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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない 009
審判 全部無効 商3条1項2号 慣用されているもの 無効としない 009
審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効としない 009
管理番号 1063341 
審判番号 審判1998-35607 
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-12-04 
確定日 2002-08-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第3174301号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.本件商標
本件登録第3174301号商標(以下「本件商標」という。)は、平成5年3月17日に登録出願、別掲(1)に示すとおり、「ゾーンアナライザーシステム」の片仮名文字を横書きしてなり、第9類「測定機械器具」を指定商品として、平成8年7月31日に設定登録がされたものである。

2.請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第21号証を提出した。
(1)本件商標は、商標法第3条第1項第2号、同第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、登録を受けることができないものであり、その登録は、同法第46条第1項第1号により無効とすべきである。
(A)利害関係
請求人は、甲第1号証で明らかなように分析機械器具の製造・販売業者であり、平成元年(ワ)第8292号及び平成2年(ワ)第8050号の各損害賠償等請求事件において、いずれも被請求人を被告とした原告である(甲第1号証)。
上記甲第1号証で、請求人は、阻止円測定装置及びそのためのプログラムを「ゾーンアナライザーシステムZA‐FM2暫定版」(数字の「2」は、ギリシャ文字で表すべきところ、印刷上の使用文字の制限により前記のとおりとした。以下同じ。)及び「ゾーンアナライザーシステムZA‐FX2暫定版」と呼んでおり、平成元年、平成2年当時から本件商標の登録査定時まで「ゾーンアナライザーシステム」を「阻止円測定装置」に使用しており、上記事実から、請求人は、本件審判請求について利害関係を有する者である。
(B)商標法第3条第1項第3号違反について
本件商標「ゾーンアナライザーシステム」は、11文字で、長い称呼を有する商標であり、観念的には「ゾーン」「アナライザー」及び「システム」に分離することができるので、以下、それぞれについて述べる。
(ア)「ゾーン」について
(a)「ゾーン」は、甲第3号証によれば、「ゾーン[zone]地帯。区域。堺。…」の記載がある。
また、外来語のうち日本において定着した文字を記載してある甲第4号証で「ゾーン」を調べると、「ゾーン[zone<ギ(おび、ひも)]地帯、地域、範囲」の意味を有する。
したがって、測定機械器具について「ゾーン」の文字を使用することは、測定対象物の範囲を意味することになる。特に、異なる区域、特殊区域の大きさを測定解析する測定機械器具においては、測定範囲の対象物そのものを表すことになり、商品の内容そのものを表示する。
(b)さらに、被請求人の業界では、区域自体を測定する場合がある。例えば、先に述べた甲第1号証の訴訟対象物となった「阻止円測定装置」が特定区域を測定する機械である。
この「阻止円測定装置」を説明するに当って、「微生物科学」(甲第5号証)の記載を利用して説明する。
この甲第5号証では、「一般に、抗微生物作用を調べる方法に希釈法と拡散法の二種類がある。そのうちの拡散法は、試験菌を接種した寒天平板培地にステンレス製の底のないシリンダーを立て、その中に既知の濃度の供試薬物溶液を入れた後培養し、一定時間後に観察すると、カップ周辺に増殖阻止の起こった透明な部分(阻止円、growth inhibitory zone)が出現する。・・・」と記載されている。
ここで、当該カップ周辺に増殖阻止の起こった透明な部分は、「阻止円」と日本語に略されている。これは、阻止円を日本語に略する際、「ゾーン」の部分をそのまま「ゾーン」とせず、増殖阻止の部分がほぼ円形となることより、この形を「円」と略し一般的となったものである。この阻止円の大きさを測り解析する機械が先に述べた「阻止円測定装置」である。
