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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y35
管理番号 1138015 
審判番号 無効2005-89096 
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-07-29 
確定日 2006-06-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4825891号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4825891号商標(以下「本件商標」という。)は、「オレンジドットコム」の文字を標準文字で表してなり、平成16年4月14日に登録出願、同年10月25日に登録査定、第35類「インターネットによる商品販売に関する情報の提供,インターネットによる通信販売の取次ぎ,インターネットによる通信販売の注文・受付・配送に関する事務処理代行,インターネットによる商品の販売促進に関する広告」を指定役務として、同年12月17日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第77号証を提出した。
(1)請求の理由
ア 請求の利益について
(ア)請求人の事業内容について
請求人は、ヨーロッパ及びヨーロッパ以外の国を含む16カ国で活動する、世界最大規模の移動通信事業を行う英国の法人である。請求人を含むオレンジグループは、世界中の約5200万人以上の顧客に対して、様々な音声及びデータ通信を提供している。オレンジグループは世界に約3万人の従業員を有している。また、オレンジグループの総売上高は2004年期で196.7億ユーロである(2005年7月27日現在の外国為替相場1ユーロ135.32円を基準にして、約2兆6617億円の総売上高となる。)。
上記内容が掲載されている、請求人ウエブサイト中の「会社概要」、「プレス情報」及び「オレンジ10周年」に係るウエブページ、並びに請求人の事業内容が紹介されている、同ウエブサイト中の「電話」、「オレンジと一緒の旅行」及び「私たちのネットワーク」に係るウエブページ、及びそれらの部分訳文を提出する(甲第2号証)。
なお、請求人は、何社かの日本企業と事業提携をしている。例えば、以下のような事業提携が挙げられる。
株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモとの国際アウトローミング契約により、同社の携帯電話ユーザーは、請求人のネットワークを使用して、海外において、コストの高い国際回線を使って日本のプロバイダーに接続することなく、携帯電話・インターネット等を使用できる。インターネットアドレスhttp://www.nttdocomo.co.jp/customer/article/に、同社のmovaサービスに係る約款の一部改正に関する内容が掲載されている、2004年4月25日付け契約約款の一部改正中に、国際アウトローミングに係る外国の電気通信事業者として請求人が掲載されている(甲第3号証)。
また、請求人は、音楽情報提供で知られている、オリコン株式会社と事業提携し、洋楽の携帯電話の着信メロディーを提供するサービスを提供している。
当該情報が掲載されているセンチュリー証券のメールマガジン「センチュリー証券ザラ場情報」を提出する(甲第4号証)。
(イ)請求人のホームページについて
(a)請求人のドメイン名「orange.com」登録情報について
請求人は、ドメイン名「orange.com」の登録者であり、インターネットアドレスhttp://www.orange.comにてホームページを開設している。
ここに、請求人が「orange.com」を有していることを示す、世界的に有名なメインネームレジストラであるネットワークソリューションのウエブサイト上でのフーイズ情報及びその部分訳文を提出する(甲第5号証)。
前記フーイズ情報では、ドメイン名「orange.com」の登録者として、請求人が掲載されている。そして、同ドメイン名は1993年12月9日に登録され、その消滅期限は2008年12月8日となっている。
また、「orange.com」は使用中と掲載されている。なお、同フーイズ情報では、登録者住所中「BS32」(ビーエス32)と、一方、請求人住所は「BS12」(ビーエス12)となっているが、請求人と前記フーイズ情報の登録者とは同一法人に相違ない。
(b)請求人のドメイン名「orange.com」に係るウエブサイトについて
請求人は、前記ドメイン名「orange.com」に係るホームページを開設して、ウエブサイトを運営している(甲第6号証)。
前記請求人のホームページには、例えば、アドレスバーに「orange.com」(甲第7号証)と入力し、検索ボタンをクリックする、又はEnterキーを叩くことにより、訪問することができる。
そして、インターネットブラウザ上のアドレスバーに「http://www.orange.com/english//default.asp?bhcp=1」のインターネットアドレスが表示されるが、これは請求人ホームページの英語版のトップページを示すものである。そして、そのウエブページを印刷すると、その左上に「Orange.com-home page」の文字が表われる(甲第8号証)。
(ウ)トップレベルドメイン「.com」の性質及び著名性について
(a)トップレベルドメイン「.com」の性質について
「.com」は、「gTLD」(「Generic Top Level Domain」の略称で、日本語では「分野別トップレベルドメイン」又は「一般トップレベルドメイン」と言われている)の一種で、「gTLD」としては、他に「.net」及び「.org」等がある。
「gTLD」は、特定の領域・分野ごとに割り当てられたトップレベルドメインで、一般的に地理的制限なく世界のどこからでも登録することが可能である(甲第9号証)。なお、社団法人ネットワークインフォメーションセンター(以下「JPNIC」という。)は、インターネットの円滑な運営を支えるための組織で、国際的に運用・管理される必要のあるIPアドレス等のネットワーク資源を扱う国内唯一の組織であり、また、インターネットにかかわる各種の調査・研究や教育・啓発活動等を行っている(甲第10号証)。
また、ドメイン名レジストラとして有名なグローバルメディアオンライン株式会社のドメイン名登録及び運用用ウエブサイト「お名前.com」に、「gTLD」の説明として、「一般トップレベルドメイン。全世界に登録が開放されている『.com』『.net』『.org』」と掲載されている(甲第11号証)。
JPNICのウエブページに記載されている内容によると、トップレベルドメイン「.com」は、もともと商業組織用を用途とするものであり(甲第12号証)、登録が禁止されているドメイン名を除いて、先に登録されている同一のドメイン名が存在しない限り、原則として、全世界にて登録可能なものである。したがって、請求人がドメイン名「orange.com」を所有することは適法な行為である。
(b)トップレベルドメイン「.com」の登録状況及び使用状況について
JPNICがウエブページ上に掲載している「gTLDの登録数」によると、2004年12月時点で、トップレベルドメイン「.com」は、全世界で約3382万件登録されている(甲第13号証)。
同「gTLDの登録数」の資料によると、以下、登録数順に、「.net」が約542万件、「.org」が約339万件及び「.info」が335万件となっており(甲第13号証)、「.com」の登録数は際立っており、2番目に多い「.net」の登録数の6倍以上という登録状況である。
なお、JPNICから2002年に日本語ドメイン名(以下、「JPドメイン名」ともいう。)登録管理業務が移管された株式会社日本レジストリサービス(以下「JPRS」という)(甲第14号証)が提供する統計資料によると、「.jp」及び「.co.jp」等、トップレベルに「jp」を含むJPドメイン名の登録数は、2005年5月1日現在、登録数が多い順に、「.jp」(英数字及び日本語の両方を含む。)が約27.6万件、「.co.jp」が約27.2万件、「.or.jp」が約2万件となっており、JPドメイン名全体としても登録数は約69.5万件に過ぎない(甲第15号証)。
