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審決分類 審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 登録しない Z12
管理番号 1121714 
審判番号 不服2002-5884 
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-05 
確定日 2005-08-08 
事件の表示 商願2000-131444拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「ValentinoMarudini」の文字を標準文字で表してなり、第12類「自転車」を指定商品として、平成12年12月7日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶理由
本願商標は、イタリア国ローマ市に在住するデザイナー「Valentino Garavani(バレンチノ ガラバーニ)」が商品「婦人・紳士物の衣料・毛皮・革製バッグ・革小物・ベルト・ネクタイアクセサリー・婦人靴・香水・ライター・インテリア用品等」に使用している「Valentino Garavani」の著名な略称である「Valentino」の文字を有してなるから、これをその指定商品について使用するときは、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当する旨、認定・判断して、本願を拒絶したものである。

3 審判請求の理由(要旨)
(1)拒絶査定の理由について
商標法第4条第1項第15号の規定は、他人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の需要者が商品の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の需要者が商品の出所について混同するおそれがある場合に、その登録を拒絶すべきことを定めているものである。
しかしながら、これまで示された特許庁の基本的態度とも矛盾し妥当性を欠くものであって、取消しを免れないものである。
(2)本願商標と引用商標の非類似性について
(ア)本願商標と引用商標の構成
本願商標は上記のとおり「ValentinoMarudini」の欧文字で構成されたものであって、「バレンチノマルディーニ」と発音する特定の名称を形成した商標であり、その構成中に「Valentino」の文字を有しているといえども、その文字が引用商標中にあるからと言って直ちに類似するものではなく、現代の流通過程においては、欧文字の同一書体で構成されている商標は、構成全体を一連の状態のままで称呼、観念を想起するものである。
(イ)「Valentino」について
本願商標構成中には「Valentino」の文字を有しているが、「VALENTINO」「ヴァレンティノ」はイタリア語の辞書によると、普通名詞であり、聖ヴァレンティーノ(ローマのキリスト教殉教者)又はヴァレンティーノ(男子の名)(小学館伊和中辞典)と記載されており、「ヴァレンティノ」だけでは直ちに「VALENTINOGARAVANI」「ヴァレンティノガラヴァーニ」の氏名を示すことにはならないし、著名な略称ともいえない。
その証拠に、特許庁では指定商品日本分類第21類においては、イタリア語のありふれた男子の名前「VALENTINO」「ヴァレンティノ」を結合した多数の登録例がある。
すると、引用商標は外観を「VALENTINOGARAVANI」、称呼を「ヴァレンティノガラヴァーニ」として需要者、取引者に認識されるものであり、本願商標とは、全く別異の商標である。
(ウ)本願商標と引用商標との称呼上の差異
上述のとおり、本願商標の構成からすれば、一気呵成に抑揚なく「バレンチノマルディーニ」と称呼され、引用商標における「ヴァレンティノガラヴァーニ」とは、称呼上両商標は彼此相紛れるおそれはないものである。
(エ)本願商標と引用商標の観念上の相違
本願商標「ValentinoMarudini」は人名であり、特定の観念を生じる商標であり、イタリアで一般的な姓の「VALENTINO」「ヴァレンティノ」の文字を有しているものである。
引用商標は「VALENTINOGARAVANI」、称呼は「ヴァレンティノガラヴァーニ」であり、出願人が本願商標を指定商品に使用したとしても、それと何らかの関係を有する商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
その証拠に、特許庁では指定商品日本分類第21類においては、「VALENTINO」「ヴァレンティノ」はイタリア語のありふれた男子の名前であるとして、商標法第4条第1項第15号に該当せずとして、多数の登録例がある(第2号証ないし第15号証)。
また、「ValentinoMarudini」は、第18類において、「VALENTINO GARAVANI」及び登録第1678889号「MARIO VALENTINO」の両社から異議申立を受けたが、両商標とは非類似であるとの異議の決定を受け、登録第3370458号として登録された(第17号証)。
(3)小括
したがって、本願商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものではなく、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標について商標法第4条第1項第15号に該当するか否かに関して以下のとおりの証拠調べを行い、意見書を提出する相当の期間を指定して、平成17年4月7日付けで請求人に通知した。