したがって、この機械において、特定の「ゾーン又は区域」を測定することは、商品の測定範囲そのものであり、商標法第3条第1項第3号の商品の特性を表すことになり、登録を受けることができない。
(c)また、増殖阻止の起こった透明な部分である「阻止円」を単に「ゾーン」という使い方もする。例えば、被請求人発行のパンフレット(甲第6号証)には、「ゾーンリーダーDM3」(阻止円計測・解析器)の商品について説明されている。このパンフレットには、「シャーレー中の阻止円を直読目盛入りのスクリーン上に拡大投影する測定器でノギス計測に代わる安全かつ迅速な方法です。拡大投影された試料を目で確認して直読しますので測定値に対する信頼度も高く、ハンドル操作でゾーンをスクリーン上の最良直読位置に誘導でき、かつ、ゾーンの明るさを自由に変えられる輝度調節装置を備えております。小型、軽量で場所をとらず移動も容易なコンパクト設計の装置です。」という記載がある。すなわち、被請求人は、このパンフレットにおいて、「ゾーン」の言葉を商標とは認識しておらず、「阻止円」を意味するものとして使用している。
また、同パンフレットには、「アンティバイオティックリサーチというこの専門分野に積極的に取り組んで以来、弊社は阻止円を拡大投影して読み取るゾーンリーダの開発からスタートし、次いで、この分野でのコンセプトを技術面に発展させてパターン認識を基礎にしたゾーンプロセッサーを完成させ阻止円自動測定と力価自動計算記録を…」と記載されており、「阻止円」を「ゾーン」とし、「読み取る」を「リーダ」として使用したものがある。
甲第7号証の登記簿謄本から同パンフレットの発行日は、少なくとも平成4年5月1日以前であり、本件商標の登録査定の発送日である平成8年2月9日より前に、被請求人本人が「阻止円=ゾーン」として認識し、商標としてではなく、単に商品説明として「ゾーン」を「阻止円」の意味に使用していた。
(d)さらに、細菌検査と阻止円計測のパンフレット(いずれも甲第8号証)には、「阻止円自動計測器」として商品名「オリエンタル ゾーン プロセッサー」が記載され、商品説明文で「オリエンタル ゾーン プロセッサーは、平板又はシャーレーに培養された阻止円を高性能電子回路を用いて計測し、その結果に2次元デジタル演算処理を行って、正式法力価値をプリントアウトします」という記載があり、なおさらに、「高性能ITVカメラの走査線によりゾーン直径を測定するとともに、…。」と記載されている。
また、器種の欄で「半自動ゾーンプロセッサーMと全自動ゾーンプロセッサーF」の2器種を表示し、機械の種類としての「ゾーンプロセッサー」であると認識している。
上記記載から、商品名「オリエンタル ゾーン プロセッサー」中の「ゾーン」は「阻止円」を意味するのは明らかである。このように、同業他社においても「ゾーン」を「阻止円」の意味として使用している。
なお、上記パンフレットの作成日に関する記載はないが、当該会社の電話番号の局番が3桁であることより、平成3年1月1日以前に作成したものであり、以前から当業者が「阻止円」の意味として「ゾーン」の文字を使用していたことになる。
(e)また、世界的に著名で日本においても著名な雑誌である「MICRO SCOPE(1972)20」(甲第9号証)で、「阻止円」を「inhibition zone」としないで、単に「zone」と記載した箇所も多数ある(甲第9号証及び同第10号証)。
(f)したがって、被請求人のみならず、同業他社、及び当該計測器の分野においても、「ゾーン」の文字は「阻止円測定装置」において、測定対象物である「阻止円」の意味に認識され、かつ、使用されており、商標法第3条第1項第3号に例示されている商品の特性、効能、用途等を表示するにすぎないものであり、登録を受けることができない。
(イ)「アナライザー」について
「アナライザー」は、甲第3号証によれば、「アナライザー[analyzer]分析装置」の記載がある。また、甲第4号証によれば、「アナライザー[Analyzer(分析機)]聴取者の好み、反応を調査分析する記録装置」の意味を有する。このように「アナライザー」あるいは「アナライザ」の文字は、分析機そのものを表している。そして、現代日本の生活を支えている商品を収容した現代商品大辞典に「FFTアナライザ」、「スペクトラムアナライザ」、「ロジックアナライザ」等種々の「アナライザ」の文字を使用した電子測定分析器が多数ある。また、これらの電子測定器の製造業者としては、横河北辰電機、岩崎通信機等多くの業者が記載されている。このように「アナライザー」の文字は、分析機を意味するものとして、電子測定分析器の製造業者にごく一般に使用されている。
