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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) 125 |
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管理番号 | 1111775 |
異議申立番号 | 異議1998-91644 |
総通号数 | 63 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2005-03-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-08-07 |
確定日 | 2005-01-20 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第4134499号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第4134499号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4134499号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成4年3月31日に登録出願され、第25類「紙類、文房具類」を指定商品として平成10年4月10 日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同15号に該当し、その登録は取り消されるべきである。 3 本件商標に対する取消理由 本件商標は、別掲に表示したとおりの構成よりなるところ、職権調査によれば、「POLO」及び「Polo」の商標は、遅くとも1974年頃にはラルフ・ローレンのデザインに係る被服等を表示するものとして広く知られるようになり(「男の一流品大図鑑」(株)講談社昭和 53 年7月20日発行、「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」サンケイマーケテイング昭和58年9月28日発行)、我が国においても昭和52年から53年にかけてラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、婦人服、紳士靴、サングラス等の販売が始められた(「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」(株)洋品界 昭和55年4月発行、「ライセンスビジネスの多角的戦略’85」ボイス情報(株)昭和59年9月発行、「日経流通新聞」昭和63年10月29日発行)。 また、ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士用品については、「dansen 男子専科」((株)スタイル社1971年7月発行)、「世界の一流品大図鑑’79年版」((株)講談社 昭和54年5月発行)「ファッション・ブランド年鑑’80年版」((株)チャネラー 昭和54年9月発行別冊チャネラー)、「男の一流品大図鑑’81年版」((株)講談社昭和55年11月発行)、「世界の一流品大図鑑’80年版」((株)講談社昭和55年 6月発行)、「MENS CLUB 1980,12」(婦人画報社 昭和55年12月発行)、「世界の一流品大図鑑’81年版」((株)講談社昭和56年6月発行)、「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」サンケイマーケテイング 昭和58年9月28日発行)、「流行ブランド図鑑」((株)講談社 昭和60年5月発行)に「POLO」、「Polo」、「ポロ」及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形等の商標(以下「引用商標」という。)と共に紹介されていることが認められる。 以上の事実を総合すると、「引用商標」は、著名なデザイナーであるラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして、本件商標の出願前には我が国においても衣料品、靴、かばん、眼鏡等ファッション関連の商品分野の取引者、需要者の間に広く知られていたものと認め得るものである。 そして、本件商標は、馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形よりなる引用商標とモチーフを同じくする図形及び「POLO」の文字を含む構成よりなるものであって、その指定商品は、引用商標の使用に係る商品と需要者を共通にする場合が多いものと認められる。 してみれば、本件商標は、これをその指定商品に使用した場合、ラルフ・ローレン若しくはこれと何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 商標権者の意見の要点 商標権者は、上記3の取消理由に対して以下のように理由を述べ、証拠方法として乙第1号証および乙第2号証を提出している。 東京高裁の判決平成11年(行ケ)253号にかかる商標は「PALM SPRINGS POLOCLUB」であるが、同判決によると、この商標は「PALMSPRINGS」にある「POLOCLUB」という特定観念を生じるものであり、単なる「POLO」とは明らかに区別されるとしている。