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審決分類 審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 登録しない 122
管理番号 1118349 
審判番号 審判1998-15735 
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-10-14 
確定日 2005-05-06 
事件の表示 平成 3年商標登録願第 70771号拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1.本願商標
本願商標は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、第22類「はき物,かさ,つえ,これらの部品及び付属品」を指定商品として、平成3年7月4日に登録出願されたものである。

第2.原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、登録異議の申立があった結果、「本願商標は、ゴシック体の切れ英文字『VAN』(中間の「A」の文字のみは赤色で表してなる。)を書してなるところ、該商標は、異議申立人である『株式会社ヴァンヂャケット』が『被服、服飾用雑貨』等の商品に長年使用した結果、本願商標の出願時には既に取引者、需要者間において広く周知・著名となり、現在に至っている引用商標(別掲2)と綴字、特徴ある書体、文字の配色などを悉く同じくするものである。そして、本願商標の指定商品と引用商標を使用している商品とは、共にファッションに密接に関係する商品といえるから、本願商標をその指定商品に使用するときは、該商品が申立人あるいは申立人と何らかの関係のある者の取り扱いに係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。

第3.請求人の主張の要点
請求人は、本願商標は登録されるべきである、として以下のように主張し、証拠方法として、平成3年審判第17222号審決書(写し)ほかを提出した。
1.本件の事実関係
(1)株式会社ヴァンヂャケットの商標の使用について
第三者であるバン・ヒューセン社は、「VAN」の欧文字からなり、第36類「シャツ、ネクタイ、パジャマ、その他本類に属する商品」を指定商品とする登録第291906号商標(昭和12年7月12日設定登録、平成8年7月24日商標権存続期間満了)の商標権者であったから、株式会社ヴァンヂャケットは、上記登録商標と同一・類似商標を同一・類似商品に使用できなかった。
(2)ヴァンヂャケット社が使用したのは、上段に「VAN」、下段に「・JAC・」の欧文字を横書きした商標「VAN/・JAC・」であって、引用商標「VAN」の使用の事実はない。すなわち、バン・ヒューセン社の商標権がある限り、無断で使用することはできないからである。
(3)旧株式会社ヴァンヂャケットの倒産と新会社の設立
旧株式会社ヴァンヂャケット(以下「旧社」という。)は、昭和53年10月12日に破産宣告を受け、同59年2月19日に破産終結した。
そして、破産宣告から2年後の昭和55年12月3日に「株式会社ヴァンジャケット新社」(以下「株式会社ヴァンヂャケット」又は単に「新社」という。)が設立され、旧社の商標権等それにともなう一切の権利を新社に譲渡する旨の覚え書きが交わされている。しかしながら、新社が「VAN」の欧文字のみからなる商標を譲り受けた事実はない。
(4)売上高
売上高を示すものとして甲第19号証を提出しているが、如何なる根拠に基づいて作成されたか不明であり、しかも、昭和55年〜昭和60年の記録であって、本願商標の出願時の10〜6年前のものである。
2.引用商標「VAN」の非周知性
前述のとおり、旧社及び新社の使用に係る「VAN/・JAC・」商標は、昭和51年当時において取引者、需要者に広く認識されていたとしても、昭和53年に破産宣告を受け、それ以後は使用されていない。
しかも、株式会社ヴァンヂャケットは、旧社から権利を譲り受けた事実はなく、昭和62年頃から「VAN/・JAC・」の商標を使用開始し、その信用の蓄積を一から始めたものである。そして、本願商標の出願時も現在も一般取引者、需要者に広く著名である程の信用を蓄積していない。
3.昭和59年当時の引用商標「VAN」の非周知性
本願の出願人が所有する登録第1880128号商標に対し、新社が請求した無効審判事件(平成3年審判第17222号)において、新社は、本件引用商標と色彩のみ異なる商標「VAN」を引用商標とし、この引用商標が新社の業務に係る衣服及び服飾用品雑貨を表示するものとして全国的に著名であったと主張し、商標法第4条第1項第15号に該当することを無効理由の一つとしている。
この審判における平成10年5月11日付け審決によれば、「商標「VAN」が、昭和50年当時、ジャケット、スーツなどに使用され著名な商標であったとしても、これがそのまま昭和59年当時著名であったことを証する証左もなく、本件商標の出願時以前より他人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者、需要者間に広く認識されていたとは認められない。」と正しく認定している。
このように、本件とその事案を共通にし、証拠においても共通する上記無効審判において、引用商標「VAN」が周知・著名であるとは認められていない。また、その後、引用商標「VAN」が著名となったといえる事情は何ら存しない。
4.結論
以上のとおり、本願商標は、その指定商品に使用しても、申立人の業務に係るものであるとの出所の混同を生ずるおそれはないから、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

