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審決分類 審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効としない 028
管理番号 1116367 
審判番号 審判1999-31169 
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-06-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1999-08-24 
確定日 2005-04-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第3244222号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3244222号商標(以下「本件商標」という。)は、「JBEAM」の欧文字を横書きしてなり、平成6年9月12日に登録出願、第28類「運動用具」を指定商品として、同9年1月31日に設定登録されたものであり、当該商標権は現に有効に存続しているものである。
なお、商標登録原簿の記載によれば、本件審判は、平成11年8月25日に請求され、同年9月16日に当該請求の予告登録がされている。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録は商標法第51条第1項の規定によりこれを取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第13号証(枝番を含む。)を提出した。
1.請求の理由
(1)請求人の所有する商標について
請求人は下記の登録商標を有している(甲第2号証ないし甲第4号証)。
(a)登録第873672号商標は、「BEAM」の欧文字を横書きしてなり、昭和42年11月15日に登録出願、第24類「おもちや、娯楽用具、運動具、その他本類に属する商品」を指定商品として、同45年9月24日に設定登録されたものである(以下「引用商標1」という。)。
(b)登録第4226301号商標は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成9年5月14日に登録出願、第18類「かばん類,袋物」、第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」及び第28類「運動用具」を指定商品として、同11年1月8日に設定登録されたものである(以下「引用商標2」といい、適宜、「B::M」とも表示する。)。
(c)登録第2436427号商標は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、平成2年6月5日に登録出願、第24類「おもちや、人形、娯楽用具、運動具、釣り具、楽器、演奏補助品、蓄音機(電気蓄音機を除く)レコ―ド、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同4年7月31日に設定登録されたものである。なお、指定商品及び商品の区分は、その後、平成15年6月25日に指定商品の書換登録により、第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」及び第28類「おもちゃ,人形,運動用具,釣り具」となっている(以下「引用商標3」という。)。
(2)請求人及び被請求人が使用する商標の使用態様について
請求人は、甲第5号証のカタログに示す如く、商品「ゴルフボール」について引用商標1「BEAM」を、商品「ゴルフクラブ」について「ビーム」の発音を有する引用商標2「B::M」及び引用商標3を使用している。
被請求人は、別掲(1)のとおりの構成よりなる商標(以下「本件使用商標」といい、適宜、「jBEAM」とも表示する。)を商品「ゴルフクラブ」について使用している(甲第6号証)。
(3)商標法第51条第1項における該当性
商品「ゴルフクラブ」における商標「jBEAM」の使用は、請求人が商品「ゴルフクラブ」に使用している引用商標2「B::M」と非常に紛らわしく、商標法第51条第1項に規定する他人の業務に係る商品と混同を生ずる事態を生じさせている。
商標「jBEAM」と商標「B::M」とを比較した場合、前者では第1語である「j」のみが他の部分と異なった書体で表現されていることから、「j」部分が所謂品番の如くに受け取られ、「ジェイ」と「ビーム」の発音とに分断され、「ビーム」と呼ばれる「ゴルフクラブ」の「ジェイ(タイプ)」の如く認識されるのである。
被請求人は、自己の登録商標の使用をするに際して、その登録商標の全体が大文字で「JBEAM」と表記されているのに拘らず、その第1語である「J」の文字のみを意図的(故意)に小文字である「j」に変更して表現しており、請求人の引用商標1「BEAM」ないし引用商標2「B::M」に近づけ、購買者をして請求人の製造販売に係る商品であるかのように誤認を生じさせる意図であることは明白であり、悪質な只乗り行為である。
