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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 230
管理番号 1131363 
審判番号 取消2004-31429 
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-03-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2004-11-02 
確定日 2005-12-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第435714号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第435714号商標の指定商品中「もち」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第435714号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、昭和26年10月18日に登録出願、第43類「菓子及び麺ぽうの類」を指定商品として、昭和28年11月25日に設定登録され、その後、昭和50年1月28日、同59年2月21日、平成5年12月22日及び同15年6月10日の4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成16年9月22日に指定商品を第30類「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつまめ・ゆであずきを除く。),粉末あめ,水あめ(調味料),もち,干菓子,蒸し菓子,掛物菓子,ビスケット,カステラ,ドロップ,アイスクリーム,あめ,砂糖漬け,いり豆,パン」とする書換登録がされているものである。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし第19号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、その指定商品中「もち」について、継続して3年以上日本国内において使用された事実がないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
(2)弁駁の理由
(ア)取消請求に係る商品「もち」について
本件審判の取消請求に係る商品「もち」とは、「糯米を蒸し、臼で搗いて種々の形に作った食物。」(甲第2号証:広辞苑第5版)であり、一般に「おもち」と呼ばれ、いわゆる「切りもち」(甲第3号証の1)、「丸もち」(甲第3号証の2)のように、糯米をついて作り、形を整えた乳白色の食物である。現行の「類似商品審査基準」(特許庁商標課編「類似商品・役務審査基準〔国際分類第8版対応〕」)に基づく商品区分に照らせば、第30類の商品「穀物の加工品」(類似群コード:32F03)の範疇に属する商品である(甲第4号証)。
この点につき、被請求人は、本件商標の指定商品中「もち」の概念には「あん入り草もち」、「あんなし草もち」、「あん入りよもぎ餅」、「あんなしよもぎ餅」が含まれると主張する。
しかし、以下に詳述するとおり、世間一般において、「草もち」や「よもぎもち」、その他のあんの入った餅や砂糖等の甘味料が加味された餅は「もち菓子」と認識されるものであり、穀物の加工品の範疇に含まれる「もち」とは、別異の商品である。
したがって、被請求人は、世間一般に「おもち」と呼ばれる甲第3号証の1及び2に見ることができるような商品についての本件商標の使用を証明しない限り、本件商標は、取消請求に係る商品「もち」についての登録の取消しを免れない。
なお、本件商標の商標登録出願時(昭和26年10月18日)において、採用されていた昭和7年3月調の「類似商品例集」の第43類の項によれば、「餅」と並列して「餅菓子」なる商品が掲載されていることから(甲第5号証)、商品「餅」と「餅菓子」が当該出願当時より異なる商品として、明確に区別されていたことは明らかである。
そして、昭和35年6月1日発明協会発行「改正商標法に基づく新商品区分解説」に掲載される「新旧分類対照表案」(前掲書籍12頁)及び「索引(新旧分類対照)」(同78頁)の内容より明らかなとおり、上記商品「餅」は、昭和35年4月1日より施行された新商標法施行令及び商標法施行規則に基づき定められた新たな「商品の区分」(いわゆる「日本分類」)により第32類の「もち」と表示される商品に移行した(甲第6号証)。なお、この改訂により、商品「餅菓子」は、「もち菓子」と表示され、第30類に分類されている(甲第6号証)。
さらに、その後、平成4年4月1日より、「ニース協定に基づく標章の登録のための商品及びサービスの国際分類」(以下「国際分類」という。)が我が国でも採用され、上記商品「もち」と「もち菓子」は、ともに第30類に属する商品となったが、国際分類に基づく商品区分においても、「もち」は、「穀物の加工品」(類似群コード:32F03)の範疇に属する商品として、一方、「もち菓子」は、「和菓子」(類似群コード:30A01)の範疇に属する商品として、非類似の商品として取り扱われている。
このように、商品類別及び商品区分の変遷をたどれば、本件審判の取消請求に係る商品「もち」が、「もち菓子」とは明確に判別される別異の商品であることは明らかである。
そこで以下に、商品「もち」について詳しく述べ、併せて、「草もち(よもぎもち)」が「もち菓子」の範疇に属する商品であることについて述べる。
(イ)商品「もち」について
(a)広辞苑等の記載
甲第2号証の1のとおり、広辞苑をひもとけば、「もち(餅)」は、「糯米を蒸し、臼で搗いて種々の形に作った食物。」との旨が記載されている。
併せて、広辞苑には、漢字「餅」の使用例として「雑煮-」、「鏡-」、「草-」という記載も見ることができるが、これらは、あくまで「漢字の使用例」であり、「雑煮餅」、「鏡餅」、「草餅」などが「もち(餅)」の下位概念であると社会一般や業界において認識されているということを示すものではない。
なお、広辞苑には、「餅菓子」の説明として、「餅・糯粉・しんこ等を材料として製した菓子。大福餅・柏餅などの類。」との記載があり、「もち」と「もち菓子」が全く異なるものとして説明されている。
