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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 117 |
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管理番号 | 1069296 |
審判番号 | 取消2000-31366 |
総通号数 | 37 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2003-01-31 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2000-11-15 |
確定日 | 2002-11-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1872845号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1872845号商標の指定商品中「洋服,セーター類,ワイシャツ類,コート」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第1872845号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおり「St.James’s Street」の欧文字を横書きしてなり、昭和59年5月21日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同61年6月27日に登録され、商標権存続期間の更新登録が平成9年5月23日になされているものである。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べた。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品中「被服(運動用特殊被服を除く)」のうち「洋服,セーター類,ワイシャツ類,コート」について、継続して3年以上、我が国において、商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれによっても使用されていない。 よって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、指定商品中「被服(運動用特殊被服を除く)」のうち「洋服,セーター類,ワイシャツ類,コート」について取り消すべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)被請求人は、シャツの展示及び宣伝広告への本件審判請求登録前3年以内の本件商標の使用を主張する。 しかしながら、被請求人のかかる主張は根拠、裏付けのないものであり、失当である。 (2)「商標」とは、業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用するものをいう(商標法第2条第1項第1号)。 したがって、商品への使用としての「展示」及び「広告」があるためには、業としての商品の生産、証明又は譲渡があることが前提となる。商品が業として生産も譲渡も証明もされていないのに見本を展示しても、また、広告をしても、かかる展示や広告への使用は、商標の使用を構成しない。 (3)被請求人は、乙第1号証の1により、本件商標の広告への使用及び販売のための展示の証拠と主張する。 しかしながら、乙第1号証の1は、単なる展示会の案内であり、実際に商品が業として生産又は譲渡されたことを示さない。本件商標が実際にその指定商品(被請求人の主張ではシャツ)に付されていたことを示さない。また、実際に、本件商標を付したシャツが展示されたことを示さない。 (4)乙第2号証は信用できず、偽造を疑わざるを得ない。 請求人は乙第2号証の成立を否認する。 (5)乙第2号証が仮に真正に成立したものであるとしても、その証明しうる内容は、「St.James’s Street」を下げ札等に表示してシャツを展示したということのみである。実際に、「St.James Street」を商標として付した商品が製造され、販売されたことは示さない。 (6)乙第3号証も信用できない。 請求人は乙第3号証の成立を否認する。 (7)乙第3号証の成立が真正であるとしても、乙第3号証が示しうるものは、展示会の案内書を納入したということにすぎない。本件商標を付した商品が製造され、販売されていたことを一切示さない。 (8)以上により、乙第1ないし3号証は、本件商標が指定商品に被請求人により本件審判請求の登録日から3年以内に使用されたことを示さない。 そもそも、真実、本件商標を付した本件商標の指定商品に属する商品があったとしたならば、被請求人は、その商品及び実際に商品と言えるだけの相当な数量製造され販売されたことを示す証拠を提出できた筈である。 