• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) 020
管理番号 1098723 
異議申立番号 異議1998-90663 
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2004-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-03-27 
確定日 2004-04-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第4084496号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4084496号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第4084496号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成よりなり、平成5年6月30日に登録出願され、第20類「家具,カーテン金具,金属代用のプラスチック製締め金具,くぎ・くさび・ナット・ねじくぎ・びょう・ボルト・リベット及びキャスター(金属製のものを除く),座金及びワッシャー(金属製,ゴム製又はバルカンファイバー製のものを除く),錠(電気式又は金属製のものを除く),クッション,座布団,まくら,マットレス,愛玩動物用ベット,犬小屋,小鳥用巣箱,うちわ,せんす,買物かご,額縁,家庭用水槽(金属製又は石製のものを除く),すだれ,装飾用ビーズカーテン,ストロー,盆(金属製のものを除く),洗濯挟み,スリーピングバッグ,つい立て,びょうぶ,ネームプレート及び標札(金属製のものを除く),旗ざお,ハンガーボード,帽子掛けかぎ(金属製のものを除く),マネキン人形,洋服飾り型類,木製又はプラスチック製の立て看板,郵便受け(金属製又は石製のものを除く),揺りかご,石こう製彫刻,プラスチック製彫刻,木製彫刻」を指定商品として、同9年11月21日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
(1)商標法第4条第1項第15号について
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の商号は、「ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ」であり、米国ニューヨーク州のリミテッドパートナーシップである。申立人は、被服類やメガネやフレグランス及びその他のファッション関連商品について、申立人の関連会社やライセンシー及び販売店を通じて世界的な規模でその製造販売に携わっている。
申立人がライセンシーや販売店等を通じて製造販売している商品は、申立人の主な構成員の一人であり世界的に著名なデザイナーであるラルフ・ローレンによって主にデザインされたものである。その英国の伝統を基調としそれに機能性を加えたデザインと、卓越した製造技術並びに一貫した品質管理による良質の製品は、本拠地である米国のみならず日本を含む数十カ国に及ぶ世界の国々において多くの消費者から高い評価を得て、現在では世界的規模で事業を展開している。
そして申立人は、申立人が取り扱う全ての商品の商標として、甲第2号証及び甲第3号証に示す「乗馬の人がポロ競技を行っているポロプレーヤーの図形と「Polo」又は「Ralph Lauren」の欧文字を組合せた商標(以下「引用商標」という。)を本件商標の登録出願前より使用しており、該商標は既に周知、著名となっているものである。
本件商標は、甲第1号証に示すとおり、疾走する馬に騎乗しポロ競技に使用するマレットを振り上げている人の図形とその図形を挟んで左右に「Polo」と「Club」の欧文字を配してなるものである。しかして、本件商標と引用商標は、共に走行する馬に騎乗した人がポロ競技をしている点やマレットを振り上げまさに球を打たんとしている動作を表している点など、図形全体として酷似し、さらに、それらの図形の「Polo」の文字及び他の欧文字とを組み合わせてなる点でも酷似するものであるから、両者は構成の軌を同じくした、非常に近似したものである。
また、本件の指定商品はファッション関連商品の一種であって、申立人の主たる取扱商品である被服類とは取引者、需要者を同じくする場合が非常に多い商品であるうえに、申立人は甲第4号証に示すとおり、主たる商品である被服以外に、ベッドカバーやクッション、まくら等寝室をコーディネイトする商品についても引用商標を付して販売している。
これより、本件商標は、申立人が同人の業務に係る商品「被服類」に使用し広く一般に知られている引用商標と酷似するものであるから、これをその指定商品に使用した場合は、それに接する取引関係者、需要者をして申立人によって製造販売されている商品であると商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標である。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。
