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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y41
管理番号 1104760 
審判番号 無効2003-35488 
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-11-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-11-25 
確定日 2004-09-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第4693422号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4693422号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4693422号商標(以下「本件商標」という。)は、「K-BALLET STUDIO」の欧文字を横書きしてなり、平成14年10月28日に登録出願、第41類「バレエその他の技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,バレエその他の舞踊・映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,バレエその他の舞踊・演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用のビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,バレエその他の舞踊・映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,興行場の座席の手配,バレエその他の技芸の教授に関する情報の提供,バレエその他の舞踊の振付,バレエその他の技芸の能力の認定」を指定役務として、平成15年7月18日に認定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の無効理由に引用する、引用商標1ないし引用商標3は、別掲に表示した構成よりなるものである(以下まとめて「引用商標」という。)。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第120号証を提出した。
1 請求の理由
(1)請求人の運営する「K★BALLET STUDIO」について
(ア)「K★BALLET STUDIO」の略歴
バレエを主とするダンス教室である「K★BALLET STUDIO」は、請求人である矢上(後藤)香織、矢上(福田)久留美、矢上恵子により1983年に設立され、現在まで約20年にわたって継続して活動している。そして、1986年以降、「K★BALLET STUDIO CONCERT」というバレエの興行を毎年企画し、開催している(甲第95号証ないし甲第111号証)
また、1988年には、ケイバレエスタジオ所属の「K★CHAMBER COMPANY」を結成し、国内外で公演を行うとともに、多数のコンクールに出場し多くの賞を獲得している。
(イ)「K★BALLET STUDIO」は、業界雑誌等においても詳細に紹介されている(甲第41号証、甲第55号証、甲第88号証、甲第116号証等)。
また、「K★BALLET STUDIO」所属、出身のダンサーも多数の賞を獲得し、様々な活動を行っている。20年にわたって継続して使用されてきた引用商標は、所属するダンサーの活躍とともに一般誌、業界紙、雑誌等様々な媒体で多数紹介されている(甲第3号証ないし甲第5号証、甲第8号証、甲第9号証、甲第11号証、甲第13号証、甲第15号証ないし甲第20号証、甲第22号証、甲第23号証、甲第25号証、甲第28号証ないし甲第35号証、甲第37号証ないし甲第39号証、甲第42号証、甲第43号証、甲第45号証ないし甲第48号証、甲第50号証ないし甲第54号証、甲第56号証ないし甲第61号証、甲第63号証ないし甲第69号証、甲第71号証ないし甲第83号証、甲第90号証、甲第91号証、甲第93号証、甲第114号証ないし甲第118号証)。
(ウ)「K★BALLET STUDIO」は、引用商標を使用して、1986年以降17年にわたって行っている「K★BALLET STUDIO CONCERT」を始めとするバレエの興行を多数企画し、開催しており、一般紙、業界紙、雑誌等の様々な媒体に紹介されている(甲第1号証、甲第7号証、甲第10号証、甲第14号証、甲第21号証、甲第26号証、甲第36号証、甲第40号証、甲第44号証、甲第84号証、甲第94ないし甲第111号証)。
(2)「K★BALLET STUDIO」の運営者について
