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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25
管理番号 1131452 
審判番号 無効2005-89021 
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-03-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-02-18 
確定日 2006-01-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第4678666号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4678666号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4678666号商標(以下「本件商標」という。)は、「LESLALIQUE」の欧文字を横書きしてなり、平成13年9月17日に登録出願、第25類「被服」を指定商品として、同15年6月6日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用商標
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2623660号商標(以下「引用A商標」という。)は、「LALIQUE」の欧文字を横書きしてなり、平成3年12月27日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同6年2月28日に設定登録されたものである。なお、指定商品については、平成16年9月8日に指定商品の書換登録がされ、第20類「クッション,座布団,まくら」、第24類「敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,布製身の回り品」及び第25類「被服」として書き換えられている。
同じく、登録第972743号商標(以下「引用B商標」という。)は、「LALIQUE」の欧文字を横書きしてなり、昭和45年4月25日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同47年7月20日に設定登録されたものである。なお、指定商品については、平成14年8月7日に指定商品の書換登録がされ、第14類「身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその模造品」、第18類「かばん類,袋物」、第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」及び第26類「腕止め,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品」として書き換えられている。
そして、いずれも現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第21号証(枝番を含む。)を提出した。
請求の理由
(1)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当することについて
(a)本件商標と引用A商標について
本件商標は、「LESLALIQUE」の文字よりなるところ、構成文字中「LES」がフランス語の定冠詞「Le」の複数を表わし、英語の「THE」と同様名詞の前に付して名詞を特定する語であり(甲第8号証ないし甲第10号証)、識別性を具備しない文字部分のため、自他商品識別の標識として機能を果たすのは「LALIQUE」の文字部分であり、「LALIQUE」の文字部分に相応して「ラリック」の称呼を生ずるものである。
このことは、本件商標と同様、フランス語の定冠詞を冠した商標は、定冠詞を用いてない商標と類似すると認定されており、審決例も存在する(甲第11号証)。
したがって、本件商標からは「ラリック」の称呼を生ずるものである。
これに対し、引用A商標は、「LALIQUE」の文字を書してなるので、その構成文字に相応して「ラリック」の称呼を生ずるものである。
(b)本件商標と引用A商標が類似することについて
本件商標と引用A商標は、いずれも「ラリック」の称呼を共通にするものであるので、称呼を同じくする類似の商標である。
また、本件商標の指定商品は、引用A商標の指定商品に包含されるものであるので、商品においても同一または類似する商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することについて
(a)請求人(ラリック)の著名性について
請求人は、フランス国 75008 パリ リュ ロワイヤル 11に所在し、1905年(明治38年)、宝飾デザイナーのルネ・ラリックによって設立されたフランスにおけるガラス工芸品メーカーである(甲第14号証)。
そして、ルネ・ラリックのガラス製品は、花瓶、動物や女性像の置物、デスクアクセサリ及び香水瓶等であり、アール・デコのガラス工芸をリードする世界的な高い評価を得ている(甲第12号証及び甲第19号証)。
また、ラリックのルネ・ラリックの作品は、フランス並びに国際的遺産として、世界で40以上の我が国のルネ・ラリック美術館を含む美術館に展示されており、2000年8月から2001年4月まで横浜のそごう美術館、東京の東京都庭園美術館及び近代美術館等でルネ・ラリック記念展に出品され称賛を博した実績を有しており(甲第17号証及び甲第18号証)、「ラリック」が我が国において周知・著名となっているのである。