(2)商標法第4条第1項第19号について
引用商標は申立人の長年にわたる不断の努力により世界的に著名な標章となっており、日本国内においても、取引者、需要者間で広く認識され、強力な顧客吸引力を取得している著名標章である。
しかるに、本件商標は、上述のとおり「乗馬の人がポロ競技をしている図形」と「Polo」の文字及び他の欧文字とを組み合わせてなる点で引用商標と構成の軌を同じくする、非常に近似した類似する商標といいえるものである。
このように本件商標は、著名な引用商標と酷似し、申立人が取り扱う商品と取引者、需要者を同じくする商品に使用するものであるところから、本件商標権者がこのような商標を採択使用することを偶然の一致などということは到底できず、本件商標をその指定商品に使用する行為は、申立人が多大の努力と費用を費やし永年かけて築いた引用商標のグッドウイルを剽窃することであり、結果として引用商標に化体されたグッドウイルが希釈化され、その名声が棄損されることになるところから国際信義にも反するものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。

3 当審において通知した取消理由
本件登録異議の申立てがあった結果、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして通知した取消理由は、要旨以下のとおりである。
<取消理由>
申立人の提出に係る各証拠及び職権により調査したところによれば、別掲2に示す引用商標は、「Polo(ポロ)」と称呼されて著名なデザイナーであるラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する商標として、また、紳士服、紳士用品について、「POLO」、「polo」「ポロ」「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題の下各種雑誌、新聞等に紹介されていることが認められる。
なお、ラルフ・ローレンの「POLO」「polo」「ポロ」の商標について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定した判決(平成2年(行ケ)第183号 東京高等裁判所平成3年7月11日判決言渡)がある。
以上の事実を勘案し、上記判決をも併せ考慮すると、わが国においては、遅くとも昭和55年頃までには既にラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして「Polo」及び「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形の商標が取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたものと認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。
そうとすると、別掲1のとおり「Polo」の文字及び「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形を有してなる本件商標をその指定商品に使用した場合には、前記した事情からして、これに接する取引者、需要者はその構成中の「Polo」の文字及び「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形に注目し、前記周知になっているラルフ・ローレンに係る「Polo」又は「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」標章を想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがあるものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

4 商標権者の意見
「Polo Club」は昭和49年頃から現在に至るまで紳士服などの「被服」につき使用されている本件商標権利者(以下「商標権者」という。)のメインブランドである。使用商品についても被服から他の商品分野へと拡大し、ライセンスブランドとしても高い評価を受けており、第20類(旧分類)の「家具」などにおいては既に商標登録を取得済です(登録第2543588号、乙第1号証)。そして文字商標の「Polo Club」とともに、これに図形を結合してなる本件商標は、以下に示すとおり、申立人に係る引用商標とは異なる出所を表示する「別異の商標」として周知著名であり、一般的にもまた具体的にも引用商標との間に商品の出所につき混同を生ずるおそれはない。
1)「 '95ライセンスブランド&キャラクター名鑑」(ボイス情報株式会社発行1995年版 乙第2号証)
「ポロクラブ」の知名度は、総合知名度78.6%であり、ベスト30中の第17位にランクされている。これは「セリーヌ」「ジバンシイ」(いずれもフランスの有名ブランド)の総合知名度よりも高く、また「ポロ・ラルフローレン」の総合知名度は81.8%との差はわずか3.2%である。
2)「ライセンスブランド&キャラクター名鑑別冊 '96ブランド&キャラクター調査」(ボイス情報株式会社発行1996年版 乙第3号証)
