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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 132
管理番号 1081725 
審判番号 取消2002-31213 
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-09-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2002-10-16 
確定日 2003-07-28 
事件の表示 上記当事者間における登録第2677697号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2677697号商標の指定商品中、「食肉、食用水産物」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2677697号商標(以下「本件商標」という。)は、後掲のとおりの構成よりなり、平成3年3月18日に登録出願され、第32類「食肉、卵、食用水産物、すし、べんとう、サンドイッチ、乾燥卵、即席菓子のもと、カレーライスのもと、スープのもと、なめ物、酒かす」を指定商品として、平成6年6月29日に商標権の設定登録がされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べている。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、「食肉、食用水産物」について、継続して3年以上日本国内において使用した事実がないので、商標法第50条第1項の規定によりその登録は取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1) 被請求人は、本件商標が「チキンフィンガー」等について使用されているとして、乙第1号証ないし乙第3号証を提出しているが、これが商標権者による本件商標の使用には該当しない。
本件商標は、特殊な字体の欧文字で 「B」及び「W」の文字を白抜きで画き(その外側はその文字に沿って黒塗り)、その下部に極めて小さい片仮名文字で「ブルーウェーブ」と附記的に記載してなる比較的に特異な文字商標である。
しかるに、乙第1号証ないし乙第3号証には、特異な文字商標は表示されていない。例えば、乙第1号証(第1頁の上下および第2頁の上欄)に添付されている商品の写真によれば、「BALL」及び「PARK」の欧文字を二段に左横書きしてなる商標の下部に、これに対して数10分の1の大きさで「Blue Wave」の欧文字が記載されているにすぎず、前記のごとき特異な文字商標である本件商標はなんら画かれていない。また、乙第1号証(第2真下欄および第3真上下欄)に添付されている写真にも本件商標は全く記載されていない。
そして、乙第2号証は、オリックス野球クラブ株式会社発行の「YEAR BOOK 2002」の一部分であるが、同証にも、前記したごとき本件商標はなんら記載されていない。
さらに、乙第3号証の1には、2002年度の唐揚げ及びエビ串だんごの売上げが80日間で僅かに4、097、750円、1日当たりの平均がたったの51、222円にすぎないことを示しているにすぎない。
したがって、上記のごとき特異な文字商標である本件商標が商標権者(被請求人)により使用されているという証拠は、全く存在しない。
(2) 本件審判の取消請求に係る指定商品は、「食肉、食用水産物」である。しかるに、被請求人が使用していると主張している指定商品は、「チキンフィンガー、ビーフコロッケ、フライドチキン、鶏の唐揚、エビ串だんご」である。したがって、これらの商品は、「食肉、食用水産物」に該当しない。
したがって、上記のごとき特異な文字商標である本件商標が「食肉、食用水産物」について被請求人であるオリックス株式会社により使用されているという証拠は、全く存在しない。
(3) 被請求人(商標権者)は、東京都港区浜松町2丁目4番1号所在のオリックス株式会社であり、主として総合リース業を営む企業である。
しかるに、このような総合リース業を営む企業である商標権者(被請求人)がチキンフィンガーや串だんご等を、ましてや食肉や食用水産物について販売することはあり得ず、事実、乙第1号証ないし乙第3号証にも、商標権者(被請求人)による使用の事実は全く記載されていない。
したがって、乙第1号証ないし乙第3号証には、本件商標はもちろんのこと、商標権者(被請求人)の名前さえ全く欠いている。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
