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審決分類 |
審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 登録しない Z21 |
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管理番号 | 1129287 |
審判番号 | 不服2002-12122 |
総通号数 | 74 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2006-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-02 |
確定日 | 2006-01-04 |
事件の表示 | 商願2001-56565拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.本願商標 本願商標は、別掲に示すとおり、図形とその下段に「FEMMIO VALENTINO」の欧文字を表してなり、平成13年6月21日登録出願、第21類「ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),アイスペール,泡立て器,魚ぐし,携帯用アイスボックス,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),米びつ,ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,食品保存用ガラス瓶,水筒,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,魔法瓶,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,家事用手袋,化粧用具,デンタルフロス,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ,ブラシ用豚毛,洋服ブラシ,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,かいばおけ,家禽用リング,アイロン台,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,家庭用燃え殻ふるい,紙タオル取り出し用金属製箱,霧吹き,靴脱ぎ器,こて台,小鳥かご,小鳥用水盤,じょうろ,寝室用簡易便器,石炭入れ,せっけん用ディスペンサー,貯金箱(金属製のものを除く。),トイレットペーパーホルダー,ねずみ取り器,はえたたき,ヘら台,湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),花瓶(貴金属製のものを除く。),ガラス製又は陶器製の立て看板,香炉,コッフェル,水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴」を指定商品とするものである。 第2.原査定における拒絶の理由及び当審においてした証拠調べ 1.原査定は、商標法第4条第1項第15号該当を理由に本願を拒絶したものである。 2.当審において、職権により証拠調べ(平成16年6月10日付証拠調べ通知書)を行ったところ、次の事実が認められる。 (1)「世界の一流品大図鑑ライフカタログVOL.1」(昭和51年6月5日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ・ガラバーニ」が、「イタリアファッション界の旗手と呼ばれ、女性を最高に美しく見せるデザイナーとして高く評価されている。」こと、及びその経歴等を紹介する内容とともに「ブラウス、セーター、ネクタイ」の商品の写真が掲載されていること。 (2)「EUROPE一流ブランドの本(講談社MOOK第2巻)」(昭和52年12月1日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ ガラバーニ」の所有する店舗の紹介と簡単な経歴が「婦人服」の商品と共に掲載されていること。 (3)「服飾辞典」(昭和54年3月5日第1刷文化出版局発行)の、ヴァレンチィーノ ガラヴァーニ[Valentino Garabani、1932〜]の項に、「イタリア北部の都市(ヴォゲラ)に生まれる。17才でリセオ(中学)を中退、パリに行く。スチリストになるため、パリのサンジカ(パリ高級衣装店組合の学校)で技術を身につける。1951年、ジャン・デッセ(オート・クチュール)のもとで5年間アシスタントとして仕事をする。その後2年間、ギ・ラローシュのアシスタントをし、1958年独立、ヴァレンティーノ・クチュールの名でローマに店を開いた。このころ、イタリアのモードは世界的に有名になりつつあった。彼の最初の仕事は、フィレンツェのピッティ宮殿でのコレクションである。このコレクンョンは、〈白だけの服〉という珍しい演出であったが、その美しさはジャーナリストの間で評判となり、「ニューズ・ウィーク」「ライフ」「タイム」「ウィメンズ・ウェア・デイリー」各誌紙で取材、モードのオスカー賞を獲得した。1967年、ヴァレンティーノの名は世界に知れわたった。1972年には紳士物も始め、その他アクセサリー、バッグ、宝石類、香水、化粧品、家具、布地、インテリアと、その仕事の幅はたいへん広いが、すべてヴァレンティーノ独特のセンスを保っているのはみごとである。