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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 112 |
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管理番号 | 1073590 |
審判番号 | 無効2002-35136 |
総通号数 | 40 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2003-04-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2002-04-08 |
確定日 | 2003-02-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2216786号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2216786号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2216786号商標(以下「本件商標」という。)は、「MILLE MIGLIA」の欧文字と「ミッレミリア」の片仮名文字を上下二段に横書きしてなり、昭和62年8月25日に登録出願、第12類「輸送機械器具、その部品及び附属品」を指定商品として、平成2年3月27日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第19号証を提出した。 1 被請求人(商標権者)は、本件商標を取得すべく昭和62年に商標登録出願を行い、これは平成2年3月27日に登録され、また、平成12年4月11日に更新登録を受けているものである(甲第19号証)。 2 本件商標は、イタリア共和国の北部の都市、ブレシアを中心に過去数十年間にわたって行われてきた自動車レース「ミッレ・ミリア」のシンボルマークの要部を含むものである。すなわち、上記自動車レースの基本のシンボルマークは、右向きの赤色の矢印マーク内に「1000」と「MIGLIA」を2段書きしたものであるが、「MIGLIA」は英語の「MILE」(マイル)を意味し、全体としては「1000マイル」(約1600km)を意味している。なお、「1000」はイタリア語で「ミッレ」と発音されるので、「1000 MIGLIA」は「ミッレ・ミリア」と発音され、文字で記載すると「MILLE MIGLIA」となり、本件商標のアルファベット部分と同一となる。この「MILLE MIGLIA」も、上記自動車レース「ミッレ・ミリア」を表示するシンボルマークであり商標として、イタリア及び日本で広く使用され、周知となっている(甲第5号証及び甲第10号証ないし甲第17号証)。 3 この自動車レース「ミッレ・ミリア」の歴史は非常に古く、20世紀の初めに始り、現在も毎年ブレシアをスタートし、ローマを経由してブレシアに戻るルートで行われている。このレースは走行の速さを競うものではなく、フエラーリなどのビンテージカーを使用する、極めて格調の高いレースであり、チェックポイントの通過タイムの正確さを競うものである。自動車レースとして日本ではFIやパリ・ダカールラリーが有名であるが、「ミッレ・ミリア」の歴史はそれらより古く、人気も劣らないくらいである。 また、「ミッレ・ミリア」は現在ではイタリアのみならず、南米版「ミッレ・ミリア」、米国版「ミッレ・ミリア」、日本版「ミッレ・ミリア」などが開催されるに至っている(甲第5号証)。そして、日本では、イタリアの「ミッレ・ミリア」がテレビ放送され、人気が高まっている(甲第10号証)。 4 商標「MILLE MIGLIA」は、イタリアにおいてブレシア自動車クラブ(ACB)が所有しているが、自動車レース、「ミツレ・ミリア」を開催・運営している主催者である請求人並びに請求人の前身であるダルマ エス アール エル(以下「ダルマ」という。)は、ブレシア自動車クラブ(ACB)から、この商標の使用を許諾され、かつ、サブライセンスを与える権能をも与えられている。請求人の前身のダルマはかかる状況の下に被請求人に対し1990(平成2年)年3月23日付けでサブライセンスを与えた(甲第1号証及び甲第2号証)。 5 ところが、被請求人は、サブライセンス契約に定められたロイヤリテイーを請求人の前身のダルマに支払わなかった。その結果、請求人の前身のダルマは1994年(平成4年)11月14日、被請求人とのライセンス契約を解除した(甲第3号証及び甲第4号証)。 したがって、被請求人はこの商標を使用することができないばかりか、日本において登録を受けることはできないはずである。また、登録を受けた後は、この商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標となっているから、商標法第4条第1項第7号に該当する。 6 かかる経緯と事実関係の下で、被請求人が本件商標について商標権を維持することは、請求人及び又はその前身のダルマとの信義に反するものである。 また、イタリアにおいて、権威のある自動車レースのシンボルマークを、イタリアにおける本来の権利者の意向に反して、信義に反した者に対して登録を維持することは、国際的な公序良俗、国際的信義に反するものである。 7 被請求人は、本件商標と関連する商標を第17類に登録出願した(商願平2-109329号:商公平7-24511号)。