また、被請求人が乙第6号証として提出した書籍「百菓辞典」によって、「もち」について調べてみると、「もち 糯(1)もち米。粘り気の多い米。うるち米のデンプンは、アミロースとアミロペクチンとから成っているが、もち米はアミロペクチンのみであり、この成分は粘性が強く、糊化速度が早い。(2)米のほか、粟、黍(きび)などでねばり気が強く、ついて糯にすることができる品種。」と記載されている(甲第7号証の1)。
これに対して、「もち菓子」は、「もちがし 餅菓子 もちを使って作った菓子の総称。」と記載されている。
このように、被請求人が証拠(乙第6号証)として提出した書籍「百菓辞典」においても、「もち」と「もち菓子」が全く異なるものとして説明されている。
さらに、調理用語に関する言葉を多数掲載した「改訂 調理用語辞典」(平成11年4月2日社団法人全国調理師養成施設協会発行)には、「もち」は、「水に浸漬したもち米を蒸し、臼でついたもの。のしもち、きりもち、丸もちなど種々の形がある。もち米のほか、アワ、ヒエ、キビなどのもち種の穀類からも作られる。・・・」と説明されている。
一方、「もち菓子」は、「もち米、もち米粉、上新粉などを材料にした菓子の総称。あべかわもち、おはぎ、切りざんしょう、大福もち等、その種類は多い。」と掲載されており、やはり、「もち」と「もち菓子」を異なる商品として説明している(甲第7号証の2)。
昭和48年に初版本が発行された「新和菓子体系(上巻)」(昭和54年9月25日株式会社製菓実験社発行)には、「餅と餅菓子について」と題する項があり、「もち」について、「糯米を蒸して臼でつき、用途によって、それぞれ整形したもので、お供え、熨斗餅、鳥の子餅、豆餅、誕生餅、小餅、菱餅などがある。」と記載されている。
「もち菓子」については、「糯米または糯米粉、粳米粉(新粉)、砂糖、葛粉その他の粉類、果実類などを使用し、主に餡を包み、品種によって椿、柏、桜、笹葉などを使用して仕上げたものである。」と記載されており(前掲書197頁)、併せて、「もち菓子」に「草もち」が包含されている旨の記載がある(前掲書200頁)。このように、菓子について詳しい内容が記載される書籍においても、「もち」と「もち菓子」とが明らかに異なる商品として詳しく説明されており、また、「草もち」が「もち菓子」であることが明記されている(甲第7号証の3)。
さらに、本件商標の出願時より、そう遠くない時期(昭和38年頃)に発行されたと考えられる書籍「お菓子の百科」(柴崎勝弥著(昭和38年2月2日にまえがき執筆)株式会社光琳書院発行)には、「菓子分類表」が掲載されており、それによれば、「餅菓子」は、「和生(菓子)」の下位に分類され、「大福、州浜、団子、磯焼き」といった菓子を包含するものであることが記載されている(甲第7号証の4)。昭和52年に初版本が発行された「お菓子読本」(昭和53年1月1日明治製菓株式会社発行)にも、菓子について、詳しい分類がなされた記述並びに表が掲載されているところ、これによると、「餅菓子」は、「和生菓子」の下位概念に属する商品であり、「餅菓子」には、「大福餅、桜餅、草餅、柏餅」等が含まれていることが明らかである(甲第7号証の5)。
以上を要するに、「もち」は、糯米をついて作るものであり、甲第3号証の1及び2の写真に見ることのできるような食物又はもちの材料として使用する穀物を指し示すこと、一方、「もち菓子」は、もち又はもち米を用いて作られるお菓子であることは、被請求人提出の証拠(乙第4号証及び乙第6号証)及び請求人提出の証拠「広辞苑」(甲第2号証)並びに「百菓辞典」(甲第7号証の1)、さらに、「改訂調理用語辞典」(甲第7号証の2)及び「新和菓子体系(上巻)」(甲第7号証の3)の記載内容より明らかである。そして、「もち菓子」が「もち」の概念に含まれるものではなく、「菓子」に属するものであること、及び、「草もち(よもぎもち)」が和菓子の範疇に属するものであることについては、菓子について、詳しい記述のある「お菓子の百科」(甲第7号証の4)及び「お菓子読本」(甲第7号証の5)より明らかである。
(b)もちの製造業者及びその取扱い商品(業界の実情その1)
2005年食品マーケティング便覧NO.3(平成16年11月26日株式会社富士経済発行)によれば、平成15年度の包装もちの市場規模は、約480億円であり、売上の上位6社が市場全体の78.4%を占有している(甲第8号証)。
上記もち製造業者のうち、業界最大手の佐藤食品工業のインターネットホームページ(甲第9号証)によれば、同社は、「鏡餅」と「切りもち」を主たる商品として取り扱っているが、「大福」、「草餅」、「よもぎ餅」等の「もち菓子」は、取り扱っていないことが明らかである。
また、請求人が上記各社の取扱い商品について調べる限りにおいても、各社は、「もち」を製造販売するものであるにもかかわらず、「もち菓子」を販売している事実を確認することはできなかった。
かかる事実は、「もち」と「もち菓子」とが異なる製造業者によって、製造販売される別異の商品であることを示す証左にほかならない。
(c)商品「もち」の商品表示に関する法規に基づいた分類(業界の実情その2)
加工食品品質表示基準(平成16年9月14日農林水産省告示第1705号)第3条第5項に照らせば、「もち」は、「対象加工食品」であり(甲第10号証の1)、平成16年5月26日付けの「加工食品品質表示基準改定案別表2に掲げる加工食品の範囲の考え方(案)」(農林水産省:商品・安全局表示・規格課)には、上記基準における「もち」の範囲について、「もち米又はもち米と米粉、とうもろこしでんぷんを主原料として製造、包装したまるもち、のしもち、切りもち、鏡餅等を対象とします。・・(中略)・・・みたらし団子、白玉団子、大福もち、さくらもち、かしわもちのような和菓子については、対象に含まれません。」と明記されている(甲第10号証の2)。この農林水産省案についてのパブリックコメントを踏まえて、同省が最終的にまとめた「加工食品品質表示基準改正(原料原産地表示等)に関するQ&A」には、「もち」の範囲について、さらに詳しく「・・・みたらし団子、白玉団子、大福もち、さくらもち、かしわもちのように砂糖などで調味してあるものや、あんを入れたものは、和菓子と認識されるため対象に含まれません。」と明記してあり、さらに、「あんを入れた草もちに原料原材料表示は必要ですか。」という問いについて、同省は、「草もちにあんを入れたものは和菓子の範囲に考えられるので、原料原産地表示の義務は、ありません。」と回答している。また、「砂糖が入ったもちに原料原産地表示は必要ですか。」という問いについては、「砂糖が入ったもちについては、和菓子の範囲と考えられるので、原料原産地表示の義務はありません。」と回答している(甲第10号証の3)。
