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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない Z42 |
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管理番号 | 1073571 |
審判番号 | 無効2001-35196 |
総通号数 | 40 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2003-04-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2001-05-07 |
確定日 | 2003-03-05 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4296772号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4296772号商標(以下「本件商標」という。)は、「地域情報システム研究所」の文字を横書きしてなり、平成9年7月3日に登録出願、第42類「自治体等の行政に関する情報管理のための調査又は研究の代行,自治体等の情報管理のための機械化の設計又は開発」を指定役務として、平成11年7月23日に設定登録されたものである。 2 請求人の主張 請求人は、「本件商標の登録はこれを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第12号証(枝番を含む。)を提出した。 (1)請求の理由 ア 請求人の名称は、「株式会社地域情報システム研究所」である。この様な法人の名称のうち「株式会社」の文字部分は、商法第17条の規定によって義務付けられているものであって、請求人会社の商号のもつ商取引上自他識別の機能を持つ部分は「地域情報システム研究所」であり、「チイキジョウホウシステムケンキュウジョ」若しくは「チイキジョウホウシステムケンキュウショ」と称呼される場合の多いことは経験則に照らして明らかである。 イ 商標法第4条第1項第8号にいう、名称(商号)の略称というのは、例えば「鐘淵化学工業株式会社」の場合「鐘化」(カネカ)、「住友金属工業株式会社」の場合の「住金」(スミキン)のような場合をいうものであって、このような場合にその著名性が要件となるものである。 ウ したがって、請求人の名称は、「株式会社地域情報システム研究所」とともに「地域情報システム研究所」も商標法第4条第1項第8号にいう名称といえるものであるから、該法条適用にあたって、「地域情報システム研究所」の著名性を必要とするものでないことは明らかであると確信する。 エ そうとすれば、請求人の名称である「地域情報システム研究所」と同様の文字をもって構成されている本件商標は、他人の名称よりなるものということができるものである(甲第3号証ないし同第6号証)。 オ そうでないとするならば、法人でない社団[商標法第4条第1項第8号に該当するとして無効審判の請求をすることができる(甲第7号証)]の場合は、同法条の適用にあたって、その名称のままで著名性を要求されず、株式会社の場合は、株式会社であるがために、商法第17条によって制約された株式会社を除いた文字部分のみでは、同法条の適用にあたって、著名性が要求されるという法令適用について差別される結果となる。もしこのような取り扱いが行われた場合は、法の下の平等性を欠くという謗りをまぬかれないといわざるをえない。 カ よって、本件商標は、その指定役務について使用する旨の承諾を請求人より得ていないにもかかわらず登録されたものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当し、その登録は、同法第46条の規定により無効とされるべきものである。 (2)答弁に対する弁駁 ア 乙第1号証の判決例は、特許庁における審査が正しく行われていることを前提としたものであるから、被請求人の答弁書における主張は答弁に値しないものである。 イ 前記判決例は、商標法第4条第1項第8号の規定に示されている「他人の名称の略称」は、株式会社の商号から株式会社を除いた部分は、「他人の名称の略称」に該当するものと解すべきであって、「著名」であるときに限り登録を受けることができないものと解するのが相当である、とするものである。このことは、裏を返せば「株式会社の商号から株式会社を除いた部分」が「著名」であるときに限って登録を受けることができるということである。そうでなければ商標法第4条第1項第8号の規定は平等の原則に反する規定になるからである。 