そのうえ、同業者の製造業者、販売業者のパンフレットを見てみると、例えば、株式会社レスカのパンフレット(甲第12号証)には、商品名として「ビデオパターンアナライザー」が使用されている。さらに、株式会社三啓のパンフレット(甲第13号証)には、商品名として「エリアアナライザー」、「ウィズスアナライザー」が使用されている。
これらの商品名の一部に「アナライザー」が使用されており、「アナライザー」の文字を見ただけで一般需要者は何らかの「分析機能を有する測定機」に使用するものと認識するだけであり、商標として、すなわち、識別標識として使用されているものではない。
したがって、このような「アナライザー」なる商標を「分析機能を有する測定機械器具」に使用しても、単に「測定機械器具」の特性、効能、用途を表示するにすぎないものであり、自他商品識別力を認めることができず、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録を受けることができない。
(ウ)「システム」について
「システム」は、甲第3号証によれば、「システム[system]複数の要素が有機的に関係し合い、全体としてまとまった機能を発揮している要素の集合体。組織。系統。」の記載がある。また、甲第4号証によれば、「システム[system(一緒に置かれたもの)](1)組織、制度。〈明〉(2)体型、系統。〈明〉(3)方式〈明〉(4)[電算]問題を処理するための方式。〈現〉」の意味を有する。「システム」は、上述のような意味を有し、一般的には複数のものが有機的に結合し、全体として一定の目的を達成するための組織体、系統あるいは方式等をいう。
したがって、「システム」なる文字を「測定機械器具」に使用しても、単に「測定機械器具」の測定方式を表示するにすぎないものであり、自他商品識別力を認めることができず、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録を受けることができない。
(エ)「ゾーン」「アナライザー」「システム」の3つの文字を結合した商標について
甲第14号証の商標法第3条第1項第3号の審査基準には、「1.商品の産地、販売地、品質、…もしくは時期を表示する2以上の標章よりなる商標は、本号に該当するものとする。」という記載が掲げられている。本件商標にあてはめると、前述したように「ゾーン」「アナライザー」「システム」のいずれも商標法第3条第1項第3号に該当する標章であるので、この基準に該当し、「ゾーンアナライザーシステム」全体の商標としても商標法第3条第1項第3号に該当する商標で、自他商品識別力のない商標であり、「測定機械器具」を扱っている製造業者・販売業者のいずれもが表示するために必要であり、また、将来必要とするものであるから一私人に独占権を付与するに値せず、独占不適応な商標である。
(C)商標法第3条第1項第2号違反について
微生物学検査等の分野における「測定機械器具」の製造業者・販売業者の取引業界の実情を考慮すると、「ゾーンアナライザーシステム」は、同業者に慣用的に用いられている慣用商標であり、商標法第3条第1項第2号に該当し、識別力がない。
甲第9号証において、「コロニー計測(colony counting)とゾーン測定(zone measurements)という2種類の微生物学的分析を考慮する必要がある」と記載され、さらに、「For zone analysis,the area or diameter measurements can be…」との記載があり、すなわち、翻訳すると、「ゾーン分析の場合も、面積や直径の測定は…」と記載され、このゾーン測定により得た値を分析することを学者、研究者や当該装置の製造業者・販売会社たちは、上記のように「zone analysis」すなわち、「ゾーンアナライズ」と呼んでいることが記載されている。また、すでに述べたように「分析装置」を意味する「analyzer」の称呼である「アナライザー」に「ゾーン」及び「システム」の文字を結合し「ゾーンアナライザー」又は「ゾーンアナライザーシステム」として、「分析装置」に使用することは当該分析装置の同業者によって慣用的に使用されているものである。