(1)「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」「Valentino Garavani」「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」又は「Valentino Garavani」若しくは「VALENTINO GARAVANI」と「V」を図案化した図形とを組み合わせたもののほか、「ヴァレンティノ」「ヴァレンティーノ」「バレンチノ」「VALENTINO」「Valentino」が使用されている事実。
(ア)辞書類
(a)「英和商品名辞典」(1990年研究社発行)[Valentino Garavani]の項において、「イタリア RomaのデザイナーValentino Garavani(1932-)のデザインした婦人・紳士物の衣料品・毛皮・革製バッグ・革小物・ベルト・ネクタイ・アクセサリー・婦人靴・香水・ライター・インテリア用品など。Roma,Firenze,Milanoなどにあるその店の名称はValentino(vは小文字でかくこともある)。… 」との記事及びデザイナーとしての紹介が掲載されていること。
(b)「岩波=ケンブリッジ世界人名辞典」(1997年11月21日岩波書店発行)の[ガラヴァーニ]の項において「ヴァレンティノ Garavani,Valentino通称ヴァレンティノ Valentino(伊 1933-)服飾デザイナー…」との紹介記事が掲載されていること。
同じく、[ヴァレンティノ Valentino]の項において、「ガラヴァーニ、ヴァレンティノ」を見よとの表示があること。
(c)「服飾辞典」(昭和63年9月5日第10刷 文化出版局発行)の、ヴァレンティーノ ガラヴァーニ[Valentino Garabani、1932〜]の項に、「イタリア北部の都市(ヴォゲラ)に生まれる。17才でリセオ(中学)を中退、パリに行く。スチリストになるため、パリのサンジカ(パリ高級衣装店組合の学校)で技術を身につける。1951年、ジャン・デッセ(オート・クチュール)のもとで5年間アシスタントとして仕事をする。その後2年間、ギ・ラローシュのアシスタントをし、1958年独立、ヴァレンティーノ・クチュールの名でローマに店を開いた。このころ、イタリアのモードは世界的に有名になりつつあった。彼の最初の仕事は、フィレンツェのピッティ宮殿でのコレクションである。このコレクンョンは、〈白だけの服〉という珍しい演出であったが、その美しさはジャーナリストの間で評判となり、「ニューズ・ウィーク」「ライフ」「タイム」「ウィメンズ・ウェア・デイリー」各誌紙で取材、モードのオスカー賞を獲得した。1967年、ヴァレンティーノの名は世界に知れわたった。1972年には紳士物も始め、その他アクセサリー、バッグ、宝石類、香水、化粧品、家具、布地、インテリアと、その仕事の幅はたいへん広いが、すべてヴァレンティーノ独特のセンスを保っているのはみごとである。ヴァレンティーノの洋服に対する考えは、まず個性が第一で、彼のコレクションからは、デテールでなくそのエスプリをくみ取ってもらうことに重きをおく。・・・物をつくる人は誰でも波があって、いつも傑作が続くとはかぎらないが、ヴァレンティーノは現在、ローマのオート・クチュール界で最も好調なデザイナーといえる。以前から東洋風なエキゾティシズムが好きで、時によってトルコ風、アラブ風の特色がみられるが、最近はキモノのセクシーさを1950年代のハリウッドの雰囲気に表現、あやしく美しいヴァレンティーノの世界をつくり出している。」との紹介記事が掲載されていること。
(イ)書籍・雑誌類
(d)「世界の一流品大図鑑ライフカタログVOL.1」(昭和51年6月5日講談社発行)において、「ヴァレンティノ・ガラバーニ」が、「イタリアファッション界の旗手と呼ばれ、女性を最高に美しく見せるデザイナーとして高く評価されている。」こと、及びその経歴等を紹介する内容とともに「ブラウス、セーター、ネクタイ」の商品の写真が掲載されていること。
(e)「世界の一流品大図鑑'81年版」(昭和56年5月25日講談社発行)において、「…ヴァレンティノにとって、トータルファッションは欠くことのできない条件。ハンドバッグは…」との記載されていること。
(f)「世界の一流品大図鑑'85年版」(昭和60年5月25日講談社発行)において、「…魅惑的で優美な衣裳作りを心がけているというヴァレンティノ」「シーズン毎にカジュアルシューズも発表しているヴァレンティノ…」との掲載がされていること。
(g)「世界の一流品大図鑑'93年版」(平成5年5月20日講談社発行)において「VALENTINO」ブランドの香水が掲載されていること。
(h)「男の一流品大図鑑'85年版」(昭和59年12月1日講談社「…オフタイムこそ、ヴァレンティノで洒落てみたい」との掲載がされていること。
(i)「EUROPE一流ブランドの本(講談社MOOK第2巻)」(昭和52年12月1日講談社発行)において、「ローマだけでもヴァレンティノの店は四店ある。」等の紹介と「ヴァレンティノ ガラバーニ」の簡単な経歴が商品「婦人服」と共に掲載されていること。
(j)「ヴァンサンカン 25ans 1987年10月号」(昭和62年10月1日婦人画報社発行)において、「…ヴァレンティノの服は、…」との掲載がされていること。
