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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) 025
管理番号 1121788 
異議申立番号 異議1999-90442 
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2005-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-02 
確定日 2005-06-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第4218748号商標の登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4218748号商標の登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録4218748号に係る商標(以下「本件商標」という。)は、後掲に表示したとおりの構成よりなり、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成8年7月12日登録出願、同10年12月11日に設定登録されたものである。

2 本件商標の取消理由
登録異議の申立てがあった結果、本件商標の登録を取り消すべきものとして商標権者に対して通知した取消理由(平成13年8月23日付取消理由通知書)は、要旨次のとおりである。
<取消理由>
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の主張の趣旨及び甲第7号証、甲第13号証ないし甲第62号証によれば、次の事実が認められる。
「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)は1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーと呼ばれ国際的なトップデザイナーとして知られている。
わが国においても、ヴァレンティノ ガラヴァーニの名前は1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品は「Vogue(ヴォーグ)」誌などにより継続的に日本国内にも紹介されている。
昭和49年には三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴティックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品は我が国のファッション雑誌にもより数多く掲載されるようになり、同氏は我が国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。
以上のとおり、ヴァレンティノ・ガラヴァーニは、世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された平成8年7月当時には、既に我が国においても著名であったものと認められる。
同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられており、ファッションに関して「VALENTINO」「ヴァレンティノ」といえば同氏を指すものと広く認識されるに至っているというべきである。そして、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)氏がデザインした婦人服、紳士服、ネクタイ、バッグ、靴、ベルト、アクセサリー等のファッション関連の商品は、「VALENTINO GARAVANI」「VALENTINO」「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」「ヴァレンチノ」の商標(以下、これらの商標をあわせて「引用商標」という。)をもってわが国の取引者、需要者の間に広く知られていた事実が認められる。
さらに、当審において調査するに、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」「VALENTINO GARAVANI」は、我が国においては、「ヴァレンチノ」、「ヴァレンティーノ」あるいは「VALENTINO」とも略されて表示されていることは、田中千代「服飾辞典」同文書院1981年p550、山田政美「英和商品辞典」(株)研究社1990年p447、金子雄司外「世界人名辞典」岩波書店1997年p84)において裏付けられるばかりでなく、雑誌における表現においても、たとえば、「marie claire」1996年2月1日号、「non-no」1989年 No23号等からも認められる。
以上の事実よりすると、申立人は、引用商標を婦人服を始めとし、紳士服、ネクタイ、バッグ、靴、ベルト、アクセサリー等のファッション関連の商品に使用しており、その結果、引用商標は、遅くとも本件商標の登録出願の時には、既に我が国において、取引者、需要者の間に広く認識されていたものである。
他方、本件商標は、その構成中に「VALENTINO」の文字を有するものであり、前記認定したとおり「VALENTINO」は周知なものであるから、本件商標おいて「VALENTINO」の文字は重要な意味を持つ言葉と認識される。そして、本件商標の指定商品「被服」等は、引用商標が使用されている被服等の商品と関連のあるファッション関連の商品である。そうすると、本件商標を、商標権者がその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者をして、周知商標である引用商標を連想させ、本件商標が付された商品が引用商標の一種ないし兄弟ブランド、ファミリーブランドであるなどと誤解し、あたかも上記デザイナーである「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)又は、同人と組織的・経済的に何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号に該当する。

3 商標権者の意見
上記の取消理由に対して、商標権者は、その意見を要旨次のように述べている。
(1)取消理由は、平成11年6月14日に特許庁商標審査基準室より「周知・著名商標の保護に関する審査基準の改正について」が公にされた以降に設定登録を受けた登録商標に係る審査例と著しく異なっている。本件商標と同じく、指定商品「ベルト」が属する第25類において、また、「かばん類、ハンカチ、アクセサリー、化粧品、化粧用具」等のファッション関連の商品が属する分類である第3類、第14類、第18類、第21類、第24類、第26類において、その構成中に、「VALENTINO」、「Valentino」、「valentino」の文字を有する商標が登録となっており、以下のような理由があるものと考えられる。
第1に、「valentino」なる語は、元来、イタリア系の男性の名前として一般的に用いられているものであり、ローマのキリスト教殉教者である聖ヴァレンティーノとしても用いられている。
確かに、「VALENTINO」ないし「Valentino」、「バレンチノ」の語は、申立人の商標として使用されてはいるが、語源的には普通名詞である。こうした事情の下においては、「VALENTINO」ないし「Valentino」、「バレンチノ」の商標は、商標の本質的機能の1つである出所表示機能がある程度減殺されていると認められるべきである。そして、ファッション関連の商品が属する分類である第25類、第3類、第14類等の登録商標においては、商標の中に「VALENTINO」ないし「Valentino」、「バレンチノ」の語が含まれている場合であっても、「VALENTINO」ないし「Valentino」、「バレンチノ」の語と結合された語が申立人以外の商品の出所を連想させるものであるが故に、商標法第4条第1項第15号該当性が否定され登録となっているものと考えられる。
第2に、日本国のファッション業界における実取引においては、商標の中に「VALENTINO」ないし「Valentino」、「バレンチノ」の語が含まれている商標は、商標の本質的機能の1つである出所表示機能がある程度減殺されており、また、営業活動によって培われた顧客吸引力ではない、その語の本質自体において強力な顕著性を有しているともいえないものであること、さらには、流通において、「VALENTINO」ないし「Valentino」、「バレンチノ」の語が商標の一部に含まれている商品名が付された商品が市場においてかなりの種類存在し、それらの商品名において「VALENTINO」ないし「Valentino」、「バレンチノ」以外の部分を構成している語によって商品の出所を判別できる場合には、明確に区別されて取引されているという実情があり、それらの商標中に、引用商標と、その出所を明確に識別し得る商標構成部分が存在していることから、商標法第4条第1項第15号該当性が否定されて登録となっているものと考えられる。
(2)本件商標は、「VALENTINO LMORE」の欧文文字とその略表記文字「VLMORE」とを併記して構成されており、引用商標とはその出所を明確に識別し得る商標構成部分「VLMORE」「LMORE」が存在していることから、商標法第4条第1項第15号に該当することなく、その登録を維持されるべきものであると思料する。

