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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない 131
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 131
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない 131
管理番号 1093482 
審判番号 無効2000-35554 
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-04-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-10-13 
確定日 2004-03-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第2716783号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2716783号商標(以下、「本件商標」という。)は、「ナカモ西京」の文字を縦書きしてなり、昭和58年3月22日に登録出願、第31類「西京みそ」を指定商品として、平成8年10月31日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の無効理由に引用する登録第375707号商標(以下、「引用1商標」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、昭和22年2月26日に登録出願、第45類「白味噌」を指定商品として、同24年5月21日に設定登録されたものである。同じく、登録第1662528号商標(以下、「引用2商標」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、昭和56年3月10日に登録出願、第31類「みそ」を指定商品として、同59年2月23日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第981号証(枝番号を含む。)を提出した。
1.無効理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に該当する。
よって、本件商標の登録は同法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。
2.会社の沿革
請求人(株式会社本田味噌本店)の歴史は、初代、丹波屋茂助が京都御所の西、室町1条に、店舗を構え白味噌を中心とする京味噌の製造販売を行った。
今より約百七十年前、天保元年(1830年)に丹波屋茂助が、宮中の御料理用として献上したのが、京の白味噌と京の赤出しの起源である。
その後、慶応3年の東京遷都を契機に、東京に移住した公家から、西の都の代表的味噌の意を込めて、「西京みそ」と指定の注文がなされるようになったこと、また、一般の人々にも賞味されるに至り、当社の白味噌を御愛用の先々で「西京白味噌」、「西京白みそ」と愛称されるようになった。
そこで、西の都の代表的味噌の意を込めて「西京(さいきよう)」の商標を命名採用したことに始まり、以後製品の品質の向上並びに全国内的規模にわたる大々的な販売に力を注いだ結果、西京の白味噌として製造業者、卸業者等の関係業者は勿論のこと、一般消費者においても、広く知られるに至った。
また、「西京」印の白味噌を「西京白味噌」、「西京白みそ」として使用し、白味噌を主力商品として味噌の販売拡大のために、販売専門会社を昭和59年(1984年)2月2日に設立し、現在に至っている(甲第17号証、甲第143号証の1及び2)。
その間、明治16年(1883年)に商品拡大を図るため、分家として「のれん分け」を受けた本田芳太郎が、京都3条堀川にて店舗を開設して味噌醸造卸業を始めた。
昭和25年(1950年)に株式会社本田商店として法人組織に改称し、後に、株式会社本田味噌本店に平成4年(1992年)11月24日に吸収された(甲第28号証)。
昭和25年(1950年)に、それぞれが株式会社本田味噌本店及び株式会社本田商店を相次いで設立した頃には、すでに全国的に極めて著名なものとなっていた。
請求人等が、それぞれ会社設立以後も今日に至るまで、それぞれ販路及び販売量を拡張し、それに伴って多量の宣伝活動を行い、一方では互いに提携して統一ブランドの使用による品質向上と品質保証に努め、今日では白味噌と言えば「西京白味噌」と言われるほど取引者、需要者間に広く親しく知られ、かつ「西京白味噌」と言えば請求人等の製造販売に係るものとして取引者、需要者間に極めて著名となっているものである。
3.引用商標の周知著名性について
引用商標の使用の事実の証明は、雑誌、新聞等などに掲載及び新聞での広告宣伝の事実、取引の際に通常用いられる納品伝票、売上伝票、請求書、パンフレット、ラベル等の取引書類の呈示、その他引用商標の使用の事実が客観的に認められる甲各号証によって立証するものである。
