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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200589076 審決 商標
無効200489106 審決 商標
無効200589039 審決 商標
無効200589025 審決 商標
取消200530508 審決 商標

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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1119656 
審判番号 取消2001-30013 
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-08-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2000-12-28 
確定日 2005-06-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第3302571号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3302571号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3302571号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成6年9月1日に登録出願され、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同9年5月9日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、同13年2月7日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求める、と申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、その全指定商品「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」について、継続して3年以上、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標の著名性について
被請求人は、本件商標が著名であることを主張するが、商標法第50条の審判にあっては、同条第2項ただし書きの例外規定、同法第64条の防護標章登録制度及び同法第68条の登録防護標章の使用義務免除の趣旨からして、取消請求の対象となった登録商標の著名性を問題とすべきではなく、その認定判断は別途事件の審理の場において個別具体的に行われるべきであるから、乙第1号証ないし乙第6号証は、本件審判事件の審理において何等の意味をなさないものである。
(2)権利の濫用(請求人適格)について
被請求人は、本件商標が著名であることを前提に、本件審判請求は、本件商標の不正使用を目的としたもので、権利の濫用に該当し、請求人適格がないと主張するが、著名性の有無及びその程度の認定判断は、本件審判事件の審理の場で問題とすべきではないものであって、被請求人の該主張はその前提において誤りがある。
仮に、本件商標が「雑誌」について何等かの著名性を獲得しているとしても、請求人が本件商標(特に類似する商標)を本件指定商品に使用した際に出所の混同が生ずるか否かは、著名性の程度、使用商品、使用商標の態様(類似の程度)、使用の時期(著名性は非固定的)及び取引の実状等の諸事情を個別的かつ具体的に検討して判断されるものであって、本件審判請求には請求の利益が無く権利の濫用であるとの被請求人の主張も誤りである。
(3)本件審判請求の正当性及び必要性について
商標法第50条による審判請求は「何人」もなし得るものであり、請求人適格の主張立証の必要性は無いものと考えているが、本件審判請求の正当性及び必要性について明らかにする。
イ.乙第7号証の商標登録出願(商願2000-141439、以下「乙第7号証出願」という。)は、登録第765171号商標(ウォーカー:旧17類)及び登録第853981号商標(WALKER:旧第17類)の権利者である福岡繊維工業株式会社(以下「福岡繊維」という。)の意向によって請求人名にてなされたもので(甲第1号証ないし甲第3号証)、該出願手続に合わせ本件審判を請求したものである。
乙第7号証出願の出願人名義を福岡繊維としなかったのは、本件商標「TokyoWalker」が上記登録商標より後願であるにもかかわらず登録されていることに気付き、福岡繊維所有の上記登録商標「ウォーカー」及び「WALKER」と上記出願商標「TokyoWalker」(以下「乙第7号証出願商標」という。)との類否の判断を得るためであり、連合商標制度のない現行法の審査実務にあって、出願人と登録名義人とが同一人である場合、出願商標と登録商標との類否判断がなされないことによる。
したがって、乙第7号証出願は、登録商標「ウォーカ」及び「WALKER」と乙第7号証出願商標「TokyoWalker」との類似が認定された際には、出願人名義を福岡繊維に変更することを前提に手続したものであり、そのことは、甲第4号証の上申書によっても明言している。
ロ.請求人は、本来「地名+Walker」と「walker」又は「ウォーカー」とは類似するもので、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当し、登録を拒絶されるべきであったと考えており、少なくとも、本件商標は、出願時(平成6年9月1日)にあっては「地域情報雑誌」とは非類似かつ無関連な商品との間でまで出所の混同を生じせしめる程に著名であったということはできない。仮に、出願時より本件商標が「雑誌」についてある程度の著名性を獲得していたとしても、このことが、防護標章登録の場合の例外を除き、商標法第4条第1項第11号適用を除外する事情となり得ないことは論を待たない。
ハ.福岡繊維は、乙第7号証出願商標「TokyoWalker」と登録商標「walker」及び「ウォーカー」との審査での類否認定を勘案しながら、本件商標に対する無効審判の請求も考慮しているところであるが、無効審判の結論如何によっては(審決の効果が遡及することから)、本件商標の被請求人による使用事実の有無が福岡繊維所有の商標権の侵害の問題にも発展しかねず、福岡繊維としても被請求人との間での争いを避けたいとの思いから、また、非類似商品間での互いの商標を尊重して相住み分けることが可能であるとの判断から、敢えて請求人名による不使用取消審判を先行させたものである。
ニ.福岡繊維所有の登録商標「ウォーカー」及び「WALKER」は、昭和41年及び昭和43年に出願され、以来30数年に亘り使用され続け、当業界の取引者及び需要者よりそれなりの実績と信頼を獲得しているものである。そして、指定商品との関係において「Tokyo」又は「東京」の文字は、最も典型的な産地表示又は販売地表示であることは、従前の審査、審判並びに判例より明らかなところであり、にも拘わらず、30年近くも後に出願された本件商標が使用もされずに登録を維持され続けることは、福岡繊維の商標使用及び商標権の効力範囲を不当に制約するものである。
正当に登録され、使用され、機能している福岡繊維所有の登録商標の保護が、後願登録者の一方的事情によって凌駕され失効するとの解釈は、我が国商標法の本旨に反するばかりか、公正公平の原理原則からも到底認めることはできない。