したがって、「ゾーンアナライザーシステム」には、識別力は認められず、商標法第3条第1項第2号に該当する。
また、「ゾーン」、「アナライザー」、「ゾーンアナライザー」、「ゾーンアナライザーシステム」の各文字は、上記パンフレット(甲第6号証、同第12号証及び同第13号証)から分析機械器具の製造・販売業者等の同業者によって慣用的に使用されていることが明らかであり、「分析機械器具」の分野では識別力はなく商標法第3条第1項第2号に該当する。
甲第1号証の訴訟対象物となった「阻止円測定装置」について、請求人が「ゾーンアナライザーシステムZA‐FM2暫定版」及び「ゾーンアナライザーシステムZA‐FX2暫定版」と呼んでいることが、甲第1号証に記載されている。昭和60年9月に「ゾーンアナライザーシステムZA‐F2」のプログラムが完成し、同61年2月には、「ゾーンアナライザーシステムZA‐FM2暫定版」の販売を開始した旨の記載がある。したがって、少なくとも昭和61年2月頃から本件商標の登録査定時までに「ゾーンアナライザーシステム」を「阻止円測定装置」に使用しており、同業者間で慣用的に用いられている。
また、甲第1号証には、「ゾーンアナライザーシステムZA‐FM2暫定版」及び「ゾーンアナライザーシステムZA‐FX2暫定版」は、「ゾーンアナライザーシステムZA‐FM」及び「ゾーンアナライザーシステムZA‐FX」の改良型であるとされており、「ゾーンアナライザーシステムZA‐FM2暫定版」及び「ゾーンアナライザーシステムZA‐FX2暫定版」以前に既に「ゾーンアナライザーシステム」なる商品名がその装置に使われ、製造販売されていたことが記載されている。この事実からも「ゾーンアナライザーシステム」なる商品名は、同業者間で慣用的に用いられているといえる。
したがって、甲第9号証及び上記のパンフレット等を考慮すると、本件商標の登録査定時(平成8年2月9日)において、「ゾーンアナライザー」ないし「ゾーンアナライザーシステム」は、同業者間で慣用的に用いられていたものであり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第2号に違反し、商標法第46条第1項第1号により無効理由に該当する。
(D)商標法第4条第1項第16号違反について
上述したように、「ゾーンアナライザーシステム」の標章中に「アナライザー」の文字を含んでいるため、「分析機能を有しない測定機械器具」に使用した場合には、「分析機能を有する測定機械器具」であると誤認を生ずるから、商標法第4条第1項第16号に該当し、商標法第46条第1項第1号により無効理由を有する。
(E)請求人の先願との関係について
また、請求人が先に出願した商願平1―38078号の商標登録出願(甲第15号証)は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとの理由で拒絶査定となっている。
したがって、本件商標も同様に、商標法第3条第1項第3号、同第2号、あるいは、同法第4条第1項第16号に該当する商標であり、同法第46条第1項第1号により無効理由を有するものである。
(2)答弁に対する弁駁
(A)利害関係について
被請求人は、既判力等の点を述べているが、甲第1号証を挙げたのは、利害関係の一例を挙げたにすぎず、既判力を云々するために挙げたものではない。すなわち、本件商標の如く、商標法第3条第1項各号に該当するおそれのある商標の場合、商品の種類、あるいは機能表示であるがゆえに、商標法第26条に該当し、その文字を使用することは可能であるが、当然、この文字を使用する可能性が極めて高いので、当該商標を無効にすることに法律上の利害関係を有するもので、当該登録商標に係る文字を使用する可能性が高いことの一つの理由として、甲第1号証を挙げた係争の事実があったことを示したものである。
我が国商標法において採用する登録主義法制下、商品の種類名等の表示として使用する可能性のある当業者は、商標登録を無効にすることについての法律上の利益がある。
また、被請求人は、「本件商標に基づいて商標権侵害であると警告等をしたことがない」場合には、商標登録を無効にすることについての法律的利害がないと主張する。
しかしながら、被請求人は、甲第16号証ないし同第20号証の各広告において「ゾーンアナライザーシステムは弊社の登録商標です。類似品にご注意下さい。」と広告文を掲載している。このような被請求人の行為は、相手を特定はしていないが、需要者、同業者に一種の警告をしていることになり、実質的な警告であり、被請求人の主張は妥当でないことを弁駁する。
