• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z09
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない Z09
審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない Z09
管理番号 1088452 
審判番号 不服2001-6504 
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-24 
確定日 2003-11-19 
事件の表示 平成10年商標登録願第104235号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「瞬時電圧低下保護装置」の文字(標準文字)を横書きしてなり、第9類の願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成10年12月4日に登録出願、その後、平成12年1月19日付けをもって手続補正書の提出があり、その指定商品が第9類「配電用又は制御用の機械器具」に補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『瞬時電圧低下保護装置』の文字を普通に用いられる方法で書してなるから、これよりは全体として『瞬時に電圧が低下したときに保護する装置』程度の意を容易に認識させるから、これを指定商品中、上記に照応する商品、或いは、これを構成品とする商品に使用しても、商品の品質、機能、用途等を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨、さらには、「本願商標が商標法第3条第2項に該当するものとなっているとはいまだ認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)本願商標は、「瞬時電圧低下保護装置」の文字よりなり、第9類「配電用又は制御用の機械器具」を指定商品とするものであるところ、その指定商品を取り扱う業界においては、近年、落雷等による瞬時の電圧低下からコンピュータをはじめとする各種システム機器等を保護するための装置の開発や取引が盛んに行われている実状があるところである。このことは、各種新聞記事をみても、例えば、2002年6月21日付け「日刊工業新聞」13頁には、「神鋼、ソニーセミコン九州から大規模UPS20台を受注」の見出しの下に「神戸製鋼所は20日、ソニーセミコンダクター九州から高圧大容量の無停電電源装置(UPS)20台を受注、納入したと発表した。落雷など瞬時の電圧低下に備え、総容量1万6700キロボルトアンぺアの負荷をバックアップする大規模UPSで、受注額は20億円。従来のバッテリー式UPSに比べ、全ラインの電圧低下を一括保護できる。」と、2002年3月27日付け「日本工業新聞」5頁には、「三菱電機 高圧瞬低補償装置開発 工場丸ごとバックアップ」の見出しの下に「三菱電機は、落雷などによる電力系統の瞬時電圧低下(瞬低)から情報システムなどを保護する高圧瞬低補償装置を開発、四月一日に発売する。補償容量は最大で業界初の一万キロボルトアンペアと、工場全体を丸ごとバックアップできる特徴をもつ。同装置は高速遮断器とコンバーターで構成。」と、1999年4月4日付け「日経産業新聞」6頁には、「ネミック・ラムダ、無停電電源装置など参入、英社から3分野移管。」の見出しの下に「無停電電源装置は停電や落雷などから電子機器を守る装置で、パソコンから産業用各種装置まで幅広く使う。ネミックが総販売元となり、米エキサイド・エレクトロニクス・グループの製品を販売。九九年度に十億円、二〇〇二年三月期に百億円の売上高を見込む。ネミックは瞬時電圧低下保護装置を開発・販売しており、無停電電源装置と併せ、総合的な保護装置ビジネスを展開する。」と、1993年7月15日付け「日本経済新聞(地方経済面)」12頁には、「落雷など電圧低下回避、四国総研と明電舎――自家発電向け新装置。」の見出しの下に「四国総合研究所(高松市、~社長)と明電舎は共同で、落雷などによる瞬時電圧低下の影響を回避できる装置を開発した。自家発電設備を持つ大規模工場などの需要を見込んでいる。自家発電と電力会社の系統との間を半導体開閉器により瞬時に遮断して、停電時に重要機器を保護する。明電舎によると、こうした装置の開発は業界で初めて。」と、1993年4月5日付け「日本工業新聞」4頁には、「米ノベル社のネットワークOSに対応 YUASAのUPS」見出しの下に「YUASA(社長~)は、同社製UPS(無停電電源装置)が米国ノベル社のネットワークOS(基本ソフト)『NetWare』の対応機器として認定を受けた。・・・ノベル社の『NetWare』のUPSモニタリング機能に対応しており、停電瞬時の電圧低下や電源変動などのトラブルからネットワーク機器を保護する。」と、1993年2月8日付け「日刊工業新聞」15頁には、「不測の電源トラブルに対応/無停電電源装置―幅広い分野で活躍、軒並みシリーズ化競う」の見出しの下に「コンピューターなどは電源変動に極めて敏感で、われわれの気づかない瞬時電圧低下(瞬低)と呼ばれる現象が問題となっている。電力系統では落雷や台風のため予期せぬ故障が発生することがある。この場合、故障個所は保護リレーと遮断機により自動的に切り離されるが、最短でも七十ミリ秒程度の時間が必要で、故障個所を中心に電力系統の広い範囲で瞬低が生じることになる。