1 使用の事実について
被請求人(商標権者)は、本件商標を「チキンフィンガー」「ビーフコロッケ」「フライドチキン」「鶏の唐揚」「エビ串だんご(甘海老のすり身を串にし衣をつけて揚げた物)」等々に使用している。使用の事実を示す資料として、グリーンスタジアム神戸の球場内の売店における商品の販売状況を示す写真を提出する(乙第1号証)。また、スタジアム内の売店を紹介するパンフレットを提出する(乙第2号証)。商標権者のパンフレット「YEAR BOOK 2002」では、18頁及び19頁において、スタジアム内の売店の紹介をしており、各種の飲食物を写真で紹介している。
これらの商品の内、串にした鶏の唐揚及びエビ串だんごの2品だけで、年間400万円強を売り上げている。なお、球場売店における週間販売報告(4月29日ないし5月7日、8月19日ないし29日)を提出する(乙第3号証)。
上記の資料により、本件商標の「食肉、食用水産物」についての使用は十分に証明されたものと思料する。
2 不使用取消審判の法制定趣旨について
(1) 不使用商標の整理
不使用取消審判は、使用をしない結果、保護すべき信用が蓄積されていない商標の整理を行い、商標使用希望者の商標の選択の余地を拡げることを目的としている(乙第4号証、特許庁編「工業所有権法逐条解説」)1208頁〜、参照)。
本件商標は、商標権者の100%出資子会社が運営するプロ野球球団の名称の商標であり、商標自体が商標権者を表示するものであり、保護すべき信用が既に著名な球団名ということで化体していることは明らかである。したがって、単なる個別商品の商標が使用されていないことと同列に論じられるべきものではない。つまり、商号的商標が個別商品について使用がないからという理由で直ちに不使用取消審判により個別商品ごとに取消整理されるべきものではない。
ハウスマークのような商標についての防衛的な登録までも、不使用取消審判により取消すことは、不使用取消審判制度の法制定の趣旨に反する。
(2) 新規出願者の商標選択の自由の確保
不使用取消審判の法目的の一つに、商標使用希望者の商標の選択の余地を創設することがあるが、第三者の商標選択の自由には自ずと限界がある。他者の商号的商標の使用は、例えその指定商品が異なるとしても、認められるべきものではない。また、他者の商号と類似する商標についても、同様に使用を認めるべきものではない。
したがって、他者の商号的商標を取消してまで、商標使用希望者の商標の選択の余地を拡げる必要があるとはいえない。
さらに、商号的商標である本件商標を取消しても、本件商標は、権利者を表示するものとしてすでに著名性を獲得しているものであり、同一または類似する商標は、商標法第4条第1項第15号の規定により登録が排除され、また、同時に商標権者の球団名称として商標法第4条第1項第8号の規定により登録が排除されるべきものでもある。
したがって、本件商標を取消しても、第三者に登録の余地を開くことにはならず、取消しても利益がなく、審判請求の利益のない審判請求である。
(3) 審判請求の実質的利益の欠如
平成8年の法改正により、不使用取消審判については、利害関係人であることを要しない旨の改正が行われた。その理由として、不使用取消審判が、公益的なものであることが挙げられている(乙第4号証、1211頁)。しかしながら、個別商品商標についての不使用取消審判については、この法理が妥当するとしても、商号的商標については同一の法理が妥当するものではない。何より、商標自体が、商標権利者を表すものとして広く知られているものであり、業務上の信用が化体されているからである。
単に、不使用商標を整理するだけであれば、制度は純粋に公益的なものであり、利害関係を要求する必要はないが、本件のような場合についても一律に利害関係を要求しないとすることに妥当性があるとは考えられない。
この点については、「請求人適格を『何人』としても、当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められるような場合には、その請求は権利濫用として認められない」ものである。この法理は「工業所有権逐条解説」においても明確に述べられている(乙第4号証、1212頁)。
本件審判請求は、被請求人(商標権者)を害することを目的とするとまではいえないとしても、他人の名称を使用する予定の審判請求は訴えの利益がないことにおいて同一であるので、このような審判請求は請求の利益なしとして退けられるべきものである。
(4) 審判請求の実質的理由