4 当審の判断
(1)本件商標を、商標権者がその指定商品について使用した場合、引用商標を連想させ、これが付された商品が引用商標の一種ないし兄弟ブランド、ファミリーブランドであるなどと誤解し、あたかも上記デザイナーである「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)又は同人と組織的・経済的に何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである旨の上記2の取消理由は妥当であって、本件商標は他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
(2)商標権者は「Valentino」がイタリア系の男性の名前として一般的に用いられているものであると述べているが、我が国においては、ファッション関連からみれば、上述のとおり国際的なトップデザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)によるデザイナーズブランドないしはその作品群を容易に想起するものであり、これ以外の「Valentino」をその氏名の一部にするデザイナーないしそのブランドが、引用商標を越えて単に「VALENTINO」、「Valentino」又は「ヴァレンティノ(バレンチノ)」と略されている状況は見出せない。
そして、本件商標の指定商品が属する第25類ほか、ファッション関連の商品が属する分類である第3類、第14類等において、その構成中に「VALENTINO」、「Valentino」「ヴァレンティノ(バレンチノ)」の文字を有する商標等の商標登録の存在は認めるとしても、それらの商標がデザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)との関係で混同を惹起させるものかどうかは、個別・具体的に決せられるものであって、本件における混同可能性を否定する根拠とするのは適切でなく、前記認定を左右するに足りない。
また、商標権者は、日本国のファッション業界における実取引においては、流通において「VALENTINO」ないし「Valentino」、「バレンチノ」の語が商標の一部に含まれている商品名が付された商品が市場においてかなりの種類存在し、それらの商品名において「VALENTINO」ないし「Valentino」、「バレンチノ」以外の部分を構成している語によって商品の出所を判別できる場合には、明確に区別されて取引されているという実情があり、それらの商標中に、引用商標と、その出所を明確に識別し得る商標構成部分が存在していることから、登録となっているものと考えられる、と述べている。しかし、もとより、本件においては、商標の類否を直接問題にしたわけでないこと上記2の取消理由の趣旨よりみて明らかというべきである。かつ、商標権者の主張及びその提出に係る証拠(商標公報:資料1ないし18、小学館「伊和中辞典」:資料19)からしては、かかる取引きの実際は、不明というほかなく、むしろ、デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)と何らかの関連性のあるものと誤解している可能性も否定できないというべきである。
そうすると、本件については、商標自体とそのほか諸般の事情、すなわち、本件商標の指定商品の分野における需要者一般の注意力の程度、申立人商標又は略記商標の著名性ほか取引の実情を総合判断するに、前記認定を相当とするから、商標権者の述べる意見は採用することができない。このほか、商標権者の述べる意見はいずれも妥当性を欠くものであって、採用の限りでない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものというべく、その登録は、同法第43条の3第2項により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 <後掲>




本決定に対する訴えは、決定の謄本の送達があった日から30日以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
異議決定日 2005-04-14 
出願番号 商願平8-77913 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (025)
最終処分 取消  
前審関与審査官 寺光 幸子 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 茂木 静代
高野 義三
登録日 1998-12-11 
登録番号 商標登録第4218748号(T4218748) 
権利者 株式会社エフセントラルコーポレーション
商標の称呼 ブイルモア、ブイエルモア、バレンチノルモア、バレンチノエルモア 
代理人 末野 徳郎 
代理人 中村 政美 
代理人 杉村 興作 

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