・・・瞬低は電圧低下度が大きく、継続時間が長くなるほど多くの機器に影響する。・・・産業用だけでなくエレベーターにも用いられている可変速モーターは装置保護のため二〇%程度以上の電圧低下が十ミリ秒程度以上継続すると自動停止する。大型コンピューターや制御用コンピューターも計算ミスや制御ミスを避けるため、一〇~二〇%以上の電圧低下が三~二十ミリ秒以上継続すると自動停止するシステムとなっており、瞬低対策が不可欠である。」と、1992年2月18日付け「化学工業日報」10頁には、「東京電力、ソーラー発電の系統連係システム開発に注力」の見出しの下に「東電は自社の電気系統を修理のために止めている時、消費者が単独運転することによって起こるサービスマンの人身事故をもっとも恐れている。瞬間的な電圧低下や短絡など、起こり得る事故はすべて実験していく。そうして得たデータを下に保護装置を開発するという。」と、1991年8月27日付け「日刊工業新聞」10頁には、「高岳製作所、仙台北部中核団地にハイテク製品の量産工場完成」の見出しの下に「ここでは瞬時電圧低下や瞬時停電などからエレクトロニクス機器をバックアップするUPS、CVCF、VVVFをはじめ、メンテナンスフリーを志向した開閉装置の縮小型ミニクラッド、それに変電所の各機器の保護制御をデジタル処理と光伝送で処理する配電用保護制御装置、保護継電器などを生産する。」と、1990年8月29日付け「日刊工業新聞」31頁には、「北陸電、避雷器でコンピューター保護。まず、テクノポート福井に設置」の見出しの下に「北陸電力(社長~)は福井県の臨海工業団地、テクノポート福井の立地企業を対象に、落雷によるコンピューター制御機器への影響を防止するため鉄塔十カ所に送電用アレスター(避雷器)を設置する。コンピューターにとって“大敵”である『瞬時電圧低下』の発生を極力なくすのが狙いで、冬の落雷シーズンまでにはすべて据え付けたい考え。コンピューターへの影響を防止するために本格的に鉄塔にアレスターを取り付けるのは北陸電が初めて。アレスターは落雷による大電流を直接、地面に逃がすことで送電線へ流れるのを防止する装置。」と、1990年6月14日付け「日刊工業新聞」19頁には、「関電など、フライホイール式の無停電電源装置を共同開発。短時間に大電力放出」の見出しの下に「関西電力(社長~)と三菱電機(社長~)は、長岡技術科学大学(新潟県長岡市)と共同でフライホイール(はずみ車)式の「無停電電源装置=写真」(単相百V・五キロVA)を開発した。一年間フィールドテストを行い商品化の予定。無停電電源装置は、電力系統の事故時(瞬間的な電圧低下など)にコンピューター機器類への影響を防ぎ、保護するためのもの。」と、1988年3月16日付け「毎日新聞(東京朝刊)」8頁には、「落雷停電からコンピュータを守る電圧改善装置を電力研が開発」の見出しの下に「電力中央研究所は、落雷などによる瞬時の電圧低下からコンピューターを守る電圧低下改善装置を十五日までに開発した。・・・コンピューターは、電圧が低下すると〇・〇五秒程度で記憶装置に支障が出るため、現行の保護装置はバッテリーを使用して安定した電源を確保している。これに対して、今回開発された新装置は特殊な変圧器と半導体スイッチなどを利用して電圧低下の幅を瞬時に検出、その低下幅に応じて電圧をアップできるようにした。」と、1984年10月3日付け「日経産業新聞」10頁には、「高見沢サイバネティックス、電源変動によるパソコンの異常防止装置を開発。」の見出しの下に「同社はこれまで鉄道駅務機器などの分野で瞬時の停電や電圧低下といった電源変動から各種機器の機能を保護する装置の開発にあたってきた。今回開発した製品はパソコンに焦点を絞り、低価格を実現したのが大きな特徴。」と記載されていることからも裏付けられるところである。
そして、本願商標の指定商品には、このような瞬時の電圧低下に対応して送電や配電を制御してシステム機器等を保護する装置自体、さらには、上記新聞記事にもあるような同装置を構成する構成品(又は部品)となり得る遮断機、開閉器、継電器、避雷器等の商品が含まれていることからすると、かかる実状の下では、本願商標は、取引者、需要者をして、本願商標を構成する各漢字の意味合いを踏まえれば、「瞬時の電圧低下からの保護装置」程度の意味合いを容易に理解させるといえることから、これを、その指定商品中、同保護装置自体に使用するときは、その商品が「瞬時の電圧低下からの保護装置」である旨の商品の機能、品質を表示するものとして、また、同保護装置の部品又は構成品となる商品に使用するときは、該保護装置用の商品である旨の商品の用途を表示するものとして認識されるにとどまるものといえる。
しかも、請求人(出願人)は、平成12年1月19日付けの意見書や、本件審判請求の理由においても、商標法第3条第2項の適用を主張するのみで、商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号に該当すること自体には反論するところがない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、その指定商品中、上記保護装置又はその部品若しくは構成品以外の商品に使用するときは、上記の保護装置又はその部品若しくは構成品であるかの如く商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあることから、商標法第4条第1項第16号に該当するものである。
