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審決分類 |
審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 登録しない 025 |
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管理番号 | 1114992 |
審判番号 | 審判1999-1880 |
総通号数 | 65 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2005-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-02-08 |
確定日 | 2005-03-09 |
事件の表示 | 平成 5年商標登録願第 63395号拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.本願商標 本願商標は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」を指定商品として、平成5年6月24日に登録出願されたものである。 第2.原査定の拒絶の理由 原査定は、「本願商標は、アメリカ合衆国ニューヨーク州在の『ザ ポロ ローレン カンパニー』が、商品『被服』等に使用して本願の出願時には既に著名となっている商標『ポロプレーヤーの図形(例えば、登録第2691725号商標)』とその構成の軌を一にする図形を含むから、このような商標を本願の指定商品に使用するときは、これがあたかも上記会社あるいはこれと何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかのごとく、その出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。 第3.請求人の主張の要点 請求人は、本願商標は登録されるべきである、として以下のように主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第15号証(枝番号を含む)を提出した。 1.本願商標が登録されるべき理由 本願商標は、「被服」をはじめ各種商品に広く使用された結果、請求人(出願人)の商標として周知著名であり、また各種商品のライセンスブランドとしても高く評価されている。したがって、本願商標は、引用商標と商品の出所を異にする別異の商標として機能するとともに、取引者・需要者に広く認識されているから、引用商標と出所につき混同を生じていないし、混同を生ずるおそれもない。 2.具体的理由 (1)「POLO CLUB」は、既に25年以上の使用実績をもつ上野衣料(株)のオリジナルブランドであり、有力ファッション雑誌「メンズクラブ」は、「ステータスブランド、男のブランド図鑑」(昭和63年版)において、上記「POLO CLUB」を紹介している(甲第1号証)。 また、本願商標は、被服をはじめ各種商品の「総合ライセンスブランド」として使用されており、代表的な業界紙の繊研新聞は、「日本の有力ライセンスビジネス一覧」(1993年3月31日発行)として、「ポロ クラブ」を他の有名ブランドとともに、「有力ライセンスブランド」として認定している(甲第2号証)。 (2)本願商標の広告については、新聞、雑誌、テレビなど各種媒体を通じて継続的で、かつ活発な活動が行なわれている。最近では、ファッション雑誌のほか一般雑誌である「婦人画報」、「週間現代」にも広告を掲載している。また、日刊紙では「繊研新聞」、「メンズ・ディリー」をはじめ、「日経流通新聞」、「日本経済新聞」などに広告を掲載し、広告費用は年1億円以上となっている。 なお、広告においては、「POLO CLUB」のみを使用する場合もあるが、基本的には、人馬の図形を含む本願商標を使用している。 (3)新聞広告に対する読者の反応を示す資料としては、1995年4月5日付の日本経済新聞に掲載された「POLO CLUB」(本願商標)の広告注目率があり、全日本空輸についで2位であって、「POLO CLUB」に対する人気の高さを裏付けている(甲第2号証)。 (4)本願商標の著名度 「POLO CLUB」の知名度の高さも、以下に示すように種々の調査結果によって確認されている。 (ア)日経「ファッション・ブランドアンケート」 1992年のメンズカジュアル部門において、知名率、一流評価率、所有率でトップを占めている。また、1994年調査の「認知度」を日本経済新聞、日経流通新聞、日経金融新聞の掲載新聞毎にみると認知度トップとなっている。 (イ)ボイス情報社の「ライセンスブランド調査」 ボイス情報社の「ブランド調査」は、わが国で使用されているブランド132につき、本格的な消費者調査を行い、その知名度を調査したものである「1995年ブランド&キャラクター名鑑」等によれば、1994年の「ポロクラブ」の知名度はベスト30中第17位にランクされ、1996年の知名度では16位にランクされている。 また、「ブランド対決」の項では、「ポロ クラブ」と「ポロ ラルフローレン」がライバルブランドとして「人気の点でも消費者を二分している」としてコメントしている。 (ウ)矢野経済研究所「ライセンスブランド全調査」 「1996年ライセンスブランド全調査」によれば、上野衣料(株)の「ポロクラブ」の売上げは、全ブランド中19位、ナショナルブランドでは2位である。 (エ)模造品の出現 デッドコピーの出現は、ブランドの周知著名性を示す卑近の例証であるといわれ、周知著名であるが故に本願商標についてもデッドコピーが出回ることが少なくない。実例としては、ファッション街として有名な渋谷神宮前で 「POLO CLUB」の模造品が販売されている(甲第10号証)。 (オ)審判事件においても、本願商標は、ザ ポロ/ローレン社の商標と出所につき混同を生ずるおそれはないと認定された(審判6-2010号、審判6-2025号、審判6-2007号、審判6-2008号)。すなわち、本願商標とザ ポロ/ローレン社の商標とは、別異の商標としてその著名性が確立していると認定された(甲第11号証乃至甲第14号証)。 (5)結論 以上のように、本願商標は、名実とともに周知著名な商標であり、各種商品の「総合ライセンスブランド」としても広く知られ、同じく周知著名な引用商標とは、出所の混同を生ずるおそれはない。 第4.当審の判断 本願商標は、別掲(1)に示したとおり、中央に馬に乗ったポロプレーヤーがマレットを振りかざしている図形を描き、その図形の左に「Polo」の欧文字を、図形の右に「Club」の欧文字をそれぞれ横書きしてなるものである。 他方、原査定において例示として引用した登録第2691725号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)に示したとおりの構成からなり、平成2年8月21日登録出願、第17類「被服、その他本類に属する商品」を指定商品として同6年8月31日設定登録、その後、同16年4月27日に更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 また、後述するように、ザ ポロ/ローレン社が被服等に使用して周知著名な商標については、同じく別掲(3)に示したとおりの構成よりなるものである(以下、別掲(3)を「引用商標2」といい、引用1、2の各商標を総称して「引用商標」という。)。 なお、請求人は、ザ ポロ/ローレン社の使用する商標が周知著名であることは否定しておらず、本件審判請求書の請求の理由においてもこれを積極的に否定するところがない。 そこで、請求人は、引用商標が周知著名であることを認めつつ、本願商標についても、周知著名であるから、引用商標とは出所の混同を生ずることがない旨主張しているので、以下、この点について判断する。 1.引用商標の周知著名性について (1)株式会社講談社・昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」によれば、以下の事実が認められる。 1974年の映画「華麗なるギャッビー」で主演したロバート・レッドフォードの衣裳デザインを担当したのがポロ社の創業者でアメリカのファッションデザイン界の騎手ラルフ・ローレンである。 ラルフ・ローレンは、1967年の高卒後、ネクタイメーカーにデザーイナーとして迎え入れられ、そこで幅広ネクタイを発表し圧倒的に若者に支持され世界的に広がった。翌1968年に独立、社名を「ポロ・ファッションズ」とし、ネクタイ、シャツ、セーター、カバン等のデザインを引き受け、ニューヨークの有名デパート、ブルーミングデールにブティックをもち大物も客についている。「ポロ」のネーミングは、もちろんポロ競技からとったものである。 このように、30歳になるかならないかで一流デザーイナーの仲間入りを果たし、わずか10年でポロ・ブランドを世界に通用させた秘密は、ニュートラディショナル、伝統重視にあるといえる。 (2)同じく、株式会社講談社・昭和55年11月20日発行「男の一流品大図鑑’81年版」によれば、厳選311ブランド一流商品1466点収録のなかに、商品ジャケット及び眼鏡について、「POLO」(ポロ)が掲載されており、以下のように記載されている。 「アメリカのファッション界に君臨し、名実ともにニューヨークのトップデザイナーであるラルフ・ローレンが経営するポロ・ファッションズ。高品質で英国的な伝統的カスタムテーラーの要素を基本にスポーティーでソフトなファッション感覚を調和させた作品で、ニュートラディショナルの第一人者といわれている。」 (3)また、わが国における「POLO」「ポロ」ブランドの展開については、日経流通新聞1988年(昭和63年)10月29日発行の記事として、以下のように紹介されている。 「西武百貨店は、1977年に紳士服、1978年に婦人服の輸入、製造、販売の権利を取得し日本国内でポロ・ラルフローレンのライセンスビジネスを手掛けてきた。現在、ネクタイ、眼鏡を除くポロ・ラルフローレンブランドは西武百貨店がもつ。当初は、西武百貨店の店舗内を中心にショップを展開したが、現在では松屋、東急日本橋、大阪の大丸、阪急などグループ外への出店が増えている。」 そして、上記記事によれば、ポロ・ラルフローレン事業部を独立させ100%子会社のポロ・ラルフローレン・ジャパンを設立し、ファッション製品に加えてハンカチ、ナイトウェアなど新しい商品群を導入してポロ・ラルフローレンブランドをトータル展開するとの記載がある。 さらに、その売上げについては、1987年が330億円だったが、5年後には800億円に拡大する予定とされている。 (4)上記のことから、1968年にラルフ・ローレンがニューヨークにおいてポロ社を設立し、「POLO」(ポロ)ブランドをファッション関係の商品に使用開始して、またたく間に知られるに至ったこと、1980年(昭和55年)わが国で発行された「世界の一流品大図鑑」に、名実ともにニューヨークのトップデザイナーであるラルフ・ローレンが経営するポロ・ファッションズとして「POLO」(ポロ)ブランドが紹介されていること、 さらに、わが国においては、西武百貨店が1977年に紳士服、翌年に婦人服の輸入、製造、販売の権利を取得し日本国内でポロ・ラルフローレンのライセンスビジネスを手掛けてきたこと、及び1988年のポロブランドの売上げは、330億円だったこと等が認められる。 