被請求人がこれをしなかったということは、「St.James’s Street」を付した商品が実際に製造も販売もされなかったということを明らかにするものであり、したがって、かかる商品の展示もなかったものであり、実際にかかる商品についての広告もなかったことを明らかにするものに外ならない。 (9)よって、本件商標の使用の証明がないから、本件商標の登録は、請求の趣旨記載のとおり、「洋服、セーター類、ワイシャツ類、コート」について取り消すべきものである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 答弁の理由 (1)本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者が本件審判請求に係る指定商品について使用をしている。以下にその事実について証拠を提出して説明する。 (2)まず、被請求人は、下記のとおり、シャツの展示会を東京及び大阪において開催した。 a 東京におけるシャツの展示会 展示会の名称 1999 SPRING & SUMMER TOTAL EXHIBITION 開催場所 東京都千代田区富士見2-10-28 コートメダリオン 開催年月日 1998年11月19日(木)及び同20日(金) b 大阪におけるシャツの展示会 展示会の名称 1999 SPRING & SUMMER TOTAL EXHIBITION 開催場所 大阪府大阪市中央区上町1-3一1 山喜株式会社大阪店1階 開催年月日 1998年11月12日(木)及び同13日(金) この展示会の開催に当たり、本件商標を表示した展示会の広告案内書を作成して取引者に配布した。さらに、この展示会においては、広告案内書に記載のとおり、本件商標をブランドとして表示したシャツを展示して宣伝した。展示会の開催の事実を証するために、「1999 SPRING & SUMMER TOTAL EXHIBITION」(シャツの展示会)の広告案内書及び封筒を乙第1号証の1及び乙第1号証の2として提出する。 当該展示会の広告案内書には本件商標が表示されており、この広告案内書によって本件商標が宣伝・広告として使用されたことが明らかである。 また、当該展示会において、本件商標をいわゆるブランドとして表示されたシャツが販売のために展示されたことも明らかである。 (3)上記展示会のうち、大阪におけるシャツの展示会の開催状況について説明する。 当該展示会は、山喜株式会社の協力のもとに開催したもので、山喜株式会社では、広告案内書約140部を主に京阪神地区の百貨店に配布して広告し、約40社からの来場を得た。このような被服関係の展示会では、各社の商品の購買担当者のみならず、デザイン担当者等関連業務者が連れ立って来場されるのが常態であるところ、当該展示会においても同様、一社当たり3〜5名の方が来場され、極めて盛大に開催することができた。 上記の大阪におけるシャツの展示会開催の状況を証するために、山喜株式会社の代表者および当該展示会開催の担当責任者の連名の証明書を乙第2号証として提出する。 当該展示会の広告案内書には本件商標が表示されており、この広告案内書によって本件商標が宣伝・広告として使用されたことが明らかである。また、当該展示会において、本件商標をいわゆるブランドとして表示されたシャツが展示されたことも明らかである。 東京都千代田区富士見2-10-28 コートメダリオンにおいては、上記大阪市におけるシャツの展示会よりも多数の会社から多数の来場者を得て開催することができたが、本件審判請求の趣旨に対する証拠としては、上記証拠で十分であるところから省略する。 (4)上記展示会の広告案内書および封筒は、被請求人が、東京都台東区の印刷業者に依頼して広告案内書および封筒各1,400部を製作し、対価200,000円(税抜)を支払った。 この事実を証するために、展示会の広告案内書及び封筒(写)並びに納品書(控)(写)を添付したワークスの証明書を乙第3号証として提出する。 上記のごとく、本件商標は、展示会の広告案内書が1,400部という多数製作され、かつ、これが東京都と大阪市において関係業者に配布されたことが明らかである。本件商標が当該シャツの展示会の広告案内書に表示されている以上、本件商標が、シャツについて宣伝・広告されたことが明らかである。 2 弁駁に対する答弁 (1)「商品の使用としての『展示』があるためには、業としての商品の生産、証明、譲渡があることが前提となる。」とする請求人の主張は、商標法の解釈を歪曲した独自の見解を殊更に持ち込み、商標法に規定のない要件を課そうとするものであって、妥当なものではない。 すなわち、「商品を生産し、証明し、又は譲渡する」ことは、商標法第2条第1項第1号で規定する商標の成立要件としての主体(者)に係る要件であり、商標の使用の成立要件ではない。