請求人の実質的な目的が本件審判請求書類だけからは計り知ることはできないが、請求人は第29類において、商標「Blue Wave」の出願(商願2001-100289)をし、平成14年6月13日付の拒絶理由通知書により、商標法第4条第1項第11号を理由として本件商標を引例された者と関係する者と思われる(乙第5号証)。
しかしながら、上記出願は、商標法第4条第1項第11号の他にも商標法第4条第1項第8号及び同第15号の拒絶理由を含むものである。本件商標「Blue Wave」が商標権者の球団の名称として広く知られている現状において、審判請求人の関連会社の「BlueWave」商標の登録出願は登録を拒絶されるべきことは明らかである。
なお、第三者が第42類の役務を指定して出願した商標「BlueWave」(商願2000-65178)が商標法第4条第1項第15号及び同第8号を理由に拒絶査定を受けている(乙第6号証)。
3 結語
上記のとおり、本件商標は、取消しの対象たる指定商品に現実に使用されているので、本件商標が取り消されるべきでないことは明らかである。また、本件審判請求は、不使用取消審判の法目的に反するものであり、本件商標は、商標法第50条の規定に該当するものではない。

第4 当審の判断
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、本件審判の請求の登録前3年以内に、我が国において、請求に係る指定商品のいずれかについて登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。
1 使用の事実について
(1) 登録商標の使用について
商標法第50条で規定するところの「登録商標の使用」とは、その請求に係る指定商品についての登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生じる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。)ほか、同一と認められる範囲(例えば、商標の要部でない附記的な部分を多少変更して用いるとか、横書きの文字部分を縦書きにして用いるとかの場合)にあると解される。
(ア) これを本件についてみるに、本件商標は、構成後掲のとおり「顕著な、かご字風字体に図案化された『BW』の欧文字」(以下「図案化部分」という。)と、その下段部に「ゴシック字体による『ブルーウェーブ』の片仮名文字」(以下「片仮名部分」という。)とを結合した商標である。そして、図案化部分が各欧文字一字毎の読みに従い「ビー・ダブリュウ」の称呼、及び「B」と「W」のモノグラム程度の観念を生じるものであって、これのみでも独立して自他商品の識別力を有するといえるものである。
(イ) 被請求人が、本件商標を本件審判の取消請求に係る指定商品について使用していた事実を証明するものとして提出した乙第1号証ないし乙第3号証を徴するに、グリーンスタジアム神戸の球場内の売店における商品(チキンフィンガー、ビーフコロッケ、フライドチキン、鶏の唐揚、及びエビ串だんご等々)に使用している販売状況を示す写真(乙第1号証)に写された紙製の各容器に、かご字風に印刷された「BlueWave」の欧文字が使用されていること、商標権者に関連するプロ野球球団のパンフレット「YEAR BOOK 2002」に球団名とはいえ「BlueWave」の欧文字が使用され、スタジアム内の売店と各種の飲食物を紹介(18頁及び19頁)していること、及び串にした鶏の唐揚及びエビ串だんごについての週間販売報告(4月29日ないし5月7日、8月19日ないし29日)(乙第3号証)は認めることができる。しかしながら、これら乙第1号証ないし乙第3号証には、図案化部分及び片仮名部分とにより構成される本件商標の使用は確認できない。
(ウ) してみると、乙第1号証ないし乙第3号証には、たとえ本件商標の構成中の文字部分と社会通念上同一と認められる「ブルーウェーブ」の片仮名文字が使用されているとしても、それら使用は図案化部分を欠落しているものであって、これら使用の商標と本件商標とは、図案化部分の有無という点で明かな構成態様上の差異を有する別異の商標というのが相当であり、商取引の社会通念上、同一と認められる範囲を著しく逸脱したものといわざるを得ない。そうすると、該販売状況を示す写真(乙第1号証)及び該パンフレット(乙第2号証)における当該商標の使用は、本件商標の使用ということができない。
(2) 指定商品の使用について
本件商標は、平成3年通商産業省令第70号による改正前の商標法施行規則別表に基づく分類(以下「旧分類」という。)第32類「食肉、卵、食用水産物、すし、べんとう、サンドイッチ、乾燥卵、即席菓子のもと、カレーライスのもと、スープのもと、なめ物、酒かす」を指定商品とし、そして、本件審判の取消請求に係る指定商品は、「食肉、食用水産物」であること上記のとおりである。