この統計から、トップレベルドメイン「.com」の約3382万件という登録数は、日本人にとって馴染みのある「.jp」を含む日本語ドメイン名の登録総数の約50倍の数であり、その数は際立っている。
一般に、トップレベルドメイン「.com」については、英和辞典に掲載されている単語又は会社名(会社名の略称を含む。)等に係るドメイン名をインターネットブラウザのアドレスバーに入力してアクセスすると、何かしらのホームページが開設されているものであり、また、そのドメイン名が販売の対象になっていることもある。
例えば、「新英和中辞典」(第7版、研究社発行)は、総収録語数は約10万語であり(甲第16号証)、まず、その収録語数は、トップレベルドメイン「.com」の約3382万件という登録数は、遠く及ばない語数である。
そして、同「新英和中辞典」のアルファベット順「a」のページから順に、「a」及び略称を飛ばして英単語「aardvark」(「ツチブタ」の意味。)及び「aardwolf」(「ツチオオカミ」の意味。)について(甲第17号証)、それぞれ「aardvark.com」及び「aardwolf.com」を訪問したところ、「aardvark.com」はホームページが開設されており(甲第18号証)、また、「aardwolf.com」については「Aardwolf.com is for sale!$6,300.00」(Aardwolf.comは6,300.00ドルで販売中です)と掲載され、販売の対象になっていた(甲第19号証)。ちなみに、「aardwolf.com」について、前記フーイズ情報で同ドメイン名を検索したところ、同ドメイン名は登録されており、「Domain expires on 25-Nov-2006」(ドメインは2006年11月25日に消滅する)と掲載されている(甲第20号証)。このように、「aardvark」及び「aardwolf」のような、一見、日常的にあまり使用されない英単語でさえも、「.com」ドメイン名が登録されているという状況が窺える。
また、食べ物を例に、ドメイン名「banana.com」(バナナ)、「melon.com」(メロン)及び「cucumber.com」(きゅうり)のホームページを訪問したところ、それぞれホームページが開設されていた(甲第21号証ないし甲第23号証)。
更に、請求人と同じく英国を本拠とする企業であるボーダーフオン、英国航空及び英国放送(世界的に「bbc」として知られている。)に関連して、「vodafone.com」、「britishairways.com」及び「bbc.com」のホームページを訪問したところ、「vodafone.com」及び「britishairways.com」についてはホームページが開設されており、また、「bbc.com」については同社のホームページである「http://www.bbc.co.uk」にリンクしていた(甲第24号証ないし甲第26号証)。
このように、「.com」をトップレベルとするドメイン名の登録数及び使用状況を考慮すると、「.com」は、世界において非常に著名なトップレベルドメインであるということが窺える。
(c)トップレベルドメイン「.com」の日本における使用状況及び著名性について
「.com」は、日本においてもまた、著名なトップレベルドメインとして認識されている。「.com」はもともと商業組織用を用途とするものであり(甲第12号証)、需要者は、様々な企業のサイトにアクセスして、商品情報やサービス情報等を閲覧又は入手する。
今日、多くの日本企業がホームページを開設しているが、自社名と「.com」からなるドメイン名を使用してウエブサイトを運営している企業も、数多く存在する。
例えば、ドメイン名「ntt.com」(エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社)、「jal.com」(日本航空株式会社)、「mitsubishi.com」(三菱グループ)、「softbank.com」(ソフトバンク株式会社)、「toyota.com」(トヨタ自動車株式会社)及び「sony.com」(ソニー株式会社)を訪問したところ、それら企業自体又はそれら企業の関連会社若しくは企業グループに関するホームページが開設されている(甲第27号証ないし甲第32号証)。具体的には、「ntt.com」及び「jal.com」は日本語ホームページが開設され(甲第27号証及び甲第28証)、「mitsubishi.com」(甲第29号証)は三菱グループのホームページとして開設され、「softbank.com」、「toyota.com」及び「sony.com」(甲第30号証ないし甲第32号証)は海外の現地関連会社のホームページが開設されている。
また、「IT用語辞典 e-Words」のウエブページには、「ドットコム【.com】」について、「インターネット関連のビジネスを手がけるベンチャー企業の総称。『ドットコム企業』とも呼ばれる。インターネット上の住所にあたるドメイン名の末尾に、商用を意味する『.com』を冠したものを好んで使い、それをそのまま社名にする企業が多いことから、こう呼ばれるようになった。」及び「インターネットビジネス全般に対する総称的な用語として『ドットコム』という言葉が用いられることもあり」と説明されている(甲第33号証)。
そして、請求人は、上記用語説明中の「インターネット上の住所にあたるドメイン名の末尾に、商用を意味する『.com』を冠したものを好んで使い、それをそのまま社名にする」という文言に着目して、「YAHOO!JAPAN」のインターネット検索エンジンにて、「会社名」及び「ドットコム」をキーワードとして検索し、その検索の結果表示されたウエブページ中の1ページ目で(甲第34号証)、「ドットコム」の文字を含む企業として掲載されている「株式会社カナザワクラブドットコム」、「オフィネツト・ドットコム」及び「株式会社セールスフォース・ドットコム」について、インターネットブラウザ上のアドレスバーに、それぞれ、「kanazawaclub.com」、「offinet.com」及び「salesforce.com」を入力してアクセスを試みたところ、何れのドメイン名についても、ホームページが開設されていた(甲第35号証ないし甲第37号証)。なお、「salesforce.com」は、英語で記載されたホームページが開いた。
以上のような使用状況等から、日本において、現在、企業を主に「.com」を含むドメイン名が多数登録及び使用されている、及び「.com」を含むドメイン名がそのまま社名にされることが多くなっている、又は「ドットコム」(若しくは「.com」)を含む社名がそのままドメイン名として使用されている、という事実が認められ、明らかにトップレベルドメイン「.com」は需要者の間で広く知られ、著名になっていると思料される。
そして、需要者は、少なくとも、「ドットコム」又は「.com」を含む社名の企業は、一般に、その社名と「.com」からなるドメイン名を取得し、そのドメイン名のもとで、ホームページを開設していると認識するようになっている。また、「ドットコム」又は「.com」を含む社名の企業も、一般には、需要者が、その社名とトップレベルドメイン「.com」とからなるドメイン名を、インターネットブラウザのアドレスバーに入力してアクセスすると、当該企業又は当該企業の関連会社のホームページを訪問できるよう設定しているものであり、このことはまた、需要者も同様に認識しているものである。
日本語ドメイン名対応指定業者を日本語ドメイン名の登録数順で掲載しているJPRSのウエブページ上で(甲第38号証)、日本語ドメイン名の登録数第1位のグローバルメディアオンライン株式会社のドメイン名登録及び運用用ウエブサイト「お名前.com」にて、「.com」について、「最も認知度が高いスタンダードドメイン」、「もうすっかりおなじみになったドメイン『.com/.net/.org』を紹介します。」、「歴史があるから認知度No.1」及び「ここ最近、TVや新聞で『×××.com』という言葉を良くみかけるようになったと思いませんか?インターネットの急速な普及により、全世界でインターネット上の住所である『×××.com』が注目されています。」と掲載されており(甲第39号証)、このような記述内容から、「.com」は、需要者にとって、広く知られた著名なトップレベルドメインであることが窺える。