更に、請求人は、永年にわたり商品「ゴルフクラブ」について、「ジェイズ」と愛称されている引用商標3を使用しており、また、日本プロゴルフ界の雄であるジャンボ尾崎氏との契約に基づき、「Jumbo/ジャンボ」の表示を昨年まで使用してきた業界周知の事実があり、商品「ゴルフ用品」に関しての「J」表示のイメージは、請求人の製造販売に係る商品であると認識されるに至っているものであるが、この点からも被請求人が「BEAM」の表記の前に、何故に「J」の表記を加えて「JBEAM」の表記としたかが容易に推定できるところである。
また、甲第5号証の1ないし3からも明らかな通り、「B::M」中のJ’sジョーキャビティ型の商品であるかのように誤認を生じさせる意図であることは明白であり、悪質な只乗り行為である。
(4)以上の理由により、本件商標登録は商標法第51条第1項の規定により取り消されるべきである。

2.答弁に対する弁駁
(1)不正使用が故意であること
被請求人による不正使用の開始日は、平成6(1994)年9月頃からとされており、一方、引用商標1は、1970年9月24日付の登録であり、引用商標3は1992年7月31日付の登録であることから、商品「ゴルフクラブ」を製造販売する同業者である被請求人は、商標の使用開始に当たり、上記引用商標の存在を当然のことながら知っていなければならない。百歩譲って、使用開始時点において現実に知らないということがあったとしても、乙第6号証ないし乙第9号証として提出されている「ゴルフ用品総合カタログ」により、引用商標の存在を知るに至ったことは明白である。
後述するように、請求人は、引用商標2「B::M」の使用に際しても、「ビーム」あるいは「BEAM」の表記を併用しており(「BEAM」の併記については、甲第7号証中の2000年3月8日付け朝日新聞の広告等を参照)、「BEAM」商標並びに「B::M」商標から導かれる「ビーム」の称呼は、商品「ゴルフクラブ、ゴルフボール」に関して、請求人の製造販売に係るものとして広く認識されるに至っている。
しかるに、被請求人は、後述するように、商品「ゴルフクラブ、ゴルフボール」について、登録商標「JBEAM」の全体を同一の書体及びサイズで表わした態様と「J」部分と「BEAM」部分とを異なる書体及びサイズで表わした幾つかの態様で使用しており、殊更に、「ビーム」の称呼が発生するような態様で使用しているものであるから、不正使用が故意であることは明白である。
なお、不正使用が故意であることは、不正競争或いは只乗りの意図とは関係しないことであり、この点に関する被請求人の抗弁は意味がない。
(2)禁止権の範囲の使用であること
被請求人は、カタログの表記部分やゴルフクラブのヘッド部分等において、次の通りの態様で使用している。
(a)「J」のみを大サイズにした「JBEAM」の態様での使用(乙第6号証、乙第7号証)
(b)「J」のみを大サイズにし、Bを変形文字にした「JBEAM」の態様での使用(乙第6号証、乙第7号証)
(c)小文字の「j」を大サイズで表し、B及びAを変形文字にした「jBEAM」の態様での使用(乙第1号証の1ないし3、乙第2号証、乙第6号証)
(d)「J」のみを大サイズにし、B及びAを変形文字とした横一連表示の「JBEAM WIN.1」の態様での使用(乙第7号証)
(e)小文字の「j」を大サイズで表し、B及びAを変形文字とした二段表示の「jBEAM/WIN.1」の態様での使用(乙第1号証の1、乙第1号証の3、乙第7号証)
(f)小文字の「j」を大サイズで表し、B及びAを変形文字とした横一連表示の「jBEAM WIN.1」の態様での使用(乙第4号証)
(g)「J」のみを大サイズにし、全体の中央に水平の線状ヌキ部分を有する「JBEAM」の態様での使用(乙第7号証)
被請求人は、上記(a)ないし(g)について、本件商標の一部をデザイン化したものであり、登録商標と同一の商標の範囲内である旨述べているが、「J」部分と「BEAM」部分において、登録商標と使用商標との間に、書体及びサイズの点で明らかな差があり、類似の商標というべきであり、被請求人の抗弁は、商標の同一及び類似についての従来の実務に反していることは火を見るよりも明らかである。
以上により、上記(a)ないし(g)の商標、少なくとも上記(a)ないし(c)の商標の使用は、指定商品について登録商標に類似する商標の使用に該当することは明らかである。
なお、被請求人が乙第4号証として提出する「jBEAM WIN.1(jは小文字の大サイズ、BAは変形文字)」商標は、「WIN.1」の併記もあり、上記(a)ないし(g)の商標と同一ではなく、類似の商標の範囲に属するものであり、したがって、上記(a)ないし(g)の商標の使用は、乙第4号証の商標の使用とも認められない。
(3)品質の誤認又は出所の混同が発生していること
請求人は、引用商標2の使用に際しても、「BEAM」あるいは「ビーム」の表記を併用しており、「ビーム」の称呼で識別される商品「ゴルフクラブ、ゴルフボール」は、請求人の製造販売に係るものとして広く認識されているものである。この事実を立証するため、新たに、甲第7号証ないし甲第13号証を提出する。
