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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 128 |
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管理番号 | 1088298 |
審判番号 | 取消2002-31418 |
総通号数 | 49 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2004-01-30 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2002-12-06 |
確定日 | 2003-11-10 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2248792号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2248792号商標(以下「本件商標」という。)は、「半世紀」の漢字を縦書きしてなり、第28類「酒類(薬用酒を除く)」を指定商品として、昭和63年5月18日登録出願、平成2年7月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 第2 請求人の主張 請求人は、「本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 1.請求の理由 本件商標は、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかにより、継続して3年以上日本国内において使用されていないのみならず、本件商標を使用していないことについて正当な理由が存することも認められない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消されるべきである。 2.答弁に対する弁駁 (1)乙第1号証、乙第3号証及び乙第4号証から、被請求人が兵庫県姫路市広畑区本町三丁目583番に所在の田中酒造場の代表者であるということは認められるが、以下(2)ないし(4)のとおり、乙第2号証及び乙第5号証ないし乙第8号証のいずれによっても、商標権者が本件商標を使用に係る商品「清酒」(以下「使用商品」という。)について、本件審判請求の予告登録の日(平成15年1月8日)より前3年以内に使用された事実は立証されていない。 (2)被請求人は、「使用商品は、50歳を迎える人のお祝いや、会社などが50周年の記念式典をする際に用いられる酒であり、常に店舗に在庫のある酒ではなく、特別に醸造した酒を注文を受けた際に瓶詰めして販売する酒である。ゆえに、その販売数量は決して多いものではない」と主張するが、その事実を証明する客観的な証拠は一切提示されておらず、被請求人のこの主張を認めることはできない。 また、還暦や喜寿、米寿などを祝うという風習は一般的に広くみられるが、50歳の祝いというのは一般的にあまり耳にせず、このような被請求人の答弁はその場しのぎの方便と断ぜざるを得ない。 (3)乙第2号証(清酒の写真)について 乙第2号証からは、ある一時期に田中酒造場が「半世紀」という清酒(使用商品)を製造していたことは認められるが、製造年月日などの記載がないため、乙第2号証は、商標権者が本件商標を使用商品について、本件審判請求の予告登録の日(平成15年1月8日)より前3年以内に使用された事実を立証するものではない。 (4)乙第5号証ないし乙第8号証(物品受領書)について 乙第5号証ないし乙第8号証は、すべて「清酒 大吟醸 白鷺の城 半世紀 720」なる商品を受け渡したという物品受領書であるが、これらの物品受領書は、以下の理由によって証拠としての適正を欠くものであり、商標権者が本件商標を使用商品について、本件審判請求の予告登録の日より前3年以内に使用された事実を立証するものではない。 ア.乙第5号証は、受取人を「篠田」とするものであり、これによれば、0年10月6日に「小売A」として篠田なる人物に「清酒 大吟醸 白鷺の城 半世紀 720」なる商品を受け渡したとなっている。この記載が平成元年を示すのか、西暦2000年を示すものであるのかも不明であり、その上、この篠田なる人物の名が記されておらず、住所の記載もなければ、受領した日付の記載もないものである。しかも、受領印は、既製の印鑑で押印されたものであり、本件事案に対する証拠としての能力はないといわざるを得ないものである。 イ.乙第6号証は、受取人を「松井」とする物品受領書である。乙第5号証と同様に年月の記載が曖昧であり、松井なる人物の名、住所、受領日の記載も無いものであり、本件事案に対する証拠としての能力はないといわざるを得ない。 ウ.乙第7号証は、受取人の姓の記載すらなく、その証拠能力を論ずるまでもない。 エ.乙第8号証は、「自家用」として被請求人又はその親族が受取人となっているが、これは証拠としての客観性を著しく欠くものであり、本件事案に対する証拠としての能力はないといわざるを得ない。 オ.乙第5号証ないし乙第7号証の右上「お得意先コード」の欄には「00000556」のコードがあるが、乙第8号証の同欄には「00000555」のコードが記載されている。