(k)「ヴァンサンカン 25ans 1994年4月号」(1994年4月1日婦人画報社発行)において、「…もうこれは芸術の域。さすがヴァレンティノです。…」との掲載がされていること。
(l)「Miss[ミス]家庭画報 創刊号」(1989年5月1日世界文化社発行)において、「…<左>衿もとや袖口を飾るラッフルはヴァレンティノらしい遊び。…」との掲載がされていること。
(m)「Miss[ミス]家庭画報 1990年5月号」(1990年5月1日世界文化社発行)において、「…ヴァレンティノが得意とする、着る人の知性をひきだす服づくり…」との掲載がされていること。
(n)「Miss[ミス]家庭画報 1994年6月号」(1994年6月1日世界文化社発行)において、「ウエストシェイプされたラインにヴァレンティノらしい格好よさが表現されています。」との掲載がされていること。
(o)「ELLE(エル・ジャポン) 1997年8月号とじ込み付録'97-'98秋冬トレンド大辞典」(アシェット婦人画報社発行)において、婦人服及びバッグの写真に付された「VALENTINO」との掲載がされていること。
(p)「DONNA giappone 1998年4月号」(1998年4月1日ビクターエンタテイメント社発行)において、「VALENTINO」の表示の下「…タイトなシルエットのスーツは、そんなヴァレンティノらしさを象徴している。スーツ¥930,000/ヴァレンティノ」との掲載がされていること。
(q)「non-no」1989年 No23号(平成元年12月5日集英社発行)において、「ヴァレンチノ、ソニア・リキエルから、若々しいbisブランドがデビュー。」の見出しの下「…この秋デビューしたヴァレンチノの「オリバー・ドンナ」…」との掲載がされていること。
(r)「an・an臨時増刊Fall&Winter 1976-'77」(マガジンハウス社発行)において、「ヴァレンティノはイタリアのオートクチュール出身のメーカー…いいものがわかる人なら誰でもがヴァレンティノを愛してしまう…」との掲載がされていること。
(s)「marie claire」(1996年2月1日中央公論社発行)において、「ヴァレンティノ ガラバーニ」が単に「ヴァレンティノ」と略称され、商品「婦人服」等と共に掲載されていること。
(t)「ヴァンテーヌ Vingtaine 1994年12月号」(1994年婦人画報社発行)において、「…ストッキングはいつもヴァレンティノなのよ…」との掲載がされていること。
(ウ)新聞記事
(u)繊研新聞(昭和51年9月28日付)において「ヴァレンティノ秋冬ショー」の見出し記事の掲載がされていること。
(v)センイ・ジャァナル(昭和51年9月29日付)において「ヴァレンティノ・コレクション」との見出しの下「…この秋のバレンティノの個性を強調したものと見うけられた。…」との記事の掲載がされていること。
(w)読売新聞大阪版(昭和51年9月30日付)において「ヴァレンティノのショーから」との見出しの掲載がされていること。
(x)朝日新聞(昭和51年9月30日付、同年10月2日付及び同月5日付)において「バレンティノ・ショー」との見出しの下「…かつて、白一色だけのショーを開き、注目を浴びたバレンティノが…」、「…もっともバレンティノにいわせると…」との記事の各掲載がされていること。
(y)秋田さきがけ新聞(昭和51年9月30日付)において「見事な色と素材/バレンチノ作品展から/エレガンスを創造」との見出し、河北新報(昭和51年10月1日付)において「バレンチノのトータルファッション/鮮やかな赤と黒/エレガンスな世界を創造」との見出し、センイ・ジャァナル(昭和51年10月1日付)において「(東京)イタリアのデザイナーヴァレンティノの…」との記事、日刊ゲンダイ(昭和51年10月2日付)において「ヴァレンティノ・コレクション発表」との見出し、東奥日報(昭和51年10月4日付)において「見事な色と素材/バレンチノの作品群」との見出し、山陰中央日報(昭和51年10月4日付)において「…惜しみなく絶賛!を贈れるバレンチノだった。…」との記事、サンケイ新聞(昭和51年10月5日付)において「ヴァレンティノ・コレクション」との見出し、宮崎日日新聞(昭和51年10月5日付)において「超一級の色と素材/見事なバレンチノ作品」との見出し、日経産業新聞(昭和51年10月6日付)において「伊の鬼才ヴァレンティノ」との見出し、福島民友新聞(昭和51年10月6日付)において「バレンチノの芸術」との見出し、日経流通新聞(昭和51年10月7日付)において「…来春からヴァレンティノブランドのインテリア小物を売り出す。…」との記事、徳島新聞(昭和51年10月12日付)において「見事な色と素材/バレンチノの作品群から」との見出し、公明新聞(昭和51年10月14日付)において「無地が売り物のヴァレンティノ」との見出しの下「欧州イタリアのヴァレンティノの秋冬物が公開されました。」との記事及び写真に付された「ヴァレンティノのスポーティー・ルック」との表示記載、夕刊フクニチ(昭和51年10月18日付)において「すばらしい色と素材/バレンチノの秋冬新作」との見出し、及び千葉日報(昭和51年11月3日付)において「みごとな色と素材/ファッション/バレンチノの作品群」との見出し等の掲載がされていること。
(z)報知新聞(平成3年7月29日付)において「リズの花嫁衣装はバレンチノ」との見出しの下「…イタリアの有名デザイナー,バレンチノが作ることになった。…」等との掲載がされていること。
