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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 111 |
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管理番号 | 1095103 |
審判番号 | 取消2000-31141 |
総通号数 | 53 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2004-05-28 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2000-09-27 |
確定日 | 2003-12-25 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1532426号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1532426号商標の「電気磁気測定器、電子応用機械器具」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第1532426号商標(以下「本件商標」という)は、「ESP」の文字を書してなり、昭和54年8月20日に登録出願、第11類「電気機械器具(電球類および照明器具、電池を除く)電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として昭和57年8月27日に設定登録、その後、平成4年11月27日及び同14年8月6日の二度に亘り商標権存続期間の更新登録がされたものである。 2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。 (1)請求人の調査によれば、本件商標は、その指定商品中「電気磁気測定器、電子応用機械器具」について継続して3年以上日本国内において使用されていないのみならず、本件商標を使用していないことについて何等正当な理由が存することも認められない。 また、本件商標について専用使用権の設定又は通常使用権許諾の登録もないから、使用権者による使用も問題にならない。 (2)被請求人の答弁に対する弁駁 被請求人は、「本件商標が被請求人の通常使用権者であるソニー株式会社により、『電子応用機械器具』に属する『電子回路』について使用されている。すなわち、被請求人の通常使用権者であるソニー株式会社が乙第1号証(商品カタログ)に示すとおり、『携帯型CDプレーヤー及び車載用CDプレーヤー用の音飛びを防止するための電子回路』について、本件審判請求の登録前3年以内である平成12年7月時点及び現在においても継続して使用している。このことは、乙第1号証中の『携帯型CDプレーヤー』等の説明における『音飛びガードESP搭載』の記載からみて明らかである。」旨答弁している。 しかしながら、請求人は、これに対し、以下のように弁駁する。 (ア)先ず、被請求人は、「被請求人の通常使用権者であるソニー株式会社」と述べているが、「ソニー株式会社」が被請求人の通常使用権者であることを証明する証拠はない。 したがって、被請求人の当該主張は認められない。 (イ)次に、被請求人は、本件商標が通常使用権者により「携帯型CDプレーヤー及び車載用CDプレーヤー用の音飛びを防止するための電子回路」について使用している旨述べている。 しかしながら、被請求人が通常使用権者を通じて本件商標「ESP」を使用している商品は、「電気通信機械器具」であり、「電子応用機械器具」に属する「電子回路」については使用されていない。 被請求人提出の乙第1号証の第72頁の左下には、「Discman」の文字の右横に一連不可分に同一の書体の欧文字「ESP」が商品の右下近傍に付されている。また、同じ頁の右下にも同じ態様の文字が認められる。 このような態様での文字の使用は、当該文字に近接している商品の商標としての使用とされるが、「Discman」が、電気通信機械器具に属する商品「コンパクトディスクプレーヤー」の商標として用いられていることは明らかであるところ、「ESP」が電子回路に使用されていることは不明である。 (ウ)被請求人は、「このことは、乙第1号証中の『携帯型CDプレーヤー』等の説明における『音飛びガードESP搭載』の記載からみて明らかである。」旨主張しており、確かに、当該証拠には、その記載が認められる。 しかしながら、当該記載は、その証拠に示されている各商品の機能を表すものであり、商標として使用されているものではない。 すなわち、ソニーマーケティングジャパン(Sony Marketing of Japan)が著作権を有する「用語集」には、「ESP(イーエスピー)Electronic Shock Protection CDソフトを常に倍速回転させ、音楽信号を約3秒間メモリー後、本メモリーを通して再生、読み取りが行われるため、常にメモリー内には約3秒間の音楽信号があることとなります。