(B)商標法第3条第1項第3号違反について
(ア)商標の一体性についての答弁について
被請求人は、まず「ゾーン」「アナライザー」「システム」の3つの語に分解するのではなく、「ゾーンアナライザーシステム」と隙間なく一連に表記される商標で、この13文字からなる商標が一体として有機的に機能する商標である旨答弁している。
しかしながら、本件商標の出願段階において、被請求人は、指定商品の減縮補正を行い、他人に係る引用商標との関係で「ゾーンアナライザーシステム」の商標の識別力を有する部分が「ゾーン」であると自認していたにも拘らず、その後に無効審判を請求されたときに、一転して、商標全体として有機的に機能すると主張することは許されないと解する。
このように、本件商標の出願段階における被請求人の対応は、答弁書の主張と相違することが明らかであることを弁駁する。
(イ)「アナライザー」及び「システム」について
次に、商標法第3条に該当する可能性が極めて高い「アナライザー」及び「システム」のそれぞれの文言について先に述べる。
被請求人は、「『アナライザー』及び『システム』の文字を含む語の登録例、出願例が数多く存在し、『アナライザー』の文字を見ただけで、一般需要者が『分析機能を有する測定機』に使用されるものと認識するだけであるという請求人の主張は誤りである。」と述べている。
しかしながら、被請求人の主張は誤りであるので以下弁駁する。
乙第1号証ないし同第3号証に記載されている登録商標等が存在することは認める。これらの商標が存在するのは、一般的に識別力を有しない言葉であっても、他の言葉と結合させることにより、商標全体として識別力が生じる場合があるからである。この場合、結合される商標が商品との関係で識別力がある商標の場合、全体の商標が識別力のある商標の部分の識別力により商標が機能するからである。例えば、乙第2号証の「運転記録アナライザー\memorukun」の場合がこれにあたる。すなわち、「運転記録アナライザー」の部分は識別力がないが、「memorukun」については、十分識別力があると解されるからである。そして、このような商標を登録したとしても、第三者が商品「運転記録分析機」に「運転記録アナライザー」という表示を使用しても、商標法第26条により、商標権の権利が及ばないため登録してもさしさわりがなく登録される。このため、識別力のない部分を含む商標が乙第1号証ないし同第3号証に示されるように登録等されている。
なお、識別力のない語同士を結合した場合には、甲第14号証に示す審査基準に示す如く拒絶となる。
特に、本件商標は、「ゾーン」自体が識別力を有するか否かは後述するが、「ゾーン」の部分と、結合する文字が「アナライザー」と「システム」との二つの文言であり、結合させる二つの文言は、識別力のない商標である。例えば、「分析装置(analyzer)」に「アナライザー」の文字を使用した場合、需要者は、これを商標と認識することはなく、単に商品の種類である分析装置を観念するものであり、同様に「システム」の文字も需要者に測定器に使用される商標と認識される文字ではない。
また、被請求人は、「『システム』については、『システム』なる文字を『測定機械器具』に使用したとしても、単に『測定機械器具』の『測定方式』を表示するか、少なくとも、そのような認識が一般的であることが証拠によって明らかにされていない。」と答弁しているが、現代商品大辞典(甲第21号証)に示す如く部材と部材を組み合せて製作した構成あるいは方法をいうことは、産業界において一般的に広く行われている文言である。このことは、被請求人の使用していたパンフレット(甲第6号証)の記載においても明らかである。
(ウ)「ゾーン」について
(a)「ゾーン」の概念は、範囲、領域の意味を有し、この点が最も重要である。すなわち、被請求人は、甲第6号証の反論で、「しかしながら、甲第6号証を仔細に検討すると、この記載された部分のみから『ゾーン』の語が直ちに『阻止円』のみの意味を表示するものとして使用されているものとは認められない。仔細に検討すれば明らかなように、ここでの『ゾーン』の語は、単なる『測定ゾーン(測定領域)』を意味し、・・・」と答弁している。