以上述べたことから、日本において、「.com」は、トップレベルドメインとして広く認識及び使用され、著名になっている。そして、需要者は、「ドットコム」の音及び文字から、当然のように「.com」を認識するに至っている。
(エ)トップレベルドメン「.com」の識別力について
「.com」は、広く使用され著名になり、ドメイン名を表示するものとして極めてありふれた、通常使用される文字になっている。そして、このようなトップレベルドメイン「.com」又はそのカタカナ文字「ドットコム」は、特許庁及び裁判所にて、商標としての識別力を有しないものと判断されている。
例えば、特許庁にては、トップレベルドメイン「.com」をカタカナ文字で表わした商標「ドットコム」(図形との結合商標を含む)について、商標法第3条第1項各号に該当する、又は他の条項と共に当該条項に該当すると判断され、何れの商標についても、拒絶査定の判断を下している。このことから、特許庁は、カタカナ文字「ドットコム」には識別力がないと判断している事実が、明らかに認識できるものである。
その証左として、商標「ドットコム」(図形との結合商標を含む)について拒絶査定の判断が下されたことが示されている(甲第40号証ないし甲第42号証)。
また、ある英単語を標章とする商標が出願及び登録され、それより後に、当該英単語のカタカナ文字とカタカナ文字「ドットコム」とからなる商標が出願された場合における、特許庁の審査例1及び2がある(甲第43号証ないし甲第46号証))。
上記審査例は、欧文字「FAMILY」及び「NAVI」の商標が登録され、それより後に出願された、「ファミリードットコム」及び「ナビドットコム」の何れもが、商標法第4条第1項第11号、又は他の条項と共に当該条項に該当することを理由として拒絶査定となっている。
「.com」の著名性及び使用方法、前記3件の拒絶査定の例、並びに商標法第4条第1項第11号に基づく拒絶理由を鑑みた場合、前記商標「ファミリードットコム」及び「ナビドットコム」のうちの、「ドットコム」の文字は識別力を有しない又は非常に弱いものと判断され、「FAMILY」及び「NAVI」の先行登録商標の存在を理由に、拒絶査定となったものと思料できる。
ちなみに、請求人は、欧文字「orange」を含む図形との結合からなる商標の出願人でもある(商願2001-74479)(甲第47号証)。
更に、トップレベルドメインには、「.com」及び「.net」等の「gTLD」と、「.jp」(日本)等の国を示すトップレベルドメイン「ccTLD」(甲第11号証及び甲第12号証)とがあるが、例えば、日本を表わすccTLD「jp」を含むドメイン名について、以下のような裁判所の判決内容がある。
(a)H14.10.17 東京高裁平成14(ネ)3024(甲第48号証)
「トップレベルドメイン名『jp』や,第2レベルドメイン名『co』,『ne』が付されたドメイン名は極めてありふれたものであり,それらを含むドメイン名は多数あるから,ドメイン名の構造についての知識がない者はもちろん,知識がある者であっても,特に着目し,注意を払うものではないと考えられる。」「結局,インターネット上においてもインターネット外においても,人がドメイン名を認識する場合,国別や組織別を除いた,いわば固有名詞ともいえる第3レベルドメインが,主として注目されるものと認められる。」
(b)H16.4.20 大阪地裁平成14(ワ)13569(甲第49号証)
「『.jp』の部分は、トップレベルドメインを示すために通常使用される文字であるから、識別力を有しない。」
上記判決内容は、ccTLD「jp」をトップレベルドメインとする「.jp」、「.co.jp」及び「.ne.jp」等に関するもので、それらのトップレベル及び第2レベルドメイン名には、識別力が認められない旨が述べられているものであるが、このことは、日本を含め、世界的に著名なトップレベルドメイン「.com」についても、同様に言えるものと解される。
以上の特許庁審査例及び裁判所判決内容から、トップレベルドメイン「.com」及びそのカタカナ文字「ドットコム」は識別力を有しない文字であるということは明らかであり、これらの事実から、「.com」又は「ドットコム」が、需要者の間で広く知られ、極めてありふれた、通常使用される文字であると認識されているということが窺えるものである。
(オ)請求人の利害関係の有無について
請求人は、ドメイン名「orange.com」の登録者であり、同ドメイン名に係るホームページを開設している。「.com」は、日本において、トップレベルドメインを表示するものとして広く認識され、著名であり、需要者は、通常、「orange.com」を、日本語にて、カタカナ文字「オレンジドットコム」と称呼及び表記する。
一方、本件商標は、カタカナ文字にて書された「オレンジドットコム」である。そして、本件商標を欧文字で表した「orange.com」に係るドメイン名にアクセスすると、請求人のホームページを訪問することになる。
したがって、請求人は、本件商標の登録無効請求について利害関係を有する。
イ 無効理由について
(ア)本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
本件商標は、請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標である。
インターネットが普及している今日、「ドットコム」の語は、ドメイン名末尾のトップレベルドメイン「.com」を表示するものとして、需要者の間で広く認識され、著名になっている。
そして、このことを理由に、本件商標に接する需要者は、当然に、欧文字「.com」のドメイン名と関連付けて、「orange.com」と連想する。すなわち、本件商標について、需要者は「orange.com」と認識する。
需要者が、インターネットを利用して、本件商標に係るホームページにアクセスする場合に、インターネットブラウザ上のアドレスバーに、「orange.com」又は「www.orange.com」と入力する。そうすると、需要者は、請求人のホームページを訪問することになる。
今日、日本企業でも、英語で記載された自社ホームページ又は関連会社のホームページを開設することも多く(甲第30号証ないし甲第32号証)、需要者が、請求人の英語版ホームページを訪問したとしても、ホームページが英語で記載されていることを理由に又は日本語で記載されていないことを理由に、日本企業又はその関連企業のホームページでないと即座に認識するものではない。
なお、請求人は、インターネットブラウザのアドレスバーにて、「オレンジドットコム」と同じ音が生じる「orenji.com」を入力してアクセスしてみたところ、「orenji.com」に係るホームページが開設されており(甲第50号証)、そのホームページの右側中ほどの「ORANGE CREATIVE AGENCY」の画像をクリックしたところ、電子メール送信用画面にリンクした(甲第51号証)。しかし、前記フーイズ情報で調べたところ、同ドメイン名の登録者は、「CA」(カナダ)の「Terry Low」(テリー・ロー)となっており、被請求人とは明らかに相違する(甲第52号証)。
加えて、需要者がポータルサイト等の検索エンジンを用いて「orange.com」に係るウエブサイトにアクセスすることも考えられるため、「YAHOO!JAPAN」インターネット検索エンジンにて、「orange.com」を検索したところ、3406件ヒットし、その最初の3ページを見たところ、全ての記事が請求人のインターネットアドレス「www.orange.com」に係るものであった(甲第53号証)。
また、請求人は、同「YAHOO!JAPAN」のインターネット検索エンジンにて、本件商標「オレンジドットコム」を検索したところ、29件ヒットし、そこにリストされたインターネットアドレスを確認したが、カタカナ文字「オレンジドットコム」から連想されるドメイン名はなかった(甲第54号証)。
上記(ウ)(c)で述べたように、今日、需要者は、「ドットコム」又は「.com」を含む社名がそのままインターネットアドレスとされることが一般的になってきていると認識しており、以上に述べた諸々の事実を鑑みると、本件商標に接する需要者が、請求人のホームページを、本件商標の商標権者のホームページと混同するおそれは否めない。