「ポロクラブ」の知名度は、総合知名度80.6%であり、第16位にランクされている。これは「ラコステ」「セリーヌ」「ジバンシー」「アーノルド・パーマ」の総合知名度より高い。
また、「ポロ・ラルフローレン」の総合知名度は81.6%との差はわずか1%にすぎない(乙第3号証参照)。また注目すべきは、同名鑑が「ブランド対決」という表題の下にライバル関係にあるブランドを挙げ、他の有名ブランドのケ一スとともに、「ポロ クラブ」と「ポロ・ラルフ ローレン」が、「ライバル・ブランド」であることを紹介し、両ブランドが「人気の点でも消費者を2分している」とコメントしている。
このように「ライバル・ブランド」という視点から「ポロ クラブ」と「ポロ・ラルフローレン」を具体的に対比した評価は、両商標が商品の出所を異にする「別異の商標」であることを端的に示すものである。蓋しライバル・ブランドが同一の出所を表示することは論理的にも、実際的にもありえないからである。
3)「ライセンスブランド&キャラクター名鑑別冊'98ブランド&キャラクター調査」(ボイス情報株式会社発行1998年版 乙第4号証)
「ポロ・クラブ」の総合知名率69.8%に対して、「ポロ・バイ・ラルフローレン」は56.7%であり、「ポロ・バイ・ラルフローレン」を上回るという現象がみられた。このことは「ポロ クラブ」の知名度が需要者全体に広く浸透したことを意味するだけでなく、ファッション雑誌などにおける強力な宣伝、広告活動などにより「ポロ クラブ」のブランド・パワーの一層の強化が図られた結果、出所を含めた両商標の相違が疑いをはさむ余地のない程、明瞭となったことを示す象徴的な事実である。
4)「2000年ブランド&キャラクター消費者調査」(ボイス情報株式会社発行2000年版 乙第5号証)
「ポロ・クラブ」の総合知名率57.9%に対して、「ポロ・バイ・ラルフローレン」は46.6%であり、知名度において「ポロ・クラブ」が依然として約11%程度上回る。
5)「被服におけるマーケテイングと消費者行動 ブランドと日本人」(井出幸恵著 白桃書房発行 乙第6号証)
「第6章 ブランドのTシャツに対する女子大学群の反応」において「ブランド」の知名度の調査(1996年実施)がなされており、女子大生に57のブランドを示し、知っているブランドに○を付けてもらう質問に対し、回答者全員が「Polo Club」を知っており(有効回答数339)、知名度は100%であった。
6)「別冊MEN’S CLUB STATUS BRAND 男のブランド図鑑」(婦人画報社 1988年1月発行 乙第7号証)及び「MEN’S CLUB 1996年6月号」(婦人画報社 1988年6月発行 乙第8号証)
本件商標(文字商標の「Polo Club」を含む)は周知著名であるとともに、「ステータス・ブランド」として評価され、また、ポロシャツの元祖「ラコステ」とともに「Polo Club」の「ポロシャツ」が「定番アイテム」と評価されている。多数のブランド(商品)の中から得られた「ステータス・ブランド」あるいは「定番アイテム」という評価は、品質、デザインなどの当該商品のもつ属性、人気度、周知性などの種々の観点からする総合的な判断において当該商品が特に優れていることを示すものにほかならず、このような評価を与えられた「ポロ クラブ」については、これがラルフ・ローレンのブランドとは異なる商品の出所を表示していることを前提とするものであるのは当然である。
7)「知的所有権と営業秘密の保護」200頁(大矢息生著 税務経理協会発行 乙第9号証)
「Polo Club」ブランドの模造品の出現に対しては、これが発見されたとき、商標権侵害などを根拠にその排除を行ない、自己の周知著名ブランドの管理に万全を期している。

5 当審の判断
(1)引用商標の著名性について
株式会社講談社(昭和53年7月20日)発行「男の一流品大図鑑」(甲第3号証)には、引用商標を掲げた「ラルフローレン」ブランドの紹介として、「一九七四年の映画『華麗なるギャツビー』・・・で主演したロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したのが、ポロ社の創業者であり、アメリカのファッションデザイン界の旗手ラルフ・ローレンである」、「三〇歳になるかならぬかで一流デザイナーの仲間いりをはたし、わずか一〇年で、ポロ・ブランドを、しかもファッションデザイン後進国アメリカのブランドを、世界に通用させた」との記載が、サンケイマーケティング(昭和58年9月28日)発行「舶来ブランド事典『’84 ザ・ブランド』」には、引用商標を掲げた「ポロ」ブランドの紹介として、「今や名実ともにニューヨークのトップデザイナーの代表格として君臨するラルフ・ローレンの商標。ニュートラディショナル・デザイナーの第一人者として高い評価を受け、世界中にファンが多い」、「マークの由来 ヨーロッパ上流階級のスポーツのポロ競技をデザイン化して使っている。