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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y25
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y25
管理番号 1134645 
審判番号 無効2004-89099 
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-05-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-11-09 
確定日 2006-03-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第4763316号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4763316号商標(以下「本件商標」という。)は、「LIQWED」の欧文字を標準文字として、平成15年7月25日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同16年4月9日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録商標は、以下(1)ないし(3)のとおりである。
(1)登録第3229037号商標(以下「引用商標1」という。)は、「LIQUID」の欧文字を横書きしてなり、平成5年11月18日に登録出願、第28類「スノーボード,その他の運動用具」を指定商品として、同8年11月29日に設定登録されたものである。
(2)登録第3273741号商標(以下「引用商標2」という。)は、「LIQUID」の欧文字を横書きしてなり、平成5年11月18日に登録出願、第25類「スノーボード用靴,その他の運動用特殊靴,運動用特殊衣服,被服,履物」を指定商品として、同9年4月4日に設定登録されたものである。
(3)登録第4653889号商標(以下「引用商標3」という。)は、「LIQUID」の欧文字を標準文字として、平成13年12月21日に登録出願、第9類「保安用ヘルメット」、第25類「手袋,その他の被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「ひざ当て,ひじ当て,手首当て,インラインスケート,インラインスケート用ホイール,その他の運動用具」を指定商品として、同15年3月14日に設定登録されたものである(以下、一括していうときは、単に「引用商標」という。)。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第26号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第11号該当について
(ア)本件商標について
本件商標は、標準文字にて「LIQWED」と書してなる造語商標であるから、これよりは特定の称呼が一義的に生じることはない。
しかしながら、取引現場においては、商標を称呼することによって商品を取引することが一般的であり、本件商標からも本件商標を構成する各欧文字に対応して一定の称呼が生じる。
ここで、日本人の一般的な語学力を勘案すると、本件商標は「LIQ」「WE」「D」の文節に区切られる。そして、この文節の区切りからは、「liquid(液体)」の発音からも明らかなとおり「LIQ」からは「リク」、「we(我々)」の発音より明らかなとおり「WE」からは「ウィ」、「good(良い)」の発音より明らかなとおり「D」からは「ド」の称呼が生じると考えられる。
よって、この文節の区切りからは、本件商標の称呼は「リクウィッド」となる。
また、上記例以外でも、例えば「key」の如く子音に挟まれた「e」が「i(イ)」と発音される例が多数存在することから、称呼「リクウィッド」は本件商標の自然な称呼と考えられる。
仮に、「リクウィッド」以外に何等かの称呼が生じるとすると、「 liquid(液体)」の発音より明らかなとおり「LIQ」からは「リク」、「wed(結婚する)」の発音より明らかなとおり「WED」からは「ウェッド」の称呼が生じることから全体で「リクウェッド」との称呼が生じると考えられる。
なお、ここに例示した英単語は、日本人の語学力からは充分に周知な言葉であり、例示として穏当である。
(イ)本件商標と引用商標が類似する点について
まず、称呼について検討する。
本件商標は、上記(ア)で認定したとおり、その各欧文字より「リクウィッド」の称呼が生じる。
一方、引用商標は「液体」などを意味する平易な英語であり、その発音[likwid]、すなわち「リクウィッド」は我々日本人にも充分周知であるため、引用商標に接する取引者・需要者は引用商標を「リクウィッド」と称呼する。