本来得意先コードというものは、顧客の管理や分類のために用いるものであり、顧客ごとに別の番号が割り振られるべきものであるところ、乙第5号証ないし乙第7号証は、「篠田」、「松井」など別の顧客に物品を引き渡したことになっているにもかかわらず、同じコードが記載されている。 第3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。 1.被請求人は、本件商標の前商標権者であった田中龍三の死亡により、本件商標を相続した商標権者であり、兵庫県姫路市広畑区本町3丁目583番地に所在の田中酒造場の当主(代表者)である。 2.使用の事実について (1)乙第2号証(「半世紀」と縦書きされたラベルが貼付されている清酒の写真2葉)からは、使用商品に商標「半世紀」が使用されていること、使用商品の醸造元の表示として「醸造元 田中酒造場」の文字が記載されていることが確認できる。 そして、田中酒造場の当主(代表者)は被請求人であるから、乙第2号証は、商標権者である被請求人が使用商品について商標「半世紀」を使用していたことを明らかにするものである。 被請求人が田中酒造場の当主(代表者)であることは、乙第3号証(平成14年7月社団法人神戸経済同友会発行「神戸経済同友会要覧」107頁)に、田中酒造場の専務取締役として田中康博の住所等が掲載されていること、及び乙第4号証(清酒の包装箱の写真)に、清酒「白鷺の城」、「名刀正宗」、「亀の甲」の「醸造元 田中酒造場」の左に「当主 田中康博」として被請求人の氏名が表示されていることから明らかである。 なお、乙第3号証では田中康博の肩書きは専務取締役と表示されているが、これは以前の肩書きであり、現在の対外的な肩書きは乙第4号証に見られるとおり「当主」であり、被請求人は田中酒造場の代表者である。 (2)使用商品は、50歳を迎える人のお祝いや、会社などが50周年の記念式典をする際に用いられる酒であり、常に店舗に在庫のある酒でなく、特別に醸造した酒を注文を受けた際に瓶詰めして販売する酒である。ゆえに、その販売数量は決して多いものではないが、商標法第50条第2項に定められる期間内に、使用商品の注文を受け、これを販売した。 係る事実は、平成12年(2000年)10月6日付物品受領書(乙第5号証)、平成13年(2001年)4月27日付物品受領書(乙第6号証)、平成14年(2002年)10月1日付物品受領書(乙第7号証)、平成14年(2002年)10月18日付物品受領書(乙第8号証)の「商品名」の欄に「清酒 大吟醸 白鷺の城 半世紀 720」と記載されていること、及び各受領書の日付けより明らかである。 3.以上のとおり、被請求人は、本件審判請求の予告登録の日(平成15年1月8日)より前3年以内に、自己の業務に係る商品「清酒」について商標「半世紀」を使用しているから、本件商標は、商標法第50条の規定により、取り消されるものではない。 第4 当審の判断 1.被請求人が本件商標の商標権者であり、兵庫県姫路市広畑区本町3丁目583番地所在の田中酒造場の当主(代表者)であること、使用に係る商標が本件商標と社会通念上同一の範囲内の商標であること、使用商品が本件商標の指定商品中に含まれるものであることについては、当事者間に争いがない。 そこで、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が本件商標の指定商品中に含まれる使用商品について、本件審判の請求の登録日(平成15年1月8日)前3年以内に、商標権者若しくは使用権者により使用されていたかについて検討する。 2.乙第2号証ないし乙第8号証によれば、以下の事実が認められる。 (1)乙第2号証は、清酒の写真2葉であるところ、該清酒には、「限定酒」の文字を縦書きした楕円形のラベルが包装瓶の上部に貼付され、同包装瓶の胴部には、中央に「半世紀」の文字を大きく縦書きし、その左に「限定醸造」の文字を縦書きし、また、下部に「白鷺の城」、「名刀正宗」、「醸造元」、「田中酒造場」等の文字を横書きにした四角形のラベルが貼付されている。 (2)乙第3号証は、「神戸経済同友会要覧」(社団法人神戸経済同友会、平成14年7月発行)であるところ、その107頁には、「田中康博 田中酒造場 専務取締役」、「姫路市広畑区本町3-583」などの記載がある。 (3)乙第4号証は、酒の包装箱と認められるところ、その側面には、縦書きした「白鷺の城」、「名刀正宗」、「亀の甲」、「兵庫県姫路市広畑区本町三丁目五八三」、「醸造元」、「田中酒造場」、「当主 田中康博」(「当」は旧字体)等の文字の記載がある。 (4)乙第5号証ないし乙第8号証は、いずれも物品受領書であるところ、これらの書類には、いずれも発行者として「醸造元 田中酒造場」、「〒671-1114 姫路市広畑区本町三丁目583」等の記載があり、「商品名」欄には、「清酒 大吟醸 白鷺の城 半世紀 720」の記載がある。 また、発行日として、それぞれ「0年10月6日」(乙第5号証)、「1年4月27日」(乙第6号証)、「2年10月1日」(乙第7号証)、「2年10月18日」(乙第8号証)の記載がある。さらに、顧客名として、それぞれ「篠田様」(乙第5号証)、「松井様」(乙第6号証)、「田中(自家用)様」(乙第8号証)の記載があり、「受領欄」には、乙第5号証及び乙第6号証には、それぞれ「篠田」、「松井」の文字のある印鑑が押され、乙第7号証には、丸で囲んだ手書きの「平安」の文字が記載されている。 2.前記1.