4.商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標は、「ナカモ」の片仮名文字と「西京」の漢字とからなり、その態様において差異があり、またこの両文字が全体として特定の観念を有するものでもなく、必ずしもこれを一体不可分のものとしてのみ把握しなければならない特段の理由は見出し難いことから「ナカモ」の文字と「西京」の文字とは、それぞれ独立して自他商品の識別力を果たし得る文字とみるのが自然である。
しかして、本件商標は、構成全体として「ナカモサイキョウ」の称呼の他に、「ナカモ」の文字部分に相応する「ナカモ」の称呼及び「西京」の文字部分に相応する「サイキョウ」の称呼をも生ずるものである。
(2)引用1商標は、円輪郭内に「丹」の漢字を書してなる図形部分(以下、「マルタン」という。)と、その下に右から左へ漢字の「増味白京西」を横書きにした文字部分との組み合わせよりなるものであるが、この両部分は、常に一体のものとして把握しなければならない格別の理由も見出し難いところであるから、該文字部分も独立して、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである。
しかして、該文字部分の構成中の「白味噌(噌味白)」は指定商品との関係において、商品名(普通名称)を表したものと理解されるものである。
かかる構成にあって、引用1商標に接する取引者、需要者は、構成中の周知著名な「西京」の文字部分に着目し、これから生ずる「サイキョウ」の称呼をもって取引に当たる場合も少なくないとみるのが自然である。
してみれば、引用1商標は、単に「サイキョウ」の称呼をも生ずるものということができる。
(3)引用2商標は、太線及び細線からなる縦長の長方形内の上部に、「マルタン」と、その下に縦書きに「西京」の文字を顕著に表し、その読みを特定させた「さいきょう」の平仮名文字を小さく「西」と「京」の間に配した構成態様よりなるものであるところ、図形部分と文字部分の表現方法を異にする組み合わせからなるものであるが、その図形部分と文字部分とは、いづれも観念的な結び付きを有するものとして、常に一体的に把握し、理解されるものとはいえず、おのおのが分離して看者の注意を引くものである。
しかして、「西京」の文字部分は、この種同業者はもちろんのこと、一般消費者にもよく知られた「西京」の文字を表したものとして把握され、平仮名の「さいきょう」の文字は、漢字の「西京」の読みを特定したものとして理解されるものである。
かかる構成にあって、引用2商標に接する取引者、需要者は、構成中の周知著名な「西京」の文字部分に着目し、これから生ずる「サイキョウ」の称呼をもって取引に当たる場合も少なくないとみるのが自然である。
してみれば、引用2商標は、単に「サイキョウ」の称呼をも生ずるものということができる。
(4)してみれば、本件商標と引用各商標とは、「サイキョウ」の称呼を共通にする類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品と引用各商標の指定商品とは類似の商品である。
5.商標法第4条第1項第15号について
(1)引用各商標は、商標登録された以降、今日まで継続使用してきたものであり、その間、請求人は企業努力に努めた結果、需要者である製造業者、卸業者等の関係業者及び一般消費者が請求人の業務に係わる商品であることを把握することができる商標になっていた。
そうとすれば、請求人が、白味噌の商品について永年使用している「西京」の文字よりなる商標は、請求人の業務に係わる前記商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時には、取引者、需要者の間に広く知られるに至っていたものである。
(2)しかして、本件商標の構成は「ナカモ西京」の文字を縦書きにしたものであるところ、これが全体として格別の観念を生ずるものと理解し難いばかりでなく、前記したように「西京」の文字よりなる商標が著名であるという事情に鑑みれば味噌の取引者、需要者が本件商標に接した場合、その構成中の「西京」の文字部分に注意を強く引きつけられ、前記著名な商標を想起することも決して少なくないものである。
してみれば、本件商標の指定商品について使用した場合、該商品が恰も請求人又は請求人と関連のある者の業務に係わる商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせる恐れがある。
6.商標法第4条第1項第19号について
引用各商標は、本件商標の登録出願前から請求人の製造・販売に係る商品「白味噌」の商標として全国的に需要者間に広く知られるに至っていたものである。
被請求人は、引用各商標が周知著名性を獲得した後に登録出願したものであり、不正の目的をもって使用するものと推認せざるを得ない。
7.答弁に対する弁駁