すなわち、被請求人は、「ゾーン」の語は「阻止円」の意味ではないが、「測定ゾーン(測定領域)」であると認めて使用しているものである。このことは、「ゾーン」の語が少なくとも「測定領域」、すなわち、測定する対象区域であることを認めていることにほかならない。つまり、「測定する対象区域」は、商標法第3条第1項第3号にいう商品の品質等の商品の特性に含まれるものである。
(b)被請求人は、甲第8号証について、「ここで、一般の商品名称としては、『阻止円電子計測器』とは別に『オリエンタル ゾーン プロセッサー』の語を使用している」と述べているので、この点につき弁駁する。
被請求人の使用するパンフレットである甲第6号証の例で述べると、パンフレットに「ホールパンチャーAHP(全自動穿孔装置)」と記載する如く、商品名称と商標名を英語名で商標として使用することは通常行われていることであり、被請求人が述べる如く、商品名称と商標名を完全に分けて、別々の意味で使用していると断言できない。逆に、「阻止円=ゾーン」と解釈して使用しているともとれる。すなわち、甲第8号証のパンフレットの「オリエンタル ゾーン プロセッサー」の説明に記載されているように、このパンフレットの制作者が「オリエンタル」という商標を使用して、商品「阻止円電子計測器」に「ゾーン=阻止円」という意味から、これを測ることを意図したプロセッサーであるということができる。このように、この甲第8号証からも明らかなように、「ゾーン」の語が「阻止円」を意味するものとして使用されることが一般的である。
(エ)甲第15号証の出願について
請求人は、自己の出願(甲第15号証)においても、「Zone Analyzer」の文字部分の識別性については、疑問を持っていたもので、審判請求にあたって、自己の都合のよいように、初めて識別力を有しないと主張しているものではない。
以上のとおり、被請求人の答弁は、いずれも的はずれであり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同第2号、あるいは、同法第4条第1項第16号に該当するので、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。

3.被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第5号証を提出した。
(1)審判請求の利害関係について
請求人は、別件事件の判決を証拠として提出し(甲第1号証)、本件審判請求について利害関係を有すると主張している。
しかしながら、そもそも「利害関係」は、当該商標登録を無効にすることについての法律的利害関係をいうのであって、別件で争っていたことは、本件審判請求の利害関係とはならない。すなわち、民事判決の理由中に示された判断は、既判力を有しない(民事訴訟法第114条第1項)ので、別件事件の判決理由中で、当該商標の使用が記載されていたからといって、それが、そのまま本件審判請求の利害関係を証明する証拠となるものではない。換言すれば、かかる判決理由中の判断には既判力がなく、したがって、それを他の判断に採用するための証拠能力がないのであり、証拠能力のないものに基づいて利害関係を云々することは誤りである。
このように、本件審判における請求人の利害関係の主張は、およそ見当はずれであり、審判請求は、不適法として却下されるべきものである。
(2)商標法第3条第1項第3号違反の無効理由について
(ア)請求人は、本件商標「ゾーンアナライザーシステム」について、これを「ゾーン」、「アナライザー」、「システム」の3つの語に分解し、それぞれ「阻止円」、「分析装置」及び「組織、系統」の意味であるなどと縷々述べているが、本件商標は、「ゾーンアナライザーシステム」の13文字が隙間なく一連に表記される商標であって、この13文字からなる商標が一体として有機的に機能する商標である。
したがって、個々の語に分解して解釈することは誤りである。
(イ)仮に、本件商標が「ゾーン」、「アナライザー」、「システム」の3つの語に分解でき、そして、それらの各語が「地帯」、「分析機」、「組織」等の意味を有する言葉であるとしても、それだからといって直ちに、それらの語を使用する商標が全て登録不適格とはならないことは明らかであって、上記の「ゾーン」、「アナライザー」、「システム」の語を含む商標に限っても、乙第1号証ないし同第3号証に示すように数多く存在する。したがって、これらの語が何らかの意味を有するからといって、直ちに、商標法第3条第1項第3号に該当するわけでもない。