被請求人は、本件商標を「チキンフィンガー」「ビーフコロッケ」「フライドチキン」「鶏の唐揚」「エビ串だんご(甘海老のすり身を串にし衣をつけて揚げた物)」等々について使用しており、これが上記した取消請求に係る指定商品「食肉、食用水産物」に該当する旨述べているので、以下、検討する。
(ア) 旧分類第32類は、主として生鮮食料品と、これを加工した食料品をまとめた類である(特許庁商標課編「商品区分解説」昭和55年3月31日改訂版 社団法人発明協会発行 参照:以下同じ)。
(イ) 取消請求に係る指定商品「食肉、食用水産物」は、原則として未加工のものに限られるものである。
(ウ) 使用に係る商品「チキンフィンガー」「ビーフコロッケ」「フライドチキン」「鶏の唐揚」「エビ串だんご(甘海老のすり身を串にし衣をつけて揚げた物)」ほか、週間販売報告(乙第3号証)の品目に記載の食料品で本件商標の上記した指定商品に含まれるものは、いずれも、当該スタジアムに訪れる観客に対し販売されるものであって、直ちに食すことができるものであり、旧分類第32類に例示の「加工食料品」の概念に含まれる商品と認め得るものである。
(エ) してみると、本件商標の使用に係る商品と本件審判の取消請求に係る指定商品とは、その属する概念を異にする別個の商品と判断せざるを得ないから、その使用は本件審判の取消請求に係る指定商品について使用するものということができない。
そして、他に本件商標が取消請求に係る指定商品「食肉、食用水産物」について使用された事実を認め得る証拠はないといわなければならない。
したがって、これらの証拠によっては、本件商標が本件審判の取消請求に係る指定商品について使用されていたものとは認められない。
(3) まとめ
以上のとおり、被請求人の提出に係る乙第1号証ないし乙第3号証によっては、本件商標が本件審判の取消請求に係る指定商品について使用されていたものとは認められない。
その他、本件商標がその指定商品について使用されていることを示す証拠はない。
2 不使用取消審判の法制定趣旨について
被請求人は、本件審判請求について不使用取消審判の法制定の目的に反し、請求の利益のない審判である旨主張しているが、請求人のこれら主張は、独自の見解ないしは自己都合による事情を述べるに止まり、これをもって、商標法第50条第2項の規定による本件商標の使用事実についての挙証責任を免れるものということができない。
そして、請求人の主張する本件審判の請求の理由及び被請求人の答弁に対する弁駁をみるに、当該審判は、被請求人を害することを目的とするものといい難いものであって、その請求は、権利の濫用と認められるものでなく、かつ、商標制度の目的に反するものといい得ないから、請求の利益を有する正当な審判請求であるということができる。そうすると、被請求人の前記主張は採用できない。
3 結語
本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者等により本件審判の取消請求に係る商品「食肉、用水産物」について使用されていたものとは認めることはできず、かつ、使用をしていないことについて正当な理由があったものとは認められない。
このほか被請求人の主張をもって、本件審判の取消請求に係る指定商品についての使用は証明されない。その他前記認定を覆すに足りる証拠はない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定商品中の結論掲記の商品について、その登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 < 後 掲 >
本件商標


審理終結日 2003-05-30 
結審通知日 2003-06-04 
審決日 2003-06-17 
出願番号 商願平3-26539 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (132)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 薫平山 啓子金子 尚人 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 山下 孝子
高野 義三
登録日 1994-06-29 
登録番号 商標登録第2677697号(T2677697) 
商標の称呼 ビイダブリュウ、ブルーウエーブ、ウエーブ 
代理人 広瀬 文彦 

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