(エ)以上の事実によれば、「VALENTINO」等の表示は,本件商標の出願日及び登録査定日の当時、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ又はそのデザインに係る商品群に使用されるブランドの略称を表すものとして、我が国の取引者及び需要者の間に広く認識されており、その状態が現在においても継続していると認められる。
なお、この証拠調べ通知書に対し、請求人からは所定の期間を経過するも何らの応答もなかった。

5 当審の判断
(1)著名性について
上述証拠調べのとおり、デザイナー「Valentino Garavani」は、我が国において「VALENTINO GARAVANI」及びその片仮名表記である「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の表示をもって紹介されることのある世界のトップデザイナーであって、かつ、同氏がデザインした婦人服、アクセサリー、バッグ、靴等のファッション関連商品におけるデザイナーズブランドを表示するものとして、本願商標の登録出願時には既に、我が国において著名であったものと認められばかりでなく、単に「VALENTINO」及び「ヴァレンティノ」の表記にあっても、前記デザイナーを指し又はそのデザイナーズブランドないしはその作品群を容易に想起させるものであるとの状況は、本願商標の登録出願時(平成12年12月7日)前において既に我が国の取引者、需要者間に広く認識せられていたものというべきであり、その状況は現在に至るまで継続しているものとみて差し支えないものである。
(2)出所混同のおそれについて
(ア)本願商標は、前記のとおり、「ValentinoMarudini」文字を書してなるところ、これより外国人の氏名であるかの如くに理解される場合のあることを必ずしも否定するものでない。しかし、請求人(出願人)提出に係る証拠を徴しても、これが我が国の需要者間に特定の外国人氏名であり、かつ、よく知られているとの事情は不明というほかなく、かかる欧文字を一体のものとしてのみ印象付けて記憶するものとするような格別の事情に乏しいものであって、全17文字中9文字と、視覚印象において長い文字構成のうちの半分の割合を占める「Valentino」の文字部分は、前記デザイナーを指し又はそのデザイナーズブランドないしはその作品群を容易に想起させるものと同一の文字綴りであり、これに接する需要者はその構成中の「Valentino」又は「Marudini」の各文字のうち記憶、印象し易い文字部分により取引に資する場合も決して少なくないものというべきである。
(イ)ところで、本願商標の指定商品「自転車」は、直ちにファッション関連商品といえるものでないとしても、ヴァレンティノ ガラヴァーニがデザインする商品群には、家具、インテリア用品等も含まれており、その仕事の幅は広いことが窺われるところである。そして、自転車業界において機能性のほかデザインを重視する商品が存するばかりでなく、自転車以外の商品においてその周知・著名性を獲得した商標、例えば「トニーノ・ランボルギーニ」「シボレー」「ELLE」やファッションブランドといえる「ベネトン(BENETTON)」等を使用した商品「自転車」の販売状況がいわゆるインターネット上のホームページ情報において認められるところであるから、商品「自転車」の商取引場裏においても、「VALENTINO」及び「ヴァレンティノ」の表記を含めて前記デザイナー又はそのデザイナーズブランドにおける著名性が及ぶものとみて差し支えないものといえる。
(ウ)そうしてみると、上述した状況からして本願商標の構成中の「Valentino」の文字部分に着目し、強く印象づけられ、これと本願商標の登録出願時には既に我が国においてその取引者、需要者の間に広く認識されていた国際的なトップデザイナー「ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)」又は「VALENTINO GARAVANI」及びその片仮名表記である「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」によるデザイナーズブランドないしはその作品群を容易に想起する「VALENTINO(ヴァレンティノ)」とを関連付けて取引に資する場合があるというべきである。
(3)小括
したがって、本願商標をその指定商品について使用した場合、これに接する需要者は、当該商品が「ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)」のデザインに係る商品、又は同人と組織的、経済的に何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれが少なからずあるものといわなければならないから、本願商標は、他人の業務に係る商品とその出所について混同を生ずるものというのが相当である。
(4)請求人の主張について
(ア)「Valentino」、「VALENTINO」が、イタリアにおいてありふれた名前であるとしても、我が国においては、ファッション関連からみれば、上述のとおり国際的なトップデザイナー「ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)」又はそのデザイナーズブランドないしはその作品群を容易に想起するものである。そして、これ以外の「Valentino」をその氏名の一部にするデザイナーないしそのブランドが、単に「Valentino」、「VALENTINO」又は「ヴァレンティノ(バレンチノ)」と略されている状況はなく、また、本願の指定商品「自転車」にあっても、その取引場裏においてこれと異なる格別の商取引事情があるといい得ず、その証左も見出せないから、同様に理解されるものというべきである。
