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審決分類 |
審判 判定 審理一般(別表) 属する(申立て成立) 116 |
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管理番号 | 1118528 |
判定請求番号 | 判定2004-60071 |
総通号数 | 67 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標判定公報 |
発行日 | 2005-07-29 |
種別 | 判定 |
2004-08-26 | |
確定日 | 2005-05-31 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2629691号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | 商品「ボールペン」に使用するイ号標章は、登録第2629691号商標の商標権の効力の範囲に属する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2629691号商標(以下「本件商標」という。)は、「クリスタル」の文字よりなり、平成1年4月26日登録出願、第25類「ボールペン」を指定商品として同6年2月28日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新申請を経て、同15年9月5日に指定商品の書換登録申請があり同15年10月22日に、第16類「ボールペン」と指定商品の書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 第2 イ号標章 被請求人が商品「ボールペン」(以下「イ号物件」という。)について使用している標章(以下「イ号標章」という。)は、「クリスタル[細字用]」の文字よりなるものである。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第12号証を提出している。 1 判定請求の必要性 請求人は、本件商標の商標権者であり、主力商品である本件を表示した商品「ボールペン」を約40年にわたり製造・販売している。そして、請求人は、本件商標の識別力維持のために商標権が侵害されないよう、文具取り扱い店舗等を定期的に調査している。 請求人は、2004年7月14日、某大手100円ショップにて侵害品の流通状況の調査をしたところ、イ号物件を発見した。さらに調査したところ、前記某大手ショップでは地域を問わず同物件を販売していることを確認した。 そこで、請求人は、イ号標章は本件商標の商標権を侵害するものである旨の警告を発するために、該標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属するか否かについて、専門的知識を有し中立的立場から判断される特許庁に判定を求めるものである。 2 イ号標章の説明 イ号物件は、黒4本、赤1本の合計5本のボールペンを、ポリプロピレン製の包装材にパッキングしてあり、その表面となる部分の上部にイ号標章が表示されている。 イ号標章の外観は、ゴシック体で横書きにて同書体・同間隔の文字よりなり、さらに、その内容物がボールペンであることが即座にわかるよう、上部に「BALLPEN」と表示されている。 3 イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明 本件商標は、「クリスタル」なる文字を一般的ないわゆるゴシック体にて横書きで同書体・同間隔の文字よりなり、一方、イ号標章は「クリスタル[細字用]」なる文字を一般的ないわゆるゴシック体にて横書きで同書体・同間隔の文字よりなるものである。 そこで、本件商標とイ号標章を比較すると、該標章構成中の「[細字用]」の語は、商品「ボールペン」の品質を表す説明と理解され、自他商品の識別力を生じさせるものとは理解されない。 そうすると、イ号標章構成中で商標の機能を発揮する要部は「クリスタル」の文字部分である。 したがって、本件商標とイ号標章の類否判断においては、本件商標と該標章の要部である「クリスタル」とを対比すると、共に、通常見受けられる書体にて同一のカタカナ文字「クリスタル」よりなることから、両者が外観・称呼・観念のいずれにおいても同一であることは明かである。 以上により、イ号標章は本件商標と同一の標章であるとともに、イ号標章が使用される商品は本件商標の指定商品と同一であるから、商品「ボールペン」に使用するイ号標章は、登録第2629691号商標の商標権の効力の範囲に属するものである。 4 被請求人の答弁に対する弁駁 (1)イ号標章の使用について 請求人は、本件判定請求にかかる商標「クリスタル」の他、商標登録第396896号、商標「CRYSTAL」(甲第11号証及び同第12号証)を所有する。当該商標は、昭和25年8月25日に公告されており、被請求人のイ号標章の使用開始日より以前である。 そして、本件判定請求で商標登録第2629691号を用いたのは、商標が片仮名で「クリスタル」よりなり、事件の内容を分かりやすくするためである。 (2)「クリスタル」商標の識別性について 請求人の甲第7号証における商標「クリスタル」の使用は、識別標識としての態様ではないとの被請求人の指摘については、商品「ボールペン」に使用するイ号標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属するか否かについて判定を求めているものであるから、本件商標がどのように使用されているかについては、本件判定請求事件とは何ら関係がない。 (3)本件商標の効力について 「本件商標権の効力は、商標法第26条第1項第2号の規定により、被請求人のイ号標章に及ばない」とする被請求人の主張は、「クリスタル」なる語句の意味を何ら証拠の提示もなく定義づけ、誤った解釈をもって該標章の使用が商標法第26条第1項第2号に該当すると主張しているにすぎない。 (4)その他 請求人の商標「クリスタル」と表示した製品の販売開始時期・販売期間・宣伝広告活動等から鑑みれば、被請求人は自社製品に「クリスタル」と表示することにより、請求人が製造・販売する商品と誤認・混同を生じさせて販売を伸ばす、いわゆるフリーライドを期待したものであり、被請求人の行為は悪意・重過失である。 第4 被請求人の主張 被請求人は、「商品『ボールペン』について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属さないとの判定を求める」と答弁し、その理由を要旨以下のとおり述べている。 (1)イ号標章の使用について 被請求人は、「クリスタル」なる表示を平成4年以前から使用しており、本件商標の公告日(平成5年4月8日)以前に、イ号標章が商標権を侵害することを知り得なかった。 (2)「クリスタル」商標の識別性について 請求人の甲第7号証における商標「クリスタル」の使用は、自社製品と他社製品を区別する識別標識としての機能ではなく、商標の出所表示機能や自他商品識別機能を果たしているとは到底認められない。 (3)本件商標の効力について 「クリスタル」は、「透明」という意味を有し、その使用する商品ボールペンの外筒及び芯軸が透明であるという商品の形状・品質・用途を表示しているにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たす態様で使用されていないから、請求人の本件商標権の効力は、商標法第26条第1項第2号の規定により、被請求人のイ号標章に及ばない。 (4)表示義務等について 商標権者は、「商品又はその包装」に「商標登録表示」を表示するよう規定されているのに、請求人の製品にはその表示がない。また、被請求人は本件判定請求がなされたことを知った後、イ号標章の使用を中止し出荷していた製品の回収を完全に完了した。 第5 当審の判断 はじめに、本判定請求においては、請求書に被請求人の表示がなく、請求の理由の欄にもその理由が明確に示されていないので、当審において平成16年12月15日付けで審尋を発したところ、請求人から同17年2月2日付けで、手続補正書が提出され、請求の理由が明らかになり、また、被請求人が特定されたものである。 そこで、本案に入って検討するに、本件商標は第1の項で述べたとおり「クリスタル」の文字よりなるところ、その構成文字に相応して「クリスタル」の称呼及び「水晶」の観念が生ずるものである。 他方、イ号標章は「クリスタル[細字用]」の文字よりなるところ、イ号物件は、黒4本、赤1本の合計5本のボールペンが、ポリプロピレン製の包装材にパッキングしてあり、その表面となる部分の上部にイ号標章が表示されている。 そして、イ号標章構成中「[細字用]」の語は、商品ボールペンの品質を表すものであって、自他商品の識別力を生じさせるものとは理解されないものである。事実、「[細字用]」の語は、「細かい文字、小さい字」の意味を有し、商品「ボールペン」との関係では、「細字専用の商品」といった程度の意味合いを認識させるものであることから、これをボールペンに使用するときには、「細字用」の文字部分の識別力は極めて弱いものと言うべきである。 そうとすれば、イ号標章の要部は「クリスタル」の文字部分にあるとみるのが相当である。 しかして、該標章はその構成文字に相応して「クリスタルホソジヨウ」の称呼のほか、「クリスタル」の文字部分から、単に「クリスタル」の称呼及び「水晶」の観念をも生ずるものである。 そこで、本件商標とイ号標章を比較すると、「クリスタル」の称呼及び「水晶」の観念を共通にする類似の標章であり、かつ、商品も同一又は類似するものである。 したがって、商品「ボールペン」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。 なお、被請求人は、本件商標「クリスタル」は、自他商品識別機能を果たさないから、本件商標権の効力は、イ号標章に及ばない旨主張しているが、「クリスタル」の語が指定商品「ボールペン」との関係において、商品の品質を直接表示しているとする証拠の提示がないばかりか、職権で調査するもその事実を発見できない。 してみれば、被請求人の主張を採用することができない。 また、該標章の使用開始時期が本件商標の公告以前であるとの主張については、本件判定請求の主旨とは関わりのないものであるから、同人の主張を採用することができない。 よって、結論のとおり判定する。 |
判定日 | 2005-05-19 |
出願番号 | 商願平1-47737 |
審決分類 |
T
1
2・
0-
YA
(116)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 澁谷 良雄、寺光 幸子 |
特許庁審判長 |
佐藤 正雄 |
特許庁審判官 |
宮川 久成 福島 昇 |
登録日 | 1994-02-28 |
登録番号 | 商標登録第2629691号(T2629691) |
商標の称呼 | クリスタル |