したがって、振動などにより音楽信号の読み取りが一時的に正確に行われない場合、メモリー内の音楽信号を再生します。約3秒以内に読み取りが再開された場合、音楽信号がとぎれることはありません。※例えば、川の流れをせき止めてダムを造り、そのダムから少しづつ放水する方法です。したがって、常にダムには水(音楽信号)があることになります。その音楽信号が約3秒間分あるということです。」(甲第3号証)との記載が認められるところ、これは、「ESP」がCD等における音楽再生にあたってのCDの一つの機能を表す欧文字の頭文字であることを示している。 そして、被請求人提出の乙第1号証をみると、「音飛びガード10秒ESP搭載」、「CDの音飛びを低減するアドバンストESPをメガデッキに搭載」、「音飛びを防ぐアドバンスドESP搭載」、「音飛びに強いESP機能搭載」と記載されている。 ここで、当該「ESP」は、「CDプレーヤー」等が「音飛び防止機能」を有することを示しているものであり、「電子回路」を識別する標識として用いられてはいない。 なお、被請求人の答弁のとおり、「ESP」の使用されている商品が電子回路としての性質を有するものであっても、当該回路は、CDプレーヤーの如き電気通信機械器具に包含されるものである。 したがって、当該回路は、商品区分の上では、電子応用機械器具から除外されると解される(「商品及び役務区分解説改定第2版」社団法人発明協会発行第67頁参照)。 (3)以上の次第であるから、本件商標が取消請求に係る商品について使用されていないこと及び本件商標の不使用についての正当理由がないことは明らかである。 3 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び請求人の弁駁に対する再答弁を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。 (1)本件商標は、被請求人の通常使用権者であるソニー株式会社により、「電子応用機械器具」に属する「電子回路」について使用されている。 すなわち、被請求人の通常使用権者であるソニー株式会社は、乙第1号証(商品カタログ)に示すとおり、「携帯型CDプレーヤー及び車載用CDプレーヤー用の音飛びを防止するための電子回路」について、本件審判請求の登録前3年以内である平成12年7月時点及び現在においても継続して使用している。このことは、乙第1号証中の「携帯型CDプレーヤー」等の説明における「音飛びガードESP搭載」の記載からみて明らかである。 (2)請求人の弁駁に対する再答弁 (ア)請求人は、「被請求人は、ソニー株式会社が被請求人の通常使用権者であることを証明していない。」旨主張するが、ソニー株式会社が被請求人の所有に係る本件商標をその指定商品に使用している(乙第1号証)事実からしても、ソニー株式会社が被請求人の通常使用権者であることは明らかである。 (イ)本件商標「ESP」は、完成品である「携帯型CDプレーヤー」等の表面に表示されているが、そのことをもって、本件商標が当該商品にのみ使用され、「電子回路」に使用されていないものとすることは、あまりにも形式的な見地に立つものであり、取引の実情を無視するものであって、到底容認できない。 すなわち、乙第1号証によれば、掲載商品の主たる商標は、例えば、「SONY」や「Discman」であり、極めて強い識別力を発揮するのに対し、使用商標は、これらに添えて表示され、その商品に「ESPを搭載」しているという特徴を表示しているにすぎず、「携帯型CDプレーヤー」等の商標としては識別力がないか極めて低いものである。 また、通常使用権者であるソニー株式会社は、被請求人の登録商標の使用を「ESP電子回路を搭載」の意味合いで明示したものであり、このような商標使用の関係は、パソコンとその利用ソフトとの関係等で普通に見られるところであるから、取引者、需要者も同様に認識するものとするのが取引の実情に則した見方といえる。 してみれば、通常使用権者は、本件商標を「電子回路」について使用していないということはできない。 (ウ)当該電子回路は、電気通信機械器具に属する専用の部品、附属品ではなく、電子応用機械器具に属する汎用の電子回路である。 すなわち、当該電子回路は、予めディスク等から送られた電子信号を極わずかな時間ストックすることによって、振動等による読み取りむら(主回路の信号むら)を補足するもので、それが組み込まれた機器の目的によって、回路に送られるものは音声からの信号ばかりではなく、電子計算機プログラムの信号等も含まれるものである。 したがって、この電子回路は、「電子応用機械器具」の概念に含まれるところの汎用の電子回路というべきである。 