ヴァレンティーノの洋服に対する考えは、まず個性が第一で、彼のコレクションからは、デテールでなくそのエスプリをくみ取ってもらうことに重きをおく。ローマの高級住宅地、アッピア・アンティカに母親とたくさんの犬と暮らしている。仕事でパリとローマを行き来するが、世界中を旅行するなど忙しい日々である。物をつくる人は誰でも波があって、いつも傑作が続くとはかぎらないが、ヴァレンティーノは現在、ローマのオート・クチュール界で最も好調なデザイナーといえる。以前から東洋風なエキゾティシズムが好きで、時によってトルコ風、アラブ風の特色がみられるが、最近はキモノのセクシーさを1950年代のハリウッドの雰囲気に表現、あやしく美しいヴァレンティーノの世界をつくり出している。」との紹介記事が掲載されていること。 (4)「朝日新聞」(昭和57年11月20日夕刊第3頁)において、世界の服をリードする3人のうちの1人として「バレンチノ」の紹介記事が掲載されていること。 (5)「男の一流品大図鑑’85年版」(昭和59年12月1日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」の文字とともに、「スーツ、ブルゾン、シャツ、ネクタイ、ベルト及びバッグ」の商品が掲載されていること。 (6)雑誌「non-no」1989年 No.23号(平成元年12月5日株式会社集英社発行)及び「marie claire」(1996年2月1日中央公論社発行)において、「ヴァレンティノ ガラバーニ」が単に「ヴァレンティノ」と略称され、商品「婦人服」等と共に掲載されていること。 (7)「英和商品名辞典」(1990年株式会社研究社発行)[Valentino Garavani]の項において、「イタリア RomaのデザイナーValentino Garavani(1932)のデザインした婦人・紳士物の衣料品・毛皮・革製バッグ・革小物・ベルト・ネクタイ・アクセサリー・婦人靴・香水・ライター・インテリア用品など。Roma,Firenze,Milanoなどにあるその店の名称はValentino(vは小文字でかくこともある)。・・・ 」との記事及びデザイナーとしての紹介記事が掲載されていること。 (8)「世界の一流品大図鑑’93年版」(平成5年5月20日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO」ブランドの香水が掲載されていること。 (9)「岩波=ケンブリッジ世界人名辞典」(1997年11月21日株式会社岩波書店発行)の[ガラヴァーニ]の項において「ヴァレンティノ Garavani,Valentino通称ヴァレンティノ Valentino(伊 1933〜)服飾デザイナー・・・・」との紹介記事が掲載されていること。 同じく、[ヴァレンティノ Valentino]の項において、「ガラヴァ ーニ、ヴァレンティノ」を見よとの表示があること。 (10)2000.3.3 日刊スポーツ 連載 パリコレ短信(5)原点に返った「バレンチノ」の見出しの下、「1つの色でまとめるファッションは「バレンチノ」にとって意味深い。世界的に有名になったきっかけが、67年の白1色のコレクションだった。 ◆神田うののワンポイントメモ バレンチノ、ジバンシー、ランバンなど、しにせのブランドも頑張ってますね。 ◆バレンチノ 1932年イタリア生まれのバレンチノ・ガラバーニ氏が60年にスタート。故ジャクリーヌ・ケネディさんがオナシス氏との結婚式で着たレースのミニドレスは世界中の雑誌の表紙に取り上げられた。同氏はエリザベス・テーラーと親友で、91年、リズが8回目の挙式で着たウエディングドレスを制作した。「V」のブランドロゴでおなじみ。」との紹介記事が掲載されていること。 第3.証拠調べ通知に対する意見 1.証拠調べの結果として、これらは、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ/VALENTINO GARAVANI」のファッション・デザイナーとしての氏名(以下、個人を指すときは、単に「ガラヴァーニ氏」と称する。)及び同氏のデザインに係る商品に使用する商標としての著名性を示すものと思料するが、これらの各証拠に対して逐一その事実関係を争うつもりはないが、これら各証拠をみると、すべてが本願商標の出願日である平成13年(2001年)6月21日以前の資料であり、出願日以降の証拠は示されていない。 これら出願日以前の各証拠であっても、今日までガラヴァーニ氏の著名性が継続しているとの判断であると思料するものであるが、決してそうではなく、ガラヴァーニ氏の著名性及び商標の著名性は過去の栄光であると言わざるを得ない。 2.ガラヴァーニ氏のデザインに係る商品のわが国における代理店は、株式会社ヴァレンティノブティックジャパン(以下、単に「ヴァレンティノブティック社」という。)であるということであるが、ガラヴァーニ氏はすでに現役を引退し、また、1995年(平成7年)からはマーケティング事業からも撤退している。 このことは、ヴァレンティノブティック社の1984年(昭和59年)7月から2002年(平成14年)7月までの商品売上高(第14号証)によれば明らかなように、1995年(平成7年)からわが国ではマーケティング事業は行われておらず、ヴァレンティノブティック社の直販だけの事業となっている。 (なお、第14号証は、出願人の関連会社との訴訟事件において、ヴァレンティノブティック社から提出された資料) 3.