というのは、自己の株式会社の商号を出願するときに、株式会社の商号のままを商標とした場合は、他人の同一の商号が存すると前記条項によって無条件で拒絶されるが、自己の株式会社の商号の「株式会社」を除いた部分をもって商標登録出願をした場合には、他人の該商標と同一の標章が存在しても、その著名性が立証されない限り登録が認められることになり、一旦登録されてしまうと、自己の株式会社の商号の「株式会社」を除いた部分がいくら著名性があったとしても、それと同一の著名でない他人の登録商標が存在するときは商標法第4条第1項第11号の規定により、登録することができないという不合理が生じる。 商標法第4条第1項第8号ついての乙第1号証の判決における株式会社の商号の「株式会社」を除いた部分が名称の略称であるとして、著名性を必要とするとしたことは、その様な商標を出願するときにも、その著名性を要するということになり、それによって該規定の均衡平等が保たれるわけである。そうでなければ、同規定は法の下での平等を規定した憲法規定に反する条項となることは明らかである。 ウ したがって、乙第1号証の判決の上告人が、その事件に関する出願記録を調査した上で、その出願の登録時における商標の著名性について著名でないことを立証主張した場合には違ったものとなっていたと思う。 エ そこで、本件商標の出願記録を閲覧調査したが、当該商標は、商標権者の商号の略称を表示したものであるにもかかわらず、その著名性を立証する証左の提出がなされていない。 この著名性の立証のない出願は、添付の参考資料にみられるように著名性について、何ら審理判断することなく、結論を導いた違法があり、この違法が審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるとして、当該審決は取り消されるべきであるとしていることよりみても、本件商標は、その審査に当たってその商標の著名性の判断することなく、登録されたものであるから、当然拒絶理由、無効の理由となり得るものと思量する。 出願時に具体的な不登録理由がないとしても、商標法第4条第1項第8号の平等性を理由に同法同条第7号をもって、拒絶し得ると思う。 オ 念のために請求人の商号の略称についての著名性を立証するための証左を提出する。 甲第8号証ないし同第10号証における請求人の業務を通じて「株式会社地域情報システム研究所」が請求人を指称するものであるとして、東京地区のみならず全国に知られていることは明らかである。 甲第12号証により、請求人の略称である「地域情報システム研究所」は、本件商標の登録出願の時には、既に多くの人々に知られており著名となっていたといえる状態にあったことは明らかである。 故に、本件商標は、請求人の名称の略称として東京地区のみならず全国的に知られて既に著名となっているものであって、かつ、請求人の承諾を得ずして登録されたものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第8号の規定に該当するものである。 4 被請求人の主張 被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第8号に規定された「他人の氏名若しくは名称」に、株式会社の商号が含まれ、そのものは登録を受け得ないことは何等異論のない事項である。また、「著名な略称を含む商標」に、著名な法人名の株式会社を除いた名称が含まれ、そのようなものは登録を受け得ないことも異論のない事項である。この後者に関しては、「商号から株式会社の文字を除いた部分が他人の名称の略称に該当する」との判断基準が、最高裁昭和57年(行ツ)15号判決(乙第1号証)によって提示されている。 (2)甲第3号証ないし同第6号証は、「他人の著名な略称よりなる商標」に関するものであるといえ、これらは本件商標の無効を主張する根拠にはなり得ない。 (3)甲第7号証は、社団が権利能力を有しないから商標登録を無効とすることはできないとした審決を取り消した事例であり、請求人の主張は見当違いである。 5 当審の判断 (1)株式会社の商号は商標法第4条第1項第8号にいう「他人の名称」に該当し、株式会社の商号から「株式会社」の文字を除いた部分は同号にいう「他人の名称の略称」に該当するものと解すべきであって、登録を受けようとする商標が他人たる株式会社の商号から株式会社の文字を除いた略称を含むものである場合には、その商標は、当該略称が他人たる株式会社を表示するものとして「著名」であるときに限り登録を受けることができないものと解するのが相当である(最高裁昭和57年(行ツ)第15号・同57年11月12日第2小法廷判決参照)。 (2)請求人は、「請求人の名称は『株式会社地域情報システム研究所』である。