「K★BALLET STUDIO」を運営する請求人らは、長年にわたってバレエ業界において積極的に活動を行っており、請求人らの名前と共に、請求人らの運営する「K★BALLET STUDIO」の名前も需要者の間に広く認識されるに至っている(甲第2号証、甲第12号証、甲第21号証、甲第23号証、甲第24号証、甲第27号証、甲第36号証、甲第38号証、甲第45号証、甲第49号証、甲第61号証、甲第67号証、甲第70号証、甲第74号証、甲第83号証、甲第87号証、甲第89号証、甲第91号証、甲第92号証、甲第94号証)。
(3)「K★BALLET STUDIO CHAMBER COMPANY」(ケイ・バレエスタジオ・チェンバーカンパ二ー)について
「K★BALLET STUDIO CHAMBER COMPANY」は様々なバレエ公演に参加しており、このことは、所属する「K★BALLET STUDIO」の名称と共に様々な媒体で多数紹介されている(甲第6号証、甲第28号証、甲第62号証、甲第67号証、甲第85号証、甲第92号証、甲第112号証、甲第113号証)。
(4)以上の通り、請求人が20年という長期間にわたり継続して使用してきた引用商標は、遅くとも本件商標の出願時である平成14年10月28日には、請求人の業務に係る役務「バレエの教授,バレエその他の舞踊の興行の企画又は運営,バレエその他の舞踊の演出又は上演,バレエその他の舞踊の振付」(以下「請求人の使用役務」という。)を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至っており、その状態は現在に至るまで継続していることは明らかである。
(5)商標法第4条第1項第10号について
引用商標は、本件商標の出願時には、請求人の使用役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至っており、現在に至るまでその状態が継続している。
そして、引用商標からは、その構成より「ケイバレエスタジオ」の称呼が生ずる。これに対し、本件商標からは、その構成より「ケイバレエスタジオ」の称呼が生ずる。
よって、本件商標と引用商標とは「ケイバレエスタジオ」という共通の称呼が生ずるものである。
また、本件商標の指定役務中「バレエその他の技芸・スポーツ又は知識の教授,バレエその他の舞踊・映画・演芸・演劇又は又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸芸の上演,バレエその他の舞踊・演劇の演出又は上演,音楽の演奏,バレエその他の技芸の教授に関する情報の提供,バレエその他の舞踊の振付,バレエその他の技芸の能力の認定」は、引用商標が使用されてきた請求人の使用役務と類似している。
(6)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、本件商標の出願時には、請求人の使用役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至っており、現在に至るまでその状態が継続していることは明らかであり、本件商標は引用商標と極めて類似するものである。
かかる事実に鑑みると、請求人の運営する「K★BALLET STUDIO」は、使用役務以外のバレエその他の舞踊に関連する役務の提供を行うのが通常であるから、これらの役務について引用商標と同一若しくは類似の商標が使用された場合、需要者が出願人の運営する「K★BALLET STUDIO」の業務に係る役務、又は「K★BALLET STUDIO」と何らかの関係があるものの業務に係る役務であると誤認し、その出所について混同を生ずることは明らかである。
(7)総括
以上の通り、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反して登録されたものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、請求人が本件審判請求時に提出した甲各号証について、本件商標登録出願日以後のものが含まれている旨を強調しているが、請求人の提出した甲各号証の大部分は本件商標登録出願日以前に発行等がなされたものであり、引用商標が本件商標登録出願時には需要者の間で広く認識されるに至っていたことを示すものである。
そして、甲各号証中の本件商標登録出願時以後に発行されたものについては、引用商標が需要者の間で広く認識されている状態が、本件商標登録査定時を含め、現在まで継続していることを示すものである。
(2)被請求人は、甲各号証に基づいた請求人の主張に対し、「請求人の提出した証拠のほとんどは、新聞や雑誌の記事、雑誌におけるバレエコンクールの結果を伝える記事、あるいは出演者としての請求人所属のダンサーが記載されたパンフレット等ばかりであって役務について使用されたものではなく、これらの証拠は商標が使用されたことを示すものではない。」との主張に終始するものである。