(ウ)次に、請求人は、本件商標のうちの「ゾーン」、「アナライザー」、「システム」の各文字を「測定機械器具」に使用すると、「測定対象の範囲を意味し」、「商品の特性、効能、用途等を表示するにすぎない」、あるいは、「測定方式を表示するものにすぎない」旨主張するが、これらの主張は誤りである。
(a)まず最初に、請求人は「ゾーン」の文字に対し、「ゾーン」の語は「阻止円」を意味するとして、甲第3号証ないし同第6号証、甲第8号証ないし同第10号証にその記載があるとする。特に、被請求人の発行に係るパンフレット(甲第6号証)においても、「ゾーン」の語は、商標として認識して使用されているものではなく、単なる商品の説明文字として使用しているとする。
しかしながら、甲第6号証を仔細に検討すると、この記載された部分のみから「ゾーン」の語が直ちに「阻止円」のみの意味を表示するものとして使用されているものとは認められない。仔細に検討すれば明らかなように、ここでの「ゾーン」の語は、単なる「測定ゾーン(測定領域)」を意味し、この種のスクリーン等を使用する機器において、その投影領域を見やすくするため、この種の表現をするのは当たり前のことであり、殊更、「阻止円」を言うとの請求人の主張は誤りである。
また、請求人は、「ゾーン」が「阻止円」のみを意味するとして、一私人が翻訳した翻訳文を提出している(甲第10号証)。しかしながら、そもそも、ある語の翻訳は、その翻訳者の全人格的存在をかけて、その語の持つ意味観念を他の語に置き換える作業であり、例えば、「放送局」を「ブロードキャストステーション」と訳そうが、「電子台」と訳そうが、それはそれでよいのである。その翻訳が誤りかといえば、その翻訳がよい翻訳か、悪い翻訳かの問題は生じても、それを誤りとするまでのものではないことは明らかである。問題は、ただ、その翻訳、そのように置き換えたことが社会一般に通用するかどうかだけなのであり、社会一般に抵抗なく通用するのが、いわゆる、よい翻訳なのである。このように恣意的な翻訳が存在することは、社会一般によく見られることであるので、翻訳の例があるということだけでは、本件審判の対象である本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するかどうかの証拠とはなり得ない。すなわち、甲第10号証その他請求人の提出する証拠のみでは、その翻訳が社会一般において通用するものかどうか、つまり、「普通に用いられているかどうか」は明確ではなく、このような証拠のみで、商標法第3条第1項第3号を適用することは誤りである。
次に、仮に、「ゾーン」の語が「阻止円」を意味するものとしても、「測定機械器具」の分野において、商品の使用方法を表示するものとして、「普通に用いられていた(その使用が一般的だった)かどうか」については、少なくとも、請求人提出の甲各号証からは明らかではない。すなわち、それを証明する証拠はないのである。もしも、「ゾーン」が「阻止円」を意味し、それが一般的に使用されているものであるならば、この種の機械器具を説明する際に、全て同じ表現として使用される筈であり、請求人提出の上記甲各号証にも必ずその一般的使用例が表示されている筈である。
しかしながら、例えば、甲第8号証のパンフレットでは、当該パンフレットの発行者は、この種の機械器具に対し、一般の商品名称としては「阻止円電子計測器」を使用し、そのうえで、自社の機械器具を表示する商標としては、この商品名称としての「阻止円電子計測器」の語とは別に「オリエンタル ゾーン プロセッサー」の語を使用しているのである(甲第8号証)。このことは、請求人が主張するように、「ゾーン」の語が「阻止円」を意味するものとして、本件商標の登録査定時においても、なお、一般的な使用のものではないことを示す好例であり、その余の甲各号証をみても、「測定機械器具」の分野において、「ゾーン」=(イコール)「阻止円」が「商品の使用方法を表示するもの」として「普通に用いられていた(その使用が一般的だった)」とすることはできない。すなわち、「ゾーン」の語が「阻止円」を意味するものとして使用される一般的例は見当らないのである。
逆に、請求人提出の甲第15号証は、請求人がその商標登録出願当時、「ゾーン」の語や「アナライザー」の語、あるいは、これを結合した「ゾーンアナライザー」の語について、商標として機能するとして認識したことを示している。