この様な法人の名称のうち『株式会社』の文字部分は、商法第17条の規定によって義務付けられているものであって、請求人会社の商号のもつ商取引上自他識別の機能を持つ部分は『地域情報システム研究所』であり、・・・したがって、請求人の名称は、『株式会社地域情報システム研究所』とともに『地域情報システム研究所』も商標法第4条第1項第8号にいう名称といえるものであるから、該法条適用にあたって、『地域情報システム研究所』の著名性を必要とするものでない」と主張する。 しかしながら、前述のとおり、株式会社の商号にあっては、「株式会社」の文字を除いた部分は、商標法第4条第1項第8号にいう「他人の名称の略称」に該当するものであるから、請求人の場合は、「地域情報システム研究所」の文字部分は「他人の名称の略称」に該当し、他人の商標登録を阻止するためには、その略称が請求人を表示するものとして著名であることを要するものといわなければならない。 (3)これを本件商標についてみると、本件商標は「地域情報システム研究所」の文字よりなるものであり、該「地域情報システム研究所」は請求人の名称の略称と同じ文字構成よりなるのである。 そこで、請求人の提出に係る証拠を検討するに、甲第8号証ないし同第10号証(会社案内等)によれば、請求人は、平成8年5月14日に設立され、地理情報システムの開発・販売業務、地図データの入力及び管理業務、建築・測量・電力設備に関する設計・監理業務等の業務を行っていることが認められる。 しかしながら、請求人の提出に係る甲第12号証の1ないし50(証明書)は、証明事項をあらかじめ不動文字で記載した書面に、請求人の業務を行っていることを知った年月及び証明の日付を記入し、その書面の下部に証明者が記名押印するという形式のものであり、しかも、証明内容も「1.コンピュータによる地域情報システムの開発」から「8.測量設計業務並びにその代理業務等」の8項目に亘る詳細な請求人の業務内容を、平成8年5月頃(同号証の19のみ平成8年9月頃と記載)から知っていたと、証明者のいずれもが一様に証明しているものであって、その証明内容は極めて信憑性に乏しいものといわざるを得ない。 そして、他に、請求人の名称の略称である「地域情報システム研究所」の著名性を認めるに足りる証左はない。 してみれば、請求人の提出に係る証拠をもって、本件商標の出願時に、請求人の名称の略称である「地域情報システム研究所」が請求人を表示するものとして著名であったと認めることはできない。 したがって、本件商標は、他人(請求人)の著名な略称を含む商標に該当するとはいえないものである。 (4)請求人は、「株式会社の商号から株式会社を除いた部分」が著名であるときに限って商標登録を受けることができるのであり、本件商標はその著名性について判断されていない旨主張する。 しかし、「株式会社の商号から株式会社を除いた部分」を表した商標について、これが著名であることを商標登録の要件とし、または、当該要件を欠いてなされた登録は無効とするとの明文上の根拠を、わが国の商標法には見出せないし、そのように解釈しなければならない合理的理由があるとも認められない。 また、請求人は、自己の商号の「株式会社」を除いた部分がいくら著名性があったとしても、それと同一の著名でない他人の登録商標が存在するときは商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができないという不合理が生じるとも述べている。 しかしながら、当該先願に係る商標について、その登録の可否を判断する時点において他人の著名な略称に該当しないものとして登録され、その略称が著名性を取得したとする後願が、先の登録を引用して前記11号に該当するとして商標登録を拒否される場合があるとしても、略称の著名性が認められる時点が異なっているからであり、これを直ちに不合理ということはできない。また、同一又は類似の他人の先願登録商標が存在する場合に登録を受けられないことは、先願登録主義を採用する商標制度下においては当然の帰結といわなければならない。 したがって、請求人のこれらの主張も採用の限りでない。 (5)以上のとおりであり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-07-26 |
結審通知日 | 2002-07-31 |
審決日 | 2002-08-26 |
出願番号 | 商願平9-134860 |
審決分類 |
T
1
11・
23-
Y
(Z42)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 幸一 |
特許庁審判長 |
涌井 幸一 |
特許庁審判官 |
滝沢 智夫 高野 義三 |
登録日 | 1999-07-23 |
登録番号 | 商標登録第4296772号(T4296772) |
商標の称呼 | チイキジョーホーシステムケンキュージョ、チイキジョーホーシステム、チイキジョーホー |
代理人 | 板谷 康夫 |
代理人 | 金澤 邦武 |