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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) 018
管理番号 1127843 
異議申立番号 異議1999-90928 
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2006-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-19 
確定日 2005-11-04 
異議申立件数
事件の表示 登録第4251240号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4251240号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第4251240号商標(以下「本件商標」という。)は、「ヴァレンティノ ジーリ」及び「Valentino Gigli」の文字を上下二段に表してなり、平成8年8月6日登録出願され、第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」を指定商品として、同11年3月19日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由の要旨
(1)登録異議申立人「バレンチノ グローブ ベスローテン フェンノートシャップ」(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号に違反してされたものであり、本件商標の登録は取り消されるべきであると申し立て、その証拠方法として甲第1号証ないし同第62号証(枝番を含む。)を提出した。
(2)登録異議申立人「カルラ・ソツァニ」は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号及び同第15号に違反してされたものであり、本件商標の登録は取り消されるべきであると申し立て、その証拠方法として甲第1号証ないし同第13号証を提出した。

3 本件商標に対する取消理由
申立人の主張の趣旨及び甲第7号証、同第13号証ないし同第62号証(枝番号を含む。)によれば、次の事実が認められる。
「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴアーニ)は1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーと呼ばれ国際的なトップデザイナーとして知られている。
わが国においても、ヴァレンティノ ガラヴァーニの名前は1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品は「Vogue(ヴォーグ)」誌などにより継続的に日本国内にも紹介されている。
昭和49年には三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノブティツクジヤパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品はわが国のファッション雑誌にもより数多く掲載されるようになり、同氏はわが国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。
以上のとおり、ヴァレンティノ・ガラヴァーニは、世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された平成8年5月7日当時には、既にわが国においても著名であったものと認められる。
同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられており、ファッションに関して「VALENTINO」「ヴァレンティノ」といえば同氏を指すものと広く認識されるに至っているというべきである。
そして、「VALENTINO GARAVANI」(ヴアレンテイノ・ガラヴアーニ)氏がデザインした婦人服、紳士服、ネクタイ、バッグ、靴、ベルト、アクセサリー等のファッション関連商品は、「VALENTINO」「ヴァレンティノ」の商標(以下「引用商標」という。)をもってわが国の取引者、需要者の間に広く知られている事実が認められる。
さらに、当蕃において調査するに、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」「VALENTINO GARAVANI」は、我が国においては、「ヴアレンチノ」、「ヴアレンティーノ」あるいは「VALENTINO」とも略されて表示されていることは、田中千代「服飾辞典」同文書院1981年p550、山田政美「英和商品辞典」(株)研究社1990年p447、金子雄司外「世界人名辞典」岩波書店1997年p84)において裏付けられるばかりでなく、雑誌における表現においても、たとえば、「marie claire」1996年2月1日号、「non-no」1989年 No23号等からも認められる。
以上の事実よりすると、申立人は、引用商標よりなる商標を婦人服を始めとし、紳士服、アクセサリー、バッグ、香水等の商品に使用しており、その結果、引用商標は、本件商標の登録出願の時には、既にわが国において、取引者、需要者間に広く認識されていたものといえる。
本件商標は、「ヴァレンティノ ジーリ」、「Valentino Gigli」の文字を二段に書してなるところ、その構成中に「ヴァレンティノ」、「Valentino」の文字を有するものであり、前記認定したとおり、「Valentino」の文字は重要な意味を持つ言葉と認識される。そして、本件商標の指定商品「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」は、引用商標が使用されている被服等の商品と関連のあるファッション関連商品である。
そうすると、商標権者が、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者をして、引用商標を連想させ、本件商標が付された商品が引用商標の一種ないし兄弟ブランド、ファミリーブランドであるなどと誤解し、あたかも上記デザイナーである「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)又は同人と組織的、経済的に何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

4 商標権者の意見
商標権者は、前記3の取消理由通知に対し、要旨以下のとおり意見を述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第18号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)我が国において、商標「VALENTINO」は、昭和43年から平成8年まで28年間、デサイナーのVALENTINO GARAVANI氏やフェンノートシャップ社とは関係のない日本企業が所有し、使用していた。
すなわち、東京都に本店を有するプレイロード(株)は、商標「VALENTINO」を昭和43年6月に旧第17類「被服」等を指定商品として登録出願、同45年4月に登録され(登録第852071号)、その後、平成8年5月8日にフェンノートシャップ社へ譲渡されるまで、日本の企業により使用されていたのである。
他方、VALENTINO GARAVANI氏ないし関連企業は、婦人服、紳士服等に商標「VALENTINO GARAVANI」を使用していたのであり、「VALENTINO」は使用していなかったのであるから、同氏や関連企業の商標として「VALENTINO」が需要者、取引者の間に広く知られていたということはあり得ない。
(2)「VALENTINO」の名を持った人物で、著名な人物は、イタリア生まれのアメリカの映画俳優「ルドルフ バレンチノ」であることは、誰でも異論がない。
このことは、日本で出版されている百科事典や英和辞典の類でも「バレンチノ」ないし「Valentino」の項に「ルドルフ バレンチノ」のみが載っているのが実状である。
このように、我が国において「バレンチノ」は、「ルドルフ バレンチノ」の名前として著名となったのであり、デザイナーの「VALENTINO GARAVANI」氏や関連企業の商標として著名となったのではない。
(3)以上述べたことから明らかなように、本件商標「VALENTINO GIGLI」が「VALENTINO」の文字を有するとしても、本件商標出願当時、これを本件商標権者がその指定商品に使用しても、取引者、需要者をして、デザイナーの「VALENTINO GARAVANI」氏や関連企業の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所の混同を生ずるおそれはないということができる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。