ちなみに、現在、一定のシステム要件のもとで、日本語と「.com」を組み合わせた「日本語.com」のドメイン名に係るホームページにアクセスすることが可能であるが、インターネットブラウザ上のアドレスバーに「オレンジ.com」及び「おれんじ.com」を入力してホームページを訪問してみたところ、Googleのウエブページに飛び、該当するウエブサイトが見つからなかったことを示すメッセージが表示された(甲第55号証及び甲第56号証)。
(イ)まとめ
以上を総合的に鑑みると、需要者が、本件商標からドメイン名「orange.com」を連想して、「orange.com」に係るインターネットホームページにアクセスし、その結果、請求人の業務に係るホームページを訪問することになることは容易に想定し得るものである。
その結果、需要者は、本件商標の商標権者に係る商品又は役務を、請求人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある。
また、前記「orenji.com」、「オレンジ.com」及び「おれんじ.com」のホームページを訪問してみた結果、並びに「orange.com」及び「オレンジドットコム」の検索エンジンによる検索結果からしても、本件商標の商標権者に係るホームページと明白に認識できるホームページは存在していない。したがって、需要者が、本件商標から「orange.com」を連想し、請求人のホームページを本件商標の商標権者に係るホームページと誤認するおそれがある。
更に、「混同するおそれ」は、請求人の業務に係る商品又は役務であるとの誤認だけではなく、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれも含むものであるが、本件商標の商標権者は、経済的又は組織的に、請求人とは何ら関係していないので、誤認を生じるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、無効にされるべきものである。
(2)弁駁
ア 答弁の(2)アに対する反論
「請求人の事業内容」は、請求人はどのような事業を行っているかを説明するため、及び、請求人の商品又は役務と被請求人の商品又は役務について、混同を生じるおそれがあることを述べるために記したものである。このことは、被請求人が請求人の事業内容を知っているか否か、又は、我が国の需要者が請求人の事業内容を知っているか否かを問題とするものではない。
イ 答弁の(2)イに対する反論
審査例1について、確かに、拒絶理由に引用された登録商標は、登録第4243692号、同登録第4263713号及び同登録第4400407号である。しかし、それら3件の登録商標は、何れも、「ファミリー/FAMILY」の商標である。そして、登録第4404054号に係る「FAMILY」の商標と、上記3件の登録商標とは、同一若しくは類似の称呼、同一若しくは類似の観念又は類似の外観であるという点において同様の商標であり、請求人の主張したところ(「ファミリードットコム」の商標が先行登録商標「FAMILY」の存在を理由に拒絶査定となった旨を述べたこと)の本質と相違しない。
次に、審査例2について、確かに、商願2000-135408は、先行登録商標の存在のみを理由として拒絶査定となったものではない。しかし、商標「ナビドットコム」について、登録商標「NAVI」との関係において商標法第4条第1項第11号に該当するとして、同登録商標が引用されたことは事実である(甲第60号証)。
なお、上記審査例1も鑑みると、たとえ、商標法第3条第1項第6号の拒絶理由が解消されたとしても、先行登録商標「NAVI」の存在により、商願2000-135408は拒絶査定となる蓋然性は高かったものと考えられる。
ウ 答弁の(2)ウに対する反論
請求人は、商願2001-74479の存在又はその登録を条件として、本件審判を請求したものではない。このことは、審判請求書にて一切触れていないことからも明らかである。
エ 答弁の(2)エに対する反論
確かに、「司法は具体的事実に法を適用する判断」であるが、トップレベルドメイン「.com」は、トップレベルドメイン「.jp」、第2レベルドメイン「co」、「ne」などと同様又はそれ以上に、需要者の間で広く知られ、極めてありふれた、通常使用される文字であることに相違はない。したがって、「.jp」、「co」及び「ne」に関する裁判所の判断が、「.com」においても妥当するものと思料する。
オ 答弁の(2)オに対する反論
(ア)(a)「.com」を含むドメイン名がそのまま社名にされることが多くなっている、又は「ドットコム」(若しくは「.com」)を含む社名がそのままドメイン名として使用されている、という事実が認められ、明らかに「.com」は需要者の間で周知又は著名になっている。また、(b)需要者は、少なくとも、「ドットコム」又は「.com」を含む社名の企業は、一般に、その社名と「.com」からなるドメイン名を取得し、そのドメイン名のもとで、ホームページを開設していると認識するようになっている。
被請求人は、上記(a)及び(b)について、何ら述べていないため、これらについて認めているものと思料する。
また、需要者は、容易に又は当然に、「.com」から「ドットコム」を、及び、「ドットコム」から「.com」を、連想するものと考えられる。
ちなみに、カタカナ文字「ドットコム」(又は「ドット コム」)を含む商標であり、その商標に係る文字が会社名(商標権者でもある。)でもある(株式会社及びインコーポレイテッドの部分を除いたもの)、以下の商標が特許庁にて登録されている(甲第61号証ないし甲第63号証)。
・ 「アマゾン ドット コム」(登録第4229553号)
・ 「ウエッブキャッシング・ドットコム」(登録第4514152号)
・ 「salesforce.com/セールスフォースドットコム」(第4536229号)
そして、上記3つの登録商標について、何れも、そのカタカナ文字の英語表記でのホームページが開設されている(甲第64号証、甲第65号証及び甲第37号証)。
このような事実からも、需要者は、「ドットコム」の文字を含む商標であり、その商標が会社名である場合において、そのドメイン名に係るホームページを開設していると、一般に考えていることが窺える。
加えて、「ドットコム」は、もともとトップレベルドメイン「.com」をカタカナ文字表記としたものに過ぎない。また、ドメイン名は、通常、欧文字で表記されるものであり、例えば、「.com」及び「.jp」については第2レベルドメインにて(「.co.jp」にては第3レベルドメインにて)日本語が使用できる場合もあるが、トップレベルドメインは必ず欧文字表記による。
以上述べたことからも明らかなとおり、需要者は、本件商標から、容易に又は当然に「orange.com」を連想する。また、本件商標に係る指定役務には、全て「インターネットによる」という表示がある(甲第1号証)。その表示は、インターネットを介して役務を提供することを意図しているものである。したがって、本件商標は、その商取引において、ドメイン名「orange.com」と明らかに関係がある。
そして、本件商標が著名なトップレベルドメイン「.com」のカタカナ表記を含む「オレンジドットコム」であること、及び本件商標は被請求人の名称でもあることを鑑みると、需要者が、本件商標から、容易に又は当然に「orange.com」と連想して、アドレスバー又は検索エンジンからアクセスすることは十分考えられる。
そして、アドレスバー又は検索エンジンにて、需要者が「orange.com」と入力して、請求人に係るホームページを訪問し、請求人のホームページ又はウエブページにて掲載されている商品又は役務について、被請求人に係る役務と混同するおそれがある。
なお、検索エンジンにて何かしらの文字を検索する場合、需要者又はインターネットユーザは、そのヒットした記事から自己の所望の該当記事又はウエブページを探さなければならないという面倒な作業が生じる。しかしながら、予めドメイン名を認識できる場合には、需要者又はインターネットユーザは、アドレスバー又は検索エンジンにてそのままドメイン名を入力すると、所望のホームページ又はウエブページを1回で開くことができることが多々あることを知っている。
需要者又はインターネットユーザが、ドメイン名として、「orange.com」の文字をアドレスバー又は検索エンジンにて入力することは、当然に考えられる。
日本企業又はその関連会社が英語のホームページを開設することもあることなども鑑みると、需要者が、請求人に係る「orange.com」のホームページを訪問したとしても、そのホームページに誤って訪問したと考えることは多くはないものと考えられ、逆に、この項にて述べたことを総合的に鑑みると、本件商標から、需要者は容易に又は当然に「orange.com」を連想し、誤りと考えないことの方が多いと考えられる。