甲第7号証(株式会社コスモ・コミュニケーションズ発行の証明書)には、平成10年12月17日から平成12年5月25日までの株式会社コスモ・コミュニケーションズを仲介とした新聞・雑誌媒体による引用商標1「BEAM」及び引用商標2「B::M」の広告実績が総計で225,670,000円に至っていること、「ビームゴルフクラブ」の広告実績が総計で101,901,000円に至っていること、「ビームゴルフボール」の広告実績が総計で83,301,000円に至っていることが示されており、広告の内容では、引用商標2「B::M」に併記して「BEAM」並びに「ビーム」が使用されている。
甲第8号証(株式会社アイアンドエス・ビービーディオー発行の証明書)には、平成10年4月16日から平成12年5月7日までの期間における株式会社アイアンドエス・ビービーディオーを仲介とするテレビジョン媒体による引用商標2「B::M」の広告実績が示されている。TV画面においては、「B::M」の表示であるが、PRODUCT名に「ビーム」とあるように、「ビーム」の称呼が音声として加えられている。
甲第9号証(株式会社電通発行の証明書)には、平成11年4月6日から平成11年4月21日までの期間における株式会社電通を仲介とするテレビジョン媒体による引用商標2「B::M」の広告実績が示されている。TV画面においては「B::M」の表示であるが、「ビーム」の称呼が音声として加えられている点は甲第8号証と同様である。
甲第10号証(平成12年7月14日付日経産業新聞抜粋写)には、1999年度における請求人の業界出荷量シェアがゴルフクラブで13.0%の業界第3位、ゴルフボールで41.2%の業界第1位であったことが示されている。
甲第11号証(平成12年7月17日付日経産業新聞抜粋写)には、1999年度における請求人のゴルフボールの業界出荷量シェアが41.2%の業界第1位であったことが示されている。
甲第12号証(平成12年8月31日付毎日新聞抜粋写)には、CM専門ホームページのアドレスの紹介とともに、ビーム・ゴルフボールがその写真とともに掲載されており、甲第13号証(甲第12号証で紹介されたホームページの抜粋)に、ビーム・ゴルフボールがその写真とともに紹介されており、その広告内容を閲覧できる。
以上、甲第7号証ないし甲第13号証により、引用商標1「BEAM」の使用、並びに「BEAM」及び「ビーム」の文字並びに称呼の併用による引用商標2「B::M」の使用により、「ビーム」の称呼に係る商品「ゴルフクラブ、ゴルフボール」が請求人の製造販売に係るものであると広く認識されているものである。
被請求人は、上記したように、商品「ゴルフクラブ、ゴルフボール」について、(a)ないし(g)の商標を使用しており、これらの商標は、語頭の「J」あるいは「j」の部分とこれに続く「BEAM」の部分とを異なる書体及びサイズで表示しており、両表示部分に外観的に断絶があり、引用「BEAM」商標と商品記号「J」ないし「j」との組み合わせ商標と誤認されるおそれが十分であり、外観的に紛らわしいだけでなく、語頭における「J」ないし「j」が脱落した「ビーム」と発音される可能性が極めて高く、特に、被請求人による(a)ないし(g)の商標が請求人が高いシェアを占有している商品「ゴルフクラブ、ゴルフボール」に使用されることにおいて、更に誤認の危険性はより高められるから、品質の誤認ないし出所の混同を生じさせるおそれが大である。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第9号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標及び本件使用商標について
本件商標は、「JBEAM」と欧文字にて軽重の差なく不可分一体に表示された造語商標である。
次に、本件使用商標である「jBEAM」は、欧文字の大文字にて左横書きし、語頭文字を欧文字の小文字にして不可分一体一連に、かつ、軽重の差なく左横書きした構成からなり、自己の登録商標の一部をデザイン化したものであり、その使用に際しては、原則として当該使用商品に片仮名の「ジェービーム」か本件商標の「JBEAM」を同一商品の看取し易い位置及び商品に関するポスターや商品カタログ等に併記して表示しているものである(乙第1号証の1、2、3及び乙第2号証)。
(2)本件使用商標と本件商標との類否について
本件使用商標「jBEAM」と本件商標「JBEAM」とは、称呼上はともに「ジェービーム」であり同一である。外観上については、本件商標は、欧文字の大文字にて「JBEAM」と左横書きして成る構成に対し、本件使用商標は、欧文字の大文字にて左横書きして成る「BEAM」の語頭文字である「J」の文字を小文字「j」にして一連に、かつ、軽重の差のない構成を有する本件商標の一部をデザイン化した本件商標に類似する商標である。そして、この使用形態である「jBEAM」を要部とする被請求人の商標登録出願は、平成11年9月16日付けにて登録査定となり近日中に商標権として成立するものである(乙第4号証)。
更に、本件商標のように、その使用形態において商標の同一性を失わない範囲でデザイン化して使用することは,自己の商標の正当な権利範囲内での使用であり、商標権者であれば業種を問わず実行、採択されている使用行為である。
(3)本件商標・本件使用商標と引用各商標との類否について
本件商標は、上記したとおり、欧文字にて軽重の差なく不可分一体に表示された商標であり、何ら特定の意味合いを有しない造語商標であって、「ジェービーム」と6音で称呼され、語頭の「J」の文字は、これに連続する「BEAM」の文字と決して分離して認識されることはないものである。