ホ.叙上のとおり、本件審判の請求には正当な理由と必要性があるので、被請求人主張の如くフリーライドを目的とした不当な請求ではない。
(4)不使用の正当理由について
被請求人は、本件商標は使用されておらず、準備段階にあったことを自認するものである。そして、本件商標が不使用であることを前提に、この不使用には正当な理由があるとして、乙第8号証の1ないし19、乙第9号証の1ないし3、乙第10号証の1ないし3及び乙第11号証の1ないし7を提出するものであるが、その何れもが正当な理由を立証するものではない。
イ.商標法第50条第2項ただし書きの規定による「正当な理由」とは、1)地震、台風その他の天災地変、2)類焼、放火、破壊その他の第三者の故意又は過失、3)法令による全面禁止、許認可手続の遅延その他の公権力の発動等、商標権者等(通常使用権者又は専用使用権者を含む。)の不可抗力によりやむを得ず使用できなかったことを理由にする場合に限られ、商標権者等の営業政策や業務事情等の私的な理由をもって正当な理由とすることはできない。
ロ.乙第8号証の1ないし19は、何れもライセンスビジネスを展開することを目的とした「株式会社ムサシノ広告社」による企画提案書及びそれに纏わる意見交換文書や業務の委託契約書類であって、これらの証拠から推察できる事実は、商標法第2条第3項で定める商標の使用そのものでないことは明白である。むしろ、これらの証拠から明らかなことは、何時、何処で、誰が、如何なる商標を、如何なる商品に使用するか等、商標使用の立証に必要不可欠な現実的かつ具体的内容の一切が決定すらされていない事実であって、本件商標をその指定商品に使用するための準備行為にすら該当しない。
ハ.乙第9号証の1ないし3は、被請求人が発行する雑誌「TokyoWalker」の購読者に抽選で無償提供される販促品に関する掲載記事にすぎず、該掲載頁中に示されている商品は、当該雑誌の販促品(宣伝広告媒体)として供された別ブランドの商品であり、本件商標をその指定商品に使用したことにはならない。
ニ.乙第10号証の1ないし3は、雑誌の販促品として購読者に提供された上記商品がインターネットオークションに掛けられたことを示す資料にすぎず、上記と同様の理由で商標の使用に当たらないことは勿論、オークションでの販売行為そのものは、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の行為ではない。
ホ.乙第11号証の1ないし7は、何れも取消対象とする指定商品と異なる商品ないしは雑誌の販促品であって論外である。
ヘ.被請求人は、ライセンスビジネスの企画立案が現に進行していることや、雑誌「TokyoWalker」の宣伝広告を幅広く行っていることが本件商標をその指定商品に使用することの準備行為に当たり、しかも、該準備行為が商標法第50条第2項ただし書きの規定による「正当な理由」に該当するとの主張立証をするものであるが、仮に、被請求人の主張する準備行為が真実であるとしても、本件商標の登録から現在に至るまでの間、被請求人等の不可抗力によって本件商標の使用又はその準備行為すらできなかったという事情は全くなく、使用開始が遅れたことは単に被請求人自らの事情であって、かかる私的事情をもって「正当な理由」とすることは認められない。

3 被請求人の答弁に対する再弁駁
(1)前提
被請求人は、本件審判の請求によって本件商標のライセンス業務の開始が頓挫している実状を説明し、本件審判の請求が悪意によってなされたものと主張するが、請求人の全く知る由のないところであり、本件審判審理とは一切関係しない。
被請求人等が3年余りの期間、本件商標を使用しなかったのは、公的理由や天災地変等の不可抗力によるものではなく、ましてや請求人や本件審判請求にあるのではなく、単に被請求人の私的事情によるものであって、その結果責任は、被請求人自らにあることを承知すべきである。
(2)請求人適格について
本件審判の請求は、何人もなし得るもので、特に、利害関係を必要としない。請求人も、被請求人の利益を害することのみを目的とする審判請求のような場合等、権利濫用としてその請求適格が否認される場合があることを特に否定するものではないが、その立証責任は被請求人側にある。
請求人は、被請求人による権利濫用であることの具体的証拠の提示がされていないにも拘わらず、本件審判の請求が正当な理由に基づくもので、決して、被請求人の利益を害することのみを目的としたものではないことを事前に立証しており(甲第1号証ないし甲第4号証)、その上、現に本件商標を引用した拒絶理由通知(甲第5号証)を受けた事実等の具体的な利害関係の存在をも疎明している。
イ.被請求人は、本件審判請求によってライセンス業務の開始が頓挫して多大な損害を被っている、ことを強調し、このことをもって権利濫用の一つの根拠としている。
しかしながら、当事者系審判においては、当事者双方の利害は相対峙するのが通例で、結果において被請求人の利益を損なう事態が生じることは必然である。特に、不使用取消審判は、商標選択の範囲を広げるために設けられた制度であることからすれば、請求人が本件商標と類似する商標の登録を得るがために本件審判の請求に及び、その結果、被請求人に何等かの損害が生じたとしても、被請求人の利益を害することのみを目的とした審判請求ということにはならないのは言を俟たない。
ロ.被請求人は、本件商標は著名商標であり、このような著名商標の登録取消しを狙った審判請求は、フリーライドを目的とした不正なものであると主張する。
しかしながら、本件商標が著名か否かということと、本件審判における請求人適格とは一切関係ない。被請求人商標は、雑誌(タウン情報誌)についてある程度の著名性を獲得しているものであるが、本件商標に係る指定商品は、相互に如何なる関係をも有さない非類似の商品「被服等」であり、その間に出所の誤認混同が生じるか否かは、諸事情を総合的に勘案し、事案毎に個別具体的に判断されるものであり、本件商標と類似する商標を使用したからといって全ての場合に出所の混同が生じるものと断じることはできない。
そもそも、著名商標の認定判断は、商標法第4条第1項第15号等(商標登録要件)又は不正競争防止法第2条第1項第1号・2号等(不正競争行為)の適用に当たり、個別具体的になされるもので、仮に、被請求人商標が、類似商標を非類似商品「被服」に使用した場合にあっても出所の混同が生じる程の著名性を獲得していたとしても、本件審判の審理の場で特に問題とすべきではなく、著名商標に対する取消審判の請求が直ちに権利濫用にあたるものでも、著名商標であるからといってその使用義務が免除又は軽減されるものでもない。
ハ.被請求人は、請求人による商標出願は拒絶されることは確実で、請求人は現在又は将来においても「東京ウォーカー」「TokyoWalker」ブランドを使用することができないのであるから、請求人に本件審判を請求する実益はなく、請求人としての適格を欠くものであるとも主張する。
しかしながら、請求人による商標出願が拒絶されるか否かは、出願審査の過程において判断されるもので、本件審判審理の場で判断されるものでも、被請求人が勝手に判断すべきものでもない。仮に、乙第7号証出願が商標法第3条第1項柱書又は同法第4条第1項第15号・第19号の規定によって拒絶されたとしても、そのことが、本件審判の請求人適格を欠くとの結論に通じるものでないことは勿論、本件審判の審理に如何なる影響をも及ぼすものではない。