第4.当審の判断
1.事実関係について
請求人は、(1)第三者の登録商標「VAN」が存在していたから、引用商標は使用できなかった。(2)破産した旧社から株式会社ヴァンヂャケットへ「VAN」商標は譲渡されていない。(3)昭和53年の旧社の破産宣告以後、「VAN」商標は使用されておらず、本願商標の出願時及び現在も取引者、需要者に広く著名である程の信用を蓄積していない旨主張しているので、以下、これらの点について判断する。
なお、原審において異議申立人の提出した甲第1号証ないし甲第25号証等については、本件においても当該表示で採用した。
(1)前述のとおり、「VAN」の文字からなり、第36類「シャツ」等を指定商品とする第三者の登録第291906号商標の存在は認めることができるが、旧社及び株式会社ヴァンヂャケットが商標「VAN」等を盛大に使用していたことは明白であるから、単に上記登録商標の存在をもって両社が引用商標を使用できなかったと断定することはできない。
(2)次に、引用商標の商標権については、甲第11号証により、破産した旧社の破産管財人から株式会社ヴァンヂャケットへ譲渡されたものと認めることができる。また、このことは、後述の平成3年審判第17222号の審決取消訴訟事件である東京高等裁判所の平成10年(行ケ)第202号事件判決(平成11年11月9日判決言渡)においても同様に認定しているから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(3)本願の登録異議の申立において、申立人(株式会社ヴァンヂャケット)が提出した甲第5号証(会社概要)によれば、同社は、旧社の破産後昭和55年12月3日に設立、繊維製品等の製造加工、卸、販売を事業目的とし昭和62年8月から平成2年7月までの売上げは、毎年約28億円から約30億円であり、少なくとも上記期間については相当の売上げがあったことが認められる。
そして、旧社の使用に係る商標「VAN」の著名性については、請求人もこれを否定していないから、これを受け継いだ株式会社ヴァンヂャケットについても上記の売上高をみれば、引用商標の著名性はなお継続していたものということができ、このことは、後述の東京高等裁判所の判決においても同様に認定されているところである。
したがって、この点についての請求人の主張も採用できない。
2.「VAN」商標に関する職権証拠調べ
さらに、当審において本願の出願時(平成3年7月4日)以降について、株式会社ヴァンヂャケットが被服等の商品について使用する商標「VAN」に関し職権による証拠調べを行ったところ、以下の事実を認めることができる。
(1)本願商標の出願時以降の株式会社ヴァンヂャケットの会社概要、売上高、使用商標等について、インターネット〔http://www.van.co.jp/〕、業界誌、及び電話・FAX等により職権調査したところ、その概要は以下のとおりである。
(ア)会社概要
株式会社ヴァンヂャケット(本社 東京都港区海岸2-5-23洋伸ブックセンター6F)は、資本金4800万円、従業員36名(但し、本社の雇用契約社員のみ)である。
(イ)歴史
同社は、昭和26年にヴァンの前身である石津商店から始まり、同29年には「VAN」ブランドをスタート。特に1960年代から70年代中頃まで最盛期であったが昭和53年破産。同55年に株式会社ヴァンヂャケット新社を設立して営業開始、現在に至っている。
(ハ)販売店
北海道9、東北10、関東11、甲信越6、北陸・東海6、近畿・中国5、四国・九州10など全国81箇所に販売店を有するところから、全国的に販売展開をしていることが推認できる。
(ニ)売上高
平成3年以降の売上高は、平成3年7月期(平成2年8月〜同3年7月)が約34億円、以下、同4年は約35億円、同5年約30億円、同6年約25億円、同7年約25億円、同8年約25億円、同9年約28億円、同10年約32億円、同11年約23億円、同12年約14億円、同13年約8億円である。
なお、本社の平成14年の売上高は7億5千万円、同15年は6億6千万円であるが、平成14年以降は、株式会社ベルソンジャパン(福岡市)に「VAN」の使用権を与えブランドライセンスしており、上記会社の平成14年6月〜15年5月の売上高は約6億5千万円、同15年6月〜16年5月は約23億円である。
(ホ)使用商品と使用商標
同社が取り扱う商品は、たとえば、「スーツ、ジャケット、ジャンパー、パンツ、コート、トレーナー、カットソー、セーター、シャツ」等があげられ、それらの商品に付せられている商標は、何れも、切れ込みの入ったステンシル書体の「VAN」及び「VAN」の文字の下に小さく「・JAC・」の文字を配した商標である。そして、上記「VAN」の文字は、「V」及び「N」を黒色又は白色とし、中央の「A」を赤色に配色したものが大多数であって、その態様は、本願商標と極めて酷似するものと言える。