彼のファッションイメージとぴったり一致するため彼のトレードマークとして使用しているもの」との記載が、そして、株式会社洋品界(昭和55年4月15日)発行「月刊『アパレルファッション店』別冊、1980年版『海外ファッション・ブランド総覧』」には、「ポロ・バイ・ラルフローレン」について、「若々しさと格調が微妙な調和を見せるメンズ・ウェア『ポロ』ブランドの創立者。栄誉あるファッション賞“コティ賞”をはじめ彼の得た賞は数知れず、その実力をレディス・ウェアにも発揮。新しい伝統をテーマに一貫しておとなの感覚が目立つ。アメリカ・ファッション界の颯爽とした担い手」との紹介のほか、「〈販路〉西武百貨店、全国展開〈導入企業〉西武百貨店〈発売開始〉五十一年(注、紳士靴につき「五十二年」)」等の記載があることが認められる。そして、これらと同趣旨の記載が、株式会社アパレルファッション(昭和57年1月10日)発行「月刊アパレルファッション2月号別冊海外ファッション・ブランド総覧」、ボイス情報株式会社(昭和59年9月25日)発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」、昭和63年10月29日付日経流通新聞の記事及び株式会社チャネラー(昭和53年9月20日)発行「別冊チャネラーファッション・ブランド年鑑’80年版」、株式会社スタイル社(1971(昭和46)年7月10日発行)「dansen男子専科」、株式会社講談社(昭和54年5月20日)発行「世界の一流品大図鑑’79年版」、同社(昭和55年11月15日第二刷)発行「世界の一流品大図鑑’80年版」、同社(昭和55年11月20日)発行「男の一流品大図鑑’81年版」(甲第5号証)、同社(昭和56年5月25日)発行「世界の一流品大図鑑’81年版」(甲第6号証)、婦人画報社「MEN’SCLUB」1980(昭和55年)年12月号及び株式会社講談社(昭和60年6月25日第2刷)発行「FASHION SHOPPING BIBLE’85 流行ブランド図鑑」等にもあることが認められ、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフローレン(アメリカ)」等の商標の下で紹介されている。
さらに、新聞記事においても(例えば、1990年11月27日付、1991年12月5日付朝日新聞朝刊)、申立人の業務に係る商品に付された商標を単に「ポロ」、「ポロのマーク」等として掲載されていることが認められる。
上記事実によれば、アメリカ合衆国在住のデザイナー、ラルフ・ローレンは、1967年ネクタイメーカーのボー・ボランメル社にデザイナーとして入社、幅広ネクタイをデザインし、圧倒的に若者に支持され、世界に広まった。翌1968年独立、社名を「ポロ・ファッションズ」(以下「ポロ社」という。)とし、ネクタイ、スーツ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出、服飾業界の名誉ある賞、「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞するとともに、数々の賞を受賞。1974年の映画「華麗なるギャツビー」の主演ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。
わが国においても、ラルフ・ローレンの名前は服飾業界等において広く知られるようになり、そのデザインに係る商品には「Polo」の文字とともに「by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の引用商標が用いられ、これらの商標は「POLO」、「ポロ」、「Polo」と略称されている。
なお、ラルフ・ローレンの「POLO」、「ポロ」、「Polo」の商標について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定した判決として、東京高等裁判所平成2年(行ケ)第183号(平成3年7月11日言渡)をはじめ、同平成11年(行ケ)第250号、同第251号、同第252号、同第267号、同第290号(以上平成11年12月16日言渡)、同第268号、同第289号(以上平成11年12月21日言渡)、同第288号(平成12年1月25日言渡)、同第298号、同第299号(以上平成12年2月1日言渡)、同第192号(平成12年2月29日言渡)、同第333号、同第334号(以上平成12年3月29日言渡)、さらに、最高裁判所平成12年(行ヒ)第172号(平成13年7月6日言渡)等の一連の判決がある。
以上の認定事実及び上記判決を総合すれば、引用商標は、申立人がアメリカのファッションデザイナーとして世界的に著名なラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連商品に、わが国において昭和51〜52年ころから使用するようになったこと、引用商標は、わが国の取引者、需要者の間で、「Polo by RALPH LAUREN(ポロ・バイ・ラルフローレン)」、あるいは単に「Polo」「ポロ」の略称で、ポロプレーヤーの図形とともに広く知られるようになり、遅くとも本件商標の商標登録出願前にはラルフ・ローレンのデザインに係る商品を示すものとして極めて強い自他商品識別力及び顧客吸引力を発揮する著名な商標となり、本件商標の商標登録出願時(平成5年6月30日)及び設定登録時(平成9年11月21日)はもとより、その後においても著名な商標であることが認められる。