商標についての「使用」の定義規定として商標法第2条第3項第7号が規定された趣旨は、商標の広告的な使い方にも信用の蓄積作用があり、また、このような他人の使い方は商標の信用の毀損を招くものであり、近年広告宣伝手段の発達に伴って商標の広告的機能が増大してきたところから、商標を広告等に用いる場合もその「使用」とみるべきだというところにある。この規定によって、その広告自体が商標法上の「使用」であって、商品の生産、譲渡等が前提とされているものではない。 (2)審判請求書(「審判弁駁書」とすべきところ誤記したものと認める。)第3頁第4行目から第7行目において、「乙第1号証の1は、単なる展示会の案内であり、実際に商品が業として生産又は譲渡されたことを示さない。本件商標『St.James’s Street』が実際にその指定商品(被請求人の主張ではシャツ)に付されていたことを示さない」と述べている。 しかし、既述のごとく、商標法が、商標についての「使用」を商品の生産、譲渡等を前提としていない以上、この主張が誤っていることは明らかである。 (3)審判弁駁書第3頁第8行目から第9行目において、「実際に、『St.James’s Street』を付したシャツが展示されたことを示さない」と述べている。 しかし、乙第1号証の1、乙第1号証の2及び乙第2号証を併せてみるとき、「St.James’s Street」を付したシャツが展示されたことは、容易に認定できるところである。 (4)審判弁駁書第4頁第16行目から第20行目において、「その証明しうる内容は、『St. James’s Street』を下げ札等に表示してシャツを展示したということのみである。実際に、『St.James’s Street』を商標として付した商品が製造され、販売されたことは示さない」と述べている。 しかし、既述のごとく、商標法は、商標の広告的な使い方にも信用の蓄積作用があるところから、商標の広告自体を使用と規定しているのであって、商品が製造され、販売されたことを要件としていないから、請求人の主張は妥当しない。 (5)審判弁駁書第6頁第4行目から第7行目において、「乙第3号証が示しうるものは、展示会の案内書を納入したというにことにすぎない。本件商標『St.James’s Street』を付した商品が製造され、販売されていたことを一切示さない」と述べている。 しかし、被請求人は、「St.James’s Street」の登録商標が記載された展示会の案内書が1400部という多量製作され、配布され、展示会が多数の来場者を得て開催されたことを証明するものであって、単に「展示会の案内書を納入した」というに止まるものではない。 また、既述のごとく、商標法は、商標の広告的な使い方にも信用の蓄積作用があるところから、商標の広告を「使用」と規定しているのであり、商品が製造され、販売されたことを要件としていないから、このことを示す必要はない。 したがって、この請求人の主張は妥当しない。 (6)審判弁駁書第6頁第11行目から第19行目において、「真実、本件商標を付した本件商標の指定商品に属する商品があったとしたならば、被請求人は、その商品及び実際に商品と言えるだけの相当な数量製造され販売されたことを示す証拠を提出できた筈である。被請求人がこれをしなかったということは、『St.James’s Street』を付した商品が実際に製造も販売もされなかったということを明らかにするものであり、従ってかかる商品の展示もなかったものであり、実際にかかる商品についての広告もなかったことを明らかにするものに外ならない」と述べている。 しかし、乙各号証を総合してみるとき、「St.James’s Street」の商標が展示会の案内書及び展示会を通じて宣伝・広告に使用されたことは明らかである。商標の広告的使用によって商標に信用蓄積作用が生じるところから、商標の広告的使用が商標法上の使用と規定され、商品の製造や販売が商標の使用の要件とされていない以上、殊更、これを証明する必要はない。 よって、この請求人の主張は、妥当なものではない。 (7)請求人は、乙第2号証及び同第3号証について、形式上の些細な点を取り上げて信用できないとした上で、乙第2号証については「偽造を疑わざるを得ない」(審判弁駁書第4頁第14行目)、乙第3号証については「偽造であることは明白である」(第6頁第1行目及び第2行目)と述べている。 このような主張は、被請求人が提出した証拠について、実体を伴わない些細な点を取り上げて殊更に誹謗するものであって、妥当なものでない。 第4 当審の判断 (1)被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者が本件商標を本件審判請求に係る指定商品中の商品「シャツ」について使用した旨主張し、上記の乙各号証を提出している。 また、被請求人は、他に本件商標を使用した事実また本件商標をしないことについて正当な理由があることを主張、立証しない。 (2)これに対して、請求人は、「『商標』とは、業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用するものをいう(商標法第2条第1項第1号)。したがって、商品への使用としての『展示』及び『広告』があるためには、業としての商品の生産、証明又は譲渡があることが前提となる。商品が業として生産も譲渡も証明もされていないのに見本を展示しても、また、広告をしても、かかる展示や広告への使用は、商標の使用を構成しない」旨主張し、本件商標の使用について証明がないと主張する。 (3)そして、商標法第2条第1項の規定によれば、「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」(「標章」)であっても、同項第1号又は第2号に該当しないものは、この法律にいう「商標」でないことは明らかである。 そうすると、請求人において上記(2)のように主張し、商標権者である被請求人が本件商標を使用した事実を争っている以上、被請求人としては、「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用するもの」(商標法第2条第1項第1号)として本件商標を被請求人が商品「シャツ」に使用した事実を立証しない限り、本件審判請求に係る指定商品について本件商標の登録の取消しを免れない。 (4)ところが、被請求人は、被請求人が業として商品「シャツ」を生産し、証明し、又は譲渡する者であって、その「シャツ」について商標法にいう「商標」として本件商標を使用したとの事実を立証することをしないで、「商標の広告的使用が商標法上の使用と規定され、商品の製造や販売が商標の使用の要件とされていない以上、殊更、これを証明する必要はない。」旨主張しているものである。 そして、被請求人は、このように主張する根拠として商標法第2条第3項第7号を挙げているが、同号の行為は、商標法にいう「標章」について「使用」とされる行為の一として掲げられているものであって、「商標」について「使用」とされる行為でないことは、同法第2条第1項及び同第3項の規定それ自体から明らかである。 商標法にいう「標章」は、同法にいう「商標」より広い概念であるから、「標章」の使用であっても「商標」の使用とはいえない場合があるものである。 したがって、この点の被請求人の主張は採用できない。 (5)乙第1号証の1は、被請求人が主催したとするシャツの展示会の広告案内書であり、これには、この展示会に出品のシャツのブランドとみられるものが並べて記載されており、「St.James’s Street」もそのうちの一つである。しかし、この広告案内書に並べて記載されているブランドの多くは明らかに他人の著名ブランドであり、被請求人が使用の商標とは認められない。 そうしてみると、被請求人が件外山喜株式会社の協力のもと、上記シャツの展示会を開催し、その開催をするに当たって上記乙第号証1号証の1に示す広告案内書を得意先に配布したこと及びこの展示会において商標「St.James’s Street」を付したシャツが展示されたことが事実としても、この展示会に出品のシャツに使用のブランド(商標)は、他人の商標であって被請求人が使用の商標ではないものと疑うべき相当の根拠があるものといえる。 そして、他に上記展示会に出品のシャツに使用の商標「St.James’s Street」が、被請求人が使用の商標であると認め得る証拠はない。 なお、被請求人は、商標登録原簿に本件商標の商標権者として登録されているが、その事実により上記認定は左右されない。 (6)そうすると提出の乙各号証によっては、被請求人が本件商標を商品「シャツ」について使用した事実を認めることはできない。 (7)したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、本件審判請求に係る指定商品「洋服,セーター類,ワイシャツ類,コート」について取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する |
別掲 |
本件商標![]() |
審理終結日 | 2002-06-03 |
結審通知日 | 2002-06-06 |
審決日 | 2002-10-03 |
出願番号 | 商願昭59-51660 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(117)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 宮田 金雄 |
特許庁審判長 |
野本 登美男 |
特許庁審判官 |
上村 勉 山下 孝子 |
登録日 | 1986-06-27 |
登録番号 | 商標登録第1872845号(T1872845) |
商標の称呼 | セントジェームスズストリート |
代理人 | 佐藤 雅巳 |
代理人 | 藤田 隆 |
代理人 | 古木 睦美 |