5 当審の判断
(1)「VALENTINO」標章の著名性について
前記取消理由のとおり、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)は、1967年にファッションのオスカー賞を受賞し、以来、同人のデザインに係る紳士服、婦人服等の商品を製造、販売して、その商品に「VALENTINO GARAVANI」、「VALENTINO」の文字よりなる標章(以下、これらを「VALENTINO標章」という。)を使用しているものである。
そして、本件商標の出願時である平成8年8月6日までには、VALENTINO標章は、「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標として、またデザイナーのヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)も「VALENTINO(ヴァレンティノ)」と呼ばれて、紳士服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として取引者、需要者の間に広く認識されていたものということができ、さらに、該「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の著名性は現在においても継続しているものと認められるものである。
なお、商標権者は、他人の登録商標「VALENTINO」が存在し、これがフェンノートシャップ社へ譲渡されるまでは、日本企業の商標として存在していたのであるから、本件商標の出願前に、「Valentino」がヴァレンティノ・ガラバーニ氏や同氏の関連企業の著名な商標として需要者、取引者の間に広く知られていたということはあり得ない旨主張している。 しかしながら、たとえ、他人の登録商標「VALENTINO」が存在していたとしても、当該商標の使用の実態・規模等も明らかでないばかりでなく、商標「Valentino Garavani」が使用され、本件商標の出願前にその略称である「Valentino」が著名となっていたこと前記のとおりであるから、この点に関する商標権者の主張は採用できない。
(2)出所混同のおそれについて
本件商標は、前記のとおり、「ヴァレンティノ ジーリ」及び「Valentino Gigli」の文字を書してなるところ、これより外国人の氏名であるかの如くに理解される場合のあることを必ずしも否定するものでない。しかし、商標権者提出に係る証拠を徴しても、これが我が国の需要者間に特定の外国人氏名であり、かつ、よく知られているとの事情は認め得ないところである。
また、「ヴァレンティノ」、「Valentino」と「ジーリ」、「Gigli」の文字の間に半字程度の間隔があるため、両文字は視覚上分離して把握され、かつ、全体で特定の意味合いを有する語とも言えないものであるからこれらを常に一体不可分のものとして看取しなければならない理由もない。
してみれば、本件商標は、「ヴァレンティノ」、「Valentino」と「ジーリ」、「Gigli」の文字とを結合してなるものと容易に理解し把握されるとみるのが相当である。
そして、前記(1)のとおり、本件商標の登録出願時には、既に、VALENTINO標章が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標と、また、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」とも呼ばれて、紳士服、婦人服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として著名であったことを認めることができる。
そうすると、VALENTINO標章が付される商品「紳士服、婦人服」等と本件商標の指定商品とは、共にファッション関連の商品を含んでいること等を併せ考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「ヴァレンティノ」、「Valentino」の文字部分のみを捉え、著名なVALENTINO標章を連想、想起し、それが「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。
また、この混同を生ずるおそれは、本件商標の登録出願時はもとより、現在においても継続しているものと認められる。

なお、「Valentino」、「VALENTINO」の文字をその構成中に有する登録商標に関して、前記の認定、判断と同様の異議決定又は審決をした案件に対する東京高等裁判所等における行政訴訟事件において、次のとおり判決されているところである。
(a)平成16年(行ケ)第335号事件(異議番号2003-90376 商標登録第4658091号 商標「『SとV』のモノグラム図形/SILVIO VALENTINO」 指定商品第3類「せっけん類,薫料,つけづめ,つけまつ毛,歯磨き,靴クリーム,靴墨」)において、平成17年2月24日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。
(b)平成14年(行ケ)第354号事件(審判番号09-20430 商標登録第2614322号 商標「GIANNI VALENTINO」 指定商品第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品および附属品」)は、平成15年9月30日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。
(c)平成14年(行ケ)第405号事件(審判番号11-35033 商標登録第2629700号 商標「valentino /orlandi」 指定商品第17類「被服、布製身回品、寝具類」)は、平成15年6月19日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。
(d)平成14年(行ケ)第421号事件(審判番号10-35465 商標登録第2582891号 商標「valentino /orlandi」 指定商品第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品および附属品」)は、平成15年6月19日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。
(e)平成14年(行ケ)第201号事件(審判番号07-07234 商標登録第2699605号 商標「GIANNI VALENTINO」 指定商品第19類「台所用品、日用品」)は、平成15年9月30日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。
(f)平成15年(行ヒ)353号事件(平成14年(行ケ)第370号請求棄却に対する上告事件) 審判番号08-20103 商標登録第2357409号 商標「RUDOLPH VALENTINO」 指定商品第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く) 」)は、平成17年7月11日に上告を棄却する旨の判決が言い渡された。
(g)平成15年(行ツ)334号事件(平成14年(行ケ)402号請求棄却に対する上告事件) 審判番号09-02833 商標登録第2715313号 商標「Rudolph Valentino/『V』図形」 指定商品第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く) 」)は、平成17年7月11日に上告を棄却する旨の決定がされた。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2005-09-15 
出願番号 商願平8-88548 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (018)
最終処分 取消  
前審関与審査官 深沢 美沙子箕輪 秀人 
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 寺光 幸子
小林 薫
登録日 1999-03-19 
登録番号 商標登録第4251240号(T4251240) 
権利者 長田 典子
商標の称呼 バレンティノジーリ 
代理人 山下 穣平 
代理人 田辺 昌良 
代理人 末野 徳郎 
代理人 杉村 興作 

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