さらに、ルネ・ラリックの技術を引き継いだ請求人は、花瓶、動物や女性像の置物等のガラス工芸品、シャンデリア等の照明器具、ガラスタイルやガラスパネル等の建築・インテリア用製品、皿やグラス等のテーブルウェア、香水壜やクリーム容器等の香水メーカー特注製品、ネックレス、ブレスレット、ペンダント、イヤリング、ブローチ等の宝飾品、アールデコとアールヌーボを調和させた時計等を製作している(甲第12号証ないし甲第19号証)。
その上、請求人は、現在、世界中に60店舗のラリック直営店を有しており、英国、イタリア、スペイン、ドイツ、アメリカ及び日本等に現地法人を有し、世界中の1400店舗でラリック商品を販売している(甲第14号証)。
さらに、請求人は、1987年(昭和62年)以来、フランスにおいてフィギュアスケート等の国際競技大会を開催も業務としており、その優勝者に贈られる「ラリック杯」が有名であり、これらのことが新しい顧客層に支持され、ダイナミックなイメージとして受け入れられている(甲第20号証の1及び2)。
また、この「ラリック杯」(トロフィ)は、クリスタルの線の美しい優雅な動きを表現したものとして有名でもある(甲第14号証)。
このように、「ラリック」(LALIQUE)の文字は、請求人の商標として、ガラス工芸品としての商品のみならず、スポーツの企画・運営又は開催者としても我が国において広く一般に知られ、かつ、周知・著名となっているのである。
(b)引用B商標について
引用B商標は、「LALIQUE」の文字を書してなるので、その構成文字に相応して「ラリック」の称呼を生ずるものである。
また、「ラリック」と称呼される商標について、請求人は上記以外に登録第968548号等多数の商品に関する登録商標を所有しており(甲第5号証)、請求人の製造・販売に係る商品に使用しており、これらは我が国において広く親しまれ、かつ、周知・著名となっているものである。
そのため、被請求人の使用商標は、需要者・取引者をして前述の理由と、視覚上の形状表現から、容易に「Lalique」の文字を分離して注目させるので、これが引用B商標と「ラリック」の称呼を共通にする類似の商標と認識し、理解されるものである。
(c)商品の出所について混同のおそれがあることについて
本件商標は、前述したように構成文字に相応して「ラリック」と称呼されるものであり、「ラリック」と称呼される周知・著名な引用B商標とは、称呼上彼比相紛らわしい類似の商標である。
また、本件商標と引用B商標は、その指定商品との関係において、請求人の身飾品たる工芸製品が被服とは密接な関係にあるものである。
そのため、本件商標は、これをその指定商品に使用された場合、被服に関連する商品について、恰も該商品が請求人又は請求人の関連する会社の業務に係る商品であるかのように、出所について混同を生ずるおそれがあるといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当することについて
(a)請求人の商標「LALIQUE」がフランスで周知な商標であること
請求人は、前述のとおりフランスのガラス工芸品メーカーであり、その名称については、ガラス工芸製品(ガラス宝飾品)の高品質と優雅さで、販売製品及び歴史的美術展示等により世界的に周知・著名となっていること前記のとおりである。
そして、「LALIQUE」の文字は、フランス本国の多区分の商品に亘って商標登録されているほか、世界各国にフランス本国と同様の区分に商標登録されており(甲第6号証の1ないし甲第7号証)、世界的に周知・著名となっているものである。
(b)フランス、その他の国での商標登録
請求人は、「LALIQUE」の文字について、ガラス工芸品その他の商品区分に亘り、多数の登録商標を有しており(甲第6号証の1ないし5)、引用A商標及び引用B商標と構成態様を同じくするのは甲第6号証の1ないし3及び5、甲第6号証の4に示す商標である。
また、「LALIQUE」の文字は、フランス本国と同様の区分3.8.11.14.16.18.20.21.24.25.28及び34の各類に亘って商標登録されている(甲第7号証)。
(c)本件商標が不正な意図で使用されていること
本件商標の登録権利者は、本件商標を「Les Lalique」の態様で表わし、商品「被服」についての広告宣伝に使用していることが、被請求人のホームページによっても知ることができるのである(甲第21号証)。
このことは、請求人の名称の周知・著名性を利用し、その登録商標を変形して広告宣伝に不正に利益を得る目的をもって使用していることに外ならないのである。
してみれば、本件商標は、世界的に周知・著名となっている請求人の「LALIQUE」商標の出所表示機能を希釈化させ、「LALIQUE」(ラリック)の名声を毀損させるものである。
(d)不正の目的で出願登録されたこと
本件商標は、周知・著名な請求人の商標と類似する商標をもって、請求人の商標の出所表示機能を希釈させるばかりか、請求人の名声を毀損させる目的で出願したものであり、請求人の商標に対する信義則に反する不正の目的で出願登録したものに該当するのである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に該当し、登録を受けることができないものである。
よって、本件商標の登録は、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
理由
(1)商標法第4条第1項第11号及び同第15号に関する答弁