ニ.被請求人は、請求人の商標出願は、自らが使用する意思のない形式的なものであると主張するが、商標法第3条柱書の規定は、その出願が自ら使用する目的でなされたものか、或いは使用許諾又は譲渡を目的としてなされたものか等、日々変化する出願人の主観的な意思を問題としているのではなく、使用可能性を否定し得る客観的事実の有無を問題としているのである。本件商標にあっても、被請求人の業態からして、被請求人が自ら使用するのではなく、使用許諾すること(ライセンス業務)を目的として登録を受けたものであることは容易に窺い知れるところで、譲渡ではなく使用許諾を目的とする出願、或いは小企業や個人ではなく比較的規模の大きい企業による出願は違法ではないと言っているに等しい被請求人の傲慢なこれらの主張は、正に答弁書全体の基調をなすものと言っても過言ではない。
ホ.上記請求人主張の正当性は、以下の判例からも明らかである。
東京高裁・平成元年(行ケ)267(参考資料1)、.東京高裁・平成11年(行ケ)196(参考資料2)、東京高裁・平成11年(行ケ)443(参考資料3 9頁中段)
(3)不使用の正当理由について
被請求人は、周知著名商標について、商品の出所の混同を防止するために商標登録を受けている場合又は本件商標のようにライセンス契約が具体的に進行している場合には、不使用に付き正当な理由があるものと認めるべきであると主張する。しかしながら、上記理由は何れも商標法第50条第2項ただし書き所定の「正当な理由」に該当しないことは明白である。
イ.本件商標が周知著名であるか否かということと、本件取消審判の審理とは一切関係しないことは既述したとおりで、前記判例(東京高裁・平成11年(行ケ)196)においても、当該商標の登録が防衛的な意図でされたものであるからといって、使用事実の証明を不要とし、あるいは一般の商標と比較して緩やかな証明で足りると解すべき法律上の根拠は存在しないと明確に被請求人主張を否認している。
ロ.被請求人は、ライセンス契約が具体的に進行している本件事案のような場合、不使用を理由に本件商標を取り消すことは社会通念上商標権者に酷であるから、このような場合も不使用に付き正当な理由があるものと解すべきであると主張する。しかしながら、被請求人が根拠とする審査便覧における「社会通念上取り消すことが商標権者等に酷な場合をいうものと解するのが相当である。」との記述は、商標法第50条第3項で規定するところの所謂「駆け込み使用」があった場合における駆け込み使用であったことについての正当な理由に関する記述であって、同法第50条第2項の正当な理由に関する記述ではなく、駆け込み使用を含めて使用の事実そのものが存在しない本件事案には全く当てはまらない記述である。
仮に、同条第2項の正当な理由を社会通念上取り消すことが酷な場合と解釈するとしても、ここでいう「酷な場合」とは、商標権者の責めに帰すことのできない事情によってやむを得ず使用できなかった場合をいうのであって、何時でも使用ができた本件事案のような場合とは全く異なる。即ち、被請求人は、本件商標が登録されてから予告登録日までの大凡3年8ヶ月間、本件商標の使用は何時でも可能であった筈であり、使用に当たり官公庁の許認可を必要としたとか、不可抗力による事故により使用開始が遅れたとかの事情があった訳ではなく、単に被請求人の私的事情によって使用されなかったにすぎず、このような場合にまで同条第2項ただし書きで規定する正当な理由の範囲を広げてしまうことは、わざわざ期間を定めた同項の主旨を全く失わせるものである。
ハ.上記請求人主張の正当性は、前記判例のほか、以下の判例からも明らかである。
東京高裁・昭和55年(行ケ)329(参考資料4)
(4)結論
以上のとおり、本件商標がその指定商品に使用されていないことに争いがなく、また、被請求人がいうところの準備行為が正当な理由に該当しないこと及び本件審判請求は権利の濫用に当たらないことは明白である。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第25号証(枝番を含む。)を提出している。
1(1)取消理由についての否認
被請求人の反論の趣旨は、1)本件不使用取消審判請求は、著名商標を不正使用することを目的とするものであって、請求人による本件審判請求は権利の濫用であること、2)本件取消審判請求の予告登録以前から被請求人及び使用権者は、本件商標について使用の準備を進めており、本件商標を使用していないことには正当な理由があることの2点である。
(2)「TokyoWalker」ブランドの著名性について
乙第1号証は、社団法人日本ABC協会が発行した「雑誌発行社レポート」の一部の写しであり、雑誌「TokyoWalker」が被請求人の発行する雑誌として1998年1ないし6月の期間で31万部販売されていたこと及び「TokyoWalker」の姉妹誌として「KansaiWalker」「TokaiWalker」等の「地名+Walker」が1998年1ないし6月の期間でそれぞれ約49万部、19万部の販売部数を達成していたことがわかる。
乙第2号証は、雑誌「TokyoWalker」の発行部数に関する記事が掲載された新聞記事の抜粋の写しである。乙第2号証の1は、1998年4月10日発行の「東京新聞」の記事の写しであり、乙第2号証の2は、1997年5月21日発行の「朝日新聞」の記事の写しである。乙第2号証の新聞記事が発行された時点においても、雑誌「TokyoWalker」がその他の雑誌「地名+Walker」と併せて多数発行されていることが判る。
乙第3号証は、雑誌「TokyoWalker」が著名であることを示す内容が掲載された雑誌の一部の写しである。乙第3号証の1は、朝日新聞社が発行する雑誌「AERA」(2000年9月25日発行)の一部の写しである。乙第3号証の2は、創出版発行の雑誌「創」(1998年1月7日発行)、乙第3号証の3は、同じく雑誌「創」(1998年3月7日発行)の一部の写しである。乙第3号証の各雑誌の記事にも雑誌「TokyoWalker」が被請求人の発行する雑誌として多数の発行部数を誇っていることが示されている。
乙第4号証は、被請求人が原告となった平成9年(ヨ)第22076号商標権仮処分命令申立事件における仮処分決定の謄本の写し及び債権者主張書面の写しである。この決定では、「TokyoWalker」が被請求人の雑誌として全国的に著名であるとの主張に対し、商標「投稿Walker」の使用差し止めを求める仮処分命令の申立を認めている。
乙第5号証は、商標「仙台ウォーカー」(商願平10-68044号)の書誌情報、拒絶査定の謄本の写し及び拒絶理由通知書の写しである。これらの証拠によれば、被請求人以外の出願に係る商標「仙台ウォーカー」が「TokyoWalker」をはじめとする「地名+Walker」との関係において商品の出所の混同を生じるおそれがあるとの理由により拒絶査定が確定していることが判る。
乙第6号証の1ないし10は、登録商標「TokyoWalker」又はこれと実質的に同一の「東京ウォーカー/TokyoWalker」等の書誌情報である。「印刷物」にとどまらず、電気機械器具、雑貨、被服類、各種サービスとあらゆる商品、役務の分野において「TokyoWalker」が商標登録を受けていることが判る。「被服類」等と「印刷物」とでは、商品は非類似である。しかしながら、雑誌「TokyoWalker」には、被服、靴、雑貨、アクセサリー等の各種の商品情報が常時掲載されていること、そして昨今における企業経営の多様化、ボーダレス化に鑑みれば、雑誌を含む「印刷物」について既に周知著名な登録商標「TokyoWalker」が「印刷物」以外の商品又は役務に使用されることがあっても何ら不思議なことではなく、また、著名商標が正当な権限を有しない第三者によって各種の商品に使用されれば、その使用が被請求人と何らかの組織的又は経済的な関係を有するものの使用であると需要者又は取引者が誤認・混同することは明白である。