ヴァレンティノブティック社が直販店で使用している商標は、オーバルVの図形と欧文字は単に「VALENTINO」とのみ表示する商標であり、最新のWebサイトによる(第15号証)、「Valentino Garavani」あるいは「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」が商標として使用されている事実はなく、需要者にとって、単なる「VALENTINO」の文字商標とガラヴァーニ氏との関係を認識することはできないものである。 すなわち、第15号証中で紹介されている「2004春夏プレタポルテコレクション」の記事によると、「… ライトなコレクションにしたかった、とデザイナーのヴァレンティノガラヴァーニ」という一行のみの説明はあるものの、商標として「Valentino Garavani」が使用されている形跡はなく、それに代わり、「Archivio Garavani」の表示が見受けられるものである。 このように、「Valentino Garavani」のブランドは、1995年(平成7年)にはライセンス事業から撤退したことにより、その後はヴァレンティノブティック社の直販店が「ヴァレンティノブティック」の店名でデパート等に入っているものの、「Valentino Garavani」の表示は一切使用されておらず、「VALENTINO」の文字のみが使用されている。 このことは、「Valentino Garavani」の著名性は徐々に薄れてしまうことを意味しており、このような状況では、 「VALENTINO」のみの表示が「Valentino Garavani」の商標の略称として周知・著名であるということは決していえないものである。 4.原審における拒絶理由によれば、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当すると認定したが、そうであれば、同規定に該当するか杏かの判断基準は、本願商標の出願日である平成13年6月21日ということになる。しかしながら、平成13年6月21日を基準日として判断すれば、「Valentino Garavani」商標との関係では、ヴァレンティノ ガラヴァーニ氏と経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれは決してないものである。それは、商標が非類似であることと併せて、現実の取引の実情からも明らかである。 商標法第4条第1項第15号は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」は、商標登録を受けることができないと規定されている。 出所の混同について、最高裁判所において判示された判断基準をみると、「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品などと他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断されるべきである。」(平成12年7月11日最高裁平成10年(行ヒ)第85号)とされていることは夙に知られている。 5.まず、本願商標と引用された「Valentino Garavani」とを対比すれば、本願商標は後半部分に「VALENTINO」の文字を、引用された「Valentino Garavani」商標は前半に「Valentino」の文字を有しており、かつ、本願商標は前半に「FEMMIO」の欧文字を、引用された「Valentino Garavani」商標は後半に「Garavani」の文字を有し、本願商標からは「フェミオ ヴァレンティノ」の称呼が生ずるのに対して、引用された「Valentino Garavani」商標からは、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の称呼が生ずるものである。 それ故、各々、商標全体は一連一体のものとして認識され、両商標を対比すれば両商標には類似性が全くないことは明らかである。特に、本願商標は、縦長楕円形の中に「f」と「v」とを組み合わせてデザイン化した図形商標との結合商標となっているところから、引用された「Valentino Garavani」商標との差異は一見して明らかであり、取引の実際において彼此相紛れるおそれは全くないものでる。 したがって、「VALENTINO」の文字を含んでいることの一事をもって、全て「Valentino Garavani」と混同を生ずるということは取引の実情を無視された判断である。 6.出願人は、本願商標と同一の図形及び「FEMMIO VALENTINO」文字からなる商標(但し、図形は文字の冒頭に位置している)について、登録第4217667号商標 (第18類)、登録第4217668号商標(第25類)及び登録第42722728号商標(第24類)の3件の登録商標を有している。 出願人は、それらの登録商標に基づいて、平成11年からライセンス事業を始めており(第20号証)、各種商品が許諾先の会社を通じて販売されている。それらの商品と商標の使用態様の一例を示すと、男子用衣類、男子用ベルト、婦人用衣類、タオル、毛布などのとおりである(第21号証〜第24号証)。 本願商標は、国内外のブランド、キャラクターを総合的にプロデュースしている株式会社イングラムに許諾しており、株式会社イングラムから100円ショップチェーン最大手であり、平成16年6月現在約2400店以上の店舗を有している株式会社大創産業(以下、「ダイソー」という。)