(ヘ)業界雑誌「ファッション・ブランド年鑑’96年版」(別冊チャネラー1995年11月20日 株式会社チャネラー発行)によれば、株式会社ヴァンヂャケットは、ヴァン(VAN)ブランドで年商31億円(決算期不明)。商品特徴は「アメリカン・アイビー・トラディショナル」であり、メンズを対象としたスーツ、ブレザー、スラックス、シャツ、ジャンパー、コート、セーター等を取り扱っている。販路は専門店35%、百貨店20%、FC店20%、直営店20%となっている。
また、レディスを対象としてスーツ、ブレザー、ワンピース等にヴァン・レディス(VANLADIES)のブランドで年商1億円である。
(2)東京高等裁判所の平成10年(行ケ)第202号事件について
上記事件は、「VAN」の欧文字よりなり、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品とする登録第1880128号商標(権利者及び被請求人は本件請求人)の無効審判事件(平成3年審判第17222号 請求人は株式会社ヴァンヂャケット)の審決取り消し訴訟事件であり、「無効不成立」の審決に対し、同裁判所は、「はき物」について審決を取り消す旨の判決をした。
そして、同判決では、株式会社ヴァンヂャケットは、旧社破産後、その承継会社として「VAN/・JAC・」商標をジャケット、トレーナー、シャツ等の商品について使用し著名であったこと、上記商標のうち「VAN」の文字が圧倒的に大きく「ヴァン」の称呼をも生ずること、したがって、登録商標「VAN」を使用した場合、一般取引者、需要者は、「はき物」について株式会社ヴァンヂャケットの業務に係る商品であると出所の混同を生ずるおそれがある旨判示した。
(3)上記(1)及び(2)で認定した事実を総合勘案すれば、切れ込みの入ったステンシル書体の商標「VAN」及び「VAN/・JAC・」(「・JAC・」の文字は小さく書してなる。)は、ジャケット、トレーナー、シャツなどについて、本願商標の出願前から、株式会社ヴァンヂャケットによって使用され、取引者・需要者間に広く認識されていたものであり、また、上記商標を付した商品の近年の売上げは平成3年から現在に至るまで、全国規模で毎年相当額にのぼるところから、その著名性は、現在においても継続しているものと認められる。
3.当審は、平成16年12月10日付で上記職権証拠調べの内容を請求人に通知し、相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えたところ、請求人は何ら意見を述べるところがない。
4.出所の混同について
前述の3.「VAN」商標に関する職権証拠調べ等によれば、株式会社ヴァンヂャケットは、旧社の破産後の昭和55年に設立、以後、本願の出願時はもとより現在においても、「VAN」、「VAN・JAC・」等の商標を「スーツ、ジャケット、トレーナー」等に使用し、取引者、需要者間に広く認識されているものと認めることができる。
また、本願商標と引用商標とを比較するに、両商標は、何れも「VAN」の欧文字を横書きしてなり、各欧文字はステンシル文字様に切り込みを入れてなること、及び両端の「V」及び「N」の欧文字を白く、中央の「A」の文字を赤く着色してなること等からすれば、両商標は何れも「ヴァン」の称呼を共通にし、かつ、その外観上も極めて酷似する商標といえるものである。
さらに、本願商標の指定商品「はき物、かさ、つえ、これらの付属品」は、何れも身体に身につけるか或いは持ち歩く商品であり、他方、引用商標の使用商品は、「スーツ、ジャケット」等の被服であるから、両者は共にファッションに密接に関係する商品というべきものである。
以上を総合勘案すれば、引用商標は、本願商標の出願前から株式会社ヴァンヂャケットが被服等に使用して著名な商標であり、これと酷似する本願商標を引用商標の使用商品と密接な関係にある本願の指定商品について使用するときは、株式会社ヴァンヂャケットの業務に係る商品であるか、あるいは同社と経済的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について誤認を生ずるおそれがあるものと言わざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同条項により本願を拒絶した原査定は妥当であって取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり、審決する。
別掲 別掲(1)本願商標 (色彩は省略した)

別掲(2)引用商標(色彩は省略した。背景の地の部分は商標ではない。)


審理終結日 2005-02-23 
結審通知日 2005-03-04 
審決日 2005-03-16 
出願番号 商願平3-70771 
審決分類 T 1 8・ 271- Z (122)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関口 博涌井 幸一 
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 岩崎 良子
小林 薫
商標の称呼 バン、ブイエイエヌ 
代理人 鎌田 文二 
代理人 鳥居 和久 
代理人 東尾 正博 

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