被請求人は、この著名商標のブランド力を活用して、事業の展開を図ることと、著名商標の信用のフリーライドを速やかに阻止することの目的のために、「印刷物」以外の商品又は役務についても商標登録を受けているのである。
(3)本件審判請求の正当性について
乙第7号証出願の存在は、請求人が本件審判請求により本件商標登録を取消した後に、「被服類,履物類」等に対して「TokyoWalker」の商標を不正使用しようとする明確な意思の現われである。
このような著名商標についての登録を取り消すことによって、何人にも著名商標を自由に使用できるかの如き誤認を一般大衆に与えようとする本件審判請求及び乙第7号証出願は、著名商標の権利者に損害を与える目的と不正使用の目的のためだけのものであって、権利の濫用以外の何物でもない。商標法第50条の審判の請求は、形式的には何人にも認められている。しかしながら、不使用取消審判の請求が被請求人の利益を害することを目的とする場合にまで請求人適格を認めるべきものではない。
「TokyoWalker」ブランドは全国的に周知著名であり、被請求人以外の者が「印刷物」に使用する場合はもとより、それ以外の商品、役務に使用したとしても、出所の混同を生じるので、請求人による「TokyoWalker」ブランドの使用は被請求人が使用する「TokyoWalker」ブランドに化体した信用をフリーライドするものといわざるを得ない。したがって、本件審判請求は、明らかに権利の濫用であり、不使用取消審判の制度趣旨に反するだけでなく商標法の目的にも反するものとなる。また、請求人による乙第7号証出願は、「TokyoWalker」ブランドとの関係において商品の出所の混同を生じるものであり、商標法第4条第1項第15号に該当するものとして登録を受けることはできないので、本件商標登録を取り消すことの実効性はない。
なお、特に、商標登録第299757号に対する取消審判の審理過程をみると、審判の請求の取り下げと、請求人とは異なる者への商標権の譲渡の事実があることが分かる。この過程から推測できることは、請求人の審判請求の目的が、自らの商標の使用のためではなく、商標登録を取消すことにより何らかの利益を得ようとするものではないかということである。このような過去の事実からも、請求人には請求人適格がない。
(4)本件商標の不使用の正当理由について
乙第8号証は、商標の使用の準備段階にあったことを立証するための証拠である。
乙第8号証の1ないし17は、本件商標に関する事業について被請求人とライセンス契約関係にある「株式会社ムサシノ広告社」との間で交わされた取引書類であって、乙第8号証の1ないし17の証拠に基づく本件商標の使用準備は、実質的に自他商品の識別機能を発揮する使用に相当するものであり、また、いずれも平成12年2月8日から平成12年12月4日までの間になされていたものであって、本件取消審判の請求日である平成12年12月28日よりも前に行われていたものである。
乙第8号証の1ないし8は、本件商標を含めた「TokyoWalker」ブランドの使用許諾に関する準備書面の一部の写しであり、2000年2月から同年5月2日にかけて「TokyoWalker」ブランドのライセンス交渉において被請求人と関係企業との間及び関係企業間で取り交わされた提案書、企画書等の書類が含まれている。また乙第8号証の9ないし11は、上記「TokyoWalker」ブランドの使用許諾に関する契約書(覚書を含む。)の写しであり、2000年5月2日に「TokyoWalker」ブランドの使用許諾契約が成立したことが明らかである。
乙第8号証の12ないし19は、「TokyoWalker」ブランドの使用に関する準備書面の一部の写しであり、2000年6月19日から2001年1月において、上記使用許諾契約に基づき「TokyoWalker」ブランドを実際に使用するための企画書、報告書等が被請求人と契約企業との間で準備され又は取り交わされていたことが判る。その内、乙第8号証の14は、本件商標に関する事業について被請求人が「株式会社ムサシノ広告社」を介してラインセンス契約関係にある「タキヒョウ株式会社」との間で交わした取引書類である。「株式会社ムサシノ広告社」及び「タキヒョウ株式会社」のような登録商標の使用についてライセンス契約関係にある者すなわち本件商標権についての使用権者は、需要者とは言えないものの取引者に含まれるものである。そして、商標の自他商品識別機能は、需要者だけでなく取引者に対しても発揮されるものである。また、被請求人が、「被服」に関して本件商標を表示した取引書類を「株式会社ムサシノ広告社」等のような取引者と取り交わす行為が、実質的に商標の使用に相当するものであると考えても、不使用取消審判制度の趣旨に反するものではない。
このように、乙第8号証の1ないし19によれば、商標権者としての被請求人及び使用権者は、本件審判請求の予告登録日前から本件商標を指定商品について使用をするための正当な準備をしていたことが判る。この準備は、商標を使用していないことの正当な理由に相当する。
なお、乙第8号証の18及び19のとおり、本年6月頃にはショップ展開が始まる予定である。このショップ展開のために昨年から準備を進めてきたのである。今回の事業展開は、許諾料だけでも数億円にのぼる大規模な事業展開になるものであり、かつ、その規模ゆえに商標の使用開始までに長い年月を要しているのである。
また、不使用の期間においても、被請求人は、「TokyoWalker」のブランド力を高めるために、商標「TokyoWalker」と商品との関連を需要者に印象付ける努力をしている。
乙第9号証の1ないし3は、雑誌「TokyoWalker」の一部の写しであり、「TokyoWalker」ブランドが付された「被服類」(Tシャツ、スエットパーカー)が本件審判請求の予告登録日前に抽選品として一般人に頒布されていたことが判る。これらの使用は、将来における商品販売のための市場調査も兼ねたものである。
乙第10号証の1ないし3は、インターネットオークションの出品情報をダウンロードしたものであり、「TokyoWalker」ブランドが付された前述の物品(Tシャツ、ナビゲーションソフト等)が、インターネットのオークションに出品されて売買されていることが判る。また、既に一般の需要者が「TokyoWalker」ブランドを商品との関連で認識するようになっていること、市場に「TokyoWalker」ブランドの被服や履物等が商品として出回れば、需要者はその商品の商標が著名商標の「TokyoWalker」であると認識すること、そして、その商品の出所が被請求人等であると容易に認識する状況が既にできていることが理解できる。
乙第11号証の1ないし7は、「TokyoWalker」ブランドが付された実際の商品を写真に収めたものであり、被請求人が「TokyoWalker」ブランドの普及を目的として使用を許諾して製造した商品である。乙第10号証のオークション出品情報の事実と合わせれば、「TokyoWalker」ブランドが「印刷物」以外の商品又は役務に関して使用されると、需要者が出所の混同を起こす状況が形成されていることが分かる。
このように、被請求人は、本件商標の使用に向けて、ブランド力を高めるための企業努力を継続している。

2 請求人の弁駁に対する再答弁
