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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 110 |
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管理番号 | 1099967 |
審判番号 | 取消2002-31014 |
総通号数 | 56 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2004-08-27 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2002-08-23 |
確定日 | 2004-05-17 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2724310号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2724310号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第10類「理化学機械器具、光学機械器具、写真機械器具、映画機械器具、測定機械器具、医療機械器具、これらの部品および附属品、写真材料」を指定商品として、平成3年10月14日登録出願、同11年3月26日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標はその指定商品中の「医療機械器具,その部品および附属品」についてその登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品中の「医療機械器具,その部品および附属品」について、継続して3年以上日本国内において使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)被請求人は、本件商標は診断用機械器具の範疇に属する「顕微フーリエ変換赤外分光光度計」(以下「使用商品」という。)について出願当時より継続して使用されていると主張し、乙第1号証を提出している。 また、使用商品が診断用機械器具であることを証するために乙第2号証ないし乙第4号証を提出している。 (2)しかしながら、以下の理由により、乙号証は、日本国内における本件審判の請求の登録前3年以内の本件商標の使用事実を証するものとは認められない。すなわち、 (a) 甲第1号証(被請求人の所有に係る商標登録第3334018号の商標登録原簿謄本)によれば、指定商品の表示は「第9類 フーリエ変換赤外分光光度計,その他の測定機械器具」であり、使用商品が同様に測定機械器具の範疇に属する商品であることは明らかである。 また、乙第1号証(パンフレット)の2頁には、「化学工業、半導体、エレクトロニクス、生化学など広い分野の顕微測定に対応する高性能FTIRです。」と記載されており、6頁には、ポリアミド繊維やポリエチレンフィルムの測定例が掲載され、8、9頁には、PPフィルム表面の汚れ成分のATR分析例、コラーゲン膜に点在するセルロースの分析例、医薬品パッケージ(多層膜)の分析例、超臨界抽出成分の分析例が掲載され、さらに、10頁には、金属表面などの薄膜を測定するための付属品などが掲載されている反面、使用商品が医療用具である旨の記載や診断用機械器具として商品特性に関する記載は一切ない。 すなわち、使用商品は様々な試料について測定が可能な汎用の分光光度計であり、乙第2号証ないし乙第4号証に記載の例は、医学的研究のため人体組織を試料とした例を示しているにすぎない。 なお、乙第2号証以下には本件商標に関する記載は一切なく、これらがその使用事実を何ら証するものでないことは明らかである。 したがって、本件商標は「医療機械器具、その部品および附属品」について使用されているものとは認められない。 (b) 仮に、使用商品が医療機械器具であったとしても、乙号証は、本件商標が使用商品について本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内で使用された事実を証するものではない。 乙第2号証以下は、英語で記載された癌に関する専門学会誌であるし、上述のように本件商標はどこにも記載されていないから、これらが国内における本件商標の使用事実を間接的にも証するものとは認めがたい。 また、乙第1号証(パンフレット)は、何時作成・配布されたものであるか不明であるが、裏表紙の左上隅には「A2022-9207」の表示があるから、1992年(平成4年)7月頃に作成・配布されたものではないかと推測される。 そうであれば、本件審判の請求の登録日である2002年9月25日(甲第2号証)から起算して3年前の1999年9月25日以降も当該パンフレットが使用されていたとみるのは経験則上不自然である。 さらに、請求人の行った調査によれば、乙第1号証に掲載の商品は、本件審判の請求の登録日より3年以上前に販売が途絶えており、本件商標の使用もそれとともに終了していることが確認されている。 (3)以上の理由から、乙第1号証ないし乙第4号証は、本件審判の請求の登録前3年以内の日本国内における本件商標の使用事実を立証するものではない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由及び審尋に対する回答を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。 1 使用商品について (1)本件商標は、使用商品に本件商標の登録出願当時より継続して使用されている(乙第1号証)。 そして、使用商品は、癌(悪性腫瘍)を含めた各種疾患の診断に用いられるものであり、本件商標は、医療機械器具である診断用機械器具に継続して使用されているものであるということができる。 すなわち、癌に関する専門学会誌である「ANTICANCER RESEARCH 17:3473-3478(1997)」(乙第2号証)には、病院関係者等による報告が掲載されている。該報告には、「FT-IR顕微観察は、SC-M1(ヒト胃悪性腫瘍細胞)の膜タンパク質のα-へリックスからβ-シートへの構造的変化が明らかに認められることを証明した」(3473頁左欄9〜12行)と記載されており、「最近、異なる測定モードでのフーリエ変換赤外(FT-IR)分光分析が、生物機構の探索に急速に用いられるようになっている。我々は以前に、全反射(ATR)FT-IR顕微技術を、糖尿病性あるいは遺伝的先天性白内障のヒト水晶体、ウサギ膀胱閉塞による粘膜及びしょう膜、及びエタノール処理ヒト胃のタンパク質二次元構造の変化の定量的決定に適用した。皮膚のサーモトロピック挙動は透過型FT-IR顕微鏡で決定されてきたが、少量の組織上の異なるヒト脳下垂体腺腫の二次構造及び組成の検討には反射型FT-IR顕微鏡が用いられてきた。」(第3473頁右欄8〜21行)とあり、FT-IRが人の各種疾患の診断に極めて有用であることが示されている。そして、透過型、反射型、及び全反射型の各測定モードは、乙第1号証の10、11頁に示すように、いずれも本件商標が用いられている使用商品で取り得るものであり、該商品が人の各種疾患の診断に適したものであることが解る。 また、癌専門学会誌である「Cancer Letters 79(1994)221‐226」(乙第3号証)に掲載された、病院関係者等による報告であり、ここには「全反射技術を用いたフーリエ変換赤外分光光度計を、閉塞前後のウサギ膀胱壁表面の粘膜の同定に用いた。以前に結腸悪性組織で認められた、タンパク質の核酸中の水素結合に関連した幾つかの異常スペクトルが、閉塞膀胱粘膜の赤外スペクトルに現れたが、正常膀胱粘膜には認められなかった。」(第221頁アブストラクト)と記載されている。 さらに、癌専門学会誌である「Clinical Cancer Research Vol.8,2010‐2014」(乙第4号証)に掲載された、福井医科大学関係者及び本商標権者(「JASCO Co.,Ltd.」は、日本分光株式会社の英語標記である)等による報告であり、ここには「我々の目的は、悪性腫瘍組織の生存度の検討における従来の光学的技術を補完する新たな光学的診断手段として赤外(IR)顕微鏡を開発し、壊死領域のIRスペクトルをモニターすることにより抗癌療法の初期効果の評価に用いることである。」(210頁左欄ABSTRACT)と記載されている。 以上のように、使用商品は、癌などの諸疾患の診断に極めて有用に用いられているものであり、医療用機械器具、特に診断用機械器具の一つということができる。 (2)請求人は、使用商品は本件商標の指定商品である「医療機械器具、その部品および附属品」には相当しない旨主張する。 指定商品、商品区分は商標の出願及び審査上の便宜を図るために一応の指針として定められたものであり、これを尊重するのは当然のことであるが、一方で確定的に硬直したものと考えるべきではなく、時代とともに変化するものであるから、柔軟に解釈すべきものである。 使用商品は、汎用機であるとしても、癌診断の現場に用いられており、測定機械器具でもあるが、一方で、診断用機械器具でもある。 なお、別途乙第7号証、乙第8号証として、東京医科歯科大学に納品されたJanssenのメンテナンス報告書2通を提出する。該メンテナンス報告書には、使用商品の明示はないが、「レーザ及び光源交換」、交換後のエネルギー測定値などが記載されており、乙第1号証、乙第5号証とあわせ考慮すれば、少なくとも医療関係機関においてJanssenの商標が付された使用商品が実際に使用されていたことが確認できる。(乙第7号証、乙第8号証では、「ジャスコエンジニアリング株式会社」がメンテナンス実行者になっているが、ジャスコエンジニアリング株式会社は、被請求人日本分光株式会社(英語名:Jasco corporation)の関連会社である。) 2 使用の事実 (1)請求人は、乙第1号証(パンフレット)が1992年当時に作成されたものであるから、審判請求当時も使用されていたとするのは不自然であると主張する。 被請求人は、乙第1号証の作成時期については争わない。 しかしながら、使用商品は、一機種あたり年間何万台も売れるようなものではなく、むしろ受注生産品に近いものであり、若干の仕様変更ごとに多額の費用をかけてパンフレットを作成しなおすのではなく、基本となるパンフレットに加えて、付加情報を口頭、別途の資料、あるいはインターネット等の通信媒体により提供することは別に珍しいことではない。 