しかし、かかる主張はバレエ業界の実情に反するものである。請求人の主張は、甲各号証の記載のみに基づいて引用商標の周知性を主張しているものではない。
請求人は、1983年に「K★BALLET STUDIO」を設立して以来、約20年という長期にわたって引用商標を使用している(例えば、甲第95号証ないし甲第113号証)。そして、国内外で公演を行い、また、一から育て上げた「K★BALLET STUDIO」所属、出身ダンサーが国内外のコンクールにおいて多数の賞を獲得し、様々舞台で活躍してきた。かかる事実を示すために請求人は甲各号証を提出しているのであり、かかる事実の結果として、引用標が周知となっていることを請求人は主張しているのである。
また、商標は実際に使用されてこそ保護すべき業務上の信用が化体するものであるから、商標の周知性を検討する場合には、その業界における実情を考慮しなければならない。
バレエ業界においては、そのダンサーのみならずそのダンサーの所属する団体名も需要者が強く注目する要素である。このことは、提出した甲各号証のほとんどにおいて、ダンサーの名前と共に所属団体が記載されていることからも分かる。それ故に、各コンクール等の現場においても所属団体が必ず表示、称呼されるのであり、また、雑誌の記事においてもダンサーの活躍と共にその経歴において所属、出身団体名も必ず紹介される。
したがって、甲各号証の中にコンクールの入賞者及びその所属団体を示す引用商標の記載にとどまるものがあるとしても、引用商標の周知性を云々することは無意味である。
また、専門誌等に入賞者の記載があるということは、実際のコンクールの現場において、専門家たる審査員により審査され、強く注目されて評価されたということであり、また、観客もすばらしい演技を行った入賞者に強く注目するものである。すなわち、多数集まっている専門家や観客等に代表される需要者の間で、入賞者の名前と共にその所属団体名(引用商標)が強く認識されるのである。
また、被請求人は、「甲第31号証から甲第40号証は『バレエ』という隔月刊誌である。ここで引用商標が掲載されている記事は、ほとんどすべてバレエコンクールの結果を伝える記事であり、例えば甲第39号証の記事には『7月から8月にかけて、各地では全国規模のコンクールが続々と開催された』と記載され、このようなバレエコンクールが多数開催されることが示されている。そして、引用商標はバレエコンクールの結果を伝える記事の中で他の多数のバレエスクールの名前と同等に扱われて非常に小さく掲載されているだけであり、引用商標だけが・・・周知になるような記載ではない。」などと主張しているが、バレエ業界における実情を理解していない主張である。
このようなバレエ専門誌に掲載されるような全国規模のコンクールは、一般的に数百人以上が参加し、その中で入賞者は僅か数人〜10人程度なのである。このことは、甲各号証における入賞者の記載が僅か数人しか記載されていないことからも明らかである。(例えば、甲第8号証、甲第17号証、甲第19号証、甲第23号証等)。このようなコンクールにおいて入賞者を次々輩出するようなバレエスクールは、ほんの一握りであり、人賞者及びそのバレエスクールもほとんど毎回同じ顔ぶれとなることは容易に理解できるところである。
すなわち、被請求人も主張しているように、わが国においては、NTTタウンページに掲載された主要都市に所在するものだけでも約1000ものバレエスクールが存在しているが、そのようなバレエスクールに所属する者のうち各コンクールで人賞できる者はほんの数人程度なのである。
このようなバレエ業界における実情を考慮すると、人賞者を次々に送り出すことのできるバレエスクールはごく一部にすぎず、請求人の「K★BALLET STUDIO」がその一つであることは甲各号証に記載の通りである。
したがって、かかるバレエ業界における実情を考えると、数多く存在するバレエスクールの中で請求人の「K★BALLET STUDIO」が傑出した実績を挙げてきたことは甲各号証の通りである、
また、請求人の「K★BALLET STUDIO」がコンクールにおいて多数の受賞者を送り出し、バレエスクール、バレエの公演、バレエの振付など様々な活動を行い、そのことが需要者の間に広く認識されるに至っているからこそ、「K★BALLET STUDIO」の特集記事が専門紙に何度も掲載されているのである(甲第41号証及び甲第55号証等)。
以上の事実より、本件商標登録出願時に引用商標が需要者の間で広く認識されていたことは疑いようがない。
(3)被請求人は、インターネットのNTTタウンページにおける記載、他のバレエ団体のHPにおけるアクセス数表示などを根拠に引用商標の周知性を否定する主張をしている。
