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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない Z03
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z03
管理番号 1070709 
審判番号 無効2001-35101 
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-02-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-03-12 
確定日 2002-12-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4437922号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4437922号(以下「本件商標」という。)は、平成11年12月17日に登録出願、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、第3類「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」を指定商品として、平成12年12月8日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2244655号商標(以下「引用商標」という。)は、昭和63年1月11日に登録出願、別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、第4類「せつけん類(薬剤に属するものを除く),歯みがき,化粧品(薬剤に属するものを除く),香料類」を指定商品として、平成2年7月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証、甲第7号証及び甲第8号証を提出した(なお、甲第6号証は添付されていない)。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第11号 について
本件商標は、別掲(1)のとおりローマ字「MARNUS」および片仮名「マーナス」を上下2段に横書きした商標であり、その構成態様より「マーナス」の称呼を生ずるものである。
これに対して引用商標は、別掲(2)のとおりローマ字「MARNA」を横書きした商標であり、「マーナー」の称呼を自然に生ずるものである。
本件商標から生ずる称呼「マーナス」と引用商標から生ずる称呼「マーナー」では、語頭から連続する3音「マーナ」を共通にするものである。語尾において、引用商標が長音であるのに対して、本件商標では「ス」音である点に微差があるに過ぎない。相違音のある位置は、聴者が注意を払って聴取する部分ではなく、むしろ聞き逃されやすい語尾である。また、語尾音の「ス」音は、複数形を表すものとして多く使用されており、語尾の「ス」音の有無によって、2つの商標を聴別することは難しいと考えられる。
引用商標「マーナ-」の音は、語頭にアクセントが置かれて発音される。これに対して本件商標「マーナス」の音も語頭音にアクセントを置いて発音されるので、両者はアクセントの位置も同一であり、語韻・語調を共通にするものである。「ス」音と長音の1音の相違であっても、それぞれの単語に意味があるときには、単語の観念を理解する聴取者であれば、微細な相違でもそれを聴別する可能性がある(例えば、「マスク」《仮面》と「マーク」《印》、「ミート」《肉》と「ミスト」《霧》等)。しかしながら、本件商標と引用商標の場合にはそのような特殊な事情も存在しない。
以上のとおり、本件商標は、引用商標とその称呼において相紛らわしい類似の商標といわざるを得ない。
審決例として、「ス」音と長音の差異がある商標である2商標が類似であると判断されている審決は多数存在する(甲第4号証,甲第5号証,甲第7号証)。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(イ)請求人の活動
請求人は、1939(昭和14)年に「マーナー」ブランドによる総合化粧品メーカーとして設立されて以来、化粧品、トイレタリー製品を企画開発・製造・販売している(甲第3号証)。
(ロ)引用商標の著名性
請求人は、請求人の名称の中心的な部分である「マーナー」「MARNA」を商号の略称および商標として使用している。この商号の略称および商標は1939年に使用を開始し、その後長年にわたり、請求人会社の製品の全てに継続して使用しているものであり、化粧品を取扱う業界および、化粧品を使用する消費者においては請求人の引用商標は著名性を獲得している。
(ハ)出所混同のおそれ
上記のとおり、引用商標は、請求人の会社名称の中心的な部分であり、請求人は、引用商標を商号の略称および商標として使用している。請求人は、しばしば「マーナー」と略称されている。引用商標は、請求人の商標および請求人を表示するものとして、商品およびその他の広告類に使用されているので、被請求人が本件商標をその指定商品に使用した場合には、本件商標を見る者は、請求人の一連の商標として認識し、あたかも、当該商品が請求人の業務と何らかの関連(請求人から許諾を与えられた関係、請求人と資本関係がある関係等)のある商品であるかのごとく、その商品の出所につき混同を生ずるに到るおそれのあることは明白である。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、本件商標を3音の音構成、引用商標を2音の音構成であると述べているが、日本語の音声学では音数は拍数をもって数えるものであり、本件商標と引用商標はそれぞれ4音の音構成となる(甲第8号証、「教本国語音声学」114頁〜115頁)。