加えて、その訪問したホームページが英語のものであっても、需要者は、それを理由に、そのホームページについて、被請求人に係るものではないと認識するものではない。
(イ)また、「すべて同一の標準文字で一連に表示されたカタカナ文字であって、これをあえて欧文字に置き換えてアクセスすることはない。」との答弁について、根拠となる証拠を提出していないので、請求人は、その理由について、合理的に理解することができない。
むしろ、「すべて同一の標準文字で一連に表示されたカタカナ文字」であっても、カタカナ文字「ドットコム」はもともとトップレベルドメイン「.com」に由来し、需要者は容易に又は当然に「.com」と連想するものであり、アドレスバー又は検索エンジンに、「orange.com」と入力してホームページを訪問することは十分に考えられる。
予めドメイン名を認識できる場合には、需要者又はインターネットユーザは、アドレスバー又は検索エンジンにてそのままドメイン名を入力すると、所望のホームページ又はウエブページを1回で開くことができることが多々あることを知っている。需要者又はインターネットユーザが、ドメイン名として、「orange.com」の文字をアドレスバー又は検索エンジンにて入力することは、当然に考えられる。
需要者は、「ドットコム」又は「.com」を含む社名の企業は、一般に、その社名と「.com」からなるドメイン名を取得し、そのドメイン名のもとで、ホームページを開設していると認識するようになっており、アドレスバー又は検索エンジンにて「orange.com」と入力して、請求人のホームページを訪問することは、十分に考えられる。このことは、オ(ア)に挙げた例からも明らかである。
しかも、ドメイン名は、一般に欧文字表記によるものであり、需要者又はインターネットユーザは、「オレンジドットコム」の称呼から、容易に又は当然に、欧文字「orange.com」を連想する。少なくとも、「あえて欧文字に置き換えてアクセスすることはない」と断言できるものではない。
加えて、被請求人は、「本件商標は、すべて同一の標準文字で一連に表示されたカタカナ文字」である旨を述べているが、すべて同一の標準文字で一連に表示されたカタカナ文字態様であるからこそ、需要者は、容易に又は当然に、「orange.com」を連想するものである。
(ウ)更に、需要者は、トップレベルドメイン「.com」のカタカナ文字「ドットコム」を含む「オレンジドットコム」の商標について容易に又は当然に「orange.com」を連想し、該カタカナ文字の英語表記に係る「orange.com」のホームページを訪問した場合に、需要者が、被請求人の商品又は役務について、請求人のホームページ又はウエブページに掲載されている請求人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある。
また、需要者は、本件商標から、容易に又は当然に、「orange.com」を連想するものであり、需要者が、「orange.com」のホームページ又はウエブページに掲載されている請求人に係る商品又は役務について、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者がその商品又は役務の出所について混同を生じるおそれがある。
以上により、請求人は、本件商標の存在によって直接不利益を被る関係にあるから、本件審判を請求することにつき、利害関係を有する者に該当する。
カ 答弁の(3)アに対する反論
請求人は、「インターネットを利用してアクセスする場合には、検索エンジンに入力してする」こともあることを否定しないが、上記オ(ア)及び(イ) により、「商取引とは関係のないドメイン名からホームページにアクセスすることはない」と断言できるものではない。
そして、需要者が、請求人に係るホームページを訪問して、そのホームページ又はウエブページにて掲載されている商品又は役務について、被請求人に係る商品又は役務と混同するおそれがある。しかも、本件商標に係る指定役務には、全て「インターネットによる」という表示がある。その表示は、インターネットを介して役務を提供することを意図しているものである。
需要者は、本件商標について、被請求人の商品又は役務について、請求人のホームページ又はウエブページに掲載されている請求人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある。
しかも、その「混同するおそれ」は、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれも含むものである。
本件商標は請求人の会社名を含むものでもあり、需要者が「オレンジドットコム」から、容易に又は当然に「orange.com」と連想するものと考えられ、需要者が、「orange.com」のホームページ又はウエブページに掲載されている請求人に係る商品又は役務について、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者がその商品又は役務の出所について混同を生じるおそれは否めない。
キ 答弁の(3)イに対する反論
請求人は、「商標『オレンジドットコム』を検索し、カタカナ文字『オレンジドットコム』から連想されるドメイン名はなかった」と述べたとおり、ドメイン名の有無について述べたものである。検索した結果、表示された記事の一部に、「(有)オレンジドットコム」又は「オレンジドットコム」が含まれているか否かについて述べたものではない。
たとえ、「オレンジドットコム」にて検索した結果ヒットした記事中に、「(有)オレンジドットコム」又は「オレンジドットコム」が記載されているとしても、それらは、名義人(振込口座の名義人と思われる。)又は返送先として記載されているに過ぎない。また、需要者は、上記2つのウエブページを開いたとしても、「おれんじハウス」の語があり、「オレンジドットコム」について連想される「orange.com」がないことから、それらの画面を閉じて「orange.com」に係るホームページを訪問することも、十分に考えられる(甲第67号証及び甲第68号証)。
また、被請求人がいう上記「オレンジドットコム」は、商標、記事タイトル又はドメイン名としてのものではない。偶然にヒットした記事に記載されている「オレンジドットコム」という企業名又は名称である。しかも、一般に、同じ企業名は、同一市区町村でなければ、それ以外の市区町村にて商号登記できるものである。
したがって、需要者が甲第67号証中の「有限会社 オレンジドットコム」の語を目にしたからといって、それをそのまま「本件商標の商標権者を認識する」と言えるものではない。
なお、需要者は、上記2つのヒットした記事よりも、甲第54号証及び乙第3号証中の、最初の記事タイトル「オレンジドットコム」に目が行く。そして、その記事を開くと、甲第69号証のようなホームページが開く。需要者が、そのホームページを見ると、疑わしい又は如何わしいサイトと考えることが想定され、需要者が、上記2つの記事を目にすることなく、「orange.com」によって検索を試みることは十分に考えられる。
なお、甲第67号証及び甲第68号証のウエブページのスクリプトを見たところ、「オレンジドットコム」の文字は書かれていなかった(甲第70号証及び甲第71号証)。
一般に、記事タイトルを「title」に、及び「meta keyword」(〈head〉の部分に記載するのが一般的である。上記1枚目というのはその理由による。なお、「meta keyword」自体が甲第70号証及び甲第71号証にはない。)に検索エンジンにてヒットするキーワードを書くものであるが、甲第70号証及び甲第71号証には、「オレンジドットコム」の語は書かれていない。
このことは、需要者が「オレンジドットコム」と検索エンジンにて入力した場合に、記事タイトルとして「オレンジドットコム」はヒットしないものであることを意味する。更に、このことは、需要者は、本件商標について、被請求人に係るホームページ又はウエブページを特定することができず、本件商標から容易に又は当然に連想される「orange.com」に係るホームページを訪問する機会を増やすものでもある。
