド」「洗練され大人びたデザインに」「グラデーションを使った『ベアーUSA』のダウンジャケット」と記載し、「Bear」ブランドのダウンジャケットが掲載されている。
(h)平成8年4月11日、同11年9月27日、同年10月5日、同月13日、同12年9月25日及び同年10月23日発行の「繊研新聞」(甲第11号証ないし甲第15号証、甲第30号証)に、「Bear U.S.A.からの警告」「現在日本市場で売られているBear U.S.A.ロゴが付いている商品は全て偽物です。」等の警告の広告ともいえる広告が掲載されている。
(i)雑誌「street Jack」1998年11月号及び同年12月号並びに1999年1月号及び同年2月号(甲第16号証ないし甲第19号証)に、「ニセモノの商品が氾濫しております。」「ニセモノに注意せよ!」等と記載された「Bear」ブランドの商品の警告の広告が掲載されている。
以上の雑誌、新聞における報道記事、紹介記事、広告等には、商標として、引用商標4、引用商標7などが表示されているが、請求人が「Bear」ブランドとして、主に使用しているものは、引用商標7と認められる。
(イ)上記した事実によれば、平成8年の初めには、請求人が雑誌に広告を掲載していた「Bear」ブランドのダウンジャケットが、米国において人気音楽番組「MTV」で取り上げられて人気を得ているとして、我が国の雑誌、新聞において紹介されるとともに、同年4月には、ベアー・U・S・Aは、米国や日本で人気を集めているカジュアルウエアなどと新聞に記載されていたことが認められる。
また、時期を同じくして、既に同ブランドの偽物が出回り、同ブランドの商品の対日輸出が停止される旨が報じられており、請求人は、平成8年4月から同12年10月にかけて新聞、雑誌を通じて、同ブランドの「偽物が売られている」旨を記載した広告を10回にわたり行っている事実が認められる。
以上によれば、「Bear」ブランドとして、主に使用されている引用商標7は、本件商標の登録出願時ないし査定時には、ダウンジャケットなどのカジュアルウエアを表示する商標として、ファッション関連商品を取り扱う取引者、需要者の間に広く認識され、著名性を獲得していたものというべきであり、その状態は現在に至るまで継続しているものと認められる。
(2)本件商標と引用商標7の類似性について
本件商標と引用商標7とを対比すると、本件商標は、輪郭線で描いた頭部のみを右に向けた熊の図形及びその輪郭線を右側に延長した輪郭線内に、「USBEAR」の文字を表してなり、さらに、その輪郭線の下部の外側に「USA」の文字を配した構成よりなるものである。
これに対し、引用商標7は、左を向いた熊の図形及びその輪郭線を右側に延長した横長の輪郭線内に、「Bear」の文字を大きく表示し、さらに、その輪郭線の外の右側に、「USA」の文字を左に90度回転させて配した構成よりなるものである。
そして、両商標における熊の図形は、ともに、ほぼ輪郭線のみにより描かれているものである。
以上の両商標の構成よりすると、熊の図形の向きが異なり、また、その構成文字において、本件商標が、「US」の文字に連続して「BEAR」の文字を表示し、その下に「USA」の文字を分離し配しているのに対し、引用商標7は、「Bear」の文字の右側に「USA」の文字を分離して配した相違を有するものの、両商標は、熊の図形の描出方法(筆致)において相似た印象を与えるものであり、かつ、また、文字においては、「US」の文字があるか否か、及び「BEAR」の文字と「Bear」の文字とに相違があるとしても、熊の図形の輪郭線を右側に延長した横長の輪郭線内に、文字の一部を表示しているという点を共通にするから、両商標は、外観において相当程度近似している印象を与えるものというべきである。
次に、称呼及び観念についてみるに、本件商標中の「USBEAR」は、熊の図形との関係よりすると、「US」と「BEAR」の両文字よりなると容易に看取されるものである。
そして、「US」及び「USA」の文字が、「United States(of America)」(アメリカ合衆国)の略称であり、また、「BEAR」の文字が、「熊」を意味する英単語であることは、我が国において広く知られているといえるから、本件商標は、その構成文字の全体に相応して「ユーエスベアーユーエスエイ」、「ユーエスベアー」の各称呼及び「アメリカ(合衆国)の熊」の観念を生ずるものと認められる。
これに対し、引用商標7は、熊の図形と「Bear」及び「USA」の各文字からなるものであって、全体の印象を支配するのは、「熊(Bear)」ということができるから、「USAのBear」、すなわち、「アメリカ(合衆国)の熊」を表したものと認識されることも、決して少なくないというべきである。そうすると、引用商標7からは、「ベアー」及び「ベアーユーエスエイ」の各称呼のほか、「USAのBear」より派生する「ユーエスエイベアー」の称呼をも生ずるものといわなければならず、また観念については、「熊」の観念のほか、「アメリカ(合衆国)の熊」の観念をも生ずるものと認められる。
そうとすれば、本件商標より生ずる「ユーエスベアー」と、引用商標7より生ずる「ユーエスエイベアー」の両称呼を比較するときは、たとえ、中間において「エイ」の音の有無の差異を有するとしても、該差異音が称呼全体に与える影響は大きいともいえず、むしろ、上述のとおり、「US」が「United States(of America)」(アメリカ合衆国)、すなわち、「USA」の略称と認識される場合が少なくないこととも相まって、両称呼は、相紛れるおそれがあるものといえるばかりでなく、その観念においても、「アメリカ(合衆国)の熊」の観念を同一にするものである。
以上のとおり、両商標における外観、称呼及び観念を総合すれば、本件商標と引用商標7とは、彼此相紛れるおそれがある程度に近似しているものといわなければならない。
(3)してみれば、引用商標7の著名性が、前記(1)のとおり認められること、また、前記(2)のとおり、その類似性が相当に認められること、さらに、本件商標の指定商品には請求人の使用する商品が包含されており、それ以外の商品も、専らファッションに関連する商品であるということからすれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、これより容易に引用商標7を連想、想起し、該商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について誤認、混同を生ずるおそれがある商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲


別掲
(1)本件商標



(2)引用商標1



(3)引用商標2



(4)引用商標3



(5)引用商標4



(6)引用商標5



(7)引用商標6



(8)引用商標7

審理終結日 2006-04-21 
結審通知日 2006-04-27 
審決日 2006-05-11 
出願番号 商願2002-13399(T2002-13399) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y25)
最終処分 成立  
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 小川 有三
岩崎 良子
登録日 2003-02-21 
登録番号 商標登録第4646915号(T4646915) 
商標の称呼 ユウエスベアーユウエスエイ、ユウエスベアー、ウスベアー、ベアー 
代理人 黒瀬 雅志 
代理人 足立 勉 
代理人 塩谷 信 
代理人 小泉 勝義 
代理人 宮嶋 学 
代理人 宮城 和浩 
代理人 吉武 賢次 

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