したがって、1992年当時に作成されたパンフレットを審判請求当時も使用していたとしても、別段不自然ではなく、事実使用していた。 (2)一方、本件商標の使用の事実の証明が不十分であるという点に関しては、以下のとおり、乙第5号証、乙第6号証で補足できる。 すなわち、乙第5号証は、本件審判の請求の登録前の2002年3月11日現在の被請求人インターネットウェブサイトに掲載されていた使用商品である顕微フーリエ変換赤外分光光度計「Janssen MFT-2000」の広告を印刷したものである。 また、乙第6号証は、同装置の広告が被請求人インターネットウェブサイトに少なくとも1999年8月22日から2002年3月11日の間、継続的に掲載されていたことを示す資料である。 乙第5号証及び乙第6号証の存在は、いずれもインターネット接続環境さえあれば、被請求人とは何らの関係もない第三者機関の情報に基づき確認できる。 これは、www.archive.orgを運営している機関が、乙第6号証に示す各日付で更新された被請求人ホームページ内の特定の頁(MFT‐2000.html)の内容を記録しているものである。 このように、請求人、あるいは被請求人とは何らの関係もない第三者機関により、本件審判の請求の登録前3年以内である2002年3月当時に、被請求人のホームページに本件商標が用いられている使用商品の広告が掲載されていたことが確認されているのである。 これらのインターネット上での広告行為は、商標法第2条第3項第8号により商標の使用行為であるから、他の立証を行うまでもなく、本件審判の請求の登録日前3年以内に、本件商標は、使用商品に使用されていたことが明らかである。 なお、使用商品は、通常、購入者の希望によりオプション、改造などが加えられる場合が多く、これらは納品書等に記載され、購入者による使用目的、例えば測定対象の特徴、研究の手法等を示唆してしまうため、使用商品の取引書類を購入者に無断で開示することは困難である。 3 したがって、本件商標は、医療機械器具に継続的に使用されているものであり、商標法第50条第1項の規定には該当しない。 第4 当審の判断 1 使用商品について 乙第1号証ないし乙第4号証によれば、使用商品は、「化学工業、半導体、エレクトロニクス、生化学など幅広い分野の顕微測定に対応する高機能FTIR」(乙第1号証、2頁)であり、様々な分野で使用される商品であって、医療の分野においても使用される商品であると認められる。 ちなみに、「最新医学大辞典」(医歯薬出版株式会社、1996年3月31日第2版第1刷発行)によれば、本件使用商品と極めて近い商品と認められる「顕微分光光度計」(508頁)について、「顕微鏡と分光光度計とを組み合わせた装置で、細胞や組織内の微小な物質の吸光度あるいはスペクトルを測定し、物質の種類、量、所在などを測定する。・・・細胞内のDNA量、物質や酵素の定性・定量のほか、生物学以外の分野でも広く利用される。」との記載がある。 そうすると、使用商品は、医療機械器具の範疇に属しない商品とみることはできない。 2 使用の事実について 乙第1号証(被請求人の「Janssen/顕微フーリエ変換赤外分光光度計」のカタログ)は、1992年発行に作成されたものと認められるところ(この点については当事者間に争いがない。)、これが作成された日付は、本件審判の請求の登録前3年以内ではないとしても、使用商品に「Janssen」なる商標が使用されていたことが認められる。 そして、乙第5号証及び乙第6号証によれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内である2002年3月19日の時点において、自己のホームページに使用商品である「顕微フーリエ変換赤外分光光度計」について、「Janssen MFT-2000」の表示をもって、宣伝、広告していた事実が認められる。 3 むすび 前記1及び2を総合すれば、被請求人は、商標権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品中の「診断用機械器具」について使用していたことを証明したものと認めることができた。 したがって、本件商標の指定商品中「医療機械器具,その部品および附属品」についての登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
本件商標 |
審理終結日 | 2003-12-16 |
結審通知日 | 2003-12-19 |
審決日 | 2004-01-06 |
出願番号 | 商願平3-106813 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(110)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鹿谷 俊夫、寺島 義則 |
特許庁審判長 |
茂木 静代 |
特許庁審判官 |
井岡 賢一 瀧本 佐代子 |
登録日 | 1999-03-26 |
登録番号 | 商標登録第2724310号(T2724310) |
商標の称呼 | ヤンセン、ジャンセン |
代理人 | 小林 十四雄 |
代理人 | 岩橋 祐司 |
代理人 | 岡村 信一 |