(1)請求人は、本件商標の登録出願前に引用1商標及び引用2商標の登録を受けたものであって、それ以前は勿論のこと、その後も、商品「白味増」及び「みそ」に「西京」という語は、同業者または需要者は勿論、一般にも使用された事実はなく、商品「白味噌」の産地、販売地を表示するものとして普通に使用されている事実もなく、請求人のみが「西京」の商標を商品「白味噌」、「みそ」に継続して使用し、その間、新聞、雑誌等を利用して宣伝し、全国的に販売に務めた結果、その商品が日用必需の食品である特性と相俟って、本件商標の登録出願時には、既に「西京」は請求人の製造・販売に係る「白味噌」、「みそ」に使用する商標として取引者または一般消費者の間には広く知られるに至っており、「西京」の文字は、請求人の製造・販売に係る上記商品を他人の同種商品と区別する固有名称的な商標となるに至ったものであることは、請求人が提出した証拠により立証し得るものである。
(2)請求人が提出した甲第122号証ないし甲第132号証は、引用2商標の登録出願時以前に発行された印刷物であって、「西京白味噌」「西京味噌」等の記載は見当たらない。
また、本件商標の出願後に発行された印刷物の甲第133号証ないし甲第135号証にも「西京白味噌」、「西京味噌」等の記載は見当たらない。同一出版社であっても、乙第2号証の「国民百科辞典」には産地名と記載されているが、甲第134号証には、「西京白味噌」「西京味噌」の記載は見当たらない。
(3)請求人は、引用各商標を永年に亘る営業努力により、国内の取引者、一般の消費者の間で広く知られ、高級イメージを有する強力な顧客吸引力を取得した著名商標であるが、甲第30号証(昭和58年(1983年)8月5日付けの全国醸界新聞)に「ナカモ『西京白味噌』登録商標を無断使用」と大きく掲載されているように、被請求人が製造・販売した商品に付された標章は、請求人が使用している商標と酷似しているため、白味噌を購入した一般消費者のなかに、請求人の商品であると混同して購入した者もいた事実により、請求人の商品に対して消費者が抱いていた高級イメージが著しく損なわれ、請求人商品を買え控えるに至った消費者もいたであろうことは容易に推測し得るところである。被請求人の商品の標章表示が、請求人の商品の商標表示と酷似し、請求人の商品「白味噌」と混同されるおそれのあることを十分に承知のうえで故意に商品「白味噌」を製造・販売したことが窺えるものである。
(4)被請求人は、「西京」の文字が自他商品の識別標識としての機能を有する点については認められない、として、「西京」の文字は、京都の別称であり、「東京に対して京都のこと」を示すものとして用いられている。してがって、この土地名称に対して、自他商品の識別標識としての機能が生ずることはない、と主張している。
しかしながら、「西京」の文字が特定の地域を表わす地名ともいい難いものであり、かつ、指定商品「白味噌」の産地、販売地として知られているものともいい得ないところである。「白味噌」及び「みそ」を取扱う業界においても、「西京」の文字を商品の産地、販売地を表わすものとして普通に使用している事実は見出せないし、被請求人が本件商標登録出願をした以前においても、請求人以外のものは誰一人「西京」の文字を使用するものが見当たらないのは、請求人の所有する登録商標が存在するからである。
「西京」の文字は産地、販売地を表わすものでなく、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たしているものである。この種業界においては、「京都」を産地、販売地としているのは、一般的には「京」「京風」が用いられており、「西京」は見当たらない。
地名が産地、販売地に該当しない審決例を提出する(甲第971号ないし甲第978号証)

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第29号証を提出した。
1.商標法第4条第1項第11号について
「西京みそ」とは一般的には「京都産の白味噌」(甲第99号証)と理解されており、また「京都地方でつくられる白味噌」(甲第91号証及び甲第95号証等)とも理解されている。この点、本件商標に係る昭和63年審判第11707号審決書(乙第1号証)においても同旨の認定がなされている。
したがって、指定商品「西京みそ」について、「西の都、京都」の異称として知られ、親しまれている「西京」の文字を含む本件商標「ナカモ西京」を需要者が認識するにあたっては、産地名を意味する「西京」の文字は自他商品識別力が弱く、要部と見ることは出来ないので、結局、要部としては、「味噌」の業界において周知著名な「ナカモ」の標章が識別力の拠り所として認識されると判断するのが妥当である。
一方、引用1商標及び引用2商標は、ともに、「マルタン」と「西の都、京都」の異称として知られ、親しまれている「西京」の文字を有するものである。
したがって、「西京」の文字を、商品「味噌」に付して用いる場合には、「京都産の白味噌」等、味噌の産地を表すものとして認識されるものであるから、「西京」の文字は、自他商品識別力が弱く、これを要部と見ることは出来ないので、結局、要部としては、この分野において周知著名な「マルタン」」の標章が自他商品識別力として需要者には認識されるものと判断すべきである。
さらに、商品「味噌」に、「西京」の文字と共に、顕著な特徴を有する「マルタン」が付されている場合、需要者がその創造的な「マルタン」の部分を無視して、「味噌の産地を表すもの」として理解される「西京」の文字を抜き出し、自他商品識別力の要部と認識するというような特段の事情もない。