まず、NTTタウンページの記載と引用商標がバレエ業界の需要者の間で広く認識されているか否かの開題とは何ら関係がない。
さらに、請求人の「K★BALLET STUDIO」以外に有名なバレースクールが存在するかどうかの問題と、引用商標が周知であるか否かの問題は全く関係がない。
すなわち、これら2つの事柄は互いに排斥し合うものではなく、両者が共に成り立つ関係のものである。
(4)被請求人は、被請求人、熊川哲也氏及び熊川哲也氏の主催する「K-BALLET COMPANY」について述べているが、本件商標は「K-BALLET STUDIO」であって、本件とは関係ない。
また、本件商標「K-BALLET STUDIO」については、最近撮影されたばかりの看板の写真(乙第22号証)しか提出されておらず、ごく最近に、団体名ではなく単に場所を示す看板程度にしか使用されていないものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第23号証を提出した。
1 請求人の提出した証拠は、引用商標が周知であることを証明していない。証拠の多くは出版物であるが、ここに記載された引用商標は記事の一部として小さく記載されているだけであって、しかも他の多数のバレエ団体も同様に記載されており、これが引用商標を特に周知にする理由にはならない。また、新聞紙も提出されているが非常に数が少なく、新聞紙に1回記事が載っただけで周知になるはずもないから、証拠の新聞紙は周知であることの根拠にならない。
また、証拠として多数のパンフレットが提出されているが、パンフレットはバレエの公演に際し必ず配布されるものであり、どのようなバレエ団体も同様のことを行っており、パンフレットを配布したので引用商標が特に周知になるということはない。
したがって、引用商標は周知でなく、著名でもない。
2 請求人は証拠を挙げて引用商標が請求人の使用役務「バレエの教授、バレエその他の舞踊の興行の企画又は運営、バレエその他の舞踊の演出又は上演、バレエその他の舞踊の振付」について周知であると主張している。
(1)請求人提出の甲第1号証には、確かに日経新聞に取り上げられてはいるが、舞踏評論家の記事であって、この評論家が引用商標を知っていることの理由になる。しかし、日経新聞は非常に多くの記事が掲載されており、一回だけ取り上げられただけではすぐに忘れられてしまうのである。テレビなどのコマーシャルは何度も放映してはじめて周知になるのであって、一つのテレビ局で一回だけコマーシャルを流しただけで周知となることはあり得ない。したがって、記事に出ているからといって引用商標が請求人の使用役務について周知になったとは言えない。
(2)甲第2号証も日経新聞の記事であるが引用商標はどこにも掲載されていない。
甲第3号証及び甲第4号証は、記事の中にわずかに掲載されているだけであり、これが周知性を獲得できる要因とはなり得ないものである。しかも、本件商標の出願日よりも後の日付である。
甲第5号証は、記事のほんの一部として他の多数のバレエスクールの名前と共に掲載されているだけであり、周知性を獲得できる要因となりえない。しかも、この新聞も本件商標の出願日よりも後の日付である。
甲第6号証から甲第13号証でも他の多数のバレエスクールの名前と共に引用商標は記事の一部として小さく掲載されているだけであり、しかも他のバレエスクールは大きな広告記事を掲載しているのに引用商標はそのような事実もなく、このような記事で引用商標が請求人の使用役務について周知になるものではない。しかも、甲第11号証ないし甲第14号証は本件商標の出願日よりも後の日付である。
(3)甲第15号証及び甲第16号証は、バレエ年鑑であり、甲第17号証ないし甲第27号証は「ダンスマガジン」という月刊誌である。これらの書物に引用商標は記事のほんの一部として他の多数のバレエスクールの名前と共に掲載されているだけであり、他のバレエスクールと同等の扱いであって、特に引用商標が請求人の使用役務について周知になるような扱いになっていない。しかも、甲第28号証から甲第30号証は本件商標の出願日よりも後の日付である。
(4)甲第31号証ないし甲第40号証は、「バレエ」という隔月刊誌である。ここで引用商標が掲載されている記事は、ほとんどすべてバレエコンクールの結果を伝える記事であり、例えば甲第39号証の記事には「7月から8月にかけて、各地では全国規模のコンクールが続々と開催された。」と記載され、このようなバレエコンクールが多数開催されることが示されている。そして、引用商標はバレエコンクールの結果を伝える記事の中で他の多数のバレエスクールの名前と同等に扱われて非常に小さく掲載されているだけであり、引用商標だけが請求人の使用役務について周知になるような記載ではない。
