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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 Z42
審判 全部申立て  登録を維持 Z42
審判 全部申立て  登録を維持 Z42
管理番号 1071093 
異議申立番号 異議2000-91163 
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2003-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-10-30 
確定日 2003-01-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第4404762号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4404762号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第4404762号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第42類「飲食物の提供」を指定役務として、平成11年1月6日登録出願、同12年8月4日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立の理由(要旨)
1.商標法第4条第1項第7号について
(1)本件商標は、登録異議申立人(以下「申立人」という。)の店舗名と文字の綴りやデザインが同じである。
(2)本件商標が出願された経緯、本件商標権者(以下「商標権者」という。)の経歴及び申立人について
商標権者は、申立人の監査役、取締役の地位にあった者であり、また、設立時から現在まで申立人の株主でもある(甲第4ないし7号証)。
本件商標は、商標権者が申立人の役員在任中及び株主であるときに出願し、登録されたものである。本件商標が有効に維持されると、他の法律(特に商法第254条の3第264条の規定;甲第24及び25号証)に違反している状態を放置し、違法状態を商標法が保護することになる。すなわち、商法第254条の3は、取締役の忠実義務について規定し、取締役は会社のために忠実にその職務を遂行する義務を負っている。また、商法第264条は、取締役の競業避止義務について規定し、取締役が自己又は第三者のために、会社の営業の部類に属する取引をなすときは取締役会でその取引について重要な事実を開示し、その承認を得ることが必要である旨、またこれに違反して自己のために取引をした場合は、取締役会はこれをもって会社の為にしたものとみなすことができる旨等を定めている。
本件の場合、商標権者の業務は、申立人の営業の部類に属する取引といえる(甲第4及び9号証)。なお、この商法第264条の規定に関する判決として甲第26号証を提出する。
詳述するまでもないが、自己の会社の取締役は、会社に対し、重い責任を負い、自己の会社を危うくする行為は禁止されている。在任中の役員・取締役が自己の会社の重要な使用中の商標を自己名義で出願し商標登録を受ける行為は、取締役の会社に対する背信行為に該当し、許されるものではない。
ましてや、株主でもあり、かつ、自己が役員として就任している会社の重要な商標を出願し商標登録を受ける行為は許されるはずがない。自由競争の原則を全く外れたものである。
なお、過去において、本件と同種の事件についての判決を甲第14号証として提出する。この事件では、代表取締役が在任中に会社設立当初から使用している商標を自分の名義で商標登録し、代表取締役退任後に別会社を設立し、その新しい会社でその商標を使用したというケースで、裁判所は、その商標は元の会社の商標であるから、商標登録は元の会社に返還しなければならないと命じた。その他、同様な判決として甲第14及び15号証を提出する。
また、公序良俗に反するとして登録商標が取り消された判決として甲第27号証を提出する。
2.商標法第3条第1項柱書について
申立人は、商標権者から「取締役解任に対する損害賠償等請求事件」の調停を申し立てられた(甲第9号証)。
商標権者は、上記申立書の第4項(10頁)において、「本願商標を使用する予定はない。」と述べている。これは、商標権者が自己の出願商標を使用する意思を有しなくなったことを明言していることであり、商標権者は、商標法の規定する「商標を使用する意思」を有しなくなったことが明白となり、商標法の規定する「商標を使用する意思」を放棄したものであり、本件商標は第3条1項柱書の要件を充たしていない。
商標法は、商標法第3条第1項柱書に「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標については、・・・商標登録を受けることができる。」と規定しており、過去の判例においても、自己の業務に関して商標を使用する意思がない場合は、商標の登録が認められていないという事案が数多く存在する(甲第28及び29号証)。出願人の業務の記載が義務付けられなくなった今の制度においても「自己の業務に使用する意思」は、登録要件となっている。
なお、商標権者から「取締役解任に対する損害賠償等請求事件」の調停を申し立てられた調停は、度重なる商標権者の無断欠席により調停不調となり終了した。
3.商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、申立人の著名な使用商標と同一であり、指定役務も申立人の業務内容と同じ分野である。前述のとおり(商標法第4条第1項第7号に該当する旨を述べた部分もあわせて)、明らかに不正の目的で出願され登録された商標と確信できる。申立人が現実に使用している商標の態様を示し、本件商標が登録査定をうける以前より広く使用されていた事実を示す書類として甲第30ないし133号証を提出する。