これに対して、請求人の引用商標1「BEAM」は、欧文字にて軽重の差なく不可分一体に表示された文字商標であり、「ビーム」と3音で称呼され、「梁、粒子又は電磁波の細い流れ」という観念を生じる商標である。引用商標2「B::M」は、「B」及び「M」の欧文字を両端に配し、その中間スペースに、対向する△形状の図形を並列に配し、さらに、これらの横に並列する「B」「M」の欧文字と△形状の図形をその中央部分から寸断するように閃光光線を想起させる横線にて区切った構成の結合商標である。また、引用商標3は、「j’」「s」の二文字とこれを囲む三角形の図形から構成された文字と図形の結合商標であり、「ジェーズ」と4音にて称呼されるものである。
したがって、本件商標と引用商標1ないし3とは外観、称呼及び観念のいずれからみても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
そして、本件使用商標が本件商標と同一の範囲内又は類似の範囲内の使用商標である点からして、前記したところと同一の理由により、本件使用商標は、請求人引用商標1ないし3とは、外観、称呼及び観念のいずれからみても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(4)請求人の業務に係る商品との誤認、混同について
(a)請求人は、商品「ゴルフクラブ」における本件使用商標の使用が請求人の業務に係る商品と混同を生じる理由として、本件商標の第一語のみを他の部分と異なった書体で表現され、所謂、品番の如く受け取られ、「ジェイ」と「ビーム」の発音とに分断され、「ジェイ(タイプ)」の如く認識されるとしている。
しかしながら、上記したように、本件使用商標は、本件商標とともに、引用商標1ないし3とは非類似の商標であり、本件使用商標は不可分一体に構成された造語商標であって、語頭の「j」はこれに連続する「BEAM」と相対的に商品の出所の表示として使用される部分である。
(b)本件審判において、法規上は、請求人の引用商標について、必ずしも周知性を求めていないことは承知しているが、少なくとも使用商品の特殊性から判断したとき、請求人の提出に係る甲5号証の「GOLF GEAR CATALOGUE」の証拠等によっては、客観的な判断は不可能というべきである。これは、引用商標1ないし3の各商標が数え切れないほど多数の取扱い商品の中で主力商品でもなく、取引者・需要者において商品の混同や誤認を招くほど認識されていないことに他ならないというべきである。このことからしても、商標法51条第1項に規定する「他人の業務に係わる商品と混同を生ずる」ことはない。
(5)商品の取引流通、一般需要者の購入時の特殊性について
一般に、ゴルフクラブは、日用品や雑貨用品、電気、自動車製品等の大量生産の製品と異なり、製品一個あたりの単価価格が高額商品といわれている。例えば、ゴルフウッドクラブをみても、需要者や取引業者は、商品の購入や仕入れ、販売に際しては、クラブの特性である材質(ステンレス、チタン、複合合金類等)、製造方法(鋳造、鍛造、複合製造等)、ヘッドの性能(ロフト、重量、体積、重心位置、スイートスポット、ヘッドバランス等)、シャフトの性能(材質、硬さ、キックポイント、バット径、シャフト長さやヘッド重量との関係での慣性モーメントやヘッドスピード)、クラブの総重量等を正確に確かめて購入するものである。
このような、ゴルフクラブという商品流通事情にあって、需要者や取引者が請求人の引用各商標と被請求人の本件商標及び本件使用商標を混同、誤認をして商品を購入したり取引きすることは考えられない。商品を買い入れるためには、通常、購入者は、細心の注意と興味、クラブ性能、クラブのブランド名(商標)等を熟慮して多数の商品群の中から選択するのがゴルフクラブ商品取引社会の経験則である。この実状を全く無視した請求人の主張は認めることはできない。
(6)故意及び悪質な只乗り行為について
(a)商標法第51条第1項の「故意」の内容は、登録商標に類似する商標の使用によって品質の誤認又は出所の混同を生ずるものと認識することで足りるものではなく、商標権者が他人の登録商標又は周知商標に近似させたいとの意図で以って自己の登録商標と類似の範囲に使用したことが必要であるから、本条項の「故意」が認められるためには、被請求人が周知である請求人の引用商標1ないし3に近づけようとする意図、又は請求人の前記商標を模倣しようとする意図が必要である。
また、本件審判請求において「只乗り」(フリーライド)が認められるためには、請求人の引用商標1ないし3が著名な商品表示・営業表示になっていたものを被請求人が冒用する行為をすることであるから、被請求人には、その結果に着目して意図や認識があったことが必要である。
しかして、本件商標の使用開始時期は、その商標登録出願とほぼ同時期である平成6年9月頃からであり、積極的に宣伝、広告を開始したのは、翌年に入ってからである。その使用、実施の一例として、株式会社ユニバーサルゴルフ社平成8年3月1日発行1996年版「ゴルフ用品総合カタログ」(乙第6号証)を提出する。このカタログには、当ゴルフ業界の代表企業250社の製品が網羅されており、請求人の製品についても掲載されている。当社製品には明確に本件商標が商品ゴルフクラブのヘッド、シャフト及びボールに表示してある。以後、毎年当該「ゴルフ用品総合カタログ」には本件商標及び本件使用商標を掲載しており(乙第6号証)、それ以外にも、当社「JBEAM用品総合カタログ」及び製品にも本件商標及び本件使用商標を表示して使用している(乙第7号証)。