ちなみに、甲第54号証及び乙第3号証の中の2つ目の記事及び4つ目の記事などに見られる「オレンジドットコム」は、請求人のコーポレートカラーのオレンジ色を指すものである。
ク 答弁の(3)ウに対する反論
(ア)被請求人は、答弁書にて、「しかし、本件商標の指定役務の需要者は、市場における役務と商取引することを目的としているから、インターネットを利用してアクセスする場合には、検索エンジンに入力してするものであって、商取引とは関係のないドメイン名からアクセスすることはない。したがって、請求人の業務に係るホームページを訪問することは想定できない。」と述べている。上記答弁は、「インターネットを利用してアクセスする場合には、検索エンジンに『オレンジドットコム』と入力してするものであって」ということと思料される。
請求人は、「インターネットを利用してアクセスする場合には、検索エンジンに入力してする」こともあることを否定しないが、上記オ(ア)及び(イ)により、「商取引とは関係のないドメイン名からホームページにアクセスすることはない」と断言できるものではない。
そして、需要者が、請求人に係るホームページを訪問して、そのホームページ又はウエブページにて掲載されている商品又は役務について、被請求人に係る商品又は役務と誤認混同するおそれがある。
(イ)会社名を略称で呼称又は表記することは多々ある。請求人は、その会社名「オレンジ パーソナル コミュニケーションズ サービシーズ リミテッド」について、その略称「Orange」を使用している。例えば、「orange.com」に係る請求人のホームページにも、「Orange」と掲載されている(甲第6号証、甲第72号証及び甲第73号証)。「Orange」は、請求人の略称であり、その略称に、トップレベルドメインとを合わせて、ドメイン名「orange.com」を取得し、そのドメイン名に係るウエブサイトを運営している。
そして、日本及び世界において、会社名の略称についてドメイン名を取得し、そのドメイン名に係るホームページを開設している企業は、今日、一般的になっている(甲第74号証ないし甲第76号証)。
また、請求人のホームページには、著作権表示がなく、会社名が掲載されていない。
以上のことから、需要者は、請求人のホームページから、請求人の名称である「オレンジ パーソナル コミュニケーションズ サービシーズ リミテッド」を認識することはほとんど考えられないが、一方、「Orange」又は「オレンジ」と十分に認識するものとなっている。
また、需要者が請求人のホームページ又はウエブサイトを訪問すると、例えば、請求人のホームページである甲第6号証に係るインターネットブラウザ上のアドレスバーにあるドメイン名「orange.com」からも明らかなとおり、需要者は、アドレスバーの表示より、ドメイン名「orange.com」に係るものであるということは、容易に又は当然に認識できる。
そして、需要者が、本件商標について、容易に又は当然に「orange.com」と連想することにより、被請求人に係る商品又は役務を、請求人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、出所の混同を生じる蓋然性は否めない。
また、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれもある。
以上より、「請求人の商号は『オレンジ パーソナル コミュニケーションズ サービシーズ リミテッド』であって、ドメイン名とも、本件商標とも大きく異なって」いることを理由に、被請求人の業務に係る商品又は役務を、ドメイン名「orange.com」に係る請求人のホームページ又はウエブページに掲載されている商品又は役務であると誤認し、出所の混同を生じるおそれがないと言えるものではない。
(ウ)更に、需要者は、本件商標から、ドメイン名「orange.com」を容易に又は当然に連想し、そのドメイン名に係る請求人ホームページを訪問した場合に、被請求人に係る商品又は役務について、請求人のホームページ又はウエブページに掲載されている請求人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その出所の混同を生じるおそれがある。
また、需要者は、本件商標から容易に又は当然に連想されるドメイン名「orange.com」に係るホームページ又はウエブページに掲載されている商品又は役務について、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係るものであると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある。
しかも、本件商標に係る指定役務は、「インターネットによる商品販売に関する情報の提供,インターネットによる通信販売の取次ぎ,インターネットによる通信販売の注文・受付・配送に関する事務処理代行,インターネットによる商品の販売促進に関する広告」であり、需要者が、「orange.com」に係るウエブページにて、請求人の業務に係る、携帯電話のレンタル、様々な音声・データ通信サービスなどについて、その情報の提供、通信販売の取次ぎ及び広告などを行っていると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同を生じるおそれがあるとしても、何ら不合理な理由はない。
また、同様に、需要者が、被請求人が「orange.com」に係るウエブページにて、請求人の業務に係る、携帯電話のレンタル、様々な音声・データ通信サービスなどについて、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係るものであると誤認し、前記商品又は役務についての情報の提供、又は携帯電話の通信販売の取次ぎ及び広告などを行っていると誤認し、その商品又は役務の需要者がその商品又は役務の出所について混同を生じるおそれがあるとしても、何ら不合理な理由はない。
ケ 答弁の(3)エに対する反論
被請求人は、「しかし、検索エンジンによって、被請求人の名称である(有)オレンジドットコムが表示されてくることは、3(イ)の項で乙第3号証を提示して述べたところである。また役務を検索する場合は、検索エンジンで『オレンジドットコム』を検索するのが常態であって、これをあえて英文字を連想し、その英文字におきかえて検索することはない。その上、請求人の名称と本件商標とは大きく異なっている。したがって、請求人のホームページを商標権者のホームページと誤認するおそれはない。」と述べている。
しかし、被請求人の上記答弁中の3(イ)について、請求人は、上記キの反論による。また、「役務を検索する場合は、検索エンジンで『オレンジドットコム』を検索するのが常態であって、これをあえて英文字を連想し、その英文字におきかえて検索することはない。」については、オ(ア)及び(イ)にて述べたと同じ理由により反論する。更に、「請求人の名称と本件商標とは大きく異なっている。」については、ク(イ)で述べた反論による。
したがって、請求人のホームページを、被請求人のホームページと誤認するおそれがある。
コ 答弁の(3)オに対する反論
証拠資料の右下部分の表示が本件商標の出願日より後のものであっても、そこに記載されている内容が2005年5月16日より前のものであれば、商標法第4条第1項第15号に該当するものと解される。
請求人が問題としているのは、需要者は、トップレベルドメイン「.com」のカタカナ文字「ドットコム」を含む「オレンジドットコム」の商標について容易に又は当然に「orange.com」を連想し、該カタカナ文字の英語表記に係る「orange.com」のホームページを訪問した場合に、需要者が、被請求人の商品又は役務について、請求人のホームページ又はウエブページに掲載されている請求人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがあるということである。そして、その「混同のおそれ」は、経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品又は役務と誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある場合をも含む。
この点において、例えば、甲第33号証の「ドットコム」について、「2000.10.4更新」とある。このことは、2000年10月4日の時点で、既に需要者は、「.com」を「ドットコム」と、「ドットコム」を「.com」と、容易に又は当然に連想できるものであったことを示唆する。