よって、本件商標の称呼「リクウィッド」と引用商標の称呼「リクウィッド」は同一である。
仮に、本件商標から「リクウェッド」との称呼が生じるとしても、各引用商標の称呼「リクウィッド」とは、その称呼が類似する。すなわち、本件商標と引用商標の相違は第3音の「ウェ」と「ウィ」のみであり、これらはともに二重母音を構成するものであって近似した音として発音、聴取されるものであるから、本件商標と引用商標の称呼は類似している。このことは、以下の審決からも首肯されるものである。
平成11年審判第11796号(甲第5号証)及び平成6年審判第5286号(甲第6号証)。
次に、外観について検討する。
本件商標は、全て大文字の欧文字6文字からなる商標である。一方、引用商標も全て大文字の欧文字6文字からなる商標である。本件商標と引用商標とは、語頭の3文字「LIQ」と末尾「D」が同一の欧文字より構成されている点で共通している。
換言すれば、本件商標と引用商標は、中間に位置する「WE」と「UI」の相違しかなく、商標機能上重要な役割を果たす語頭と末尾を同一にする商標であり、看者へ与える印象は類似している。
よって、本件商標と引用商標の外観は類似している。
(ウ)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類似
本件商標の指定商品中「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものであることは明らかである。
したがって、本件商標は、引用商標と外観及び称呼上類似するものであり、指定商品「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」については、引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第15号該当について
仮に、本件商標が引用商標とその商標が非類似であり、商標法第4条第1項第11号に該当しないとしても、同第15号に該当する。
(ア)商標について
仮に、本件商標から「リクウェッド」の称呼しか生じず、また引用商標の称呼が日本語風に「リキッド」であり、称呼が類似しないとしても、本件商標は、引用商標と混同を生じるおそれのある商標である。
すなわち、本件商標は、造語であり、その称呼が聞きな慣れない「リクウェッド」であることから、その称呼は語感及び語調が似ており、かつ、聞き慣れている「リキッド」に近似していく。
特に請求人の商標「LIQUID」は、世界各国においてスノーボードやスケートボード、またウェア等に大規模に使用されており(甲第7号証ないし甲第10号証)、著名であることから、意味を成さない造語である本件商標の称呼が、著名である引用商標の称呼に引きずられて近似していくことは明らかである。
よって、本件商標と引用商標とは、称呼上混同を生じるおそれがある。
また、本件商標と引用商標がその外観上非類似としても、その構成上共通する要素を多分に有するものである。商標の外観は視覚伝達力が強いものであるため、特に商標上目立つ語頭と末尾が共通する本件商標と引用商標は、外観上も混同を生じるおそれがある。
(イ)商品間の関連性について
上述のとおり、請求人の商標「LIQUID」は、運動用特殊衣服、運動用特殊靴などを含む多種のスポーツ用品、また各種ウェアなどの被服において著名である。
一方、本件商標の指定商品は、上記のとおり、国際分類第25類に属する商品である。
そのため、本件商標の指定商品中「被服、履物、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」については、請求人の商標「LIQUID」が著名となっている商品の範囲と同一であり、その余の商品については、請求人の商標「LIQUID」の著名性からその出所について混同を生じるものである。
(ウ)混同のおそれについて
以上のことから、本件商標の称呼は、具体的な取引現場においては引用商標の称呼「リキッド」に近似していくことは明らかであり、また外観上も目立つ語頭と語尾が共通するため、外観上混同を生じるおそれがあり、本件商標に接した取引者・需要者が、請求人の著名商標「LIQUID」を容易に連想し、請求人の製造・販売に係る商品であると誤認混同するおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は、請求人の著名商標と混同を生じるおそれのある「LIQWED」であり、このような紛らわしい商標が付された商品が、その著名商標権者の業務に係る商品と混同を生じさせるものであることは明らかである。そのため、本件商標は、その登録出願時点はもちろん、登録査定時点においても他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあった商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第11号該当について