よって、本件商標は、被請求人の通常使用権者により、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において取消請求に係る商品について使用されている。 4 当審の判断 (1)商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第1項の規定により、当該審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消請求に係る指定商品につき当該登録商標を使用していることについて証明しない限り、あるいは、使用していないことについて正当な理由を明らかにしない限り、同条第2項の規定により、その登録の取消しを免れない。 (2)そこで本件について、上記の点を検討する前に、当事者間において、ソニー株式会社が被請求人の通常使用権者であるか否かについて争いがあるので、先ず、これについて判断するに、被請求人所有の本件商標をその指定商品についてソニー株式会社が被請求人の承諾を得て使用しているとの被請求人の意思表示が存する以上、ソニー株式会社が本件に関し被請求人の通常使用権者でないという判断をすることはできない。 (3)次に、被請求人提出の証拠について検討する。 被請求人提出の証拠である乙第1号証は、6枚のコピーよりなるものである。 (ア)乙第1号証の最初の1枚(以下「表紙」という。)の上部には、「SONY 商品のしおり 95」という表題が認められるところ、当該「95」という数字の大きさ及び表示位置よりすれば、これは1995[平成7]年、すなわち、「SONY 商品のしおり」の「平成7年版」とみるのが相当である。 他方、乙第1号証の6枚目のコピー(以下「裏表紙」という。)の最下部には、「カタログ記載内容:2000年7月現在」という表示が存するが、乙第1号証には、商品カタログ全頁の把握に不可欠な目次の添付すらないこと等を考慮すると、前記裏表紙における上記の記載をもって、直ちに他の5枚のコピーも全て同年月、すなわち、本件審判請求の登録前3年以内の証拠であると判断することはできない。 そうとすると、本件商標は、通常使用権者により本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、取消請求に係る商品について現実に使用されたものとまでは認めることはできない。 (イ)また、乙第1号証の2枚目ないし5枚目の各頁に掲載されている各商品の写真等を総合すると、通常使用権者が本件商標を使用している商品は、いずれも「電気通信機械器具」に属する商品と容易に認められる。 そして、本件商標が「電子回路」に使用されているとしても、当該「電子回路」は、「CDプレーヤー」等(いずれも「電気通信機械器具」に属する商品。)の各商品中に組み込まれて、それ自体「音飛びを防止する」機能を発揮するものであってみれば、該「電子回路」は「CDプレーヤー」等の「電気通信機械器具」において、前記機能を有する専用の部品と認められる。 そうであるとすれば、該商品は「電気通信機械器具」に属する商品というべきである。 してみると、乙第1号証の2枚目ないし5枚目の各頁の存在をもって、本件商標が「電子応用機械器具」に属する「電子回路」に使用されたものと認めることはできない。 (4)以上の事実及び請求人主張の全趣旨を総合勘案すると、被請求人提出の乙1号証をもってしては、被請求人が本件商標「ESP」を本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、その指定商品中の「電子応用機械器具」について使用した事実を示す証拠と認めることはできず、他に、当該認定を覆すに足りる証左は見出せない。 してみると、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に、本件商標を取消請求に係る商品について使用していなかったものといわざるを得ない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第2項の規定により、これを取り消すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-10-23 |
結審通知日 | 2003-10-28 |
審決日 | 2003-11-11 |
出願番号 | 商願昭54-62325 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(111)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 市川 久雄 |
特許庁審判長 |
柴田 昭夫 |
特許庁審判官 |
鈴木 新五 山田 正樹 |
登録日 | 1982-08-27 |
登録番号 | 商標登録第1532426号(T1532426) |
商標の称呼 | イイエスピイ |
代理人 | 小川 勝男 |
代理人 | 金子 茂 |
代理人 | 加藤 義明 |