また、例えば、甲第13号証の「gTLD」の統計資料には、2004年以前の登録数が掲載されおり、これは、商標登録出願日前の登録数も当然に含む資料である。
本件商標の出願日の時において、「.com」について、その登録数は他のトップレベルドメインと比較して、極めて多く登録されており、その登録されたドメイン名の運用も、他のトップレベルドメインに比べて多数にわたっていた。
そして、本質的に問題となるのは、請求人が、ドメイン名「orange.com」に係るホームページの開設及び運営を始めた年月日である。
同ドメイン名は1993年に登録され、その消滅期限は2008年12月8日となっている。また、「orange.com」は使用中と掲載されている。
請求人は、同ドメイン名について、米国のオレンジテクノロジーズ社から2000年9月4日付け契約書に基づいて購入し、同ドメイン名の登録者となった(甲第78号証)。請求人は、2001年初頭、遅くとも2001年4月前には、同ドメイン名に係るウエブサイトを運営している(甲第78号証)。
請求人は、売上規模が2兆円を超える企業であり、日本における請求人と同規模の企業と同様、社会的な責任も大きく、それより以降、ホームページを運営しなかったことはない。請求人は、本件商標に係る出願日及びその登録査定日において、ドメイン名「orange.com」に係るホームページを運営していた。
また、本件商標に係る登録出願日には、「.com」は、日本を含む世界中にて使用されている著名なトップレベルドメインであり、日本においても、需要者は、「.com」を「ドットコム」、「ドットコム」を「.com」と容易に又は当然に連想できるものであった。
以上より、本件商標は、本件商標の登録出願の日に商標法第4条第1項第15号に該当したことは明らかである。
サ 答弁(4)に対する反論
無効審判の要件としての利害関係は、法律上のものである必要はなく、ある商標登録の存在によって直接不利益を被る関係にあれば足り、請求人は、本件商標の登録の存在によって直接不利益を被る関係にあるので、本件審判を請求することに関し利害関係を有する。
また、本件商標は、これを指定役務に使用した場合、請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生じるおそれがある。更に、本件商標の登録出願の日に請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生じるおそれがあったものである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論と同旨の審決を求め、答弁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
(1)本件審判の請求の理由は、本件審判の請求について利害関係を有する旨の主張及び本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する旨の主張の2点にある。しかし、そのいずれについても根拠はない。
(2)利害関係について
ア 請求人の事業内容については、被請求人は不知である。殊に甲第2号証は、英語で記載されており、我が国の需要者を対象としたものではないから、この証拠に基づいて我が国の需要者が請求人の事業内容を知っているということはできない。このことは、請求人が日本語の部分訳文を提出しているところから、請求人自身が認知していると言える。
イ 審査例2件を挙げ、これに基づいて、「『ファミリードットコム』及び『ナビドットコム』の何れもが、商標法第4条第1項第11号、又は他の条項と共に当該条項に該当することを理由として拒絶査定となっているものである。」と述べている。
しかし、審査1については事実に反しており、審査2については判断を誤ったものである。審査例1については、商願2002-60377の拒絶理由に引用された登録商標は、登録第4243692号、同登録第4263713号及び同第4400407号であって、「FAMILY」(登録第4404054)ではない(乙第1号証)。このように、審査例1についての記述は、事実に反している。
次に、審査例2については、商標「ナビドットコム」(商願2000-135408)に対する拒絶理由としては、商標法第3条第1項第6号、同第4条第1項第11号及び同第6条第2項が記載されている。この条項の中第3条1項第6号は、商標の本質的機能である自他商品識別力が存在しないことを規定したもので、商標の基本的な登録要件である。したがって、審査例2の拒絶理由は、まず、商標法第3条第1項第6号が適用されたものと判断すべきであって、同第4条第1項第11号及び同第6条第2項が適用されたものとみるべきではない。すなわち、当該商標が「『NAVI』の先行登録商標の存在を理由に、拒絶査定となったもの」という請求人の判断は誤っている。
ウ 「請求人は、欧文字『orange』を含む図形との結合からなる商標の出願人でもある」と述べている。
しかし、当該出願は、商標法第6条第1項、同第4条第1項第11号及び同第6条第2項に基づいて拒絶通知を受けている。上記の条項の中第4条第1項第11号適用の根拠とされた登録又は出願に係る商標は、22件の多きに達している(乙第2号証)。
なお、これら引用商標には、本件商標は含まれていない。これに対して、出願人(請求人)は、意見書を提出しているが、未だ拒絶理由は解消されていないし、今後も解消の見込みはないものと思われる。
すなわち、当該請求人の出願に係る商標は、他人の登録商標と類似して登録できないことが明らかであるばかりでなく、請求人が当該商標を使用したときには、商標権の侵害を構成することになり、我が国では使用できないことが明らかである。
エ 裁判所の判決内容として、東京高裁平成14(ネ)3024と大阪地裁平成14(ワ)13569を挙げ、「『.com』についても、同様に言えるものと解される」と結論付けている。
しかし、これらの裁判の対象とされた事件は、「.com」についてのものではない。司法は具体的事実に法を適用する判断であるから、大前提である事実が異なる他の事件についての判断を、本件について「同様に言えるもの」ということはできない。
オ 「本件商標『オレンジドットコム』を欧文字で表した『orange.com』に係るドメイン名『orange.com』にアクセスすると、請求人のホームページを訪問することになる。したがって、請求人は、本件商標の登録無効請求について利害関係を有する。」と述べている。
しかし、商標は、取引の場における役務等を識別するために表示し、需要者をしてこれを認識させるための標識である。したがって、取引の対象となっている役務等にアクセスする場合は、検索エンジンを利用するのであって、取引の対象となっていないドメイン名にアクセスすることはない。また、本件商標は、すべて同一の標準文字で一連に表示されたカタカナ文字であって、これをあえて欧文字に置き換えてアクセスすることはない。したがって、請求人のホームページを訪問することはない。
また、商標登録の無効審判の請求の要件としての利害関係は、法律上のものでなければならない。ドメイン名から請求人へ訪問することは何人も自由に行えるものであって、本件商標が登録されているか否かによって影響を与えるものではない。仮に、たまたま請求人のホームページを訪問することがあったとしても、それによって、法律上の地位に影響を与えることはない。
したがって、請求人は、本件審判の請求について利害関係を有してはいない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 「需要者が、インターネットを利用して、本件商標『オレンジドットコム』に係るホームページにアクセスする場合に、… 請求人のホームページを訪問することになる。」と述べている。
しかし、本件商標の指定役務の需要者は、市場における役務と商取引することを目的としているから、インターネットを利用してアクセスする場合には、検索エンジンに入力してするものであって、商取引とは関係のないホームページにアクセスすることはない。したがって、「請求人のホームページを訪問すること」にはならない。
イ 「請求人は、同「YAHOO!JAPAN」の検索エンジンにて、本件商標『オレンジドットコム』を検索したところ、29件ヒットし、そこにリストされたインターネットアドレスを確認したが、カタカナ文字『オレンジドットコム』から連想されるドメイン名はなかった。」と述べている。
