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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) 025
管理番号 1121808 
異議申立番号 異議1999-91022 
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2005-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-09 
確定日 2005-06-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第4259085号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4259085号商標の商標登録を取り消す。
理由 1.本件商標
本件登録第4259085号商標(以下「本件商標」という。)は、「SILVIO VALENTINO」の欧文字と「シルビオ バレンチノ」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、平成8年11月5日に登録出願、第25類「水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,ショール,スカーフ,ネクタイ,ネッカチーフ,耳覆い,ナイトキャップ,ヘルメット,ガーター,靴下止め,ズボンつり,げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として平成11年4月9日に設定登録されたものである。

2.登録異議の申立の理由(要旨)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の構成中「VALENTINO」は、服飾デザイナーの「VALENTINO GARAVANI(バレンティノ ガラバーニ)」の著名な略称「VALENTINO」を含むものであり、その承諾を得ていないから、商標法第4条第1項第8号に該当する。
また、本件商標は、登録第852071号商標ほか6件の登録商標と商標が類似し、かつ、その指定商品も類似するから同法第4条第1項第11号に該当する。
さらに、申立人の「VALENTINO」標章は、婦人服、紳士服、ネクタイ、バッグ類等の服飾品に使用して著名であり、これらと密接な関係にある本件商標の指定商品について商標権者が使用すると、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第15号にも該当し、本件商標の登録は取り消されるべきである旨主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第62号証(枝番を含む。)を提出している。

3.本件商標に対する取消理由(要旨)
当審は、平成13年9月12日付で要旨以下の取消理由を通知した。
申立人の主張の趣旨及び提出に係る証拠によれば次の事実が認められる。
(1)「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァニ)は、1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーと呼ばれ国際的なトップデザイナーとして知られている。
(2)わが国においても、ヴァレンティノ ガラヴァニの名前は1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品はファッション雑誌 「世界の一流品大図鑑」、「男の一流品大図鑑」、「ヴァンサンカン」、「ミセス」等により継続的に日本国内にも紹介されている。
昭和49年には三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴティックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品は我が国のファッション雑誌にもより数多く掲載されるようになり、同氏は我が国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。
以上のとおり、ヴァレンティノ・ガラヴァニは、世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された平成8年11月当時には、既に我が国においても著名であったものと認められる。
(3)同氏の名前は、「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられており、ファッションに関して「VALENTINO」「ヴァレンティノ」といえば同氏を指すものと広く認識されるに至っているというべきである。
さらに、当審において調査するに「ヴァレンティノ ガラヴァニ」「VALENTINO GARAVANI」は、我が国においては、「ヴァレンチノ」、「ヴァレンティーノ」あるいは「VALENTINO」とも略されて表示されていることは、田中千代「服飾辞典」同文書院1981年p550、山田政美「英和商品辞典」(株)研究社1990年p447、金子雄司外「世界人名辞典」岩波書店1997年p84)において裏付けられるばかりでなく、雑誌における表現においても、たとえば、「marie claire」1996年2月1日号、「non-no」1989年 No23号等からも認められる。
(4)以上よりすると、請求人は、「VALENTINO」又は「VALENTINO GARAVANI」よりなる商標を婦人服を始めとし、紳士服、ベルト、バッグ、靴、香水等の商品に使用しており、その結果、これら商標は、本件商標の登録出願の時には、既に我が国において、取引者、需要者間に広く認識されていたものといえる。
(5)他方、本件商標は、その構成中に「VALENTINO」の文字を有するものであり、その指定商品は、引用商標が使用されている被服等と密接な関係を有するものである。
(6)以上を総合すると、本件商標を商標権者がその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をして、その商品があたかも上記デザイナーあるいは、同人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

4.商標権者の意見
上記の取消理由通知に対し、商標権者は次のように意見を述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第17号証を提出している。
(1)本件商標権者の所有に係る登録第3370678号商標(SILVIO VALENTIO)は、本件商標と同一の称呼を生ずるものであり、指定商品も重複しているものである。
そして、上記登録に対して異議申立がなされたが、「仮に『VALENTINO』商標が著名であるとしても、上記商標(SILVIO VALENTIO)は、人名を表すものと理解され、不可分一体の商標であるから商品の出所について混同しない。」との判断がなされている。
(2)乙第4〜第9号証の各商標は、本件商標権者の所有に係る商標であり
、いずれも「シルビオバレンチノ」の称呼を生ずる商標である。
即ち、本件商標権者は、被服、かばん類、身飾品といったファッション関連商品についても「SILVIO VALENTINO」ブランドを継続して使用してきたものであるが、その間、取引者、需要者が誤認混同を生じたという事態は生じていない。
(3)乙第10〜第17号証の各商標のように、その態様中に「VALENTINO」を含み、「被服」を指定商品とする商標が多数登録されて市場において使用されている。
したがって、「VALENTINO」の文字を含む商標を見慣れている取引者、需要者が、本件商標を附した商標を「VALENTINO GARAVANI」の業務に係る商品であるかの如く混同することはあり得ない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。