(5)甲第41号証ないし甲第50号証は、「バレーリーナへの道」という書物であるが、ここでも、引用商標はバレエコンクールの結果を伝える記事の中で他の多数のバレエスクールの名前と同等に扱われて非常に小さく掲載されているだけであり、引用商標だけが請求人の使用役務について他のバレエスクールと違って周知になるような記載ではない。甲第41号証には、現場取材シリーズとして引用商標が掲載され内容が紹介されているが、他のバレエスクールの名前も三つ並べて掲載され多分内容も紹介されているはずであって、特に引用商標が請求人の使用役務について周知になるとは思えない。また、甲第45号証には、21世紀を担う振付家として請求人の一人である「矢上恵子」の記事が掲載されている。ここでは、振付家「矢上恵子」として紹介され、役務である振付は「矢上恵子」という名前で行っており、引用商標が振付について使用されたという事実は示されていない。さらに、これらの記事は、この書物の大切な購入者を紹介しているわけだから購入者が大いに満足するようにオーバーな誉め方をせざるを得ないことは明らかである。したがって、このような記事を証拠としてそのまま認めることはできない。しかも、甲第45号証の記事の筆者は桜井多佳子という人物であり、この筆者は甲第1号証の記事の筆者でもあり、甲第2号証に「桜井多佳子氏寄稿」と記載されていてこの記事の筆者でもある。また、甲第3号証の記事も同人物が筆者である。請求人の活動内容を紹介する記事は前記筆者に偏っており、多くの評論家が内容を紹介しているわけでないから、なおさら記事の内容を鵜呑みにすることはできない。しかも、甲第49号証及び甲第50号証は本件商標の出願日よりも後の日付である。
(6)甲第51号証ないし甲第57号証は、「クララ」という書物であって、引用商標は記事の一部として非常に小さく掲載されているだけである。唯一、甲第55号証は、引用商標が大きく掲載され活動の内容が紹介されているが単発的であり、ある程度回数を重ねて紹介されなければ周知になることはない。甲第56号証及び甲第57号証は本件商標の出願日よりも後の日付である。
甲第58号証ないし甲第60号証は「セーヌ」という書物であり、引用商標はバレエコンクールの結果を伝える記事の中で他の多数のバレエスクールの名前と同等に扱われ非常に小さく掲載されているだけであり、引用商標だけが請求人の使用役務について他のバレエスクールと違って周知になるような記載ではない。甲第61号証は、本件商標の出願日よりも後の日付である。
(7)甲第62号証ないし甲第82号証は、バレエ公演の際のパンフレットである。しかも、甲第62号証及び甲第70号証を除いて、他のパンフレットはその公演にケイバレエスタジオ所属のバレーリーナが出演していることだけが示されている。このようなことは、世の中に多数存在するバレエスクールがすべて行っていることであって、これらの証拠は、請求人が他のバレエスクールと同じように所属のバレーリーナが公演に出演しています、ということは示しているが、特に引用商標が請求人の使用役務について周知になるという合理的な理由は存在しない。
請求人はケイバレエスタジオに所属するダンサーがバレエ公演にゲスト出演したことで、ゲストがそのバレエの上演をし、ケイバレーという商標をバレエの上演に使用したと考えているようである。極端な例であるが、例えば谷桃子バレエ団が上演する「白鳥の湖」にケイバレエスタジオ所属のダンサーがただ一人ゲストによばれて出演したときに、たとえパンフレットにゲストがケイバレエスタジオ所属であることが記載されていても、そのゲストダンサーがケイバレエスタジオの商標を使用してバレエの上演の役務を提供したことにはならない。バレエの上演というのは出演者全体の演技が有機的に結び付いて「白鳥の湖」という物語を演じることであり、ゲストごとにバレエ「白鳥の湖」を上演しているわけではないし、ゲストごとにその所属の団体名がバレエの上演についての商標として使用されているわけではない。ゲスト出演はあってもゲスト上演というのは聞いたことのない概念である。
(8)甲第62号証は、ケイバレエスタジオと島根県の地元のバレー団とのジョイントコンサートのパンフレットであるが、一日且つ一回のみの公演であってそれだけの活動があったことは理解できる。しかし、これが特に請求人の使用役務について引用商標が周知性を獲得できる要因となることはない。
(9)甲第70号証は、他の証拠と違って「矢上恵子」について多く記載されている。この証拠の中の、日本バレエ協会会長島田廣の記事には「新進振付家の出番をつくるというのもこの公演のもう一つの目標」とあって、矢上恵子が振付家として名声を博しているとは述べていない。ましてやケイバレエスタジオが振付について名声を博しているとも述べていない。福田一平氏の記事にも矢上恵子が振付家として名声を博していると述べていないし、ましてやケイバレエスクジオが振付について名声を博しているとも述べていない。山野博大氏の記事には「矢上恵子さんはそのコンテンポラリー・ダンスの分野で若手のトップに位置する振付者なのだ。」と記載されているが名声を博しているとは書いていない。この文章は、「皆様はまだあまりよく知らないでしょうが」という意味が込められた書き方である。筆者がバレエ評論家であるからこのような記事が書けるのであるが、筆者が熱弁するほどには一般需要者に知られていないのである。他のページも矢上恵子の名前はあっても「ケイバレエスタジオ」は全く記載されておらず、わずかに矢上恵子のプロフィールに「K‐BALLET STUDIO 開設」とだけ記載されているだけである。振付という役務について引用商標が使用された証拠がない。