(1)本件審判請求による被請求人側に発生した損害について
「東京ウォーカー」及び「TokyoWalker」ブランドのライセンス事業については、本件審判請求が未確定であることを原因としてその実行が延期された。この延期による損害は億単位のものであって甚大なものである。被請求人としてはライセンシーに対して商標の使用を保証する責務があることから、ライセンシー側からの延期要請に同意せざるを得ない状況が続いている。このような状況下でも、他の事業者からの商標の使用申し込みは続いている。しかしながら、本件審判請求の存在と商標の使用保証をすることができないことが原因となって、新たな事業展開も差し控えざるを得ない状況になっており、著しい損害が発生しているのが実状である。
請求人は、本件取消審判請求が無効審判請求に代わるものであると信じがたい理由を述べている。
なお、請求人は、本件商標登録を無効にすることが真の目的であって、本件商標を使用する意思がないと主張しているように伺える。しかしながら、ダミー出願(乙第7号証出願)の名義変更の意思を考えれば、請求人が著名商標「TokyoWalker」を使用する意思があることは明白である。 本件商標とは非類似の「Walker」を所有している真の請求人である福岡繊維が、あわよくば「TokyoWalker」を自分のブランドとし、最悪の場合でも本件商標登録を取り消すことによって、「TokyoWalker」を自由に使用できるようにしようとする悪意の意思が存在していることは明らかである。本件商標登録の取消しは、このような悪意の真の請求者に著名商標のフリーライドを認めることになるので、商標法の精神からしても到底認められるものではない。
(2)本件商標の著名性について
請求人は、乙第1号証ないし乙第6号証は、本件審判請求の審理において何等の意味をなさないものであると主張し、本件商標の著名性が本件審判請求の審理と無関係であるとの認識を示している。
しかしながら、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」は、全国的規模の情報誌として被請求人が発行する雑誌であって、その発行は現在まで継続して行われている。そして、高い発行部数を維持したまま現在も発行されていることは、直近の発行部数をみれば明らかである(乙第24号証の1及び2)。また、被請求人は、株式上場されている業界第5位の企業として2001年3月期の売上高が約1兆円にものぼる著名企業である(乙第20号証の1)。そして、「東京ウォーカー」「TokyoWalker」ブランドを含む「ウォーカー」「Walker」ブランドが被請求人のブランドであることはインターネット情報、新聞記事情報に多数紹介されている(乙第21号証の1及び2、乙第22号証の1及び2、乙第23号証の1及び2)。
したがって、「東京ウォーカー」「TokyoWalker」ブランドが周知著名かつ高い顧客吸引力を有するに至っていることは、これらの企業情報、インターネット情報及び新聞記事情報からも裏付けられている。
このような状況の下で、請求人が「東京ウォーカー」「TokyoWalker」ブランドの著名性及び顧客吸引力を知らなかったとは到底考えられず、本件審判請求が「東京ウォーカー」「TokyoWalker」ブランドの著名性及び顧客吸引力にフリーライドする悪意の目的でなされたものであることは明白である。なお、本件審判請求が悪意の目的でなされたことは、陳述書(甲第3号証)における「商標『TokyoWalker:第25類』を出願したのは、事業の展開に伴い使用の必要性が生じた。」との請求人の主張からも裏付けられている。
そして、本件審判請求の真の請求人が「東京ウォーカー」「TokyoWalker」ブランドを悪用する意思を持っていることは、請求人自ら乙第7号証出願をしていることからも裏付けられている。しかもこの出願は、請求人が出願に係る商標を自ら使用する意思が全くなく、当初から他人(真の請求人)に使用させる目的で出願されたものであるため、乙第7号証出願商標は、明らかに商標法第3条第1項柱書きに違反し(乙第12号証の1ないし3)、その上、被請求人の利益を害するだけでなく、特許庁及び需要者を欺くいわば公益に反するものであるから、商標法第3条第1項柱書きに違反するにとどまらず、商標法の趣旨に違反しており直ちに拒絶されなければならない。
これらの事実から、本件審判請求は、審判制度及び商標制度を悪用して被請求人の利益を害する目的でなされたものであり、権利の濫用として認められるべきものではない。なお、商標法第50条の審判が被請求人の利益を害する目的で請求された場合には、審判請求が権利の濫用として認められないことは、商標法第50条の改正の趣旨、特許庁の考え方(工業所有権法逐条解説)及び審判便覧にも明示されている(乙第13号証の1ないし3)。
このように、本件審判請求が本件商標の著名性を悪用しようとする目的のためである以上、本件商標の著名性は重要な要素であり、本件審判の審理において十分に判断されなければならない事項である。
よって、本件商標の著名性と本件審判請求とは無関係であるとの請求人の主張には誤りがある。
(3)本件審判請求が権利の濫用であること(請求人適格がないこと)について
請求人は、著名性の有無及びその程度の認定判断は、本件審判事件の審理の場で問題とすべきではないことは先に述べたとおりであって、被請求人の該主張はその前提において誤りがある、と主張し、本件審判請求は権利の濫用であり、請求人に本件審判請求の請求人適格がないとする被請求人の主張を間接的に否定している。
しかしながら、本件審判請求は、被請求人の所有する「東京ウォーカー」「TokyoWalker」ブランドの著名性及び顧客吸引力にフリーライドするものであり、被請求人を害する目的でなされたものであることが明らかである。したがって、本件審判請求は権利の濫用に相当するものであり、請求人には本件審判請求の請求人適格がない。
よって、本件審判の審理においては著名性を判断する必要がないとして、本件審判請求が権利の濫用であることを間接的に否定する請求人の主張には誤りがある。
なお、請求人は、無効審判において商標法第4条第1項第10号の無効理由を主張しているが、その周知商標に基づく無効理由を裏付ける証拠を何ら提出していない。このように請求人は上記無効審判の審理においても不誠実な対応をとっており、この請求人の対応を見ただけでも、本件商標を不正の目的で取り消し、その上で本件商標と同一の商標を不正に権利化しようとする請求人の意図が伺える。したがって、この無効審判における請求人の不誠実な対応は、被請求人がこれまで一貫して主張してきた本件取消審判請求が権利の濫用であることを裏付けるものとなっている。
(4)本件審判請求の正当性及び必要性について
イ.請求人は、「商標法第50条の審判請求は『何人も』なし得るものであり、請求人としては請求人適格の主張立証の必要性は無いものと考えている」と主張している。
しかしながら、たとえ「何人」であっても、請求が明らかに被請求人を害する目的でなされたような権利の濫用に相当する場合にまで請求人適格を認めるものでないことは、常識的に考えれば当然のことであって、乙第12号証の1ないし3に示された商標法第50条の立法趣旨等からも裏付けられている。
ロ.本件審判請求に対応する乙第7号証出願について