そうすると、「馬に乗ったポロプレーヤーの図形」と横長四角形の中に「Polo」の欧文字を配した標章と「by RALPH LAUREN」(又は「by Ralph Lauren」)の欧文字を組み合わせた商標は、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等を表示するものとして、わが国においては、昭和51年頃から使用され、遅くとも昭和50年代半ばまでには取引者、需要者に広く認識されるに至っていたと認められ、上記商標及びこれを付した商標は、「ポロ」「POLO」と略称されることもあり、その著名性は、本願商標の出願時(平成5年6月24日)はもとより、今日に至るまで継続していたということができる。 2.商品の出所の混同のおそれについて (1)本願商標は、前述のとおり、「Polo」の文字と「Club」の文字との間に、馬に乗ったポロプレーヤーがマレットを振り上げてポロをしている図形を配してなるものである。 他方、引用商標は、別掲(2)及び(3)に示すとおりの構成よりなるものであり、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして著名な商標となっていることは、前記1.の認定のとおりである。 そして、本願商標は、その構成中に、世界的に著名なデザイナーであるラルフ・ローレンのデザインに係る被服及び眼鏡等のファッションに関連する商品に使用して著名性を得ている「馬に乗ったポロプレーヤーの図形」と酷似する図形、及び同じく著名性を得ている「Polo」の文字を含むものであり、本願商標に接する取引者、需要者は、「CLUB」の文字が広く同好の士の集団を意味するものとして、一般に親しまれた語にすぎないことから、上記図形部分と「Polo」の文字部分に強い注意力が注がれ、引用標章を想起、連想するものとみるのが相当である。 また、本願の指定商品は、前記著名商標を使用している商品と同一又は類似する商品を含むか、又は密接な関係にある商品に使用するものといえるものである。 してみれば、本願商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者が「Polo」の文字及びポロプレーヤーの図形に着目してラルフ・ローレンのデザインに係る商品であると連想、想起し、その商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的、経済的に何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。 (2)他方、請求人は、本願商標も周知著名であると主張し、証拠方法として甲各号証を提出している。 しかしながら、これらの証拠をもってしても本願商標の出願前に本願商標が引用商標の周知著名性をしのぎ、商品の出所について混同を生ずるおそれはなかったとまでは言うことができないものと判断するのが相当である。 また、本願商標の出願時以降も、前述のように「1995年ブランド&キャラクター名鑑」及び矢野経済研究所の「1996年ライセンスブランド全調査」等に「Polo Club」等が有力ブランドとして掲載されていることは認められるが、これらが引用商標と別のブランドとして知られるに至っていることの証拠とはなり得ても、前記した出所の混同の認定の妨げになるものではないと言わざるを得ない。 このことは、本件と適用条文は異なるが、本願商標と同一の商標を請求人の専用使用権者が服飾関係の商品に使用した場合、ザ ポロ/ローレン社の商品と出所につき混同を生ずるおそれがあるか否か(商標法第53条第1項)について争われた審判事件(審判6-2025号ほか)の審決取り消し訴訟事件(平成10年行ケ第113号及び平成15年行ケ第202号ほか)の判決においても、同様の判断がなされている。 すなわち、東京高等裁判所は、「専用使用権者が使用商標(本願商標と同一の商標)を使用した場合、ザ ポロ/ローレン社等の業務に係る商品と混同を生ずる。」旨、判決した(平成10年行ケ第113号について平成11年12月21日判決言渡し、及び平成15年行ケ第202号について平成15年12月16日判決言渡し)。 そして、後者の判決に対しては上告されたが(平成16年行ヒ第88号)、平成16年4月22日上告不受理の決定により確定したものである。 これらのことからも、前記2.(1)に示した認定は首肯されるものというべきである。 3.むすび したがって、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すべき限りでない。 よって、結論のとおり、審決する。 |
別掲 |
別掲(1) 本願商標 別掲(2)引用商標1 別掲(3)引用商標2 |
審理終結日 | 2004-12-22 |
結審通知日 | 2005-01-07 |
審決日 | 2005-01-18 |
出願番号 | 商願平5-63395 |
審決分類 |
T
1
8・
271-
Z
(025)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 正雄 |
特許庁審判長 |
山田 清治 |
特許庁審判官 |
小林 薫 岩崎 良子 |
商標の称呼 | ポロクラブ、ポロ |
代理人 | 山内 淳三 |