(ア)被請求人は、「wear」「weather」などの例を挙げ、「WE」の発音は「ウェ」であり、本件商標は「リクウエッド」又は「リクウェッド」と発音される、と主張している。
しかしながら、「we(我々)」を[wi(ウィ)]と発音する事実以外にも、「ed」で終わる英単語で[id(ィド)]と発音するものが多数存在する。以下、一例を挙げる。
affected[発音記号の表記](甲第11号証)
disappointed[発音記号の表記] (甲第12号証)
fitted[発音記号の表記](甲第13号証)
hurried[発音記号の表記](甲第14号証)
limited[発音記号の表記](甲第15号証)
twisted[発音記号の表記](甲第16号証)
worried[発音記号の表記] (甲第17号証)
このことから、本件商標を「リクウィッド」と称することもごく自然であるといえる。
(イ)被請求人は、日本人は「e」 を「エ」と読んでしまうと主張している。
しかしながら、アルファベットの「e」が[i:(イー)]と発音されることは、日本人にとって周知であり、この「e」が単語の中に入ったとしても「i:(イー)」若しくは「i(イ)」と発音されることは審判請求書で例示した「key[ki:]」の例や、上記(ア)で挙げた例からも明らかである。
その他にも「ディベート」(debate[発音記号の表記])(甲第18号証)、「リコール」(recall[発音記号の表記])(甲第19号証)など、既に日本語化している英単語にも多数「e」を[i(イ)]と発音する例が存在することから、被請求人の主張が失当であることは明らかである。
また、被請求人は、この傾向は見知らぬ語の場合に顕著に現れる、と主張するが、その根拠は何ら示されておらず、アルファベットの「e」が[i:(イー)]と発音すべきであることが周知であり、上記のとおり日本語化した英語においても多数[i(イ)]と発音する言葉が存在する以上、アルファベット「e」が見知らぬ語の中に含まれた場合も周知の称呼に倣い[i:(イー)]若しくは[i(イ)]と発音されると考えるのが自然である。
以上のことから、上記被請求人の主張は何ら根拠が示されておらず、失当である。
(ウ)被請求人は、本件商標は「ウェ」の位置に強く明確なアクセントを置いて「リクウェッド」と発音すると見るのが自然、と主張している。
しかしながら、被請求人の主張にはなぜ「ウェ」 にアクセントがあるのかその根拠が示されておらず、被請求人の主張には納得できない。
そして、本件商標は、上述のとおり「リクウィッド」と称呼すべきものであり、「e」 を「i(イ)]と発音する場合は、その箇所にはアクセントは置かれない場合が多い。この主張の根拠としては、(ア)及び(イ)で挙げた例以外にも、次のような例が存在する。
「women」[発音記号の表記](甲第20号証)
「prefer」[発音記号の表記](甲第21号証)
「relation」[発音記号の表記] (甲第22号証)
「request」[発音記号の表記] (甲第 23号証)
「retirement」[発音記号の表記](甲第24号証)
これらの例は、いずれも「e」を[i(イ)]と発音するものであるが、いずれの単語においてもそのアクセント位置は「i(イ)」以外の箇所である。
これを本件商標に当てはめると、本件商標の称呼は、「リクウィッド」となり、そのアクセントは「(ウ)ィ」の位置以外に存在することとなる。そうすると、本件商標のアクセントは、「リ」の位置、「ク」の位置、又は末尾「ド」の位置に存在することになるが、本件商標は、日本人に周知の英単語「LIQUID」とその語感・語調が共通することから、そのアクセント位置も共通するとみるのが自然である。
よって、本件商標のアクセントは、「リ」の位置に存在する。
(エ)被請求人は、引用商標は日本語調のイントネーションをもって、「キ」の位置に若干強めのアクセントをつけて「リキッド」と発音するとみるのが自然である、と主張している。
しかしながら、引用商標を日本語調のイントネーションをもって発音するとしても、そのアクセント位置は、英語のアクセント位置と同じく「リ」の位置である。
(オ)被請求人は、「リクウェッド」と「リキッド」 を比較すると、最も強く発音される音は「ウェ」と「キ」で異なる、と主張している。
しかしながら、本件商標も引用商標も、「リ」の位置にアクセントがあり、ともに最も強く発音される音が「リ」で共通するものである。
そして、本件商標も引用商標も、双方ともに「リクウィッド」と発音するものであり、称呼が同一である。