また、国民に広く愛用されている広辞苑第五版の「西京味噌」(甲第99号証)の説明からもこれらの事項は明らかであるが、需要者である「レシピ」の世界においても、「西京みそ」は、産地名称が付されている信州味噌(長野県で生産される、色の淡い辛口のみそ。)、仙台味噌(仙台地方で製する赤味噌の一種。赤褐色の辛味増)、八丁味噌(愛知県岡崎市八丁町から産出され始めた味噌)等の産地名に基づいて付された名前の味噌と同様に、商品「味噌」の分野においては、「西京」の文字は「京都産の味噌」を認識するものとして需要者には認識されるのが実情である。
以上のような事情からして、本件商標は、請求人が引用する引用1商標及び引用2商標に類似する商標でもないから、結局、商標法第4条第1項第11号には該当しないのである。
2.商標法第4条第1項第15号について
請求人の業務に係わる「味噌」に関しては、請求人の販売所の入口に吊り下げられている「のれん」に対しても、更には商品「味噌」の容器、特に小口の「袋容器」及び「地方発送用の樽容器」に対しても、夫々、「京都産の味噌」を表示する「西京」の文字の頭部に、特徴のある創造的な円輪郭内に「丹」の文字を書した標章を要部とする標章が自他商品識別標章として付されている(甲第4号証、甲第6号証ないし甲第8号証、甲第10号証、甲第12号証及び甲第13号証)。
一方、本件商標は、「ナカモ西京」の文字を縦書に書してなるものであり、自他商品識別力が顕著な「ナカモ」の標章の後に、味噌の産地を表すものとして認識される「西京」の文字を表示するものである。
したがって、需要者が、本件商標である「ナカモ西京」が付されている商品「味噌」と、他人の業務に係る「マルタン西京」の標章が付されている商品「味噌」に接し、商品の出所を認識する場合において、自他商品識別力が顕著な「ナカモ」の文字を含む本件商標と、自他商品識別力が顕著で、かつ、特徴のある「マルタン」の文字を含む著名な引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点から総合的に判断しても、同一でもなければ、又類似するものではない。
このように、本件商標である「ナカモ西京」が付されている商品「味噌」と、他人の業務に係る「マルタン西京」の標章が付されている商品「味噌」とは、需要者が出所について誤認混同する根拠はなく、また誤認混同をもたらすという特段の理由もない。また、経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品と誤認されるという根拠もなく、需要者が商品の出所について混同するという特段の理由もない。
3.商標法第4条第1項第19号について
請求人の業務に係わる「味噌」に関しては、請求人の販売所の入口に吊り下げられている「のれん」に対しても、更には商品「味噌」の容器、特に小口の「袋容器」及び「地方発送用の樽容器」に対しても、夫々、「京都産の味噌」を表示する「西京」の文字と共に、特徴のある創造的な「マルタン」の標章を要部とする標章が自他商品識別標章として付されている(甲第4号証、甲第6号証ないし甲第8号証、甲第10号証、甲第12号証及び甲第13号証等)
しかも、請求人の業務に関わる商品「味噌」の容器に付されている商標は、産地を表示する「西京」の文字と共に、特徴のある創造的な「マルタン」の標章を要部とする構成上顕著な特徴を有する標章が自他商品識別標章として付されている。一方、本件商標は、「味噌の産地を表す」ものとして認識される「西京」の文字と共に、前記の「創造的な「マルタン」の標章を要部とする構成上顕著な特徴を有する標章」とは明確に区別ができるように、自他商品識別力が顕著な「ナカモ」の標章を明確に表示するものであるから、不正の目的をもって使用するものと認定することは妥当性を欠くことになる。
4.むすび
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同15号及び同19号に該当するものではない。

第 5 当審の判断
1.商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「ナカモ西京」の文字よりなり、第31類「西京みそ」を指定商品とすることは前記したとおりである。
しかして、被請求人の提出した乙各号証によれば、次の事実が認められる。
(1)国民百科事典「1979年平凡社発行」(乙第2号証)には、「・・・また産地名をとって仙台みそ、江戸みそ、信州みそ、西京みそなどと呼ばれ・・・と記載され、みその種類の項にも「西京みそ」の文字が記載使用されていること。
(2)魚菜料理大辞典「昭和52年9月20日魚菜学園出版局発行(乙第3号証)には、「西京みそ:関西地方で多く使われているみそで、塩味が弱くて甘みが強いのが特徴。色は白い近い淡黄色をしている。」と記載されていること。
(3)大日本百科事典ジャポニカ「昭和44年2月25日小学館発行」(乙第4号証)には、「西京味噌:別名白みそ早みそともよばれ、おもに関西地方でつくられる。」と記載されていること。
(4)日本国語大辞典「昭和56年9月20日小学館発行」(乙5号証)の「西京」の項には、「西京味噌:都風邪の甘みの強い白みそで、京都に産する。」と記載されていること。