(イ)また、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)」と何らかの関係がある者以外の「VALENTINO」又は「Valentino」の文字を含む商標登録の存在は認めるとしても、それらの商標がデザイナー「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」との関係で混同を惹起させるものかどうかは、個別・具体的に決せられるものであって、本願における混同可能性を否定する根拠とするのは適切でなく、前記認定を左右するに足りない。
(ウ)このほか述べる請求人(出願人)の主張及びその提出に係る証拠をもって前記認定を覆すに足りない。
なお、「VALENTINO」の文字をその構成中に有する登録商標に関して、本件と同様に審決又は異議決定をしたものに対する東京高等裁判所における行政訴訟事件において、次のとおり判決されているところである。
(a)平成14年(行ケ)第201号事件(審判番号07-07234 商標登録第2699605号 商標「GIANNI VALENTINO」 指定商品第19類「台所用品、日用品」)は、平成15年9月30日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。
(b)平成14年(行ケ)第354号事件(審判番号09-20430 商標登録第2614322号 商標「GIANNI VALENTINO」 指定商品第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品および附属品」)は、平成15年9月30日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。
(c)平成14年(行ケ)第370号事件(審判番号08-20103 商標登録第2357409号 商標「RUDOLPH VALENTINO」 指定商品第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く) 」)は、平成15年9月29日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された(なお、上告(平成15年(行ノ)第202号、平成15年(行サ)第183号)されている。)。
(d)平成14年(行ケ)第402号事件(審判番号09-02833 商標登録第2715313号 商標「Rudolph Valentino/「V」図形」 指定商品第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く) 」)は、平成15年9月29日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された(なお、上告(平成15年(行ノ)第201号、平成15年(行サ)第182号)されている。)。
(e)平成14年(行ケ)第405号事件(審判番号11-35033 商標登録第2629700号 商標「valentino /orlandi」 指定商品第17類「被服、布製身回品、寝具類」)は、平成15年6月19日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。
(カ)平成14年(行ケ)第421号事件(審判番号10-35465 商標登録第2582891号 商標「valentino /orlandi」 指定商品第17類「はき物、かさ、つえ、これらの部品および附属品」)は、平成15年6月19日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。
(f)平成16年(行ケ)第335号事件(異議番号2003-90376 商標登録第4658091号 商標「「SとV」のモノグラム図形/SILVIO VALENTINO」 指定商品第3類「せっけん類,薫料,つけづめ,つけまつ毛,歯磨き,靴クリーム,靴墨」)において、平成17年2月24日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。
(5)むすび
結局、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するとして、その登録を拒絶した原査定は妥当であって、これを取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-06-07 
結審通知日 2005-06-08 
審決日 2005-06-28 
出願番号 商願2000-131444(T2000-131444) 
審決分類 T 1 8・ 271- Z (Z12)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大島 護 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 高野 義三
茂木 静代
商標の称呼 バレンチノマルディーニ、バレンチノ、マルディーニ 
代理人 若林 拡 

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