仮に、本件商標を「リクウェッド」と発音するとしても、引用商標「LIQUID」の称呼「リクウィッド」とその語感・語調が共通し、さらに全体音数・アクセント・イントネーションも共通する。
よって、両商標の称呼は類似するものである。
(カ)被請求人は、「WE」の文字は他の文字に比して字画が多く目立つのに対して、「UI 」の文字は字画が少ないため、前後に紛れて目だ立たず、かかる相違により、両者の綴り全体から受ける外観的印象が全く異なる、と主張している。
しかしながら、外観の印象を決めるのは全体から受ける印象であり、文字の全体印象を決めるのは、語頭と語尾の文字である。本件商標と引用商標は、文字商標の印象を決定する語頭「LIQ」と語尾「D」 を共通にしていることから、外観上類似するものと考えられる。
(キ)上述のとおり、本件商標は、引用商標と称呼及び外観上類似するものであり、かつ、同一又は類似の指定商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号該当について
被請求人は、本件商標が造語であり、その称呼が聞き慣れないものであるからこそ両者は明確に識別される、と主張している。しかしながら、造語といっても単に無意味なアルファベットを羅列することは有り得ず、既存の言葉を元にしているものである。そのため、造語に接した場合、なにか既知の言葉を連想するものである。そして本件商標の場合、その綴り字はもちろん、称呼も、日本人に周知の外来語「LIQUID」と共通するものであり、「LIQUID」を直観させるものである。
この主張は、主要サーチエンジンであるGoogleにて本件商標「LIQWED」を検索すると、「もしかして:LIQUID」と確認文章が表示される(甲第25号証)ことからも、首肯できるものである。すなわち、この表示はコンピュータが「LIQWED」をスペルミスであり、検索者は「LIQUID」と検索したかったのではないかと考えていることの現れであり、このことは、本件商標「LIQWED」に接した者が「LIQUID」を直観することの一証左である。
「LIQUID」が外来語として日本語に定着している言葉であることに加え、請求人のブランド「LIQUID」がスノーボード用品やウェアについて著名であることから、造語であり印象に残りづらい本件商標に接する取引者・需要者が、著名な引用商標を直観し、本件商標が付された商品が請求人の業務にかかる商品であるかのごとく誤認・混同することは明らかである。
なお、被請求人は、請求人ブランド「LIQUID」について不知である旨述べているが、請求人ブランドは世界各国において著名なばかりでなく、日本においても現に輸入販売されているものである(甲第26号証)。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(3)以上のとおり、本件商標は、その登録査定時に商標法第4条第1項第11号に該当していたものであり、またその登録出願時及び登録査定時において同第15号に該当していたものであるから、商標法第46条第1項第1号に基づきその登録を無効にされるものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号又は同第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものである旨主張している。
しかしながら、本件商標は、引用商標と何ら類似せず、また、請求人は引用商標が著名である旨主張しているが、被請求人は不知であり、よって請求人の主張は承服できはない。
(1)商標法第4条第1項第11号該当について
確かに、本件商標は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用するものである。しかしながら、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念において何ら類似しないものである。
すなわち、本件商標は、標準文字にて「LIQWED」と書してなり、これに対し、引用商標1及び引用商標2は、同書同大文字にて「LIQUID」と左横書きしてなり、また引用商標3は、標準文字にて「LIQUID」と書き表している。
そこで、本件商標と引用商標とを比較するに、まず称呼について、請求人は、本件商標の称呼を「リクウィッド」であると主張している。
しかしながら、その根拠として請求人が示した英単語「we」(我々)の発音は、特異な例で、該綴りの一般的な発音とするのは誤りであり、例えば「wear」 「weather 」 「web」 「wedge」 「weight」 「well」「went」「west」等の様に、多くの場合、該綴りの発音は「ウェ」である。