また、昨年に入ると、ゴルフクラブのヘッドの超大化に伴い当社製品の技術が注目され、多数のゴルフ専門誌からの取材や広告も多くなり、その一例として週刊誌や商品案内カタログを提出する(乙第8号証及び第9号証)。
更に、本件商標及び本件使用商標についての広告ポスターについて、その使用状態を明示するためデパート及び一般取扱業者や特定の代理店に配布したものを提出する(乙1号証の1、2、3)。
そして、本件商標及び本件使用商標を商品に表示するときは、乙各号証に現出されているように、需要者や取引者が看取し、見易い位置に両商標か或いはカタカナ表示で「ジェービーム」と併記して使用している。
(b)ところで、請求人の提出した甲号証によれば、請求人の引用商標1ないし3についての使用開始時期は明確でない。特に、このうち引用商標1「BEAM」及び引用商標2「B::M」については、当業者及び被請求人が知るところでは、被請求人が本件商標を使用開始した時期より遅いことは明確である。また、被請求人は、1998年以降、本件使用商標の使用を開始しているが(乙第6号証)、当該使用開始時期においても、請求人から提出された証拠からでは、請求人の商標「BEAM」が周知性を具備していることなど到底認めることができない。してみると、本件審判請求における「故意」、「悪質な只乗り」など起こり得ないと判断すべきである。
更に、被請求人の商品のうち、超大型ヘッドのウッドクラブ及びアイアンについては、その技術的クラブ性能が高く評価され、一流プロゴルファーや販売業者からの取引や購入も増え、又、アマチュアゴルファーの比較的上級者から注目されるに至っており、「ジェービーム」のブランドは、周知クラブとして確立しているものである。
(7)以上詳説したように、本件使用商標と請求人商標とは外観、称呼、観念のいずれにおいても区別できる非類似のものであり、互いに相紛れるおそれはなく、本件商標を付した商品に接する取引者・需要者は、その商品が請求人の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同、誤認を生ずるおそれもなく、故意に基くものでないから、請求人の主張には理由がない。

第4 当審の判断
1.本件商標及び被請求人の使用商標と使用商品について
本件商標は、前記したとおり、「JBEAM」の欧文字を横書きしてなり、第28類「運動用具」を指定商品とするものであり、本件取消審判において、請求人が本件商標の不正な使用に該当すると主張している被請求人の使用に係る商標(本件使用商標)は、甲第6号証(株式会社ゴルフ用品界社 平成11年4月20日発行「月刊ゴルフ用品界4月号」)に掲載の「ゴルフクラブ」に表示されている商標であって、その態様は、別掲(1)に示すとおり、本件商標中の語頭の文字を「j」の小文字でやゝ縦長に表し、これに続く文字部分は「BEAM」の大文字(B及びAの文字はやゝデザイン化されている。)で表し、全体を緩やかな右傾斜に表現した構成からなるものである。

2.本件使用商標と本件商標との関係について
本件商標は、上記のとおり、「JBEAM」の欧文字を同じ書体、同じ大きさ、同間隔をもって横一連に表してなるものであるから、その構成文字に相応して「ジェイビーム(ジェービーム)」の称呼のみを生ずるものと認められる。
これに対して、本件使用商標は、上記のとおりの構成からなるものであるところ、「j」と「BEAM」の文字間で格別、分断されたような印象を与えるものではなく、「BEAM」の文字部分を強調しているものでもないから、全体として横一連に一体的に表されているものというべきであって、その構成文字全体に相応して「ジェイビーム(ジェービーム)」の称呼のみを生ずるものとみるのが相当である。
そうとすれば、本件使用商標と本件商標とは、称呼の点において同一のものということができる。しかしながら、外観の点において、主に、語頭の文字部分の表現方法が本件商標と同一のものとはいえないから、本件使用商標は、本件商標の指定商品に含まれる「ゴルフクラブ」について、本件商標そのものの使用ではなく、本件商標に類似する商標の使用といわなければならない。

3.請求人の所有する商標及び使用商標と使用商品
請求人は、前記したとおり、引用商標1ないし3を有しており、その態様は、引用商標1は「BEAM」の欧文字を一連に横書きした構成からなるものであり、引用商標2は別掲(2)のとおり、太字で表した「B」及び「M」の欧文字を両端に配し、その中間部分にやゝ小さな黒塗りの二等辺三角形を上下に向い合わせるように2組配し、これらをその中央部分から横に分断するように、中央部分に膨らみを持たせた横線で区切ったかの如き構成からなるものであり、また、引用商標3は別掲(3)のとおり、周囲を太線で表した正三角形の中に、太字で表した「j」と「s」及びその間にアポストロフィと思しき小さな斜線を配した構成からなるものである。