(2)請求人(出願人)は、商標法第3条第2項の適用を主張し、平成13年1月17日付け上申書、平成13年2月2日付け上申書及び平成13年2月9日付け上申書をもって、添付資料1ないし8として「証明書」なる書面を提出しているので、次に、同項の適用の可否について検討する。
請求人(出願人)が提出した資料のうち、添付資料1ないし5は、いずれも別紙として添付されたカタログ又はパンフレットの製作受注日、納品日及び納品数を証明する内容にとどまるものであり、実際に如何なる者にどの程度の量が頒布されたのかさえ明らかになっていないものであるから、これをもって「瞬時電圧低下保護装置」の文字が取引者、需要者の間において周知となっているということはできない。まして、別紙として添付されたカタログ又はパンフレットをみると、そこに表示されている「瞬時電圧低下保護装置」の文字は、「瞬時電圧低下対策のおすすめ」、「瞬時電圧低下を保護するための専用電源」、「350ms瞬時電圧低下と瞬時電断を保護」、「瞬時電圧低下とその影響」、「落雷による350msの瞬時電圧低下に伴う損害から守る。」、「これで安心!雷による電気の瞬きを防ぎます。」など、上記(1)で本願商標より看取されるとした「瞬時の電圧低下からの保護装置」の意味合いを裏付けるともいえる語句とともに表示されているものであるから、このような表示態様からすると、取引者、需要者は、「瞬時電圧低下保護装置」の文字について、「瞬時の電圧低下からの保護装置」であるとの機能や品質を表示するものとして認識したり、商品の名称を表示するものとして認識することはあっても、これをもって、商品の出所の識別標識として認識するに至るとはいうことができないものである。
また、添付資料6ないし8は、いずれも、「証明書」の表題の下に「下記商標『瞬時電圧低下保護装置』は、デンセイ・ラムダ株式会社が平成5年以来、商品『配電用又は制御用の機械器具』に使用した結果、現在では需要者がデンセイ・ラムダ株式会社の業務に係るものであることが広く認識できることを証明下さるようにお願いいたします。」の文言があり、さらに、その下に「上記の通り相違なきことを証明する。」の文言があり、証明者が記名、押印するだけの定型文にすぎないものである。そうすると、これらの書面は、主観的な結論だけを定型的に述べるにとどまるものであって、証明者が如何なる事実に基づき、書面に記載された内容を証明しているのか、その客観的事実を示す根拠や判断の過程は何ら明らかにされていないものであるから、結局、証拠力に乏しい書面といわざるを得ないものであり、その書面の事実評価を直ちに採用することはできない。
さらに、商標法第3条第2項により商標登録を受けることができるのは、商標が特定の商品につき同項所定の要件を充足するに至った場合、その特定の商品を指定商品とするときに限られるのであり、出願商標の指定商品中の一部に登録を受けることができないものがあれば、その出願は全体として登録を受けることができないところである(昭和58年(行ケ)第156号判決:東京高裁昭和59年9月26日判決言渡、平成2年(行ケ)第103号判決:東京高裁平成3年1月29日判決言渡等を参照。)。しかし、添付資料1ないし5に附属のカタログ又はパンフレットによれば、本願商標は、瞬時の電圧低下からコンピューターや制御機器、モーターなどの動力機器、真空装置、生産ラインなどを保護する保護装置に使用されている程度のことは認め得るとしても、それ以外の指定商品については、その使用の事実さえ明らかになっていないのであるから、この点においても、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を満たしているということができないものである。
したがって、請求人(出願人)提出の資料をもってしても、本願商標を商標法第3条第2項により商標登録を受けることができる商標ということはできない。
(3)以上のとおりであるから、本願商標について、商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号に該当し、同法第3条第2項に該当するものともなっていないとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であり、取り消すことができない。
なお、請求人(出願人)は、本件審判請求の理由において、本願商標が使用による識別力を有するに至っていることを証明する資料を収集中であるとして、審理の猶予を求めているが、審判請求後、既に2年以上の期間を経過しているにもかかわらず、何らそのための資料を追加するところがないことから、審理を終結し、審決することとした。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-09-16 
結審通知日 2003-09-22 
審決日 2003-10-06 
出願番号 商願平10-104235 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z09)
T 1 8・ 17- Z (Z09)
T 1 8・ 272- Z (Z09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富田 領一郎橋本 浩子 
特許庁審判長 小林 薫
特許庁審判官 林 栄二
岩崎 良子
商標の称呼 シュンジデンアツテイカホゴソーチ 
代理人 牛木 護 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