周知商標は、言うまでもなく役務について使用をしていた結果、業務上の信用が特に厚く化体した商標である。仮に、矢上恵子がケイバレエスタジオから独立して、「振付家矢上恵子カンパニー」を起こして振付業務を開始したときに、請求人の提出した証拠から見て、従来からの依頼者は「振付家矢上恵子カンパニー」の方に依頼してくることは明白である。すなわち、振付についての信用はほとんど矢上恵子という商標に化体しているのであって、引用商標に信用はほとんど化体していない。したがって、引用商標がバレエの振付について周知だとする合理的な理由は存在しない。
(10)甲第83号証は、引用商標が特に周知になるような記事でないこと明白である。
甲第87号証ないし甲第90号証まではインターネットの「今週の評論」という記事であって、2000年12月12日から2003年5月13日までで4つの記事である。甲第89号証及び甲第90号証は、本件商標の出願日よりも後の日付である。これらの証拠が引用商標の周知性を獲得するについてほとんど効果がないことは明白である。甲第91号証ないし甲第94号証は、本件商標の出願日よりも後の日付である。
甲第95号証ないし甲第111号証は、請求人の年1回行われるコンサートのパンフレツトであるが、世の中に多数存在するバレエスクールの多くが、練習の成果を発表する発表会であるコンサートを少なくとも年1回は行っている。提出されたこれらの証拠は請求人も他のバレエスクールと同じような活動をしていることを示しているが、どのようなバレエスクールでもしている程度の証拠から見て、引用商標が請求人の使用役務について請求人のみが抜きん出て周知であるとは到底思えない。年一回の公演では、他のバレエスクールよりも抜きん出て周知になるとは考えづらいことである。
甲第112号証は、単発的な一回きりの公演であり、これが世間の注目を浴びたような事実もなく周知性を得られるだけのものではない。甲第113号証ないし甲第120号証は、本件商標の出願日よりも後の日付である。
(11)周知商標は、言うまでもなく役務について使用をしていた結果、業務上の信用が特に厚く化体した商標である。周知商標となるための要因は役務についての商標の使用である。
しかるに、請求人の提出した証拠のほとんどは、新聞や雑誌の記事、雑誌におけるバレエコンクールの結果を伝える記事、あるいは出演者として請求人所属のダンサーが記載されたパンフレット等ばかりであって役務について使用されたものでなく、これらの証拠は商標が使用されたことを示すものでない。確かに引用商標が役務について使用されたことを示す証拠はいくつか提出されているが、提出された証拠では、引用商標が請求人の使用役務について周知であるとする根拠になり得ない。
(12)インターネットでNTTのタウンページを「バレエ教室」あるいは「バレエスクール」で検索すると、地域ごとにいくつのスクールが存在しているかがわかる。それによれば、東京都で404件(乙第1号証)、大阪府で146件(乙第2号証)、愛知県で136件(乙第3号証)、兵庫県で9 9件(乙第4号証)、横浜市だけで77件(乙第5号証)、静岡県で58件(乙第6号証)存在している。これら一覧表は「詳細」をクリックするとそのスクールの簡単な内容が記載されている。そこでいくつか「詳細」をクリックしたので請求人のケイバレエスタジオの分も含めて提出する(乙第7号証ないし乙第11号証)。これらの授業の内容などを見ると、請求人のケイバレエスタジオが他と比較して際立って周知であることは伝わってこない。
(13)バレエスクールのホームページを請求人のケイバレエスタジオの分も含めていくつか提出する(乙第12号証ないし乙第17号証)。まず、大阪の本田道子バレエスクール(乙第12号証)を見ると、創設が1966年であり請求人よりもずっと歴史がある。レッスン場所も6つあり、公演会も年2回であって請求人よりも多い。したがって、請求人がここよりもよく知られていないことは明らかである。大阪のワクイバレエ団(乙第13号証)はホームページへのアクセス数が157160であり、請求人のホームページ(乙第14号証)へのアクセスは4985であるから二桁も違う数である。また、設立は1978年であるから請求人よりも歴史がある。公演も請求人よりも回数が多く全国的である。請求人の公演はいつも森の宮ピロティホールであって広く知られにくい(甲第97号証ないし甲第111号証)。大阪のミイバレースタジオ(乙第15号証)はホームページへのアクセス数が117382であって請求人よりも圧倒的に多い。また、公演会も今年が4回予定されており、年1回の請求人よりも多い。東京のアートステッブス(乙第16号証)は、発表会が年に2回ある。東京のミヤキバレエ(乙第17号証)は今年の公演会を取り敢えず4回予定している。