そして、請求人は、甲第5号証の1ないし3(「GOLF GEAR CATALOGUE」の1998-7、1999-1及び1999-7)の各カタログに示すとおり、これらの商標を「ゴルフボール」及び「ゴルフクラブ」について使用している。

4.他人の業務に係る商品との混同の有無について
(1)本件使用商標と請求人の使用商標(引用各商標)との類否について
本件使用商標は、上記のとおり、全体として一連一体の商標と理解、認識されるものであって、その構成文字全体に相応して「ジェイビーム(ジェービーム)」の称呼のみを生ずるものと認められる。
これに対し、請求人の使用に係る引用各商標は、上記のとおりの構成からなるものであるから、引用商標1からは「ビーム」の称呼を生ずるものである。また、引用商標2は、その構成からみて直ちに一定の称呼を生ずるものとはいい難いが、甲第5号各証(GOLF GEAR CATALOGUE)等には、当該商標に「ビーム」の片仮名文字が小さく付記されていることが認められ、そのような使用の実情に照らしてみれば、引用商標2からは、「ビーム」の称呼を生ずるものとみるのが相当である。更に、引用商標3についても、その構成からみて直ちに一定の称呼を生ずるものとはいえないが、顕著に表され、かつ、読み易い欧文字部分に相応して「ジェイズ」の称呼を生ずるものとみるのが相当である。
そこで、本件使用商標と請求人の使用に係る引用各商標とを比較するに、本件使用商標から生ずる「ジェイビーム(ジェービーム)」の称呼と引用商標1及び2から生ずる「ビーム」の称呼とは、長音を含めても5音対3音という構成音数において明らかな差異を有するばかりでなく、称呼における識別上重要な要素を占める語頭部分において、「ジェイ(ジェー)」の音の有無の差異を有するものであるから、この差異が比較的短い両称呼に与える影響は決して小さいものとはいえず、両者は、これらをそれぞれ一連に称呼するも、全体の語調・語感を異にし、称呼上、彼此相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
また、本件使用商標から生ずる「ジェイビーム」の称呼と引用商標3から生ずる「ジェイズ」の称呼とは、「ジェイ」の音を共通にするとしても、後半部分において明らかな音の差異を有するものであるから、この両者についても、全体の語調・語感を異にし、称呼上、彼此相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
次に、外観についてみるに、本件使用商標と引用商標1とは、語頭部分において「j」の文字の有無の差異を有するものであり、引用商標2とは、「j」の文字の有無の差異ばかりでなく、その余の構成部分の表現においても、本件使用商標は「B」と「M」の間が「EA」の文字であるのに対して、引用商標2は当該部分が図形的表現であるという構成上の明かな差異を有するものであり、引用商標3とは、商標の構成自体に顕著な差異を有するものである。そうとすれば、本件使用商標と引用各商標とは、外観においても紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
更に、観念についてみても、本件使用商標は、その構成全体をもって、特定の意味合いを認識させることのない造語と認められるものであるから、引用各商標とは、比較すべくもないものであって、観念の点においても、紛れる要素は見当たらない。
この点について、請求人は、本件使用商標はその構成から、「ビーム」と呼ばれる「ゴルフクラブ」の「ジェイ(タイプ)」の如く認識される旨主張しているが、本件使用商標については、上記のとおり、「j」と「BEAM」の文字間で格別、分断されたような印象を受けるものではなく、全体として一連一体の構成からなる商標と理解し認識されるものとみるのが相当であるから、この点についての請求人の主張は採用できない。
してみれば、本件使用商標と請求人の使用に係る引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(2)請求人の使用に係る引用各商標の使用状況について
請求人の引用各商標の使用の状況については、前述の甲第5号各証として、ゴルフボール及びゴルフクラブ等に引用各商標を使用したカタログが提出されているほか、弁駁書において、甲第7号証ないし甲第13号証が提出されている。
甲第7号証は、株式会社コスモ・コミュニケーションズ発行の証明書であり、平成10年12月17日から平成12年5月25日までの同社を仲介とした新聞・雑誌媒体による広告であり、主に引用商標2が掲載されており、「ビームゴルフクラブ」の広告実績が総計で101,901,000円、「ビームゴルフボール」の広告実績が総計で83,301,000円、総計で225,670,000円に至っていたことが示されており、広告の内容中には、「B::M」の商標の下に小さく[ビーム]の文字が併記されていることが認められる(「BEAM」の文字が併記されているものもある。)。
甲第8号証は、株式会社アイアンドエス・ビービーディオー発行の証明書であり、平成10年4月16日から平成12年5月7日までの同社を仲介とするテレビジョン媒体による引用商標2の広告実績が示されており、甲第9号証は、株式会社電通発行の証明書であり、平成11年4月6日から平成11年4月21日までの同社を仲介とするテレビジョン媒体による引用商標2の広告実績が示されている。いずれも、TV画面においては、「B::M」の表示であるが、音声として「ビーム」の称呼が用いられていることが認められる。