被請求人は、2音3音構成の極めて短い称呼の商標では1音の相違が及ぼす影響は極めて大きいと主張しているが、本件商標および引用商標はともに4音の音構成であり、極めて短い称呼の商標の中の1音相違とは考えられない。ともに4音の音構成である本件商標および引用商標における語尾音の1音の相違では、ことに聴者の注意を引き難い語尾音の相違でもあるので、その相違が全体に与える影響は小さく、両者を非類似とするものではない。
(2)本件商標および引用商標はともに、2音目が長音であることにより、語頭からの3音「マーナ」の部分の語調が同じであり、商標全体の語韻・語調が極めて近似している。全体の語韻・語調が近似している中で、語尾において長音と「ス」音の相違を有するだけと考えられるので、本件商標と引用商標はそれぞれ一連に称呼するときは容易に聴別できるとはいい難いものとなる。
(3)被請求人が参考に挙げた審決例中、「Oaks」と「オーク」の審決(乙第5号証)は、「オークス」が日本競馬の名称として特別の意味を持つ特殊な例であり、本件の類否判断の参考となるものではない。また、審決例中、乙第5号証と乙第6号証は、「ス」音の有無の審決例であり本件のように音構成が同一の場合の参考になるのではない。乙第2号証は、「ORIMPER」と「OLYMPUS」の類否であるのにもかかわらず、被請求人は、「ORIMPER」と「ORIMPUS」の類否を判断したかのように誤記している(答弁書、第4頁)。このように、誤って表示することにより、両者の差異が小さいにもかかわらず非類似と判断されたかのような印象を与えている。同じく、乙第3号証では、「ノベル・ビス」と段落を生ずるように称呼されると被請求人は主張しているが、乙第3号証の商標は、商標自体が「Pal・vis/パルビス」と中間に中黒点を有する商標であり、前半と後半が区切られるように発音されることが一般的なものである。しかしながら、本件商標は中間に中黒点を有するものではないので、本件商標が段落を生ずるように称呼されるとは考えられない。
(4)本件商標および引用商標の相違音である第4音は、引用商標においては弱い音として発音されるものであり、本件商標の第4音も弱く発音されるものである。したがって、この相違音が称呼全体に与える影響は多いと考えられない。
なお、審決(甲第4号証,甲第5号証)と照らしても、本件商標と引用商標が容易に聴別されるものでないことは明らかである。
(5)引用商標「マーナー」は請求人の会社名の著名な略称でもあり、語尾音の「ス」音は、複数形の語尾、所有形の語尾と誤って理解される可能性も高いので、その点からも本件商標は引用商標と類似すると判断されるべきものと思われる。
(6)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当し、同法第46条の規定に基づいて無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標は、「MARNUS」の欧文字と「マーナス」の仮名文字との2段書きよりなり、引用商標は、「MARNA」の欧文字を稍々特殊な態様で横書きしてなるものであるから、外観上は充分に区別しうるものであり、更に、両商標は特定の意味合いを表現するものではないから観念上も充分に区別しうるものである。
次に、称呼についてみるに、本件商標は前記したとおりの構成よりなるものであるから、その構成態様より「マ-ナス」の称呼を生ずるのが自然である。
これに対し、引用商標は稍々特殊の態様で「MARNA」の欧文字を横書きしてなるものであるから、「マーナ-」の称呼を生ずるものである。
そこで、本件商標より生ずる「マーナス」と引用商標より生ずる「マーナー」の称呼についてみるに、前者は長音を含む3音よりなるのに対し、後者は長音を含む2音よりなるものである。しかしながら、両者は第1音「マ」に長音を伴うのに対し、これに続く「ナ」の音を共通にするものであるけれども、前者はこの「ナ」の音に「ス」の音が続くのに対し、後者は長音を伴うものとの顕著なる差異を有するものである。
このように非常に短い音を称呼する場合には、前者の「マ」の音に長音を有するため滑らかに「マ-」と発音され、これに続く「ナス」の音は前音との関係で称呼上段落を生ずるものであって「ナ」と「ス」の各音は1音1音が明瞭に発音され聴取されるものである。
これに対し、引用商標は「マ」と「ナ」にそれぞれ長音を有するものであるから、全体として2音構成として「マーナ-」と淀みなく滑らかに一気に称呼されるものである。
したがって、末尾音が「ス 」か長音かの差異を有するものであるから、このように極めて短い3音と2音を称呼する場合にはその差異が称呼全体に及ぼす影響は極めて大きく、両者は称呼上明瞭に区別しうるものであるから相紛れるおそれはないものというべきである。