5.当審の判断
そこでまず、請求人が本件商標をその指定商品について使用した場合、「VALENTINO GARAVANI」(バレンティノ ガラヴァーニ)又は同人と関係のある者の業務に係る商品と出所について混同を生ずるおそれがあるか否かについて判断する。
(1)VALENTINO標章の著名性について
前記「3.本件商標に関する取消通知」に示したとおり、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)は、1967年にファッションオスカーを受賞し、以来、同人のデザインに係る紳士服、婦人服等の商品を製造、販売して、その商品に「VALENTINO GARAVANI」「VALENTINO」の文字よりなる標章(以下、これらを「VALENTINO標章」という。)を使用しているものである。
そして、本件商標の出願時である平成8年11月5日には、VALENTINO標章は、「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標として、また、デザイナーのヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)も「VALENTINO(ヴァレンティノ)」と呼ばれて、紳士服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものということができ、さらに、該「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の著名性は、本件商標の登録査定時及び現在においても継続していると認められるものである。
(2)商品の出所の混同について
本件商標は、前述のとおり、「SILVIO VALENTINO」と「シルビオ バレンチノ」の各文字を二段に横書きしてなるものである。
そして、「SILVIO」「シルビオ」と「VALENTINO」「バレンチノ」の各文字の間には半字程度の間隔があるため、両文字は視覚上分離して把握され、かつ、全体で特定の熟語的意味合いを有する語とも言えないものであるから、これらを常に一体不可分のものとして看取しなければならない理由もない。
さらに、前記(1)のとおり、本件商標の登録出願時には、既に、VALENTINO標章が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標と、また、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」とも呼ばれて、紳士服
、婦人服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として著名であったことを認めることができる。
そうすると、VALENTINO標章が付される商品「紳士服、婦人服」等と本件商標の指定商品「スカーフ、ネクタイ、ガーター、靴下止め、ズボンつり、草履類」等は、共にファッション関連の商品であって、密接な関連性がある商品といい得るものであること等を併せ考えれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、その構成中の「VALENTINO」「バレンチノ」の文字のみを捉え、著名なVALENTINO標章を連想、想起し、それが「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。
また、この混同を生ずるおそれは、本件商標の登録出願時はもとより、その登録査定時及び現在においても継続しているものと認められる。
(3)ところで、商標権者は、商標中に「VALENTINO」の文字を含む多数の登録商標が存在し、「被服」等の商品に使用されているから、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれはない旨主張している。
そこで、「Valentino」、「VALENTINO」の文字を含む他の登録商標についてみるに、本件商標と一部指定商品を同じくするか、又は指定商品を異にする(ア)登録第2699605号商標(イ)登録第2614322号商標(ウ)登録第2629700号商標及び(エ)登録第2582891号商標の各登録商標に対する無効審判事件において、商標法第4条第1項第15号に基づき、これらを無効とする旨の審決に対し、以下の(ア)ないし(エ)の審決取消訴訟が提起された。
そして、東京高等裁判所は、何れも、上記「Valentino」等を含む商標をその指定商品に使用した場合、Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあるとして、これらを無効とした審決を支持する旨の判決をしている。
(ア)平成14年(行ケ)第201号 判決言渡日 平成15年9月30日
(イ)平成14年(行ケ)第354号 同
(ウ)平成14年(行ケ)第405号 判決言渡日 平成15年6月19日
(エ)平成14年(行ケ)第421号 同
また、直近の同裁判所の判決例としては、本件商標と同じく「SILVIO VALENTINO」の文字部分を含み、第3類「せっけん類、歯磨き等」を指定商品とする登録第4658091号の商標登録を商標法第4条第1項第15号に基づき取り消す旨の異議決定に対する取消訴訟事件(平成16年(行ケ)第335号)においても、上記(ア)ないし(エ)と同旨の判決がなされている(判決言渡日 平成17年2月24日 なお、原告は本件審判請求人と同一人である。)。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号について検討するまでもなく、同法第4条第1項第15号に該当するものであるから、商標法第43条の3第2項により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2005-04-18 
出願番号 商願平8-124842 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (025)
最終処分 取消  
前審関与審査官 大森 健司 
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 岩崎 良子
小林 薫
登録日 1999-04-09 
登録番号 商標登録第4259085号(T4259085) 
権利者 株式会社クレオ
商標の称呼 シルビオバレンチノ 
代理人 杉村 興作 
代理人 末野 徳郎 
代理人 辻本 一義 

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