しかし、甲第54号証として提出されたリストの中に、『=地域モール連合【にっぽん市】=』及び『お支払い・配送』のタイトルの下に『【名義】(有)オレンジドットコム』及び『オレンジドットコム』と本件商標の商標権者の名称が明示されている(乙第3号証)。この状況は、需要者が検索エンジンにて本件商標を検索した場合、本件商標の商標権者を認識するのであって、請求人を認識することはないことを示している。
ウ 本件商標の指定役務の需要者は、市場における役務と商取引することを目的としているから、インターネットを利用してアクセスする場合には、検索エンジンに入力してするものであって、商取引とは関係のないドメイン名からアクセスすることはない。したがって、請求人の業務に係るホームページを訪問することは想定できない。
また、仮にドメイン名から請求人のホームページを訪問した場合があったとしても、請求人の商号は「オレンジ パーソナル コミュニケーションズ サービシーズ リミテッド」であって、ドメイン名とも、本件商標とも大きく異なっているから、本件商標の商標権者に係る商品又は役務を、請求人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、出所の混同を生ずることはない。
また、請求人の「orange.com」は、ドメイン名に過ぎず、商品又は役務の取引の場において使用されてはいないから、我が国における登録商標の指定役務の取引者・需要者の間において、いわゆる周知・著名なものとは言えない。したがって、本件商標が請求人に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれはない。
エ 「本件商標から想定し得る、『orange.com 』『オレンジ.com』及び『おれんじ.com』のホームページを訪問してみた結果、並びに『orange.com』及び『オレンジドットコム』の検索エンジンによる検索結果からしても、本件商標の商標権者に係るホームページと認識できるホームページは存在しない。したがって、需要者が、本件商標から『orange.com』を連想し、請求人のホームページを本件商標の商標権者に係るホームページと誤認するおそれがある。」と述べている。
しかし、検索エンジンによって、被請求人の名称である(有)オレンジドットコムが表示されてくることは、3イの項で述べたところである。また役務を検索する場合は、検索エンジンで「オレンジドットコム」を検索するのが常態であって、これをあえて英文字を連想し、その英文字におきかえて検索することはない。その上、請求人の名称と本件商標とは大きく異なっている。したがって、請求人のホームページを商標権者のホームページと誤認するおそれはない。
オ 商標法第4条第1項第15号は、商標登録出願の時に該当しなければ適用されない(商標法第4条第3項)。請求人提出に係る証拠は、右下部分の表示からみて2005年5月16日以降に集められたものである。このように請求人の提出にかかる証拠は、本件商標の出願日の後に集められたものであり、本件商標の登録出願の日に商標法第4条第1項第15号に該当したものとは言えないから、当該規定は適用されない。
(4)以上述べたごとく、本件審判請求は、審判請求について法律上の利害関係はない。したがって、本件審判請求は、却下されるべきである。
また、本件商標は、これを指定役務に使用しても、請求人の業務にかかる役務と混同を生ずるおそれはない。さらに、本件商標の登録出願の日に請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがあることを証するものはない。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号には該当しない。

4 当審の判断
(1)本件審判の請求に関し、その利害関係について当事者間に争いがあるので判断する。
無効審判を請求する者は、法律上の利益を有することを要すると解されるところ、本件請求人は、同人が本件商標との間で出所の誤認混同を生じさせるおそれがあると思料するドメインネームを所有し使用する者であり、本件商標の登録の有無により、当該標章の使用や管理に影響を受け得るものといえるから、本件審判の請求をするにつき利害関係を有する者と判断するのが相当である。
(2)そこで、本案に入り審理し判断する。
ア 本件商標は、「オレンジドットコム」の文字からなるものであるところ、前半の「オレンジ」は、我が国において極めて親しまれた柑橘類の一であるオレンジ、あるいはその色合いを容易に想起させるものである。また、後半の「ドットコム」についてみると、近時の携帯電話やインターネット等の急速な普及を反映して、直ちに「.com」を想起させる程に、この文字あるいは音が広く知られたものとなっている(甲第13号証、甲第33号証及び甲第39号証)。
そして、「.com」は、「.jp」等のトップレベルドメインと同様に自他商品・役務の識別標識としての機能の面から見て、識別機能がないか、極めて弱い部類に属する標章というのが相当である(甲第48号証及び甲第49号証)。
してみると、本件商標は、その構成文字に徴して、「オレンジ」を主要部としたドメイン名との観念をもって看取されることも、決して少なくないというのが相当である。
イ 請求人提出の証拠によれば、請求人は、自己のドメイン名として「orange.com 」を登録し、現に使用していることが認められる(甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証ないし甲第8号証)。
しかし、請求人提出の全証拠をもってしても、請求人に係る標章「orange.com」ないし「orange」(以下これらを「引用標章」という。)が、本件商標の登録出願時に、請求人の業務に係る利用者の間で広く認識されるに至っていたと認め得る証左は見いだせない。
ウ しかして、本件商標「オレンジドットコム」から「オレンジ.com」や「orange.com 」を想起する場合があることは否定できないとしても、これより直ちに請求人のドメイン名を想起し、請求人を連想させるものと認めるに足りる的確な証拠はない。
エ 本件商標の指定役務は、「商品販売に関する情報の提供,通信販売の取次ぎ,通信販売の注文・受付・配送に関する事務処理代行,商品の販売促進に関する広告」等の役務であり、インターネットを介して提供されるものではあっても、請求人の業務に係る移動通信事業とは、質や用途等からみて類似の役務とはいえないものであり、また、関連性の程度の高いものであるということもできない。
そして、両者の需要者が共通するとは認められないものである。
(3)しかして、引用標章の周知性の程度、標章間の類似性の程度、使用する役務間の関連性の程度及び需要者の共通性等を総合勘案しても、本件商標をその指定役務に使用した場合に、本件商標の登録出願時において、需要者が引用標章を想起し連想して、当該役務を請求人あるいは同人と経済的又は組織的に関係のある者の業務に係る役務と誤信し、その出所について混同するおそれがあるものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。
(4)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-04-04 
結審通知日 2006-04-07 
審決日 2006-04-20 
出願番号 商願2004-40877(T2004-40877) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (Y35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 厚子 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 小林 薫
寺光 幸子
登録日 2004-12-17 
登録番号 商標登録第4825891号(T4825891) 
商標の称呼 オレンジドットコム、オレンジ 
代理人 藤田 隆 
代理人 大南 匡史 
代理人 安村 高明 
代理人 山本 秀策 
代理人 上中 健司 
代理人 平野 謙二 
代理人 森下 夏樹 

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