加工食品品質表示基準は、JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)第5章(品質表示等の適正化)の19条の8(製造業者等が守るべき表示の基準)の規定に基づき定められた基準であり、甲第10号証の2及び3は、当該基準の具体的な運用指針を示すものであるところ、これらより、食品の品質表示を管轄する官庁においても、「もち」と「和菓子」を異なる商品として取り扱っていること、そして、「あんを入れた草もち」及び「砂糖を入れたもち」は、「和菓子」の範囲に含まれるものであると認識していることが明らかである。
そして、これらの基準等より、食品業界において、「もち」と「もち菓子」とが異なる商品として理解・認識され、「草もち(よもぎもち)」は、「和菓子」と認識されていることが理解できる。
(d)一般消費者の認識(業界の実情その3)
書籍「和菓子入門」(平成15年6月13日株式会社主婦と生活社発行)の「もち菓子」の項には、「うぐいすもち」、「大福もち」、「道明寺桜もち」、「桜もち」、「わらびもち」、「つばきもち」、「栗もち」、「ゆずもち」、「梅が枝もち」等の「もち菓子」の製法や写真が掲載されている(甲第11号証)。
書籍「新・お菓子の基本 あこがれの洋菓子と和菓子」(平成16年10月15日株式会社SSコミュニケーションズ発行)の「四季の和菓子」の項には、「草もち」、「桜もち」、「うぐいすもち」、「柏もち」、「いちご大福」、「わらびもち」、「ごまもち」、「花びらもち」等の「もち菓子」の製法や写真が掲載されている(甲第12号証)。
書籍「手作りお菓子大事典」(平成17年1月7日株式会社インデックス・マガジンズ発行)の「和菓子」の項には、「桜もち」、「うぐいすもち」、「くずもち」、「黒砂糖入りくずもち」、「わらびもち」、「ごまあん大福」、「梅干し大福」等の「もち菓子」の製法や写真が掲載されている(甲第13号証)。
これらの一般消費者向けの書籍に、「草もち」、「桜もち」、「大福もち」、「いちご大福」、「栗もち」、「花びらもち」が「もち菓子」又は「和菓子」のカテゴリーに含まれる商品(食べ物)として、その製法や写真が掲載されていることより、一般消費者をして、「草もち」、「桜もち」、「大福もち」、「いちご大福」、「栗もち」、「花びらもち」等は商品「もち菓子」であって、「もち」とは明らかに異なる商品であると認識されているということができる。
(e)業種の違い(業界の実情その4)
甲第9号証に見ることができる佐藤食品工業株式会社のインターネットホームページに掲載されている同社の会社概要によれば、同社の「事業の種類」は、「1.包装餅製造販売」、「2.包装米飯製造販売」、「3.即席白玉及び白玉粉製造販売」、「4.その他」であり、「和菓子」の製造販売は、含まれておらず、同社は、現実に「和菓子」を販売していない。
これに対して、被請求人が頒布する同社の会社案内(甲第14号証)に掲載されている「会社概要」によれば、被請求人の事業内容は、「菓子の製造販売」、「喫茶店の経営」、「あんの製造販売」、「冷菓の製造販売」、「パン、ケーキ類の製造販売」、「飲食店の経営」、「キャラクターグッズの販売」、「その他」であり、そこに「もちの製造販売」は、含まれていない。
また、会社案内に「・・・現在では全国規模の菓子メーカーへと成長を遂げています。」(同2頁「ごあいさつ」の項)、「・・・業界屈指の菓子メーカーまで成長したのも、・・・」(同「初心とフロンティア精神で挑戦。」の項)とあるとおり、被請求人は、「菓子メーカー」である。
甲第9号証から明らかな佐藤食品工業株式会社の取扱い商品と、本件審判において明らかとなった被請求人の取扱い商品とは、全く異なるものであり、それぞれの業種・業界が異なるものであることを容易に推測することができる。
古来より、「餅は餅屋」というように、「もち」は、もち製造業者の取り扱いに係るものであり、一部の例外を除き、「和菓子」を「もち」と同程度の規模で取り扱うもち製造業者は、存在しない。そして、砂糖やあんを用いた美味しいお菓子を世に送り出すことを信念とする和菓子の製造業者の中には、糯米をついただけの、いわば未加工の状態ともいえる「もち」を和菓子と同程度の規模で取り扱う者はいないと思われる。
以上のとおり、一般的に、「もち」は、「もち製造業者」によって、製造販売されるものであり、和菓子製造業者の取り扱いに係る商品ではない。
つまり、「もち」と「もち菓子」とは、異なる業種の製造業者の取り扱いに係る商品であり、「もち菓子」に含まれる「草もち」や「よもぎもち」は、主として和菓子の製造業者によって取り扱われている。
(f)特許庁における商品「もち」の取り扱い
甲第4号証(特許庁商標課編「類似商品・役務審査基準〔国際分類第8版対応〕」)に明示されているとおり、商品「もち」は、第30類の商品「穀物の加工品」(類似群コード:32F03)の範疇に属する商品であり、「もち菓子」は、「和菓子」(類似群コード:30A01)の範疇に属する商品であることは明らかである。また、「もち」と「もち菓子」は、備考類似の関係にもない。
さらに、特許庁は、商品「草もち」、「あんころもち」、「わらびもち」、「桜餅(チョコ入り)」、「草餅(チョコ入り)」、「羽二重餅」、「大福もち」、「本よもぎを使った大福餅」等の「もち菓子」について、30A01の類似群コードを付与している(甲第15号証の1ないし8)。
このような商品「もち」と、「草もち」及び「もち菓子」を明らかに異なる商品とした特許庁の取り扱いは、上記(b)ないし(e)で詳述した業界の実情に合致しており、極めて妥当な内容であると考えられる。
(g)まとめ
以上のとおり、商品「もち」は、広辞苑や菓子用語に関する辞典や書籍等において、「草もち」や「もち菓子」とは異なる商品として説明されており、食品の表示方法に関する法規により、「もち菓子」と明確に区別される商品であって、かつ、「もち」を主な取扱い商品とする、もち製造業者によって製造販売され、一般消費者間においても、「もち菓子」とは明確に区別されているものである。さらに、特許庁も、商品「もち」と「もち菓子」を全く異なる商品として取り扱っている。