4.したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第7号、同第19号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。

第3 当審の判断
1.本件商標の登録に至るまでの経緯及びその後の経緯について
甲第4ないし9、135号証及び商標権者が平成13年5月29日付け意見書と同時に提出した乙第2ないし5、7、11、12号証並びに争いのない当事者双方の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)申立人である「シーザースインターナショナル株式会社」は、 飲食店業、イベント、各種パーティの企画、運営、管理の請負業、レジャー及びスポーツに関する情報サービス等を目的として、平成7年9月7日設立され、平成8年(1996年)6月29日に、名古屋市東区泉1-9-14にスポーツカフェ「Shooters」を開店した。申立人の設立当初の代表取締役は、商標権者の元妻である「池田淑江」であったが、平成9年6月2日に「クリス・ザラドカウィッツ」(以下「クリス」という。)が就任した。なお、商標権者は、申立人の設立当初はその監査役であった。
(2)申立人を債務者とし、返済期限を平成16年12月30日及び同17年10月30日とする平成10年1月7日付け及び同10年10月30日付けで締結した申立人と株式会社東海銀行との間の金銭消費貸借契約において、商標権者は、債務の連帯保証人として代表取締役であるクリスとともに、その名前が記載されている。
(3)商標権者は、平成10年4月20日に申立人の取締役に就任し、同11年1月16日に解任されたところ、商標権者は、これを不服として、申立人に対し、平成11年7月27日に「取締役の解任に対する損害賠償等請求の調停申立て」を名古屋簡易裁判所にした。この申立書で、商標権者は、「『シューターズ』の商標登録を有しているが、将来とも、『シューターズ』という名称を営業に使用する意図はない。従って、調停により本件紛争が解決されれば、『シューターズ』の商標権は、相手方に譲渡して差し支えないと考えている。」と述べている。
しかし、同調停は不調に終わった。
なお、申立人の株は、平成12年8月29日の時点で、クリスが81株、デニス・ジー・リスチャックが71株、高田泰地が39株、商標権者が9株所有している。
(4)商標権者は、申立人の取締役を解任される直前の平成11年1月6日に、本件商標の登録出願をし、本件商標は同12年4月28日に登録査定がなされた後、同12年8月4日に設定の登録がなされた。
なお、上記登録出願及び登録料金等の費用は、商標権者が負担したものである。
(5)商標権者は、申立人の取締役を解任された後、平成11年3月末に、名古屋市に「マーキーズ」という飲食店を開店し、それに伴い平成12年5月23日に「Marky’s」の文字よりなる商標を登録出願した。
(6)申立人は、名古屋地方裁判所に「商標権利移転登録手続請求」(平成12年(ワ)第4162号)の訴えを提起し、民事部第9部に訴訟係属されたが、原告(本件申立人)は平成13年4月4日に訴えの取下げをし、同請求事件は終了した。
2.スポーツカフェ「Shooters」の著名性の有無について
(1)申立人が、その業務に係るスポーツカフェ「Shooters」の著名性を立証する証拠として提出した甲第16ないし23号証及び甲第30ないし133号証中、本件商標の登録出願前に発行されたと認められる甲第16、18、21、22、30、40、43、44、53、56ないし77、93、95ないし98、109、111ないし121及び125号証によれば、そのうちの甲第16、18、30、40、43、44、53及び93号証は、愛知、岐阜、三重の3県の、あるいは東海エリアの行楽地や飲食店など各種情報を集めてそれらを紹介する日本語で書かれた雑誌の類であり、その中で名古屋市にスポットを当てた頁において、名古屋市に所在するいくつかの飲食店等を紹介しているものと認められる。そして、申立人の営業に係るスポーツカフェ「Shooters」は、「お酒と食事を楽しみながら陽気にスポーツ観戦できるパブ」、「スポーツをテーマにしたアメリカンスタイルのバー」などと紹介されている。
また、上記以外の甲第21、22、56ないし77、95ないし98、111ないし121及び125号証は、わが国で発行された英文による名古屋及びその周辺に関する情報雑誌、同じくわが国で発行された英文による新聞及び「Shooters」の開店案内状等と認められる。そして、申立人の営業に係るスポーツカフェ「Shooters」が本件商標と同一の態様よりなる文字をもって広告されている。
(2)上記2.(1)を総合すると、「Shooters」の著名性を立証する、本件商標の登録出願前に発行されたと認め得る書証中に、日本語で紹介されたものは、わずかに8件のみであり、しかも、「Shooters」なる飲食店の紹介は、名古屋にスポットを当てた頁に掲載されているものに限られ、雑誌の性格上、名古屋及びその近辺の地域に関心のない者は手にすることが少ないものとみられ、限られた範囲の者を対象とした広告の方法というのが相当である。
また、英文で書された雑誌、新聞等は、外国人観光客、あるいは在日外国人等を対象にしたものと認められ、これらに掲載された広告もこれを目にする者が限られた範囲の者というのが相当である。
そうとすれば、申立人の営業に係るスポーツカフェ「Shooters」は、名古屋及びその近在地域においてある程度知られていたとしても、わが国の需要者の間に広く認識されていたとまで認めることはできない。他に、「Shooters」の名称が、申立人の営業に係る飲食物の提供を表示するためのものとして、本件商標の登録出願前より、需要者の間で広く認識されているという証拠は見出せない。
3.不正の目的の目的の有無について