甲第10号証は、平成12年7月14日付日経産業新聞抜粋写であり、1999年度における請求人の業界出荷量シェアがゴルフクラブで13.0%の業界第3位、ゴルフボールで41.2%の業界第1位であったことが示されており、甲第11号証は、平成12年7月17日付日経産業新聞抜粋写であり、1999年度における請求人のゴルフボールの業界出荷量シェアが41.2%の業界第1位であったことが示されている。
甲第12号証は、平成12年8月31日付毎日新聞抜粋写であり、CM専門ホームページの紹介記事であって、ビーム・ゴルフボールも「B::M」の商標が表示されたゴルフボールの写真とともに紹介されており、甲第13号証は、甲第12号証で紹介されたホームページの抜粋であり、TV/CM一覧の中に、ビーム・ゴルフボールの表示があることを認めることができる。
(3)被請求人による本件使用商標等の使用状況について
被請求人の提出に係る乙第6号証中の1996年版「ゴルフ用品総合カタログ」によれば、遅くとも、1996年(平成8年)には、本件商標である「JBEAM」の商標をはじめ、その構成中の「J」の文字部分をやゝ縦長に表した商標あるいは「JBEAM」の中央部分に横一線の切れ込みを入れた構成の商標がカタログ表題部分やゴルフクラブ、ゴルフボールに使用されており、また、1998年版「ゴルフ用品総合カタログ」によれば、1998年(平成10年)には、本件使用商標である「jBEAM」の商標がゴルフクラブに使用されていた事実を認めることができる。
そして、乙第8号証(’98年版最新ゴルフギア完全セレクトガイド)及び乙第9号証(ゴルフ週刊誌「ALBA」1999年3月11日号)によれば、ゴルフクラブには本件使用商標である「jBEAM」の商標が表示されているが、そのクラブを紹介する記事の表題部分や商品表示欄には、本件商標である「JBEAM」の商標が表示されている。また、乙第1号証の1ないし3は、被請求人が配布したポスターであり、その印刷時期は定かではないが、株式会社三越銀座店の表示のある同号証の1には、ゴルフクラブを紹介する見出し部分に大きく本件使用商標である「jBEAM」の表示がなされ、その下にやゝ小さく「ジェービーム」の片仮名文字が併記されており、同号証の2及び3にも同様の表示がなされていることを認めることができる。
(4)出所の混同の有無について
上記(2)において認定した事実によれば、請求人の使用に係る引用各商標のうち、引用商標2は、平成10年4月16日以降からはテレビジョン媒体により、また、平成10年12月17日以降からは新聞・雑誌媒体により、数多くの宣伝広告がなされていた事実が認めれられ、これらの証拠に照らしてみれば、引用商標2は、本件取消審判が請求された平成11年8月25日頃までには、ゴルフクラブ、ゴルフボール等のゴルフ用品に関する取引者・需要者の間において相当程度知られていたものということができる。
しかしながら、引用商標2は、広告中において、「B::M」の商標に「ビーム」の片仮名文字が小さく付加されていることから、「ビーム」と称呼し得るものであるとしても、現実に取引者・需要者間において知られていたのは、あくまでも、特殊な態様の構成からなる「B::M」の商標といわなければならない。
また、請求人の提出に係る使用の事実を示す証拠のほとんどは、引用商標2に関するものであって、引用商標1及び引用商標3についての使用の事実を示す証拠は僅かであるから、引用商標1及び引用商標3については、ゴルフクラブ、ゴルフボールについて使用されていた事実は認められるにしても、宣伝広告の程度からみて、取引者・需要者間において広く認識されていたものとまでは認め難い。
加えて、甲第10号証及び甲第11号証によれば、1999年度における請求人の業界出荷量シェアがゴルフクラブで13.0%の業界第3位、ゴルフボールで41.2%の業界第1位であったことが認められるが、甲第11号証のゴルフボールに関する記事中には、「ブリジストンは・・・主力の『ツアーステージ』シリーズでは、昨年1月発売の『392S』が丸山茂樹プロなど有力選手の使用実績を評価され、上級者の利用を伸ばした。・・・」と記載されており、また、請求人発行のカタログ(甲第5号各証)には、ゴルフクラブ、ゴルフボールについて、「ビーム」商標に係る商品以外にも、ツアーステージ、レイグランデ等、多くの商標に係る商品が掲載されていることからみれば、上記出荷量シェアの全てが「B::M」商標をはじめとする引用各商標によるものでないことも明らかなところである。
以上を総合してみれば、引用商標2が本件取消審判の請求時までには、ゴルフ用品に関する取引者・需要者間において、相当程度知られていたものであることは認められるとしても、本件使用商標と引用商標2とは、その使用の実態からみても、十分に区別し得る別異の商標ともいい得るものであり、また、本件使用商標と請求人の使用に係るその他の引用各商標とも十分に区別し得る非類似の商標であり、しかも、被請求人は、本件使用商標の使用にあたって、「ジェービーム」の片仮名文字あるいは「JBEAM」の欧文字をも併せ使用していたことをも考慮すれば、被請求人が本件使用商標を「ゴルフ用具」に使用しても、これに接する取引者・需要者をして請求人の使用に係る引用各商標を想起させるものとは認められず、その商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。