したがって、被請求人は、世間一般に「おもち」と呼ばれており、甲第3号証の1及び2に見ることができるような商品について、本件商標の使用を証明しない限り、本件商標は、取消請求に係る商品「もち」について、その登録の取消しを免れない。
(ウ)被請求人の立証に係る商品について
被請求人は、商品「ひよ子」(被請求人の表現では「名菓「ひよ子」)と「あっぱれひよ子の博多もち」が箱に詰められた状態を撮した乙第9号証の1の写真(以下「箱写真」という。)をもって、本件商標を商品「もち」について使用していると主張するが、以下の(a)ないし(d)のとおり、当該箱写真は、本件商標を取消請求に係る商品「もち」について使用していることを立証するものではない。
(a)商品について
箱写真に示された箱(丸箱)に入れられた商品「ひよ子」は、「まんじゅう」であることは周知の事実であると考えられ、これが「和菓子」に属する商品であることは明らかである。また、商品「あっぱれひよ子の博多もち」は、もち生地であんを包んだ「もち菓子」である。
なお、被請求人は、商品「ひよ子」と「あっぱれひよ子の博多もち」の詰め合わせを販売していると主張するが、そのような詰め合わせ商品が現実に販売されていたことを確認し得る証拠はない。
(b)商標の構成について
箱写真の箱に表示されている鶏の雛が卵の殻から出てきている様子を表現した図形及び卵の殻の破片の図形、「吉野堂」、「名菓」及び「ひよ子」の文字を組み合わせた標章(以下「使用商標」という。)は、以下の点において本件商標と異なる。
(b-1)「ひよ子」の文字の位置
本件商標の構成中の「ひよ子」の文字は、構成中の左側に、卵の殻の破片の上部に配されているのに対し、使用商標の「ひよ子」は、標章の中心部分に配されている。
(b-2)散らばった卵の殻の破片の位置
本件商標の卵の殻の破片は、「ひよ子」の文字の下に配されているのに対し、使用商標の卵の殻の破片は、その構成中の左端に配されている。
(b-3)雛の図形の配色
本件商標の構成中の雛の図形は、黄色の単色であるのに対し、使用商標の雛の図形は<頭頂部から脚部にかけての図形左側部分が白色で縁取られている。
(b-4)「銘菓」と「名菓」の文字
本件商標の構成中の「ひよ子」の上に配されている文字は、「銘菓」であるが、使用商標の「ひよ子」の文字の右肩部分に配されている文字は、「名菓」である。
(b-5)「吉野堂」の文字の有無
使用商標の「ひよ子」の文字の左下部分には、正方形で囲まれた「吉野堂」が表示されているが、本件商標には、そのような文字が存在しない。
以上に掲げた差異により、本件商標と使用商標とは、社会通念上同一ということはできない。なお、そもそも箱写真は、撮影者、撮影年月日が不明であり、本件審判の証拠として採用されるべきものではないことを付言しておく。
(c)その他
被請求人の提出に係る乙第23号証の2(被請求人の取扱い商品を掲載したカタログ「ひよ子百菓」)を調べてみても、「もち」に該当する商品は、見当らない。
なお、被請求人は、登録第3313700号商標「あっぱれひよ子の博多餅」を所有しているところ、その指定商品は、「もち菓子」である(甲第16号証の1及び2)。かかる登録商標の存在は、被請求人が登録商標「あっぱれひよ子の博多もち」を使用する商品を国際分類第30類の和菓子の範疇に属する「もち菓子」であると認識していることの証左にほかならない。
また、被請求人は、商標の構成中に「餅」の文字を含む登録第3313679号商標「博多蔵餅」、登録第3313699号商標「あっぱれ博多餅」、登録第4388235号商標「あっぱれけいききがんもち/天晴景気祈願餅」も所有しているが、これらの登録商標に係る指定商品も「もち菓子」又は「餅菓子」である(甲第17号証の1ないし甲第19号証の2)。
上記4件の登録商標は、いずれも、商品「もち」と「もち菓子」とを明確に区別している国際分類に基づく商品の区分に従って、商標登録出願されたものである。これらの登録商標の存在よりすれば、被請求人自身も、自己の取り扱いに係る商品について、「もち」ではなく、「和菓子」の範疇に属する「もち菓子」であると認識していると考えられる。
(エ)小 括
以上のとおり、本件審判の取消請求に係る商品「もち」は、世間一般には、「おもち」と呼ばれる甲第3号証の1及び2に見ることができるような商品であり、現行の商品の区分に照らせば、第30類の商品「穀物の加工品」の範疇に属するところ、被請求人が本件商標を使用していると主張する商品は、いずれも砂糖やあんが入った「和菓子」、「もち菓子」又は「生菓子」の範疇に属する商品であり、本件取消請求に係る商品「もち」ではない。
すなわち、被請求人は、取消請求に係る商品「もち」について、本件商標の使用を証明していない。ゆえに、本件商標は、その指定商品中「もち」について、その登録を取り消されなければならない。
(3)被請求人の答弁に対する弁駁
被請求人は、商品「あっぱれひよ子の博多もち」について、その売上高や販売数量、商品包装資材の仕入れ実績、個別の包装紙(個装紙)の受発注の内容、店頭における販売状況、広告の実績等を種々述べているが、被請求人の主張及び提出された証拠からは、取消請求に係る商品「もち」についての本件商標の使用は、一切明らかになっていない。
(4)以上に詳述したとおり、被請求人が本件商標を使用すると主張する商品「あっぱれひよ子の博多もち」は、もち生地であんを包んだ「もち菓子」に該当する商品であり、また、そもそも、被請求人が本件商標と社会通念上同一であると主張する使用商標は、本件商標と全く異なる図形であり、社会通念上同一と認めることのできないものであるから、被請求人は、取消請求に係る商品「もち」についての本件商標の使用を証明していないといわざるを得ない。
ゆえに、本件商標は、その指定商品中「もち」について、その商標登録の取消しを免れない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第26号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)使用事実の立証に係る時期的要件について
本件取消審判の請求日は、平成16年11月2日であり、その登録は、同年11月22日である。
したがって、以下、被請求人が本件審判の請求の登録前3年以内(平成13年11月22日から3年以内)に本件商標を審判請求に係る指定商品「もち」に使用していること、また、上記使用がいわゆる駆け込み使用(商標法第50条第3項)に該当しないこと、すなわち、被請求人の使用が本件審判請求前3月である平成16年8月2日から本件審判請求の登録の日である同年11月22日までの間の使用ではないことを証明する。