(2)出所の混同のおそれについて
本件商標は、別掲1に示すとおり、「Polo」と「Club」の各文字の間に、馬に乗った一人のプレーヤーがマレットを振り上げてポロをしている図形を配してなるものである。
一方、引用商標は、別掲2に示すとおりの構成よりなるものであり、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして著名な商標となっていることは前述のとおりである。
そこで、本件商標と引用商標の類似性について検討する。本件商標構成中の「Polo」の文字部分と、引用商標構成中の「Polo」の文字部分とはその綴り字が同一である。また、本件商標構成中の図形と引用商標構成中の図形とは、人馬の向き、ポロプレーヤーの姿勢、マレットの角度等においてわずかな差異は認められるものの、いずれもポロプレーヤーの図形であって、マレットを振り上げたポロプレーヤーを疾走する馬とともに正面側やや斜め方向から描いたものである点において基本的な構成を共通にしているので、時と所を異にして観察する場合には、酷似しているというべきである。
そうすると、本件商標は、構成中に世界的に有名なデザイナーであるラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品等のファッションに関連する商品に使用して著名な「Polo」と同一の綴り文字及び同じく著名なポロプレーヤーの図形と酷似するポロプレーヤーの図形を有しており、また、その指定商品には「家具,クッション,座布団,まくら,マットレス,せんす,買物かご,すだれ,装飾用ビーズカーテン」等そのデザインが重視され、デザイナーの関与が十分予想される商品も多く存するところであって、身につけるものはもとより、インテリア製品も含め、トータルでファッション化する傾向にある昨今にあっては少なからぬ関係を有するものというべきであるから、本件商標をその指定商品に使用する場合には、これに接する取引者、需要者が「Polo」の文字及びポロプレーヤーの図形に着目してラルフ・ローレンのデザインに係る商品であると連想、想起し、その商品が申立人と組織的、経済的に何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
なお、商標権者は、本件商標は、引用商標とは異なる出所を表示する「別異の商標」として周知著名であり、一般的にもまた具体的にも引用商標との間に商品の出所につき混同を生ずるおそれはない旨主張し、その根拠として乙各号証を提出している。
しかしながら、乙各号証からは、「Polo Club」のブランドと引用商標が別のブランドの商標として知られるに至っている事実が立証されるにとどまるものというべきであり、「Polo Club」ブランドないしは本件商標を使用する者が申立人と関係がないことを一般の需要者が知っていたことを窺わせるものでないから、たとえ、本件商標が周知であったとしても、上記混同を生ずるおそれがないということはできない。
また、商標権者は、取消理由に対して、本件商標について商標法第4条第1項第15号を適用する根拠、理由づけが曖昧であるから具体的にその意見を述べることが不可能あるいは困難であり、その取消理由通知は反論の機会を正当に与えたものでないから違法とされるべきものである旨述べる。
しかしながら、商標権者により提出の平成13年4月3日付け上申書において、本件審理に与える影響が決して小さくないので決定をまって欲しい旨述べる同人にかかる他の「ポロ クラブ」関連事件中、登録第4062676号商標(商品の区分第17類)に対する異議申立平成10年90297号事件については、その決定を不服とする平成14年(行ケ)第460号、平成15年(行ヒ)第267号を経て商標登録の取消しが確定している。そして該事件は、本件商標と構成を同一にし、取消理由についても本件と同様理由にて商標法第4条第1項第15号を適用している事件であることから、本件のみが取消理由の根拠、理由づけが曖昧であり取消理由通知が反論の機会を正当に与えたものでなく違法であるとの主張も採用できない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1
本件商標



別掲2
引用商標
(甲第2号証に表示する標章)



(甲第3号証に表示する標章)


異議決定日 2004-03-04 
出願番号 商願平5-70571 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (020)
最終処分 取消  
前審関与審査官 飯山 茂 
特許庁審判長 小池 隆
特許庁審判官 山本 良廣
田中 幸一
登録日 1997-11-21 
登録番号 商標登録第4084496号(T4084496) 
権利者 上野衣料株式会社
商標の称呼 ポロクラブ 
代理人 岡田 稔 
代理人 山内 淳三 
代理人 黒岩 徹夫 
代理人 曾我 道照 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