に商品が納品され「ザ・ダイソー100YEN PLAZA」において販売されている。 商品としては、トリ、ウサギ、ネコなどの動物の模様が付いた「ランチボックス(べんとう箱)、はし、はし箱」を始め、これらに関係する商品である「お弁当バッグ、べんとう箱用の袋、ランチ用のハンカチ、ペットボトルケースなどが「ランチシリーズ」として売り場の一角を占めている(第8号証〜第13号証、第25号証)。 本願商標を使用した商品「ランチシリーズ」は、ダイソーの全店舗に近い状態で入っており、アイテムにして年間20万個位が動いている。このように、全国規模で商品を展開しているダイソーとしては、許諾に基づく商品を販売するのは、原則として商標登録に拠ることを前提にしているが、本願商標がまだ登録されていないにも拘わらず、ライセンス事業に踏み切ったのは、上記3件の登録商標を得たことが出願人に本願商標も登録を得ることができると確信させるのに十分であったにもかかわらず、判断が分かれていることに当惑している。 7.他方、本願商標に対して引用された「Valentino Garavani」の商標は、平成7年のライセンス事業からの撤退に伴ない使用されておらず、ヴァレンティノブティック社の直販体制では、「VALENTINO」のみの商標により、デパート等の直販店で商品が販売されているものである。 これに対して本願商標に係る商品は、上記説明のとおり、わが国における100円ショップ最大手のダイソーの店舗で全国的に販売されており、引用された「Valentino Garavani」商標とは対象となる商品の性質・用途の違い、取引の経路、取引者・需要者層、価格などどれひとつを取っても共通することはなく、取引の実情に照らし、商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本願商標に係る商品がガラヴァーニ氏のデザインに係る商品と商品の出所について混同を生ずるおそれはないと断言できるものである。 また、「Valentino Garavani」の商標はすでに使用されておらず、単に「VALENTINO」とのみ使用されており、かつ、両者が密接に関連していることも示されていないところから、「VALENTINO」の表示に接する取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準としたとき「Valentino Garavani」との関連を認識することはほとんどないといえる。 8.以上のとおり、本願商標をその指定商品に使用するも、ガラヴァーニ氏と経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれは認められないものである。 第4.当審の判断 (1)引用商標の著名性 上記の証拠調べによれば、「VALENTINO GARAVANI」(Valentino Garavani)「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」は、世界のトップデザイナーとして、本願商標の登録出願時には既に、我が国において著名であったものと認められる。また、同氏の名前は、「VALENTINO GARAVANI」(Valentino Garavani)「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることも多いが、同時に新聞、雑誌等の見出しの中には、単に「VALENTINO」(Valentino)「ヴァレンティノ」と略して採り上げられており、ファッションに関して「VALENTINO」(Valentino)「ヴァレンティノ」といえば同氏を指すものと広く認識されるに至っているというべきである。そして、同氏がデザインした婦人服、紳士服、アクセサリー、バック類、インテリア用品等のファッション関連商品は、「VALENTINO GARAVANI」(Valentino Garavani)「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」及びその略称として「VALENTINO」(Valentino)「ヴァレンティノ」の商標(以下、これらの商標を合わせて「引用商標」という。)をもって我が国の取引者、需要者の間に広く知られていたというべきであり、このことは、少なくとも本件商標の登録出願時である平成13年6月21日前においてすでに我が国の取引者、需要者間に広く認識せられていたものであり、また、その状況は現在に至るまでも引き続き同様とみて差し支えないものである。 (2)商品間における関連性及び需要者 引用商標は、前記のとおり、被服等に使用されているものであり、その使用商品は、ファッション関連の商品であって、デザイン性が重要視される商品といえる。 他方、本願指定商品は日用品ではあるが、デザイン性が求められる商品であり、また、ファッション業界において著名な標章(ブランド名)であるクリスチャンディオール、ティフアニー、エルメス等が、日用品である食器等に使用している事実があることから、両者はともに、ファッション関連の商品であるといえる。 さらに、商品の需要者もともに主として一般消費者であって、本件商標の指定商品が日常的に消費される性質の商品であり、殊にその需要者は特別な専門的知識経験を有しない一般大衆であって、これを購入する際して払われる注意はさほど綿密なものではないといえることから、両者はその需要者を共通にするものである。 (3)本願商標と引用商標 本願商標は、別掲のとおり、縦長の楕円形内にデザイン化した欧文字らしき文字を配した図形と、その下段に「FEMMIO VALENTINO」の欧文字を書してなるものであるところ、視覚上その図形部分と下段の文字部分が分離して認識される構成であり、また、図形部分と文字部分とを常に一体不可分のものとして把握しなければならない格別の理由を見出し難いものであるから、該文字部分に相応して「フェミオヴァレンティノ」の称呼を生ずるものである。 しかし、本願商標は、欧文字15文字からなり、称呼も冗長といえることから、簡易迅速を尊ぶ取引社会においては、その一部だけを表記ないし称呼されることは充分にいえることである。 してみれば、上記で認定した「VALENTINO」の著名性の程度、商品の関連性及び取引者及び需要者の共通性に照らすと、本願商標がその指定商品に使用されたときは、「VALENTINO」の部分がこれに接する取引者・需要者の注意を特に強く引くものといえる。 (4)出所混同のおそれ そうとすれば、著名なデザイナーである「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の著名な略称「VALENTINO」の文字を有する本願商標を、請求人が、その指定商品について使用するときは、その商品があたかも上記デザイナーあるいは同人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ないものである。 (5)請求人は、本願商標は、図形商標との組み合わせとなっている結合商標であることから、引用商標とは、非類似であり、そして、「Valentino Garavani」の商標はすでに使用されておらず、単に「VALENTINO」とのみ使用されていると主張し、さらに、本願商標の使用は、100円ショップで販売しているのに対して、引用商標は、デパート等であるから、引用商標とは、対象となる商品の性質・用途、取引の経路、取引者、価格等のどれをとっても相違するので、商品の出所の混同は生じない旨主張している。 しかしながら、前記の認定のとおり、本願商標は、著名なデザイナーである「VALENTINO GARAVANI」の著名な略称「VALENTINO」を含む商標であり、その指定商品も引用商標の使用商品とは、ともにファッション関連の商品であって、両者はその需要者を共通にするものであるから、本願商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、引用商標と綴り字を同じくする「VALENTINO」の文字部分に着目し、容易に引用商標を連想・想起し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといわなければならない。 また、「VALENTINO」が「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又はそのデザインに係る商品のブランドの略称を表すものとして著名であるとの上記事実の下では、本願商標が使用されているからといって、混同のおそれがあるとの認定判断を左右するものではなく、ほかに本願商標に接する取引者・需要者において混同を生ずるおそれがあることを左右するような証拠もない。 加えて、引用商標の周知性について認定した判決として、東京高裁平成14(行ケ)421号及び同16(行ケ)335号等がある。 (6)請求人は、過去の登録例を主張している。 しかしながら、「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ」について、「VALENTINO」との略称表示として使用されてきた実情が存在するから、「VALENTINO」の文字を含む商標が登録されていることが、「VALENTINO」が「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又はそのデザインに係る商品のブランドの略称を表すものとして取引者、需要者間に広く認識されていたことを認め得る妨げとはならないものであるばかりでなく、そもそも、具体的事案の判断は、過去の登録例に拘束されることなく個別具体的に検討されるべきものである。 以上のとおり、請求人の主張はいずれも採用することができない。 (7)したがって、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして本願を拒絶した原査定の理由は妥当であって、取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 本願商標![]() |
審理終結日 | 2005-03-18 |
結審通知日 | 2005-03-22 |
審決日 | 2005-04-12 |
出願番号 | 商願2001-56565(T2001-56565) |
審決分類 |
T
1
8・
271-
Z
(Z21)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩崎 安子 |
特許庁審判長 |
小川 有三 |
特許庁審判官 |
富田 領一郎 山本 敦子 |
商標の称呼 | フェムミオバレンチノ、フェムミオバレンティノ、フェムミオ、フェミオ、バレンチノ、バレンティノ、フェミオバレンティノ、エフブイ |
代理人 | 川村 恭子 |
代理人 | 佐々木 功 |