(2)請求に係る指定商品「もち」について
(ア)本件商標の書換登録後の指定商品は、上記第1のとおりであり、本件取消請求に係る指定商品は、上記指定商品中の「もち」である。
この「もち」は、書換ガイドラインによると、第30類の類似群コード「32F03」に属する商品である(乙第2号証)。すなわち、「類似商品・役務審査基準」によると、当該「もち」は、「穀物の加工品」に含まれる商品であるものと解される(乙第3号証)。そこで、当該「もち」に含まれる具体的商品について、以下、検討する。
(イ)「もち」について
(a)「餅(もち)」の一般的概念
広辞苑の「餅(もち)」の項目には、「もち米を蒸し、臼でついて種々の形に作った食物。多く正月・節句や祝事につく。「雑煮-」「鏡-」「草-」とあるから(乙第4号証)、「穀物の加工品」としての「餅」、すなわち「もち」の概念には、少なくとも「雑煮餅」「鏡餅」「草餅」が含まれることがわかる。
また、「食の百科辞典」(乙第5号証)の「餅」の項目を見ると、「丸餅、鏡餅、勾餅、沓形餅、切餅、慰斗併、菱餅、草餅、大豆餅、小豆餅、粟餅、その他、粽、団子など」との記載があり、「餅」、すなわち「もち」の概念には、少なくとも「草餅、大豆餅、小豆餅、粽、団子」等が含まれることがわかる。
ここで、「百菓辞典」(乙第6号証)の「草餅」の項目をみると、「もち草と呼ばれるヨモギ(モグサ)や、ハハコグサなどの葉を入れてついたもち。また、このもちであんを包んだもの。・・・関東では草餅、関西ではよもぎ餅と呼ばれるという。」との記載、及び作り方として「(a-1)蒸したもち米とヨモギをつきまぜて作る。切りもちやあんもちにする。(a-2)白米粉をこねて蒸し、ゆでて刻んだヨモギを混ぜて、普通のもちのようにつく。あんころもちなどにする。」との記載があり、「草餅」には、いわゆるあんを包んだものと、あんの無いものが含まれることがわかる。ちなみに、「草餅」をインターネットの検索エンジンで調べると、例えば、乙第7号証に示されるように、あん入りとあんなしのいずれも「草餅」といわれていることがわかる。
そうすると、いわゆる「餅(もち)」の概念中には、「あん入り草餅」あるいは「あん入りよもぎ餅」等のように、一般に「餅菓子」とみなされているものも含まれていると解される。
さらに、インターネットのホームページ「全国名菓探訪」の「知」のページ(乙第8号証の1)によると、「餅」の説明として、「水分や砂糖を加えると柔らかくなるので、餅菓子のバリエーションは数限りなくあります。」とあり、かかる説明は、「餅」の概念中に「餅菓子」が含まれることを前提としている。
以上の検討結果からすると、いわゆる「餅(もち)」の概念中には、鏡餅や切餅のほかに、少なくとも「あん入りの草餅」、「あんなしの草餅」、「あん入りのよもぎ餅」、「あんなしのよもぎ餅」等の餅菓子とみなされるものが含まれているものと考えられる。
(b)「餅菓子」について
広辞苑の「餅菓子」の項目(乙第4号証)には、「餅・糯粉・しん粉などを材料として製した菓子。大福餅・柏餅などの類」との記載があることから、「餅菓子」の概念には、少なくとも「大福餅」「柏餅」等が含まれ、さらには、「餅」、すなわち「もち米を蒸し、臼でついて種々の形に作った食物」を材料として製した菓子も「餅菓子」であるから、当該「餅菓子」の概念中には、「あん入り草餅」、「あん入りよもぎ餅」等も含まれるものと考えられる。
(c)以上の検討によると、「餅(もち)」の概念中には、「鏡餅」、「切餅」等が含まれ、一方、「餅菓子」の概念中には、「大福餅」、「柏餅」等が含まれ、さらに、「餅(もち)」と「餅菓子」のいずれにも含まれる概念として、「あん入り草餅」、「あんなし草餅」、「あん入りよもぎ餅」、「あんなしよもぎ餅」等が存在することがわかる。
(ウ)取消請求に係る指定商品「もち」について
上記(イ)の検討結果を踏まえて、本件取消請求に係る指定商品「もち」に含まれる具体的商品について検討すると、取消請求に係る「もち」には、「鏡餅」、「切餅」等のいわゆる「餅(もち)」と認識される商品が含まれることは明らかである。加えて、上記(イ)で検討したように、いわゆる「餅」ともとらえられるし、「餅菓子」ともとらえられる「あん入り草餅」「あんなし草餅」「あん入りよもぎ餅」「あんなしよもぎ餅」等も、当然の帰結として、本件取消請求に係る指定商品「もち」に含まれるものと考えられる。
なお、本件取消請求に係る指定商品「もち」に、上記「草餅」「よもぎ餅」等が含まれることは、例えば、一般的な餅店において、鏡餅と大福餅、鏡餅と草餅等が同一店舗で販売されている事実からも肯定し得る(乙第8号証の2及び3参照)し、「草餅」等の「餅菓子」と観念されるものも「穀物の加工品」に変わりないから、このように解しても不自然ではない。
そうすると、被請求人は、本件取消請求に係る指定商品「もち」の概念に含まれるこれらの商品中、いずれか一について、使用を証明すれば、当該取消請求に係る指定商品「もち」について、取消しを免れることになる(商標法第50条第2項)。
以上の検討結果に基づいて、以下、使用の事実を証明する。
(3)被請求人が使用している商標について
本件商標は、半分割れた白色の卵の殻から、首及び胴体上半部が出てきた黄色のひよこが描かれており、ひよこの前部には、白色の割れた殻が転がっており、その殻の略上部に黒色で「物名塚飯」の横書き文字及び黒色の「銘菓」の縦書き文字、さらに、黒地白縁の「ひよ子」の縦書き文字が表記され、また、上記のひよこの頭上部に横書きした黄色の「標商録登」の文字が表記され、これらの文字及び図形は、赤い地に描かれているものである。
これに対して、被請求人の使用商標は、乙第9号証の1に示すように、半分に割れた白色の卵の殻から、首及び胴体上半部が出てきた黄色のひよこが描かれており、ひよこの前部には、白色の割れた殻が転がっており、その殻と上記ひよこの間には、黄色の縦書き文字で「名菓」、及び黒字白縁の「ひよ子」の縦書き文字が表記され、さらに、当該「ひよ子」の文字の下部に四角で囲まれた「吉野堂」の文字が表記され、これらの文字及び図形が赤い地に描かれており、本件商標と同一視できるものである。