本件商標は同書同大の文字で一連に「LESLALIQUE」の文字を横書きしてなるものであり、この文字全体が一体不可分のもとして認識されるとみるのが相当と被請求人は思料する。
この点に関し請求人は、本件商標中「LALIQUE」の文字部分が主要部分であると主張するが、「LES」の部分はフランス語で複数形の名詞に付けられる定冠詞であるとしても、我が国においての外国語の認識事情からそのことが一般に広く知られているとまでは認識出来ないのが現在の我が国の現状と思われる。
そうすると、本件商標は、「LALIQUE」の文字部分が主要部分として取引者、需要者に認識されるものでなく、その構成文字全体が一つの語句として取引者、需要者に認識されるものであり、その構成文字全体に応じた称呼「レスラリック」又は「レスラリーク」の称呼を生じ、「LALIQUE」から生ずる「ラリック」又は「ラリーク」の称呼とは語頭部分である2音「レス」の有無に明白な差異があり、称呼上類似の商標と考察することは相当ではないものと思料する。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当する商標でないものと思慮する。
(2)商標法第4条第1項第19号に関する答弁
請求人は、「LALIQUE」の文字が商標として周知著名だと主張しているが、本件商標の態様はあくまでローマ文字ゴジック体で同書同大に「LESLALIQUE」として登録されているものであり、「LALIQUE」と同一と見なされるのは不当である。
本件商標は、上記したように「LESLALIQUE」であるので、これと同一の文字構成なら商標法第4条第1項第19号に該当するといえるが、両者は「LES」の文字の相違もあり、その外観も全く相違するものであり、称呼も上述した通り全く違うものである。さらに、観念も両者共生ぜず、これも類似するものではない。
してみると、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号のいづれの条文にも該当するものではない。

5 当審の判断
請求人の提出に係る甲第12号証の「英和商品名辞典」、甲第13号証の「世界の一流品大図鑑’85」、甲第14号証の「会社案内」、甲第15号証及び甲第16号証のカタログ、甲第17号証及び甲第18号証の「ルネ・ラリック展」の主催者あいさつ及び展示案内によれば、請求人は、1905年、宝飾デザイナーのルネ・ラリックによって設立されたフランスにおけるガラス工芸品メーカーであり、引用B商標を付したガラス工芸品、照明器具、婦人用装飾品等を製作し、販売している。また、1992年の冬季オリンピックでは、ルネ・ラリックの製作に係るクリスタルが金・銀・銅のメダルに嵌められ使用された。そして、ルネ・ラリックの作品は、2000年8月から2001年4月まで横浜のそごう美術館、東京の東京都庭園美術館及び近代美術館等でルネ・ラリック記念展に出品されている事実を認めることができる。
しかして、請求人主張の理由及び請求人の提出に係る前記証拠を総合勘案すれば、「LALIQUE」は、本件商標の登録出願時には請求人の業務に係る商品「ガラス工芸品、婦人用装飾品」等の商標として、被服を取り扱う分野において一定の周知性は認められるものである。
そうすると、本件商標は、その構成中に「LALIQUE」の文字を含む「LESLALIQUE」の文字よりなるものであり、「LES(les)」の語がフランス語の定冠詞の複数を表わし、名詞の前に付して名詞を特定する語であって、識別力の弱いものといえることを考慮すれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「LALIQUE」の文字のみを捉え、請求人の「LALIQUE」を連想、想起し、その商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
なお、被請求人は、本件商標は同書同大の文字で一連に「LESLALIQUE」の文字を横書きしてなるものであり、この文字全体が一体不可分のものとして認識されるとみるのが相当である旨述べているが、本件については、前記認定のとおり、本件商標の構成中の「LALIQUE」の文字のみを捉え、請求人の「LALIQUE」を連想、想起するものと認められるから、この点に関する被請求人の主張は採用の限りでない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第19号について検討するまでもなく、同法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-12-02 
結審通知日 2005-12-08 
審決日 2005-12-20 
出願番号 商願2001-88873(T2001-88873) 
審決分類 T 1 11・ 26- Z (Z25)
T 1 11・ 271- Z (Z25)
T 1 11・ 222- Z (Z25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 飯田 亜紀 
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 小川 有三
岩崎 良子
登録日 2003-06-06 
登録番号 商標登録第4678666号(T4678666) 
商標の称呼 レスラリック、レラリック、ラリック 
代理人 萼 経夫 
代理人 村越 祐輔 
代理人 小宮 知明 
代理人 館石 光雄 

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