したがって、本件商標は、「リクウエッド」又は「リクウェッド」と発音されるとみるのが自然である。
ところで、一般的に日本人は、単語中の「e」の文字を英語的に「イー」と読むのが不得手で、この傾向は見知らぬ語の場合に顕著に現れ、たとえ、それが本来「イ」又は「イー」と発音すべきものであっても、日本語的に「エ」と読んでしまう。
そして、本件商標は、上記のとおり「リクウエッド」又は「リクウェッド」と発音されるものであるが、たとえ「リクウィッド」の称呼も生じる可能性が有るとしても、本件商標は造語であるため、上記傾向は正に顕著に現れ、一般的語学力の日本人なら、「LIQWED」の綴りからは日本語調のイントネーションをもって、つまり「リク」は弱く発音し、「ウェ」の位置に強く明確なアクセントを置いて「リクウェッド」と発音するとみるのが最も自然である。
また、請求人は、引用商標について、その称呼を「リクウィッド」であると主張している。
しかしながら、英単語「LIQUID」のアクセントは、請求人が発音記号で示したとおり、語頭音「リ」にあり、英米人ならその様に発音し、「w」音はほとんど発声されないため、前後の音にかき消されて「リキッド」としか聞こえない。
さらに、この英単語は、請求人の主張のとおり、日本人にも広く慣れ親しまれた言葉であり、充分に周知であることから、日本人が該文字に接した場合であっても、容易に「リキッド」と認識することができ、やはり日本語調のイントネーションをもって、「キ」の位置に若干強めのアクセントを付けて「リキッド」と発音するとみるのが自然である。
したがって、夫々上記のとおり発音される「リクウェッド」と「リキッド」を比較すると、共通するのは語頭及び末尾の「リ」と「ッド」だけで、最も強く発音される音は「ウェ」と「キ」で異なり、かかる相違音が両称呼の短い音構成に及ぼす影響は大きく、両称呼は明確に聴別し得るものであるから、本件商標と引用商標とは、称呼の比較において、何ら相紛らわしいものではなく、非類似の商標である。
ちなみに、請求人は、引用商標の称呼を「リクウィッド」と誤認し、それ故「ウェ」と「ウィ」の音を比較しているが、上記のとおり、引用商標の称呼はあくまでも「リキッド」であり、百歩譲って若干だけ「w」音が残るとしても、「リキゥィッド」であり、間違っても「リクウィッド」などと発音されたり、聞こえるはずはなく、したがって、本件において、「ウェ」と「ウィ」を比較しても何ら意味をなさない。
次に、外観及び観念について比較すると、請求人は、本件商標と引用商標とは中間に位置する「WE」と「UI」の相違しかなく、看者に与える印象は類似している旨主張している。
しかしながら、「WE」の文字は6文字の構成中、他の文字に比して字画が多く、とても目立つのに対し、「UI」の文字は字画が少ないため、前後に紛れて目立たず、かかる相違により、両者の綴り全体から受ける外観的印象は全く異なる。
また、本件商標は、造語であって何ら意味を持たず、これに対し、引用商標は、周知の英単語で、一見して直ちに「液体」の意味を連想することができ、このように見知らぬ語である「LIQWED」と、見慣れた語である「LIQUID」を見間違えることはない。
叙述のとおり、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点においても、何ら相紛らわしいものではなく、非類似の商標である。
(2)商標法第4条第1項第15号該当について
請求人は、本件商標の称呼が「リクウェッド」で、また引用商標が「リキッド」であっても、本件商標が造語であり、その称呼が聞き慣れない「リクウェッド」であるから、本件商標は次第に「リキッド」に近似していくが如くの主張をしている。
しかしながら、本件商標が造語であり、その称呼が聞き慣れないものであるからこそ、両者は明確に識別されるのであって、請求人の主張は理解し難く、全くの誤りである。
また、請求人の商標「LIQUID」は、世界各国においてスノーボードやスケートボード、またウェア等に大規模に使用されている、とのことであるが、この旨を被請求人は不知であるばかりか、請求人より提示の甲第7号証ないし甲第10号証は、請求人の商品を掲載した単なる商品カタログであり、該カタログの発行部数は示されてなく、また著名で発行部数の多い一般雑誌のように、多くの者が目にするものでもない。
したがって、甲第7号証ないし甲第10号証を根拠とする本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する、との請求人の主張は理由のないものである。

第5 当審の判断
1 本件商標及び引用商標について
本件商標は、「LIQWED」の欧文字を標準文字としてなるものであるところ、当該「LIQWED」の欧文字は、特定の語義を表さない造語からなるものである。