しかし、請求人の前身のダルマは、上記と同様な公序良俗違反を理由とする登録異議申立てを行い、その結果、登録異議理由ありの決定がなされている(甲第8号証及び甲第9号証)。また、被請求人が登録を受けた関連する登録第3312283号商標及び登録第4162870号商標は、登録が無効とされている(甲第6号証及び甲第7号証)。 8 以上の経緯から、本件商標は、登録後に被請求人の契約不履行により公序良俗に反した状態となったものであり、かかる状態で権利を維持することは、国際信義にも反するので、商標法第46条第1項第5号の規定により、その登録を無効とされるべきである。 9 さらに、上記シンボルマークは、自動車レースの愛好家の間では世界的に認知され、日本でも日本版「ミッレ・ミリア」として、1992年(平成4年)からクラシックカーによる1000マイルの走行デモを伴うイベントが開催されており、そのシンボルマークが使用されている。 したがって、日本国内及び外国の自動車レースの愛好家や、関連業界の人々にとって、そのシンボルマークは極めて周知なものである(甲第10号証ないし甲第17号証)。本件商標が被請求人の権利として認められていると、被請求人がその業務にかかる商品について本件商標を使用したとき、請求人あるいは、請求人が許諾した者の業務にかかる商品と需要者が混同する。よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。また、被請求人の契約不履行の時期と登録を受けた時期が相前後していることから、不正の目的で登録を受けたことは明らかである。よって、商標法第47条の除斥期間の適用はない。 したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とされるべきである。 第3 被請求人の主張 被請求人は、何ら答弁していない。 第4 当審の判断 被請求人の提出に係る甲各号証に徴すれば次の事実が認められる。 1 自動車レース「ミッレ・ミリア」のシンボルマークについて 「ミッレ・ミリア」のパンフレット(甲第5号証)、日本におけるミッレ・ミリアの関連番組の放送一覧(甲第10号証)及びイタリアにおけるミッレ・ミリアを紹介した写真集1991年〜1997年版の表紙の写し(甲第11号証ないし甲第17号証)によれば、自動車レース「ミッレ・ミリア」は、イタリアの都市ブレシアをスタートし、ローマを経由してブレシアに戻るルートで行われる自動車の都市間ロードレースである。その歴史は古く、20世紀の初め(1927年)に始り、第二次世界大戦で一時中止されたが、戦後再開し、1957年まで続けて開催された。しかし、同年の事故等で中止し、その後、1982年に復活して現在も行われている。ところで、このレースは、単に速さを競うものでなく、フェラーリなどのビンテージカーを使用するものであって、この間のレースにおいては、特にイタリアのフェラーリの活躍は目覚ましく自動車ファンに愛され続けられているものである。そして、日本においても、イタリアの自動車レース「ミッレ・ミリア」が1990年(平成2年)より1998年(平成10年)に亘り毎年テレビ放送された。特に1992年は、復活後10周年記念として名ドライバー、女優等も参加し、華やかな開催となり、日本からもプロドライバー及び芸能人が参加したことが紹介された。また「ミッレ・ミリア」は現在ではイタリアのみならず、日本版「ミッレ・ミリア」が同じ1992年(平成6年)10月末から11月初めに盛大に開催され、名車の展示及び富士スピードウェイ、鈴鹿サーキットでレースが行われたことが認められる。 そして、自動車レース「ミッレ・ミリア」にあっては、そのシンボルマークとして黒く塗りつぶし縦幅がやや広い右向きの矢印図形内の上部に「1000」の文字を、下部にややデザインをした「MIGLIA」の文字及び矢印の先端に沿って「く」の字状逆向き図形のそれぞれを白抜きに表示してなる標章を同レースのパンフレット、写真集等に使用されているものである。 以上の事実によれば、自動車レース「ミッレ・ミリア」、「MILLE MIGLIA」及びそのマークは、イタリアが誇る世界的自動車レースとそのマークであり、そしてテレビ放送等により近年のモータースポーツの発展は目覚ましいものがあることから、我が国において、本件商標の登録査定時はもとより現在においても、自動車ファンを初め一般にも相当程度知られるに至っていたものと認められる。 2 自動車レース「ミッレ・ミリア」のマークに関する請求人と被請求人とのライセンス契約の内容等について 請求人と被請求人とのライセンス契約書、同翻訳文(甲第1号証及び甲第2号証)及び請求人から被請求人へのライセンス契約解除通告、同翻訳文(甲第3号証及び甲第4号証)によれば、次の記載が認められる。 (1)ダルマは、ACB(「ブレシア自動車 クラブ」の略称、以下、同じ。)より「1000Miglia」のマークをいろいろな種類の製品やサービスに使用するライセンスの許可を得ていると記載。 (2)ダルマは、ACBから外国でこのマークを使用する権利を取得したとの記載。 (3)当該マークの所有権は、ACBの管轄にあると記載。 (4)ダルマはサブライセンシー(被請求人)に「1000Miglia」のマークの使用権を譲渡すると記載。 (5)サブライセンスの対象となる商品は、衣料、アクセサリ、装身具類、宝石、時計、旅行かばん類、バッグ、文房具、書籍、ペン、カレンダー、紋章、灰皿、ライター、キーホルダー、カーモデル、ナイフ、皿、旗、財布、タイヤ、メガネとサングラスと記載。 (6)対価として、サブライセンシー(被請求人)はダルマに金額を払うと記載。 (7)Mille Miglia CO,LTDは日本において添付したリストのカテゴリーに関してマーク「1000Miglia」を登記したと記載。 (8)Mille Miglia CO,LTDは、取消不可能な現在の法的行為でダルマに登記の全ての権利を渡す、この譲渡の対価は、ダルマからMille Miglia CO,LTDへのサブライセンスの契約の規定に決められていると記載。 (9)請求人から被請求人へのライセンス契約解除通告、同翻訳文 1994年11月14日貴社(ミッレ・ミリア株式会社=被請求人)と当社(ダルマ エス アーエル=請求人)間の契約は、契約に基づく貴社の金銭的義務の不履行に関する契約違反のため、今を以って中途終了しましたと記載されていること。 以上の事実によれば、請求人は、自動車レース「ミッレ・ミリア(Mille Miglia)」を開催・運営している主催者と認められる。また同シンボルマークはイタリアにおいては「ブレシア自動車クラブ」が所有しているが、請求人は、同自動車クラブよりいろいろな種類の製品やサービスに使用するライセンスの許可を得ているものである。 請求人は、被請求人との間で被請求人が同シンボルマークを衣料、アクセサリ、装身具類、宝石、時計、旅行かばん類、バッグ、文房具、書籍、ペ ン、カレンダー、紋章、灰皿、ライター、キーホルダー、カーモデル、ナイフ、皿、旗、財布、タイヤ、メガネ及びサングラスに使用することを許諾 し、対価として金額を支払うサブライセンスの契約を1990年3月23日付けでした。しかしながら、1994年11月14日付けでこの契約は被請求人の金銭的義務の不履行に関する契約違反のため中途終了したものと認められる。 3 本件商標と自動車レース「Mille Miglia(ミッレ・ミリア)」のシンボルマークとの比較について 本件商標の構成は、「MILLE MIGLIA」の欧文字と「ミッレミリア」の片仮名文字よりなるものであり、前記した自動車レース「Mille Miglia(ミッレ・ミリア)」のシンボルマークと同一の文字構成よりなるものである。 4 ところで、商標法は、公正な競争を図り、取引秩序を維持することを目的とする競業秩序を維持する面を持っているものであるが、商標法第4条第1項第7号は「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標は、商標登録を受けることができない」旨を規定しており、その趣旨は商標の構成自体が公序良俗に反する場合だけでなく、一般に国際信義に反する場合も含まれると解されるものというべきである。 5 以上、上記1ないし4を総合勘案して、本件商標と自動車レース「Mille Miglia(ミッレ・ミリア)」のシンボルマークとについてみれば、請求人は、世界的に知られるイタリアの自動車レース「Mille Miglia(ミッレ・ミリア)」を開催・運営している主催者であること、請求人はブレシア自動車クラブから自動車レース「Mille Miglia(ミッレ・ミリア)」のシンボルマークに関して外国での使用する権利を取得していること、本件商標は、自動車レース「Mille Miglia(ミッレ・ミリア)」のシンボルマークとは文字構成が同一のものであること、そして、本件商標については請求人と被請求人との間で自動車レース「Mille Miglia(ミッレ・ミリア)」のシンボルマークの使用許諾に関するライセンス契約を行った。しかし、このライセンス契約は、1994年(平成6年)11月14日に中途終了していたこと、自動車レース「Mille Miglia(ミッレ・ミリア)」マークは、世界的なレースで、またそのシンボルマークであり、本件商標の登録査定時はもとより現在においても、我が国においても自動車ファンまた一般にも相当程度知られるに至っていたものであることが認められる。 してみると、かかる経緯と事実関係からして、本件商標を被請求人の商標として登録を維持することは、自動車レースのシンボルマークとして知られている「Mille Miglia(ミッレ・ミリア)」を正当な権限を有する請求人以外に認めることであり、また請求人と被請求人との間で商標の使用許諾に関するライセンス契約も中途終了していることからも信義則に反し、さらに、我が国の国際的な信頼も損なうおそれがあると言うべきであり、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為といわざるを得ない。 してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものと判断せざるを得ない 6 したがって、本件商標は、請求人の他の無効理由について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されているものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-12-12 |
結審通知日 | 2002-12-17 |
審決日 | 2003-01-06 |
出願番号 | 商願昭62-96143 |
審決分類 |
T
1
11・
22-
Z
(112)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 秋元 正義 |
特許庁審判長 |
野本 登美男 |
特許庁審判官 |
中嶋 容伸 茂木 静代 |
登録日 | 1990-03-27 |
登録番号 | 商標登録第2216786号(T2216786) |
商標の称呼 | ミッレミリア、ミルミグリア |
代理人 | 二瓶 正敬 |