語尾音が「ス」と「長音」の差異を有するもの又は「ス」の音の有無であっても、称呼上非類似の商標であるとの審決例は多数存在し、その一例を挙げる(乙第1号証ないし乙第6号証)。
以上の如く、「マーナス」の称呼と「マーナー」の称呼は非常に短い音構成であるから、これらを全体として称呼した場合には、その語韻、語調を異にするものであるから、本件商標と引用商標とは称呼上充分に聴別し得るものである。
したがって、両商標は、外観、称呼並びに観念上のいずれの点についても非類似のものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号には該当しないものである。
(2)請求人は、引用商標は著名であるとして会社案内(甲第3号証)のみを提出して主張しているが、本件商標と引用商標とは前記した如く外観、称呼並びに観念上のいずれの点においても互いに相紛れるおそれのない非類似の商標であることから、本件商標をその指定商品について使用したとしても、商品の出所につき取引者、需要者間において誤認混同を生ずるおそれは全くないものである。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当しないものである。
(3)結論
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものではなく、同法第46条の規定に基づいて無効とすべき理由は存在しない。

第5 当審の判断
本件商標は、別掲(1)のとおり上段に「MARNUS」の欧文字と下段に小さく「マーナス」の片仮名文字よりなるものであるから、その構成文字に相応して「マーナス」の称呼を生ずるものと認められる。
他方、引用商標は、別掲(2)のとおり、やや特殊な態様で「MARNA」の欧文字よりなるものであるから、その構成文字に相応して「マーナー」若しくは「マーナ」の称呼を生ずるものと認められる。
そこで、まず「マーナス」と「マーナー」の両称呼を比較するに、両者は、語尾において「ス」の音と長音「ー」の差異を有するものである。そして、後者の長音「ー」はその前音「ナ」に吸収されがちであるため全体の称呼は平滑な印象を受けるのに対し、前者の「ス」の音は語尾に位置するとはいえ、全体として称呼する場合にはその音構成上他の音とともに明瞭に発音され、聴取されるといえるから、両者をそれぞれ一連に称呼するも、その語調、語感が異なり互いに紛れるおそれはないものと判断するのが相当である。
次に、「マーナス」と「マーナ」の両称呼を比較するに、両者は語尾において「ス」の音の有無の差異を有するものであり、いずれも短い音構成で簡潔な称呼といえるものであるから、この差異が両称呼に与える影響は決して小さいものとはいえず、両者をそれぞれ一連に称呼するも、その語調、語感を異にし、互いに紛れるおそれはないものと判断するのが相当である。
また、本件商標と引用商標は、いずれも特定の意味合いを有しない造語よりなるものと認められるから、観念については比較することができず、かつ、両者は、それぞれの構成よりして外観においても相紛れるおそれはないものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼、観念、外観いずれの点においても類似しないものである。
さらに、請求人は、引用商標の著名性を主張しているが、本件商標は、前記のとおり引用商標とは類似しないものであり、また、提出に係る甲第3号証では、引用商標が本件商標の登録出願時には請求人の業務に係る商品の商標として、取引者・需要者間に広く認識されていたものとするに十分な証拠とは認められず、かつ、請求人の商号の略称として「マーナー」及び「MARNA」が使用され、著名性を獲得していたとする事実も見出せない。
そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用しても、引用商標を直ちに連想又は想起するとは認められず、その商品が請求人又は請求人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
なお、請求人は、過去の審決例を挙げて種々主張しているところがあるが、いずれも本件とは商標の構成を異にし、事案を異にするものであるから、上記判断を左右するものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものということはできないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)本件商標



別掲(2)引用商標

審理終結日 2002-10-15 
結審通知日 2002-10-18 
審決日 2002-10-30 
出願番号 商願平11-116414 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (Z03)
T 1 11・ 271- Y (Z03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 信彦 
特許庁審判長 小池 隆
特許庁審判官 田中 幸一
山口 烈
登録日 2000-12-08 
登録番号 商標登録第4437922号(T4437922) 
商標の称呼 マーナス、マルナス 
代理人 石塚 直彦 
代理人 広瀬 文彦 

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