請求人は、乙第7号証出願は、福岡繊維の意向によって請求人名にてなされたもので、該出願手続に合わせ本件審判を請求したものであり、出願の出願人名義を福岡繊維としなかった理由として、本件商標「TokyoWalker」が上記登録商標より後願であるにもかかわらず登録されていることに気付き、福岡繊維所有の先願登録商標「ウォーカー」及び「WALKER」と出願商標「TokyoWalker」との類否の判断を得るためであって、出願人名義を福岡繊維に変更することを前提に手続したものであり、そのことは、甲第4号証の上申書によっても明言していることである旨主張している。
この主張は、乙第7号証出願商標が指定商品について当初から請求人自ら使用しない商標、すなわち「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」でないことを明示するものである。
その上、乙第7号証出願の出願人名義を第三者に変更する前提で出願したこと、すなわち乙第7号証出願商標を使用する意思が全くないことを請求人自らが公然と認めるものであり、乙第7号証出願商標は商標法第3条第1項柱書きに違反するのみならず、特許庁及び需要者を欺くものであって公益に反する商標出願である。このように本件審判請求が特許庁及び需要者を欺くような公益を害する出願と密接な関係にあることを考慮すれば、本件審判請求がいかに不当なものであるかは明白である。
たとえ、乙第7号証出願の出願人名義が変更されたとしても、自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標でないことに変わりはなく、商標法第3条第1項柱書きに違反すると確信している。
なお、譲受人が乙第7号証出願商標を使用したとしても、被請求人の著名商標をフリーライドすることには変わりはないため、乙第7号証出願に商標法第3条第1項柱書きが適用されなくても、商標法第4条第1項第15号及び第19号に該当し、乙第7号証出願は拒絶されることになる。
また、被請求人は、乙第7号証出願に対して、平成13年6月6日付け及び同14年6月24日付けで刊行物等提出書を提出した(乙第14号証の1及び2)。
請求人は、現在または将来においても「東京ウォーカー」「TokyoWalker」ブランドを使用することはできないため、そもそも本件審判を請求する実益はない。
ハ.本件商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」と登録商標「ウォーカー」、「WALKER」との類否について
登録商標「東京ミュウミュウ」「TOKYO ISM」「TOKYOLION」等の登録商標「東京* * *」「TOKYO* * *」(乙第15号証の1ないし9)に対して、登録商標「MEAW-MEAW」「ISM/イズム」「LION」等の登録商標「* * *」(乙第16号証の1ないし9)が相互に非類似の商標として現在も有効に並存している。また、登録商標「ウォーカー」「WALKER」「ウォーカー/WALKER」等(乙第17号証の2ないし9)に対して、被請求人名義の登録商標「TokyoWalker」「東京ウォーカー/TokyoWalker」(乙第6号証の1ないし9及び乙第18号証)が、同一又は類似の商品又は役務について相互に非類似の商標として有効に並存している。さらに、被請求人名義の登録4446393号商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」(乙第6号証の3)の異議申立事件において、登録商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」と引用登録商標「WALKER」とが非類似であることを理由に、乙第6号証の3の商標登録の維持決定が確定している(乙第19号証)。なお、商標「東京ウォーカー」「TokyoWalker」と商標「ウォーカー」「WALKER」との類否判断において、商品又は役務を区別する特段の理由はないと思料する。
したがって、これらの事実を考慮すれば、本件商標と甲第1号証及び甲第2号証の商標とは客観的に非類似であり、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとの請求人の主張には誤りがある。
ニ.本件商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」が登録商標「ウォーカー」、「WALKER」の商標権を不当に害するものか否かについて、請求人は、本件商標が使用もされずに登録を維持され続けることは、福岡繊維の商標使用及び商標権の効力範囲を不当に制約するものであると主張している。
しかしながら、そもそも商標権は非類似の範囲にまで商標の使用を認めるものではなく、本件商標とは非類似の登録商標に基づく請求人の主張は支離滅裂であって、その主張には全く根拠がない。帝国データバンクの企業情報を見る限り、真の請求人である甲第1号証及び甲第2号証の登録商標の権利者「福岡繊維」の売上高は、被請求人の売上高(乙第20号証の1)の1.4%にも満たないものであり(乙第20号証の2)、自らの売上げを増やすために著名商標「TokyoWalker」を使用とする企みがあることは明白である。また、インターネット及び新聞記事検索データベースにより、「福岡繊維」が「ウォーカー」「WALKER」をどの程度使用しているかを検索したところ、インターネット上でヒットしたのはわずか1件であり(しかも本人のホームページ上にではなく第三者のホームページ上で紹介されているものである。)、新聞記事検索データーベース上では全くヒットしなかった(乙第21号証の3、乙第22号証の3及び乙第23号証の3)。これらの事実は、商標「東京ウォーカー」「TokyoWalker」が被請求人「株式会社角川書店」の商標としてインターネット上及び新聞記事上で多数紹介されている事実と極めて対照的である。請求人は真の請求人の登録商標(甲第1号証及び甲第2号証)が「正当に登録され、使用され、機能している」と主張しているが、もし、甲第1号証及び甲第2号証の商標が、福岡繊維の商標として、正当に登録され、使用され、機能しているのであれば、被請求人の商標「東京ウォーカー」「TokyoWalker」がインターネット上及び新聞記事上で紹介されている件数に達しないまでも、ある程度の件数が紹介されているはずである(乙第21号証の1及び2、乙第22号証の1及び2、乙第23号証の1及び2)。にもかかわらず、甲第1号証及び甲第2号証の商標は、インターネット上及び新聞記事上で紹介された事実は全くないに等しい。
本件商標を含む「東京ウォーカー」「TokyoWalker」ブランドの著名度に対して、甲第1号証及び甲第2号証の商標の著名度は全く無いに等しいのであって、本件商標と甲第1号証及び第2号証とは商標法第4条第1項第11号の類似を持ち出すまでもなく、そもそも商品の出所の混同を生じることはあり得ない。商標使用及び商標権の効力範囲を不当に制約するのは、むしろ請求人及び真の請求人によってなされた本件審判請求及び乙第7号証出願であって、これら悪意の審判請求及び出願によって、商標使用及び商標権の効力範囲を不当に制約されるのはむしろ被請求人の方である。
ホ.よって、上記イ.ないしニ.のとおり、本件審判請求に正当な理由はなく、かつ、本件審判請求の必要性もない(実益がない)ため、請求人の主張は失当である。
(5)不使用の正当理由に関する請求人の弁駁に対する答弁
不使用の理由が、本件商標のような周知著名商標について、商品の出所の混同を防止するために商標登録を受けている場合、または本件商標のようにライセンス契約が具体的に進行している場合等、その商標を善意に使用する意志があることが明らかな場合にまで、一律に不使用を理由とする商標登録の取消しをすべきではない。また、この主張は、審判便覧に明示されている「不使用を理由に当該商標登録を取り消すことが、社会通念上商標権者に酷であるような場合をいうものと解するのが相当である。」との規定にも合致するものである。