ここで、両者を細部において比較すると、使用商標は、本件商標における「標商録登」、「物名塚飯」の文字が存在しない点、本件商標における黒色の「銘菓」の文字が、使用商標では黄色の「名菓」となっている点、本件商標における「ひよ子」の文字が毛筆体であるのに対して、使用商標における「ひよ子」が多少デザイン化された文字である点、白色の割れた殻の位置が本件商標では、文字「ひよ子」の下部に描かれているのに対して、本件商標における白色の割れた殻は、文字「ひよ子」の横に描かれている点等、細部については多少の相違点がある。
しかしながら、両者を比較すると、半分割れた白色の卵の殻から、首及び胴体上半部が出てきた黄色のひよこの図形、白色の割れた殻が転がっている図案、さらに、黒地白縁の「ひよ子」の縦書き文字が表記されていること、各文字及び図形が赤い地に描かれている点等、本件商標の極めて特徴的な構成が共通しているから、両者は、外観において同視される図形からなる商標に該当するものと考えられる。
よって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められるものである(商標法第50条第1項)。
(4)被請求人の使用事実について
(ア)使用に係る商品について
(a)「あっぱれひよ子の博多もち」の商品について
被請求人は、平成7年4月2日から「あっぱれひよ子の博多もち」(乙第9号証の2ないし4)の製造販売を開始し、現在に至るまで継続的に製造販売している。この商品は、餡を餅で包んだ商品であり、通常の餅を用いた「しろ餅」(赤い個装紙)(乙第9号証の3の3段目の写真)と、餅によもぎを混ぜた「よもぎ餅」(緑の個装紙)(乙第9号証の3の2段目の写真)の2種類がある。これらの商品は、本件取消請求に係る「もち」の概念に含まれる。
これらの餅は、通常は、5個入り箱詰(乙第9号証の2)、10個入り箱詰(乙第9号証の4)、あるいは、個別にバラで販売されるものであるが、名菓「ひよ子」と「あっぱれひよ子の博多もち」を詰め合わせて販売する場合には、乙第9号証の1の箱写真に示すように、本件商標が蓋上面に付された「名菓ひよ子・和菓子セット丸箱」(以下「丸箱」という。)に、「あっぱれひよ子の博多もち」(しろ餅及びよもぎ餅)を名菓「ひよ子」とともに詰め合わせて販売しているものである。
上述のように、「あっぱれひよ子の博多もち」の少なくとも「よもぎ餅」は、本件取消請求に係る「もち」に含まれる「餅菓子」であるから、「あっぱれひよ子の博多もち」の「よもぎ餅」を、上記の丸箱に詰めて販売する行為は、本件商標の指定商品「もち」についての本件商標の使用に該当する。
(a-1)「あっぱれひよ子の博多もち」の販売実績
商品「あっぱれひよ子の博多もち」の平成7年から同16年までの売上高と生産数量を乙第10号証に示す。乙第10号証によると、被請求人は、商品「あっぱれひよ子の博多もち」を少なくとも本件審判において証明すべき使用期間である平成13年から同16年までの間において、製造販売を行っていたことがわかる。ちなみに、乙第10号証によると、平成13年度は、「あっぱれひよ子の博多もち」単独で約1億円の売上、生産数量は、118万2,000個であった。なお、「あっぱれひよ子の博多もち」の2001年度(平成13年度)ないし2004年度(平成16年度)の年間売上データを乙第11号証の1ないし4に示す。ちなみに、2002年(平成14年度)の純売上は、7,803万2,581円であった。
(a-2)販売店舗
乙第12号証には、被請求人の平成14年1月1日現在の販売店舗所在地の一覧が示されている。被請求人は、「あっぱれひよ子の博多もち」を飯塚地区ベーカリー「サンミッシェル」を除いて、乙第12号証に掲載された全ての販売店舗において、販売していた。また、被請求人は、上記販売店において、「あっぱれひよ子の博多もち」を継続的に販売している。
(a-3)包装資材の仕入れ実績
被請求人は、乙9号証の1に示す「丸箱」について、平成13年から同16年までの間、凸版印刷株式会社から、乙第13号証の第4頁の上段に示す数量を仕入れた。その請求書を乙第14号証ないし乙第16号証に示す。
このように、被請求人は、平成13年から同16年にかけて、「丸箱」を大量に仕入れて、上記「あっぱれひよ子の博多もち」の包装箱として使用した。なお、上記各請求書の「品名」にあるように、上記丸箱は、本来、名菓「ひよ子」7個入の箱であるが、乙第9号証の1のように、名菓「ひよ子」と「あっぱれひよ子の博多もち」の詰め合わせ箱としても用いられるものである。
(a-4)個装紙について(乙第13号証の第1頁参照)
被請求人は、「あっぱれひよ子の博多もち」の「しろ」と「よもぎ」の2種類の個装紙(乙第9号証の3写真に示す個別包装紙)について、平成13年から同16年までの間、村上コーポレーション株式会社より乙13号証の第1頁に示す数量を仕入れた。例えば、「しろ」と「よもぎ」について、平成14年5月1日に各々18巻(1巻/1,000m)、金額各201,600円の仕入実績があり、その請求書(写)を乙第17号証の1に示す。
なお、個装紙については、1巻1,000mのロール状で納品され、包装機械にてカッティング及び個別包装が行われる。また、「しろ」と「よもぎ」について、平成15年5月1日に各々計15巻の仕入実績があり、その請求書(写)を乙第17号証の2に示す。このように、被請求人は、商標「ひよ子」の付された「あっぱれひよ子の博多もち」の個装紙を平成13年から同16年のまで間に大量に仕入れ、同「あっぱれひよ子の博多もち」の販売に使用していた。この「あっぱれひよ子の博多もち」の一部は、乙第9号証の1に示すように、上記の丸箱に詰められて販売された。
(a-5)店頭の販売状況
「あっぱれひよ子の博多もち」の平成13年(2001年)3月24日当時の店頭の販売の様子を乙第18号証に示す。この写真は、ひよ子ランド本店(福岡市南区向野在)のものである(乙第12号証参照)。当該写真は、本件商標の使用期間外のものであるが、使用証明期間である平成13年11月23日以降も同様に各店舗にて販売されている。当時の店頭販売用のプライスカードを乙第19号証に示す。同プライスカードからは、「あっぱれひよ子の博多もち」をバラ売りしていた事実が確認できる。
(a-6)広告、チラシ等
被請求人は、平成13年(2001年)12月28日付けの西日本新聞に「あっぱれひよ子の博多もち」の広告を掲載した(乙第20号証)。さらに、被請求人は、平成13年12月及び同15年に「あっぱれひよ子の博多もち」の広告が掲載されたチラシを新聞折り込み広告として頒布した(乙第21号証及び乙第22号証)。また、被請求人は、「あっぱれひよ子の博多もち」の広告が掲載されたパンフレット(乙第23号証の1及び2)を作成し、2003年(平成15年)6月に当該パンフレットを頒布した。