そして、そもそも、ポロ競技やポロシャツ等の普通名称に過ぎない「POLO」の用語についてラルフ・ローレンに独占的な商標権を認める如き判断に対して否定的な見解を判示しているのである。 本件商標は「BEVERLY HILLS POLO CLUB」の一連の表現と真横を向いたポロプレイヤーの図形を円形的にまとまりよく構成したものであり、構成全体として看者にはラルフ・ローレンの商標とは外観上全く異なった印象を与える上、「BEVERLY HILLS POLO CLUB」の表現が単なる「POLO」の表現とは観念的に異なって認識されることは、上記判決が明示しているところである。 なお、本件商標登録権利者(以下「BHPC」と省略)は本件商標登録に対して、上野衣料により提出された商標登録異議申し立てに対応するため、平成11年8月11日付上申書を提出した。同書面の論旨及び提出した資料を本書面において改めて援用する。同上申書にて指摘したように、BHPCとラルフ・ローレンとの間で締結された合議書が存在する。この合議書は、その文中に記載があるように、そもそも、アメリカに於ける両当事者間の商標をめぐる訴訟事件に於いて、それぞれが各自の商標を認め合って、訴訟に終止符を打つために締結した和解契約書であり、当事者間に訴訟判決と同等の拘束力を有する。本件は常々、この合議書による両者の商標の区別を基本にして、本願商標を使用した商品取引をしていることを公にアピールしている(例えば、商標権者のインターネット上のホームページの記載一参考資料)。 上記アメリカに於ける訴訟は、当然ながら、両当事者の商標権の行使に抵触があったからであるが、ラルフ・ローレン側にしても、和解に事件の解決を求めざるを得なかったことはそれなりの理由があったからである。 すなわち、「POLO」の語やデザインを使用した商標はすべて自己の商標と出所の混同を生ずるというような主張が裁判所には受け入れられず、本件商標権者の商標はラルフ・ローレンの商標とはconfusingly similarではないと判断される可能性が大であり、その際に自己の不当な主張による損害賠償の請求を受ける結果になることを回避するためと推定される。これはまさに上記判決の趣旨と一致するところである。 ラルフ・ローレンの商標は基本的に「POLO BY RALPH LAUREN」の表現と前向きのポロプレイヤーの図形を結合して使用されている。この商標が「POLO」と略称されることがあるとしても、その使用に際しては、上記図形やその商品の出所の表示が併用され、それが「RALPH LAURENのPOLO」であると認識される使用態様になっている。そうしなければ、衣服や身回品を中心とする商品に関して、単なる普通名称にすぎない「POLO」の語のみでは商標としての識別・出所表示機能が働かないからである。「POLO」関連の商標係争でラルフ・ローレンが証拠として提出し、また本件取消理由通知書にも引用されていると推定される「英和商品名辞典」には、「POLO」の項には別の2社の商標の記載があり(ちなみに、それらの商品はポロ競技とは関係ない分野のものである)、ラルフ・ローレンの商標は「POLO BY RALPH LAUREN」とあり、その略称としての「POLO」の付記的な記載はあるが、略称は、上述のように、あくまでその本来の商標と関連付けて使用されてはじめて特定認識されるもので、略称自体が独立して独自の商標機能を有するものではない。 商標の出所の混同の恐れとは、両商標の実際の使用態様を観察して、更に、これらの商標にかかる具体的な商品の取引事情を総合的に観察したうえで、判断されるべきものである。「POLO」の語を含む商標は一律、抽象的に、すべてラルフ・ローレンの商標と出所の混同を生ずるとするような本件の取消拒絶理由は、商標の類否認定の他に、商品の出所の混同の条件の認定の2点において誤っており、ラルフ・ローレンの商標の不当な拡張解釈である。 商品としても、アメリカの東部を根拠にアイビーリーグファッションを基本とするラルフ・ローレンの商品と、アメリカ西海岸を根拠にし、その解放的なカジュアルファッションを基本とする本件商標権者の商品はそれ自体明らかに区別されるものである。これは、本件商標中に使用されている西海岸の代表的な高級住宅地城であるBEVERLY HILLSの地名のイメージによるところが大である。これは、出願人のインターネットのホームページのメッセージに記載されているように、本件商標を付した商品、例えばT-シャツ、はこれを購入し着る者に、あたかもBEVERLY HILLSのPOLO CLUBの会員であるかのような楽しい気分を与えるとある。すなわち、本件商標にかかる商品はラルフ・ローレンの商品のイメージとは全く異なるものであり、本件商標がラルフ・ローレンの商標と出所の混同を生ずるようなおそれは全くない。(翻って、もしラルフ・ローレン側が本件商標権者のこのような特定イメージを取り込んだような拡張したイメージの商標使用をすることがあれば、それは両者の合議規定に反するものであり、ラルフ・ローレン側による出所混同の行為と言わねばならない。) 