したがって、不使用の正当理由の具体例として請求人が主張した事例(天変地異等の場合等)は、不使用の正当理由の具体例の一部を列挙したものにすぎないものであり、これらの事例のみを根拠に本件商標の使用の準備が正当な理由に当たらないとする請求人の主張は認められるべきではない。
本件商標を表示する「東京ウォーカー」及び「TokyoWalker」の文字は、被請求人「株式会社角川書店」が発行する「情報誌(雑誌)」の著名なブランド名である。そして、情報誌「東京ウォーカー」「TokyoWalker」には、地域情報、ファッション情報、グルメ情報など様々な情報が紹介されている。被請求人は、このブランド名に基づく顧客吸引力及び情報内容の多様性を利用して、「雑誌」以外の商品・サービスまで事業展開を行っている。「被服」を指定商品とする本件商標は、この事業展開の一環として使用するものであり、被請求人はこれまで本件商標を正当に使用する準備を行ってきたものである。
また、被請求人は本件商標について「株式会社ムサシノ広告」を代理店として現実にライセンス契約が真摯に進行していたことを立証した上で、本件商標の使用の準備をしている旨を主張してきた。しかしながら、悪意の本件審判請求及び乙第7号証出願がなされたことによって、「タキヒョー株式会社」とのライセンス契約を延期せざるを得ない状況となっている。そもそも、ライセンス契約を求めてくる企業等は、「東京ウォーカー」「TokyoWalker」ブランドの周知著名性に基づく顧客吸引力を認識しているからこそ、本件商標のライセンス契約を被請求人に求めてきているのである。 したがって、本件商標は、たとえその使用が準備段階にあったとしても、自他商品の識別機能を発揮しており、本質的に商標法第50条不使用に当たるものではない。
なお、「東京ウォーカー」「TokyoWalker」ブランドを使用したいとライセンス契約の締結を被請求人に求めてくる企業は上述の「タキヒョー株式会社」をはじめ「阪急百貨店株式会社」「東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)」等と後を絶たない(乙第25号証の1ないし8)。そのため、被請求人は、ライセンス契約を求めるこれらの企業のニーズに応えるため、本件商標の正当使用の保証を確保したいところ、悪意の目的による本件審判請求及びこれに対応する悪意の出願が係属しているため、本件商標の正当使用義務の履行が確保できない状況にあり、ライセンス契約の延期を余儀なくされている。その上、悪意の無効審判請求までなされたため、本件商標の使用開始はさらに遅れることとなった。これら権利の濫用に基づく審判請求及び出願の存在により、被請求人は多大な損害を蒙っており、その損害額は計り知れない。
したがって、本件審判請求の審理においては、本件審判請求が本件商標の著名性を悪用した権利の濫用であること、本件商標の使用の準備に正当な理由があること及び悪意に基づく一連の審判請求等により被請求人が多大な損害を受けていることも考慮されることを求める。
(6)被請求人が答弁書に添付した企業情報(乙第20号証の1及び2)に関して、請求人は、企業規模を比較して請求人を見下すものと主張しているが、この主張は全くの勘違いである。被請求人が上記企業情報を提出した意図は、業界が異なるとはいえ請求人の営業利益と被請求人の営業利益とがあまりにかけ離れているため、請求人が被請求人の著名商標にフリーライドして、新たな利益を得ようとしているのではないかと考えたことによるものであり、請求人の企業規模と被請求人の企業規模とを比較して請求人を見下すことを意図したものではない。すなわち、本件審判請求が被請求人の利益を害することを目的とする権利の濫用によるものであることの根拠を示す資料の一つとして、参考までに提出したものである。
(7)まとめ
以上のとおり、第三者による「TokyoWalker」ブランドの使用は商品又は役務の種類に関わらず出所の混同を生ずるものであり、本件審判は不正の目的により請求されたものであって、権利の濫用である。また、本件商標は、正当な理由のもとに真摯に現在使用の準備が行われている商標であり、商標法第50条第2項不使用に正当な理由がある場合に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第50条は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができると規定しており、同条による商標登録の取消審判の請求があったときは、被請求人は、その取消請求に係る指定商品について当該商標を使用していることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その指定商品に係る商標登録の取消しを免れないものである(同条第2項)。

2 本件商標の使用の有無について
被請求人は、本件商標の使用について、本件取消審判請求の予告登録以前から、本件商標について使用の準備を進めており、本件商標を使用していないことには正当な理由がある旨主張しているものであり、本件審判の請求の登録日である平成13年2月7日前3年以内に日本国において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが指定商品のいずれかについて本件商標の使用をしていた事実は認められない。

3 不使用についての正当な理由の存否について
(1)商標法第50条第2項ただし書きにいう登録商標の不使用についての「正当な理由」があるといえるためには、登録商標を使用しないことについて当該商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責に帰することのできない事情がある場合、例えば、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果、その使用ができなかったような場合、時限立法によって一定期間その商標の使用が禁止されたような場合等をいうものと解するのが相当である(特許庁編逐条解説第16版1212頁末行ないし1213頁2行)。
(2)そこで、被請求人が本件商標の不使用について「正当な理由」として主張している点は、要旨次のとおりである。
乙第8号証は、商標の使用の準備段階にあったことを立証するための証拠であり、乙第8号証の1ないし17は、本件商標に関する事業について被請求人とライセンス契約関係にある「株式会社ムサシノ広告社」との間で交わされた取引書類であって、これらに基づく本件商標の使用準備は、実質的に自他商品の識別機能を発揮する使用に相当するものであり、また、いずれも平成12年2月8日から平成12年12月4日までの間になされていたものであって、本件取消審判の請求日である平成12年12月28日よりも前に行われていたものである。
また、乙第8号証の18及び19のとおり、平成13年6月頃にはショップ展開が始まる予定で、このショップ展開のために昨年から準備を進めてきたのである。この事業展開は、許諾料だけでも数億円にのぼる大規模な事業展開になるものであり、かつ、その規模ゆえに商標の使用開始までに長い年月を要しているのである。
このように、乙第8号証の1ないし19によれば、商標権者としての被請求人及び使用権者は、本件審判請求の予告登録日前から本件商標を指定商品について使用をするための正当な準備をしていたことが判る。この準備は、商標を使用していないことの正当な理由に相当する。