これらの事実から、被請求人は、平成13年から同15年にかけて、「あっぱれひよ子の博多もち」を販売していた事実が確認できる。
(イ)その他
その他、本件商標の使用証明期間外(平成13年11月23日以前)であるが、被請求人が本件取消請求に係る指定商品に、本件商標を使用していた事実を参考までに、以下、明らかにする。これらの事実は、被請求人が以下の使用時期から上記使用証明期間内に至るまで、本件商標の使用を引き続き行っていたことの間接的な裏付けになるものと思料する。
(a)被請求人は、名菓「ひよ子」の販売の際に本件商標が付された丸箱を使用している広告を掲載したパンフレットを2004年(平成16年)11月に頒布した(乙第24号証)。
(b)被請求人は、平成13年7月20日付けの西日本新聞に「あっぱれひよ子の博多もち」の広告を行った(乙第25号証)。
(c)被請求人は、平成12年12月28日付けの西日本新聞に「あっぱれひよ子の博多もち」の広告を行った(乙第26号証)。
(5)結語
以上のように、被請求人は、本件審判に係る使用期間である平成13年11月23日以降において、本件商標をその指定商品「もち」について、使用していた。また、その使用期間は、いわゆる駆け込み使用期間である平成16年8月2日から本件審判請求の登録日までの期間に該当しない。すなわち、上記使用事実からすると、被請求人は、本件商標を本件取消審判請求に係る指定商品について、上記所定の時期に使用していたことは明らかである。
よって、本件取消審判は、明らかに認容されないものである。
第4 当審の判断
1 本件取消請求に係る商品「もち」について
本件審判の取消請求に係る商品「もち」の解釈について、当事者間に争いがあるので、まず、この点について、以下に検討する。
なお、商品「もち」の解釈については、両当事者間において争われた別件の取消審判2004年第31422号及び同審判2004年第31423号事件がある。
(1)本件商標は、上記第1のとおり、昭和26年10月18日に登録出願されたものであって、その後、指定商品について書換登録がされているものである。その出願当時は、大正10年法律第99号による商標法の下で、商標法施行規則(農商務省令第36号)第15条に規定する70類別からなる商品類別が適用されており、本件商標の指定商品も同類別に従い、第43類「菓子及び麺ぽうの類」と表示されていたものである。
特許庁商標課偏「商品類別集」(社団法人発明協会発行)によれば、本件商標の登録出願時に採用されていた昭和7年3月調の「類似商品例集」には、第43類に属する商品として「菓子及麺麭の類」の包括概念の下に、「一『干菓子類』、二『蒸菓子類』、三『西洋菓子』、四『其の他』、五『麺麭』」という中概念を設け、さらに、「一『干菓子類』」には、小概念として、「イ『八つ橋、松風焼、紅梅焼、煎餅、カリントー』、ロ『打菓子、落雁、おこし、五家宝』」が例示され、以下、符号「ハ」ないし「ル」の小概念下に、各商品が例示されていた。
また、「二『蒸菓子類』」には、小概念として、「イ『羊羹』、ロ『饅頭、ぱんぢゆう』、ハ『最中』、ニ『餅菓子』、ホ『餅、あんころ、団子、チマキ』」、「ヘ『しるこ、ぜんざい』」が例示されていた。そして、これらの符号「イ行」に属する商品と符号「ロ行」に属する商品と符号「ハ行」・・・(以下同じ)とは、互いに非類似の商品群として取り扱われていた。
この商品類別は、昭和34年法律第127号による商標法に基づく34区分からなる「商品の区分」に改正され、上記例示中の「餅菓子」は、第30類「菓子、パン」中の「和菓子」に属する「もち菓子」に移行し、同じく、「餅」は、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(他の類に属するものを除く。)」中の「加工穀物」に属する「もち」に移行した。なお、上記「和菓子」に属する商品として「もち菓子」とともに、「蒸し菓子、羊かん、もなか、だんご、あんころ、汁粉、ぜんざい」等が例示されている。
さらに、平成3年法律第65号による商標法改正に基づく国際分類の採用により、この「もち菓子」は、第30類「菓子及びパン」中の「和菓子」に属する「もち菓子」として、「もち」は、第30類「穀物の加工品」に属する「もち」として、それぞれ例示された。また、昭和34年商標法において、「もち菓子」及び「もち」と平仮名表示になったが、それは、当時の仮名表記の都合上、そのように表現したものであり、漢字表示の「餅菓子」及び「餅」と実質的に何ら変わりはないというべきである。
これら商品の類別(区分)の変遷からすれば、「餅」と「餅菓子」とは、本件商標の登録出願時(昭和26年10月18日)においては、別異の商品として取り扱われ、その後の類別(区分)が変更されてからも、別異の商品として取り扱われているものといえる。
しかして、本件商標は、上記のとおり、指定商品について書換登録がされているが、書換登録後の商品「もち」は、本件商標の登録出願時に指定されていた「餅」と実質的に同じ商品であり、書換登録後の商品「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつまめ・ゆであずきを除く。)」に含まれると考えられる「もち菓子」とは、別異の商品というべきである。
(2)以上の補足として、商品「もち」について見ると、各種辞典類には、「糯米を蒸し、臼で搗いて種々の形に作った食物。多く正月・節句や祝事に搗く。」(甲第2号証、乙第4号証:「広辞苑」)、「水に浸漬したもち米を蒸し、臼でついたもの。のしもち、切りもち、丸もちなど種々の形がある。もち米のほか、アワ、ヒエ、キビなどのもち種の穀類からも作られる。もちは、餅飯の略。ハレの日の食物として用いられており、今日でも正月、節句等の祝い事に多く作られている。つきたてのもちはデンプンが糊化している。時間がたつとデンプンが老化してかたくなるので加熱して用いる。」(甲第7号証の2「改訂調理用語辞典」)、「餅は、糯米を蒸して臼でつき、用途によってそれぞれ整形したもので、お供え、熨斗餅、鳥の子餅、豆餅、誕生餅、小餅、菱餅などがある。」(甲第7号証の3:「新和菓子大系上巻」)等と説明されている。