(14)以上述べたように、請求人よりも活発に活動しているバレエスクールは少しだけ検索してみただけでいくつも存在するのであって、請求人がこれらよりも周知であるとは思えない。結局、請求人のバレエスクールは通常規模のスクールであって、いくつかのバレエスクールと比べてみても、特に周知であると言えるものでなく、そのような証拠も存在しない。
このように、引用商標は請求人の使用役務について本件商標の出願時において周知でもなく著名でもないことは明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号又は同第15号に違反して登録されたものではない。
(15)本件商標権者熊川哲也は、1998年に、それまで最高位ダンサーとしての格付であるプリンシパルとして所属していた英国ロイヤル・バレエ団を退団し、翌99年に同じく英国ロイヤル・バレエ団の5人の主役級男性ダンサーと共に日本でケイバレエカンパニーを結成して国内外で一大センセーションを巻き起こし、全国ツアーを開始して現在に至っている。公演は全国各地で合計17〜22公演行うツアーで、このようなツアー公演を年に2回行っている。その証拠としてツアーのパンフレットを4通(乙第18号証ないし乙第21号証)及びK-BALLET COMPANYの活動記録(乙第23号証)を提出する。これらから明らかなようにバレエの上演等について「K‐BALLET COMPANY」は周知である。
また、略称として「ケイバレエ」と呼ばれている。ケイバレエカンパニーを言葉に出して言うときは、ほとんど「ケイバレエ」と称呼されている。
熊川哲也は、世界各国の舞台で立つ中で、日本における「グローバル・スタンダードなレベルを達成できるバレエ教育の場」の必要性を肌身で感じ、熊川哲也が考案するカリキュラムのもと、ヨーロッパ仕込みの本格的なバレエレッスンで世界的なダンサーの育成を日指すことを目的として2003年にバレエスクールを開校し、「K‐BALLET STUDIO」の看板を掲げて上記目的を達するためのここだけのレッスンを開始している(乙第22号証)。このことは、NHKその他多くのマスコミに取り上げられた。
このような状況のもとで、本件商標権者は自己の使用する商標を守り、商標に関する紛争を避けるために実際に使用している本件商標を登録したのである。

第5 当審の判断
1 請求人の提出に係る甲各号証によれば、下記の事実が認められる。
(1)請求人、矢上(後藤)香織、矢上(福田)久留美、矢上恵子は、バレエを主とするダンス教室である「K★BALLET STUDIO」(ケイバレエスタジオ)を1983年に設立(甲第41号証)し、現在まで継続して活動していること。
(2)「日本経済新聞(平成2001年11月26日発行)」、「週間オンステージ新聞(1992年9月25日発行)」等の新聞において、「ケイバレエスタジオ」の紹介記事及びケイバレエスタジオに所属するダンサー又は同スタジオ出身のダンサーがバレエコンクールに入賞し、各種の賞を獲得した記事が数回に亘り掲載されていること(甲第1号証、甲第6号証等)。
(3)「ダンスマガジン バレエ年鑑1998(1998年3月25日発行)」、「ダンスマガジン(2000年4月1日発行)」、「バレエ(1999年11月1日発行)」、「バレーリーナへの道(1999年11月30日発行)」、「クララ(2000年7月10日発行)」等の業界雑誌において、ケイバレエスタジオ所属又は出身のダンサーが毎年バレエコンクールに入賞し各種の賞を獲得した記事が掲載されていること(甲第15号証、甲第17号証、甲第31号証、甲第41号証、甲第51号証)。
(4)新国立劇場公演の「くるみ割り人形」等において、ケイバレエスタジオの出身ダンサーが出演し、そのパンフレット(2000年12月22日)にその旨が紹介掲載されていること(甲第75号証)。
(5)「ケイバレエスタジオ」は、1986年以降、「K★BALLET STUDIO CONCERT」と称して、バレエの興行を毎年企画し、開催していること、そして、当該バレエの興行のパンフレットには引用商標1ないし3が使用されていること(甲第95号証ないし甲第111号証)。
等が認められる。
2 上記の事実よりすると、請求人は、1986年以降、引用商標を役務「バレエの教授,バレエ興行の企画、運営又は開催,バレエの演出又は上演,バレエの振付」に使用していることが認められる。