4 当審の判断 (1)引用商標の著名性 上記3の本件商標に対する取消理由に加えて、ラルフ・ローレンの「Polo」、「POLO」、「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形等について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定した判決として、東京高裁平成2年(行ケ)183号(平成3.7.11言渡)、東京高裁平成11年(行ケ)250号、同251号、同252号、同267号、同290号(以上平成11.12.16言渡)、同268号、同289号(以上平成11.12.21言渡)、同288号(平成12.1.25言渡)、同298号、同299号(以上平成12.2.1言渡)、同333号、同334号(以上平成12.3.29言渡)、平成12年(行ケ)5号(平成12.9.28日言渡)、同140号(平成12.10.25言渡)、同112号(平成12.11.14言渡)、同162号(平成13.2.8言渡)、平成11年(行ケ)420号(平成13.4.19言渡)、平成13年(行ケ)90号(平成13.7.10言渡)、同119号(平成13.11.29言渡)、平成16年(行ケ)33号(平成16.5.27言渡)、平成16年(行ケ)87号(平成16.9.29言渡)等がある。 上記3の取消理由及び前記判決をも併せ考慮すると、「Polo」ないし「POLO」の文字よりなる標章、「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形よりなる標章及びこれらを組み合わせた標章は、我が国においては、遅くとも本願出願時までにはラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして、被服類、眼鏡等のいわゆるファッション関連の商品分野の取引者、需要者の間において広く認識され、かつ著名となっていたものであり、その状態は現在においても継続しているものと認めることができる。 (2)本件商標と引用商標 本件商標は、別掲のとおり、中央に馬に乗ったポロ競技のプレーヤーを描きその上部に「BEVERLY HILLS」の文字、その下部に「POLO CLUB」の文字を配してなるものであるところ、その構成中の文字部分中「POLO CLUB」は、語頭に位置する「POLO」と後半の「CLUB」との間には間隔があり、さらに、「CLUB」の文字は、広く同好の士の集団を意味する語として一般に親しまれている語にすぎないことから、「POLO」の文字部分に強い注意力が注がれるものといえる。 他方、引用商標は、上記3のとおり、「Polo」ないし「POLO」の文字よりなる標章、「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形よりなる標章及びこれらを組み合わせた標章で表示され、また、「ポロ」の称呼(略称)をもって取引に資されるものである。 そこで、本件商標と引用商標ついて比較すると、両図形部分は、ポロ競技者が馬上からT字状の棒(マレット)を持ち、これを上から振り下ろさんとする基本的構成において共通にする類似の商標といえる。さらに、本件商標中の文字部分と引用商標は、共に「POLO」の標章を有しており、「ポロ」の称呼を共通にするものであるから、本件商標と引用商標とは、類似性の程度が極めて高いというべきである。 (3)商品間における関連性及び需要者 本件商標の指定商品は「紙類、文房具類」であるところ、文房具類の一つである「万年筆、ボールペン」にあっては、商品「被服」等で世界的に著名な標章「バーバリー」、「アンドレクレージュ」、「ジバンシィ」及び「イヴサンローラン」等をブランドとした商品が市場に出回っている実情がある。 そうとすれば、本件商標の指定商品である「紙類、文房具類」は、引用商標が使用している「被服、眼鏡」等とは同一ではないものの、少なくとも文房具類は、ファッションに関連する分野の商品の一つであるということができる。また、商品の需要者についていえば、両者はその需要者を共通にするものであり、特に特別な専門的知識経験を有しない一般大衆であって、これを購入するに際して払われる注意はさほど緻密なものではないといえる。 (4)出所混同のおそれについて 以上のとおり、引用商標の知名度、商品間の関連性の高さ、需要者の共通性等に照らせば、本件商標をその指定商品に使用するときには、これに接する需要者をして、構成中の図形部分及び「POLO」の文字部分より引用商標を直ちに連想、想起させ、恰も前記ラルフ・ローレンのデザインにかかる商品であるかのように誤認し、又は該デザイナーと何らかの関係のある者の取り扱いに係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるといわざるを得ない。 (5)まとめ したがって、上記3で述べたとおりの取消理由は妥当なものと認められるので、本件商標登録は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項により、その商標登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 本件商標 |
異議決定日 | 2004-11-30 |
出願番号 | 商願平4-42359 |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Z
(125)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 高山 勝治、寺光 幸子 |
特許庁審判長 |
涌井 幸一 |
特許庁審判官 |
富田 領一郎 小川 有三 |
登録日 | 1998-04-10 |
登録番号 | 商標登録第4134499号(T4134499) |
権利者 | ヤング産業株式会社 |
商標の称呼 | ビバリーヒルズ、ポロクラブ |
代理人 | 小林 秀之 |
代理人 | 神林 恵美子 |
代理人 | 城山 康文 |
代理人 | 山内 淳三 |