不使用の理由が、本件商標のような周知著名商標について、商品の出所の混同を防止するために商標登録を受けている場合、または本件商標のようにライセンス契約が具体的に進行している場合等、その商標を善意に使用する意志があることが明らかな場合にまで、一律に不使用を理由とする商標登録の取消しをすべきではない。また、この主張は、審判便覧に明示されている「不使用を理由に当該商標登録を取り消すことが、社会通念上商標権者に酷であるような場合をいうものと解するのが相当である。」との規定にも合致するものである。
本件商標の正当使用の保証を確保したいところ、悪意の目的による本件審判請求及びこれに対応する悪意の出願が係属しているため、本件商標の正当使用義務の履行が確保できない状況にあり、ライセンス契約の延期を余儀なくされている。その上、悪意の無効審判請求までなされたため、本件商標の使用開始はさらに遅れることになった。
したがって、本件商標は、真摯に現在使用の準備が行われている商標であり、不使用に正当な理由がある場合に該当するものである。
(3)しかしながら、本件商標に対して、取消審判及び無効審判が請求されていることを理由に、本件商標を使用することが制限されるものではないし、何時でも使用することが可能であったものである。
そして、本件商標は、平成9年5月9日に設定登録されたものであるのに対し、本件取消審判は、同12年12月28日に請求され、同13年2月7日にその請求の登録がされたものであり、被請求人が主張する本件商標の使用の準備がされていた平成12年2月8日から平成12年12月4日までの間よりも、後に請求されたものであって、本件商標の設定登録日から本件取消審判の請求の登録日の間不使用の状態が継続していたものであり、この間に、本件商標の使用ができなかった合理的な理由があったものとは認め難い。
また、乙第7号証出願と本件商標の使用とは何らの関係もなく、乙第7号証出願の存在が、本件商標の不使用についての正当な理由にならないことは明らかである。
これら被請求人の主張事由が、本件商標の不使用につき商標権者の責に帰することのできない事由が発生した場合に該当するものとはいえず、その他「正当な理由」に該当すると認めるに足りる証拠はない。
さらに、本件商標の使用を立証できる証拠は発見することができない。
よって、被請求人が主張する上記事由は、いずれも商標法第50条第2項ただし書きにいう「正当な理由」に該当するものとはいえないものである。

4 本件審判請求の権利濫用の該当性について
(1)被請求人が本件審判の請求を権利濫用であるとして主張する事由の要旨は、次のとおりである。
商標法第50条の審判の請求は、形式的には何人にも認められているが、不使用取消審判の請求が被請求人の利益を害することを目的とする場合にまで請求人適格を認めるべきものではない。
被請求人の「TokyoWalker」ブランドは全国的に周知著名であり、被請求人以外の者が「印刷物」に使用する場合はもとより、それ以外の商品、役務に使用したとしても、出所の混同を生じるので、請求人による「TokyoWalker」ブランドの使用は被請求人が使用する「TokyoWalker」ブランドに化体した信用にフリーライドするものといわざるを得ない。
このような著名商標についての登録を取り消して、被請求人以外の者が「TokyoWalker」ブランドを使用することは、被請求人の所有する「東京ウォーカー」「TokyoWalker」ブランドの著名性及び顧客吸引力にフリーライドするものであり、被請求人を害する目的と不正使用の目的のためだけのものであって、明らかに権利の濫用であり、不使用取消審判の制度趣旨に反するだけでなく、商標法の目的にも反するものとなる。
したがって、本件審判請求は権利の濫用に相当するものであり、請求人には、本件審判請求の請求人適格がない。
また、請求人による乙第7号証出願は、請求人が本件審判請求により本件商標登録を取消した後に、「被服類,履物類」等に対して「TokyoWalker」の商標を不正使用しようとする明確な意思の現われであり、「TokyoWalker」ブランドとの関係において商品の出所の混同を生じるものであって、登録を受けることはできないので、本件商標登録を取り消すことの実効性はない。
(2)そこで、商標法第50条の審判の請求人適格については、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができると規定しており、請求人適格を「何人」に認められるとしても、当該請求が被請求人を害することを目的としていると認められる場合には、その請求が権利濫用として認められない可能性があると解される(特許庁編逐条解説第16版、1212頁9行及び10行)。
しかしながら、例えば、障害となる商標登録があるために、自己の出願した商標が登録できない場合に、その障害となる商標登録に対して商標法第50条の取消審判を請求することは、その障害を取り除くための最も典型的な手段として利用されているところであり、このことは、その障害となる商標登録に係る商標が著名商標であったとしても、同様である。
そして、被請求人は、請求人が本件商標を使用すると、被請求人の商品であるかの如く商品の出所の混同を生じると主張するが、商品の出所の混同を生じるか否かは別途判断されるべきことであって、著名商標に対して取消審判を請求することが、直ちに権利の濫用につながるものではない。
さらに、乙第7号証出願の登録の可否については、本件取消審判の審理の結果とは関係ないものであり、別途個別具体的に審査において判断されるものであって、互いに何ら影響されるものではない。
したがって、被請求人の主張する上記事由については、本件証拠から権利の濫用とすべき事実を認めることができず、他に権利の濫用と認めるに足る証拠がない。
よって、本件審判の請求を権利の濫用とすることはできない。

5 結論
以上のとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが指定役務のいずれかについて使用をしている事実が認められず、かつ、本件商標の不使用について商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかに正当な理由があるとも認められないものであり、本件審判の請求が権利の濫用とは認められないものであるから、商標法第50条の規定により、本件商標の登録は、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標




審理終結日 2005-04-12 
結審通知日 2005-04-15 
審決日 2005-05-09 
出願番号 商願平6-88794 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (025)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩浅 三彦箕輪 秀人 
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 小川 有三
富田 領一郎
登録日 1997-05-09 
登録番号 商標登録第3302571号(T3302571) 
商標の称呼 トーキョーウオーカー 
代理人 野原 利雄 
代理人 西浦 嗣晴 
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