一方、引用商標は、「LIQUID」の欧文字を書してなるものであるところ、当該「LIQUID」の欧文字は、「流体」の語義を有する英語「liquid」と同一綴りの欧文字からなるものである。
2 商標法第4条第1項第11号該当について
(1)外観について
本件商標と引用商標の構成は、前記のとおりであるところ、両者は前半で「LIQ」、末尾で「D」の文字を共通にするものであるが、中間で「WE」と「UI」の差異を有するものである。そして、当該差異「W」と「U」、「E」と「I」は、それぞれその字形が著しく異なるものであるから、この差異によって、両者の構成全体から受ける印象は別異のものというのが相当である。他に両者を取り違える程の印象を与える態様上の理由もない。
したがって、両者は、外観上で相紛れるおそれのあるものとはいえない。
(2)称呼について
本件商標は、その構成文字に相応して「リクウェッド」若しくは「リクウィッド」の称呼を生じるものというのが相当である。
一方、引用商標は、その構成文字より「リキッド」の称呼を生じるものというのが相当である。
この点、請求人は、発音記号に徴すれば、引用商標は「リクウィッド」の称呼を生じると主張するが、前記1のとおり、「LIQUID」は既成の語であるうえ、「リキッド」の発音をもって、我が国において親しまれていることは顕著な事実といえるから、その言語学上の発音記号に沿って厳格に称呼されるというよりも、定着した「リキッド」の発音をもって取引上の自然な称呼というのが相当である。
そこで、「リクウェッド」又は「リクウィッド」と「リキッド」の称呼を対比すると、語頭「リ」及び語尾「ド」の音を共通にするけれども、中間で「クウェッ」「クウィッ」と「キッ」の明らかな差異を有するから、それぞれを一連に称呼するも、全体の音感が異なって相紛れるおそれはなく、判然と区別され得るものである。
(3)観念について
前記のとおり、本件商標が特定の観念を生ずることはないものであるのに対し、引用商標は明らかな観念を生じるものであるから、両者は、観念上で相紛れるおそれはないものである。
(4)小括
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれよりみても類似する商標とはいえないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものとはいえないものである。
3 商標法第4条第1項第15号該当について
本件商標が、引用商標に類似する商標でないことは前記のとおりである。
加えて、請求人は、引用商標が商品「スノーボードやスケートボード、またウェア」等に大規模に使用されて著名であると主張するが、甲第7号証ないし甲第10号証及び甲第26号証によっては、引用商標が使用されている事実は認められるが、これをもっては、本件商標の登録出願の時点において、我が国の指定商品の需要者、取引者の間において、広く知られるに至っていたことを認めるに足りるものということはできない。また、他にそれを認め得る証左も見いだせない。
してみると、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者、取引者が、引用商標を想起し、当該商品を請求人又はそれと経済的若しくは組織的に関係を有する者の取扱に係る商品であるかのように、その出所について誤認するおそれがあるとはいえないから、結局、両商標は、別異の出所を表す識別標識といわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえないものである。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項により、その登録を無効とすべきではない。
よって、結論のとおり、審決する。
審理終結日 2005-10-26 
結審通知日 2005-11-01 
審決日 2005-11-14 
出願番号 商願2003-62404(T2003-62404) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (Y25)
T 1 11・ 26- Y (Y25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 きみえ 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 井岡 賢一
中村 謙三
登録日 2004-04-09 
登録番号 商標登録第4763316号(T4763316) 
商標の称呼 リクウエッド 
代理人 西山 聞一 
代理人 水野 勝文 
代理人 岸田 正行 
代理人 菊地 栄 

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