で認定した事実及び答弁の理由を総合すると、田中酒造場は、本件商標と社会通念上同一と認められる「半世紀」の商標を請求に係る指定商品中の「清酒」について使用し、50歳を迎える人のお祝いや、会社などが50周年の記念式典をする際に、該清酒を限定的に販売していたことが認められる。そして、本件審判の請求の登録前3年以内においても、上記清酒が取り引きされたことは、物品受領書の発行日(2001年4月27日(乙第5号証)、2002年10月1日(乙第6号証)、2002年10月1日(乙第7号証)、2002年10月18日(乙第8号証))から認めることができる。また、田中酒造場は、その代表者を本件商標権者である被請求人とするものであるから、被請求人より黙示的に本件商標の商標権についての通常使用権を許諾されていたものとみて差し支えないものである。(この点に関して、請求人は争うところはない。) そうすると、通常使用権者である田中酒造場は、本件審判の請求の登録日(平成15年(2003年)1月8日)前3年以内に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を清酒に表示し、使用していたと推認することができ、これに反する事実を認めるに足る証拠は見出せない。 3.請求人の主張について (1)乙第2号証について 請求人は、乙第2号証には、製造年月日などの記載がないため、商標権者が本件商標を「清酒」について、本件審判請求の予告登録の日(平成15年1月8日)より前3年以内に使用された事実を立証するものではない旨主張する。 しかし、乙第2号証に製造年月日の記載がなく、本件審判の請求の登録前3年以内の使用であるか否かが確認できないとしても、乙第2号証は、本件商標、ないしこれと社会通念上同一と認められる商標の使用態様を明確にしたものであり、乙第2号証及び乙第5号証ないし乙第8号証(物品受領書)を総合すれば、前記2.で認定したとおり、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が本件審判の請求の登録前3年以内に通常使用権者により使用されていたことが明らかである。 (2)乙第5号証ないし乙第8号証(物品受領書)について 請求人は、乙第5号証ないし乙第8号証に記載された発行日が不明であるから、本件商標の使用事実を証明する証拠として適格性を欠くものである旨主張する。 しかしながら、物品受領書には、通常使用権者の名称とともに、「〒671-1114」の郵便番号が記載されているところ、郵便番号が3桁から7桁に変更された日付は、平成10年2月2日であるところからすると、例えば、「0年10月6日」(乙第5号証)が平成元年を表すものではなく、西暦で表記されていることは明らかである。このことは乙第6号証ないし乙第8号証も、同様に解することができる。 また、請求人は、顧客欄には、名前、住所、受領した日付の記載等もなく、「お得意先コード」は、乙第5号証ないし乙第7号証が同一のコードが付されているなどと主張する。 しかし、使用商品は、50歳を迎える人のお祝いや、会社などが50周年の記念式典をする際に、限定的に販売していた商品であることからすれば、その取引書類にあっても、常に確立された様式のもとで発行されるとは考えにくく、例えば、領収書等に「上様」と記載する場合が多いことも併せ考えると、必ずしもこれら物品受領書が、通常の商取引に用いられる取引書類と比べて大きくかけ離れ、極めて不自然であるということもできない。 さらに、請求人は、乙第8号証につき、「自家用」として被請求人又はその親族が受取人となっているものであるから、証拠としての客観性を著しく欠くものである旨主張する。 しかし、乙第8号証に「田中(自家用)様」の表示があるとしても、商標権者が個人として通常使用権者から購入したものとも考えられ、「物品受領書」を作成すること自体、通常使用権者は、業として使用商品を販売したものと推認することができ、これを否定する証拠は見出せない。 (3)したがって、上記(1)及び(2)に関する請求人の主張は、いずれも理由がない。その他、本件商標の使用事実に関する請求人の主張は、これを裏付ける証拠の提出はなく、認めることはできない。 4.以上のとおりであるから、被請求人は、通常使用権者が本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品中の「清酒」について、使用していたことを証明したというべきである。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものではない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-09-09 |
結審通知日 | 2003-09-12 |
審決日 | 2003-09-29 |
出願番号 | 商願昭63-56037 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(128)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小泉 勝義、須藤 晟二郎 |
特許庁審判長 |
茂木 静代 |
特許庁審判官 |
瀧本 佐代子 井岡 賢一 |
登録日 | 1990-07-30 |
登録番号 | 商標登録第2248792号(T2248792) |
商標の称呼 | ハンセイキ |
代理人 | 角田 嘉宏 |
代理人 | 特許業務法人共生国際特許事務所 |