また、農林水産省:商品・安全局表示規格課による平成16年5月26日付けの「加工食品品質表示基準改正案 別表2に掲げる加工食品の範囲の考え方(案)〔原料原産地表示対象品目の範囲〕」(甲第10号証の2)には、「もち」の範囲として、「もち米又はもち米と米粉、とうもろこしでん粉を主原料として製造、包装した、まるもち、のしもち、切りもち、鏡餅等を対象とします。草餅、豆餅のように、副原料を使用した包装もちについても対象となります。みたらし団子、白玉団子、大福もち、さくらもち、かしわもちのような和菓子については、対象に含まれません。」と説明されている。
これら辞典・事典類等の説明からすると、「もち」は、もち種の穀類を蒸し、臼で搗いて種々の形に作った食物であって、その形状によって、のしもち、切りもち、丸もち等と呼ばれるほか、その材料や混入する材料によって、米もち、あわもち、草もち、豆もち等様々なものがあるものといえる。
(3)他方、商品「もち菓子」について見ると、各種辞典・事典類には、「もち」とは別項を設け、「餅・糯粉・しん粉などを材料として製した菓子。大福餅・柏餅などの類。」(前掲「広辞苑」)、「もちを使って作った菓子の総称。→餅類」、「もちるい 餅類」の項に「餅類を原料とした菓子。(1)生菓子。草餅のように、あんを包んだものと、だんごのように、外にあんをつけたものがある。(2)半生菓子。餅そのものを加工して味付けした菓子。すあま、ぎゅうひ、羽二重餅、ゆず餅などがある。」(甲第7号証の1:「百菓辞典」)、「もち米、もち米粉、上新粉などを材料にした菓子の総称。あべかわもち、おはぎ、かしわもち、切りざんしょう、大福もち等その種類は多い。」(甲第7号証の2:「改訂調理用語辞典」)等と説明されている。また、株式会社製菓実験社発行「新和菓子大系上巻」(甲第7号証の3)では、「餅と餅菓子の概念」の項において、「餅」と対比して、「餅菓子は、糯米または糯米粉、粳米粉(新粉)、砂糖、葛粉その他の粉類、果実類などを使用し、主に餡を包み、品種によって椿、柏、桜、笹葉などを使用して仕上げたものである。」と記述されている。
これら辞典・事典類の説明からすると、「もち菓子」は、もち、糯粉、しん粉などを材料として製した菓子の総称ということができ、あくまでも「菓子」の範疇に属するものであり、穀物の加工品たる上記「もち」とは異なり、いわば、「もち」を更に加工したものともいえる。
(4)被請求人は、「もち」の概念には、少なくとも「草餅、大豆餅、小豆餅、粽、団子」等が含まれるとし、さらに、「草餅」には、あんを包んだものとあんの無いものとが含まれることから、いわゆる「餅(もち)」の概念中には、「あん入り草餅」又は「あん入りよもぎ餅」等のように、一般に「もち菓子」とみなされているものも含まれる旨主張している。
しかしながら、既に述べたように、「もち」と「もち菓子」は、別異の商品であり、被請求人が主張する「草餅、大豆餅、小豆餅」等は、「もち」に混入する材料を端的に示したものであって、あくまでも穀物の加工品たる「もち」の範疇に属するものというべきである。
確かに、被請求人の提出に係る乙第7号証及び乙第8号証の1によれば、草餅であんを包んだものや、あんのないものも「草餅」と称されている事実が認められるが、これらは、草餅をさらに加工して、「もち菓子」としたものとみるのが自然であり、あくまでも菓子の範疇に属する商品というべきである。「よもぎ餅」も同様である。
そうすると、単に「草餅」又は「よもぎ餅」という場合には、「もち」としての草餅・よもぎ餅と「もち菓子」としての草餅・よもぎ餅とがあることになるのであって、「草餅」と称されることをもって、直ちに乙第7号証に掲げるような商品が「もち」の概念に含まれるというべきではない。
2 本件商標の使用に係る商品について
(1)被請求人は、「あっぱれひよ子の博多もち」に本件商標を使用しているとし、この商品は、餡を通常の「餅」又はよもぎを混ぜた「よもぎ餅」で包んだもので、本件取消請求に係る「もち」の概念に含まれると主張し、証拠を提出している。
しかしながら、提出された乙各号証を検討するに、乙第9号証の1ないし4によれば、上記「あっぱれひよ子の博多もち」は、形状及び色彩等からして、いわゆる「もち」とは認識されないばかりでなく、乙第20号証ないし乙第26号証(枝番号を含む。)として提出された新聞広告、チラシ及びパンフレットに掲げられた「あっぱれひよ子の博多もち」は、乙第25号証を除き、いずれも、菓子の範疇に属する一群の商品と区別することなく同列に扱われ、掲載されていることからしても、「菓子」の範疇に属する「もち菓子」と認識し、理解されて取引されているものというべきである。
また、乙第8号証として提出された店頭写真に示されている「あっぱれひよ子の博多もち」も、上記商品と同一のものと認められる。
(2)その他、被請求人が本件商標を使用しているとして提出した各証拠を精査するも、商品「もち」に関する具体的な証拠は見当らず、被請求人が商品「もち」について、本件商標を使用している事実を確認することができない。
3 まとめ
以上からすると、商品「もち」と商品「もち菓子」とは、別異の商品であるところ、被請求人の使用に係る商標が本件商標と社会通念上同一の商標といえるか否かについてはさておき、被請求人は、商品「もち菓子」についての使用を立証するにとどまり、本件取消請求に係る商品「もち」について、本件商標の使用を証明していないものといわざるを得ない。
また、本件取消請求に係る商品「もち」について、本件商標が使用されていないことについて正当な理由があるものともいえない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定に基づき、本件取消請求に係る商品「もち」について、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別記】

審理終結日 2005-10-12 
結審通知日 2005-10-18 
審決日 2005-10-31 
出願番号 商願昭26-20928 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (230)
最終処分 成立  
特許庁審判長 大場 義則
特許庁審判官 柳原 雪身
鈴木 新五
登録日 1953-11-25 
登録番号 商標登録第435714号(T435714) 
商標の称呼 1=ヒヨコ 
代理人 藤井 信孝 
代理人 藤井 重男 
代理人 角田 嘉宏 
代理人 藤井 信行 

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