(1)前記1.で認定した事実によれば、商標権者は、申立人の設立当初からその運営に関与しており、平成10年1月7日及び同10年10月30日に申立人と株式会社東海銀行との間で締結した金銭消費貸借契約においても、債務の連帯保証人として名前を連ねていたことが認められ、申立人の取締役を解任された後、連帯保証人から除外されたという証拠はない。
また、商標権者は、申立人の取締役を解任された後である平成12年8月29日の時点においても、わずかではあるが申立人の株を所有していたことなどが認められる。
そして、商標権者は、申立人の取締役の地位にあったときに本件商標を登録出願したが、該商標登録出願するに際し、出願手数料、登録料等の費用は、商標権者個人で負担したこと、及び申立人に対し、「Shooters」の名称の使用差止等の請求をした事実は認められず、また、商標権者自身で本件商標を使用した事実も認められない。
さらに、申立人が商標権者に対し、名古屋地方裁判所に提起した「商標権利移転登録手続請求」(平成12年(ワ)第4162号)の訴えは、本件申立人の訴えの取下げにより平成13年4月4日に終了したことが認められる。
(2)上記3.(1)を総合すると、商標権者は、申立人の取締役の地位にあったときに本件商標を商標権者個人名義で登録出願したとはいえ、申立人の営業の利益を損なうような行為をしたという事実は見当たらず、むしろ、申立人の取締役解任後においても、株主の地位にあったものであり、申立人の金銭消費貸借契約上の債務の連帯保証人としての地位が解けないまま現在に及んでいるということは、形式的にみれば、申立人との関係が未だ継続しているものといわざるを得ず、商標権者は、申立人の営業上の利益のために本件商標を登録出願したとみられないこともない。のみならず、申立人は、商標権者に対して提起した「商標権利移転登録手続請求」(平成12年(ワ)第4162号)の訴えを取り下げている事実からしても、商標権者が本件商標を登録出願し、登録を受けたことについて、不正の目的があったとにわかに首肯することはできない。
そして、他に、商標権者が明らかに不正の目的をもって本件商標を登録出願し、登録を受けたと認めるに足る確たる証拠は見出せない。
してみると、本件商標は、不正の目的をもって使用するものということはできない。
4.商標法第4条第1項第19号について
前記2.及び3.で認定したとおり、「Shooters」の名称は、申立人の営業に係る飲食店を表示するものとして、本件商標の登録出願前よりわが国の需要者の間で広く認識されているものとは認めることができないものであって、かつ、本件商標は、不正の目的をもって使用されるものとは認められないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するということはできない。
5.商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、その構成自体が矯激、卑猥、差別的な印象を与えるような文字からなるものでなく、また、これをその指定役務について使用することが社会公共の利益・一般道徳観念に反するものでもない。
さらに、前記認定のとおり、商標権者が本件商標を採択使用する行為に不正の目的があったものとは認められないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するということはできない。
6.商標法第3条第1項柱書きについて
商標法第3条第1項柱書きにおいて、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」と規定しているところ、前記認定のとおり、商標権者は、申立人の取締役の地位にあったときに本件商標を登録出願したのであり、本件商標は、自己の業務に係る役務について使用をする商標ということができる。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書きの要件を具備しているものである。
7.以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号、同第7号に違反して登録されたものではなく、また、商標法第3条第1項柱書きの要件を具備しないものでもない。
したがって、本件商標は、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものとする。
なお、申立人は「クリス・ザラドカウィッツ(会社役員)」、「越川敬子(会社役員)」及び「デニス・ジー・リスチャック」3名の証人尋問の申請をしているが、申請に係る証人尋問を行ったとしても、上記認定、判断が左右するものとは認められないから、証人尋問は行わないものとする。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 本件商標


異議決定日 2002-12-18 
出願番号 商願平11-868 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (Z42)
T 1 651・ 22- Y (Z42)
T 1 651・ 18- Y (Z42)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山口 烈 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 中嶋 容伸
茂木 静代
登録日 2000-08-04 
登録番号 商標登録第4404762号(T4404762) 
権利者 シディキ アブドル マルフ
商標の称呼 シューターズ 
代理人 岡田 英彦 
代理人 中村 敦子 
代理人 岩田 哲幸 
代理人 池田 敏行 

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