そして、「ケイバレエスタジオ」は、日本国内外でバレエ公演を行い、また、ケイバレエスタジオに所属するダンサー又は同スタジオ出身のダンサーがダンサーコンクールにおいて多数の各種賞を獲得し、様々な舞台、コンクールで活躍していることが認められる。
2 そこで、引用商標を使用するこの種業界(バレエ業界)における実情をみると、バレエ業界においては、新聞、雑誌等のダンサーの紹介記事を掲載する時にはそのダンサーの名前と共に所属団体が記載されていることが通常のことと認められることから、ダンサーの所属する団体名も需要者は強く注目し、そのダンサー名と共に所属する団体名も周知・著名になり得ることは否定し得ないものである。
そうしてみると、引用商標が公演パンフレットに使用されている事実に加え、ケイバレエスタジオ所属又は出身のダンサーが新聞、雑誌等の記事において頻繁に、ダンサーとしての活躍と共にその経歴において所属又は出身団体名も必ず紹介されている実情よりすれば、引用商標は、本件商標登録出願時には役務「バレエの教授,バレエの興行の企画又は運営,バレエの演出又は上演,バレエの振付」を表示するものとして、需要者の間に広く認識されるに至っていたものであり、登録査定時においてもその状態が継続していたと認め得るものである。
この点において、被請求人は、引用商標を実際に使用している役務の証左が少ないことを述べ、また、NTTタウンページやインターネットのホームページに関する情報を挙げて、引用商標の周知・著名性を否定しているが、引用商標を使用するこの種業界(バレエ業界)における実情を考慮すれば、前記のとおり判断するのが相当である。また、NTTタウンページ掲載の授業内容の比較や、インターネットのホームページへのアクセス数の多寡を比較し請求人へのアクセス数よりもアクセス数の多い者があるとの事実によって、前記した引用商標の周知・著名性が左右されるものとはいえない。さらに、被請求人の提出した乙各号証に徴しても、本件商標の使用の状況を示す写真(乙第22号証)が提出されるに止まり、本件商標が被請求人の業務に係る役務について使用されて、引用商標とは別に、需要者の間に広く認識されるに至っていたものと認め得る証左は見あたらない。
3 そして、本件商標と引用商標を比較してみると、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、その構成文字を同じくするものであり、かつ、本件商標と引用商標とは、いずれも「ケイバレエスタジオ」の称呼を共通にするものであるから、両者は、類似の商標である。また、本件商標の指定役務をみると、その役務は、請求人の使用役務「バレエの教授,バレエの興行の企画又は運営,バレエの演出又は上演,バレエの舞踊の振付」と同一であるか又はこれらと密接な関係にあるというべき役務であり、その需要者を共通にするといえるものである。
4 そうとすれば、本件商標がその指定役務に使用された場合には、その需要者をして、請求人の引用商標又は使用商標を連想、想起し、請求人又は請求人らと経済的または組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であるかの如く、役務の出所について誤認、混同を生じさせるおそれがあるというのが相当である。
5 したがって、本件商標の登録は、他の無効理由の点を判断するまでもなく、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものであるから、商標法第46条第1項の規定により無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (別掲)

引用商標1


引用商標2


引用商標3


審理終結日 2004-08-04 
結審通知日 2004-08-05 
審決日 2004-08-17 
出願番号 商願2002-90960(T2002-90960) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y41)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加園 英明 
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 富田 領一郎
小川 有三
登録日 2003-07-18 
登録番号 商標登録第4693422号(T4693422) 
商標の称呼 ケイバレースタジオ、ケイバレットスタジオ、ケイバレー、ケイバレット 
代理人 福島 三雄 
代理人 小山 方宜 
代理人 小山 方宜 
代理人 向江 正幸 
代理人 面谷 和範 
代理人 小山 方宜 
代理人 面谷 和範 
代理人 面谷 和範 
代理人 向江 正幸 
代理人 伊藤 浩平 
代理人 福島 三雄 
代理人 福島 三雄 
代理人 向江 正幸 
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