(5)その他、雑誌、新聞(乙第6号証ないし乙第20号証)等にも「西京みそ」文字は、前記した乙各号証と同様の意味で多数掲載使用されていることが認められる。
上記実情よりすれば、本件商標を構成する「西京」及び引用1商標を構成する右書きされた「京西」、引用2商標を構成する「西京」、「さいきょう」の文字部分は、本件商標の登録出願時において、商品「西京みそ」若しくは「京都地方」を容易に認識、理解されるものであり、商品「みそ」の品質、産地を表示したものと看取されるから、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと判断するのが相当である。
してみれば、本件商標は、「ナカモ西京」の文字に相応し、「ナカモサイキョウ」の称呼のほか「ナカモ」の文字に相応し、「ナカモ」の称呼をも生ずるものであり、他方、引用1商標は、マルタンの部分と「西京白味噌」(右書きしてなる。)の文字よりなるものであるから、全体の文字に相応し、「マルタンサイキョウシロミソ」の称呼のほか「マルタン」の部分より「マルタン」の称呼をも生じ、引用2商標は、「マルタン」の部分と「西京」、「さいきょう」の文字よりなるものであるから、全体の文字に相応し、「マルタンサイキョウ」の称呼を生ずるほか、「マルタン」の部分より「マルタン」の称呼をも生ずるとしても、本件商標を構成する「西京」及び引用1商標を構成する「西京白味噌」、引用2商標を構成する「西京」、「さいきょう」の文字部分より称ずる称呼のみをもつて、商取引に資するものとはいえないものである。
そうとすれば、本件商標及び引用各商標とは、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない「西京」、「さいきょう」の文字部分のみより生ずる「サイキョウ」称呼をもって類似の商標ということはできない。
また、外観、観念において類似のものとする理由は見いだし得ない。
したがって、本件商標と引用各商標とは、その称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標といわざるを得ない。
2.商標法第4条第1項第15号について
請求人の提出した、甲各号証(使用の事実を示す証拠等)に徴すれば、引用1商標及び引用2商標は、その構成全体をもって、商品「みそ」に使用された結果、本件商標の登録出願時には広く知られ周知著名であり、その著名性は登録時においても継続していたとしても、前記1.で判断し、認定したとおり、本件商標と引用各商標とは、その称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標であり、別異の商標と認識、理解されることは前記のとおりである。また、請求人は、「西京」又は「西京みそ」の文字のみを使用し、周知著名である事実は見あたらない。
してみれば、本件商標をその指定商品に使用するとしても、取引者、需要者が引用各商標を想起し、また、経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同するおそれはないものというのが相当である。
3.商標法第4条第1項第19号について
本件商標と引用各商標とは、その称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標であることは、前記したとおりである。この点において、請求人は、『引用各商標は、本件商標の登録出願前から請求人の製造・販売に係る商品「白味噌」の商標として全国的に需要者間に広く知られるに至っていたものである。そして、被請求人は、引用各商標が周知著名性を獲得した後に登録出願したものであり、不正の目的をもって使用するものと推認せざるを得ない。』と述べているが、「西京」の文字部分は、前記1.で判断し、認定したとおりである。
してみれば、本件商標は、「西京」の文字を有するとしても、不正の目的をもって使用するものということはできない。
4.結語
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同15号及び同19号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する
別掲 引用1商標


引用2商標


審理終結日 2002-02-18 
結審通知日 2002-02-21 
審決日 2002-03-06 
出願番号 商願昭58-25099 
審決分類 T 1 11・ 26- Y (131)
T 1 11・ 271- Y (131)
T 1 11・ 222- Y (131)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 欽五 
特許庁審判長 小松 裕
特許庁審判官 高野 義三
前山 るり子
登録日 1996-10-31 
登録番号 商標登録第2716783号(T2716783) 
商標の称呼 ナカモサイキョウ、ナカモ 
代理人 山下 信子 
代理人 鹿谷 俊夫 
代理人 佐竹 弘 
代理人 中島 知子 

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