5.請求人のその他の主な主張について
(1)請求人は、ジャンボ尾崎氏との契約に基づき、「Jumbo/ジャンボ」の表示を昨年まで使用してきた業界周知の事実があり、商品「ゴルフ用品」に関しての「J」表示のイメージは、請求人の製造販売に係る商品であると認識されるに至っているものであることからみれば、被請求人がその語頭に付加した「J」の語は全くの偶然的なものではなく、請求人の製造販売に係る商品「ゴルフクラブ、ゴルフ用品」について定着している「ジェイ」イメージの盗用を意図していることは明らかである旨主張している。
しかしながら、上記4(2)において認定したとおり、引用商標3あるいは「J’s」の文字を含む商標が使用されている状況を把握できるのは、請求人発行のカタログ(甲第5号各証)程度であるばかりでなく、ゴルフ界においては、例えば、日本プロゴルフ選手権を「JPGAツアー」と称し、日本女子プロゴルフ選手権を「JLPGAツアー」と称しているように、「J」の文字は「日本の」といった意味合いを表す語として一般的に用いられている語であることをも併せ考慮すれば、商標の構成中に「J」の文字を含むからといって、直ちに、請求人の業務に係るゴルフ用品についての「ジェイ」イメージを盗用したものということはできない。
(2)請求人は、引用商標1の登録は1970年9月24日であり、引用商標3の登録は1992年7月31日であることから、「ゴルフクラブ」を製造販売する同業者である被請求人は、本件商標の使用開始に当たり、上記引用商標の存在を当然のことながら知っていなければならず、仮に、知らなかったとしても、乙第6号証ないし乙第9号証として提出されている「ゴルフ用品総合カタログ」により、引用商標の存在を知るに至ったことは明白であるから、「BEAM」商標並びに「B::M」商標から導かれる「ビーム」の称呼の周知性とも相俟って、本件使用商標は、殊更に「ビーム」の称呼が発生するような態様のものであるから、被請求人による不正使用が故意であることは明白である旨主張している。
しかしながら、前記したとおり、本件使用商標は、本件商標の語頭の「J」の文字部分をやゝ縦長にした小文字の「j」に変更したうえ、全体に緩やかな傾斜を持たせた構成からなるものではあるが、全体として不可分一体的に表されており、殊更、「BEAM」の文字部分を際だたせるとか、「j」と「BEAM」の文字とを分離して把握し得るような構成にしているものではないから、むしろ、商標の使用にあたって、本件商標のデザイン的な変更の範囲内にとどまるものとみるのが相当である。
そうとすれば、更に進んで、被請求人の故意の有無を検討する余地はないものといわなければならない。
(3)請求人は、被請求人による不正使用の態様として、本件使用商標以外にも、本件商標と別書体及び別サイズで表わされた商標がある旨主張している。
確かに、乙第1号各証、乙第6号証、乙第7号証等に徴すれば、本件使用商標以外にも、請求人が主張しているような本件商標と別書体で表わされた商標があることが認められる。しかしながら、それらの商標はいずれも、全体として不可分一体的に表されており、殊更、「BEAM」の文字部分を際だたせるとか、「J」あるいは「j」と「BEAM」の文字とを分離して把握し得るような構成のものではないから、本件使用商標と同様に、本件商標のデザイン的な変更の範囲内にとどまるものとみるのが相当である。
(4) そうしてみると、請求人の上記各主張は、いずれも採用することができない。

6.まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件商標に類似する商標(本件使用商標)をその指定商品に含まれる「ゴルフクラブ」に使用するものではあるが、その使用により、他人の業務に係る商品と混同を生ずる結果を招来させるものとは認められないから、本件審判請求は理由がないものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第51条第1項の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件使用商標



(2)引用商標2



(3)引用商標3


審理終結日 2005-02-10 
結審通知日 2005-02-15 
審決日 2005-02-28 
出願番号 商願平6-92639 
審決分類 T 1 31・ 3- Y (028)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須藤 祀久飯山 茂 
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 富田 領一郎
小川 有三
登録日 1997-01-31 
登録番号 商標登録第3244222号(T3244222) 
商標の称呼 ジェイビーム、ビーム 
代理人 坂口 信昭 
代理人 中村 政美 

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