換言すれば、甲第15号証に示される商標登録出願時や本件商標登録出願時はもとより、本件商標の登録査定時におけるまで、「ゾーン」は、甲第3号証等に示されるように、「区域」や「境」を意味するのが一般的であって、これを、「阻止円」と訳されることはあっても、それが一般的であったとする証拠は何一つないのである。この点において、請求人の主張は根拠がない。
(b)次に「アナライザー」について述べる。
「アナライザー」の語が「分析機」を意味することは、甲第3号証を持ち出すまでもなく理解できる。しかしながら、だからといって、「アナライザー」の文字を含む語が全て商標として不適格かというと、前述するように、その登録例・出願例が数多く存在する。したがって、「アナライザー」の文字を見ただけで一般需要者が「分析機能を有する測定機」に使用されるものと認識するだけであるという請求人の主張は誤りである。「アナライザー」の語を使用するものでも、その登録例・出願例が数多く存在するのであり、十分に商品識別標識としての機能を有する(乙第2号証)。
(c)「システム」の語についても同様であり、「システム」なる文字を「測定機械器具」に使用したとしても、単に「測定機械器具」の測定方式を表示するにすぎないものであるとする請求人の主張は誤りである。少なくとも、そのような認識が一般的であるとする点は、証拠によって明らかにされているとはいえない。
(エ)したがって、甲第14号証(審査基準)の存在と当該基準にその旨の記載があることは認めるが、本件の場合がそれに該当するとの請求人の主張は誤りである。本件商標は、上述するように、単に商標法第3条第1項第3号に該当する2以上の商標を結合したにすぎないものではなく、「ゾーンアナライザーシステム」の語が全体として機能するものである。
そうとすれば、この商標が「商品の効能、用途等」を表示するにすぎないとする請求人の主張は誤りである。請求人の主張は何ら証拠に基づくものではなく、根拠のないものである。
(3)商標法第3条第1項第2号違反の主張について
(ア)商標法第3条第1項第2号にいう「慣用商標」とは、「工業所有権法逐条解説」によれば、商品「清酒」について「正宗」の文字等をいうのであり、しかも、「慣用商標」に類似の商標又は類似の商品については、この第2号は適用されないとの有権解釈がされている(乙第4号証)。
請求人は、この13文字からなる本件商標「ゾーンアナライザーシステム」が慣用商標であると主張するが、それを証明する証拠(甲第9号証)には、どこにも「ゾーンアナライザーシステム」の語ないし文字は記載されていないのである。甲第9号証の記載は、「ゾーン」や「アナライザー」の語のみを用いた例が示されているだけであり、また、甲第9号証の記載を詳しく検討すれば、「微生物学的分析」に、単に「ゾーン測定」、「ゾーン解析」をすることが示唆されているにすぎず、これが直ちに「慣用商標」というに足りるほどの記載かどうかは疑わしい。すなわち、「その使用が慣用を示唆する程度のもの」は、未だ社会一般において「慣用商標」ではないのである。そして、上述するように、本号は「慣用商標」にのみ適用され、「慣用商標」に類似する商標や類似する商品には適用されないのである。
したがって、甲第9号証の記載の中に、単に特定の使用を示唆する文言があるという程度で、その記載を「慣用商標」そのものであるとする請求人の認識は、本号の解釈を逸脱するものであって、違法である。
(イ)また、請求人は、甲第1号証に「ゾーンアナライザーシステム」との記載があり、これが「慣用商標」だという。
しかしながら、甲第1号証の記載は、前述するように判決理由中の判断に示されたものであり、また、当該記載は、「リードオンリーメモリ(ROM)」に収納されている「訴訟物たる著作物」についてのものである。その「訴訟物たる著作物」が、本件指定商品と同一の商品であるとする請求人の主張は誤りである。当該商品は、少なくとも本件指定商品のものとは異なるのである。商品が異なる場合までを「慣用商標」というのは誤りである。
(ウ)さらに、請求人は、「ゾーンアナライザーシステム」が、同業者間で慣用的に使用されていたと主張するが、この著作権訴訟において明らかなように、本来、「ゾーンアナライザーシステム」の文言を商品標識として使用していたのは、紛れもない被請求人にほかならない。
そもそも、この争いのもととなった著作物は、請求人が創作したものと認定されているが、その著作物は、被請求人の依頼により創作されたものであり、被請求人の下請け業者であった請求人は、依頼の際に創作された著作物の帰属関係を規定する契約の漏れを巧みについて、それを証明できなかった被請求人が、たまたま敗訴になっただけのものである。
そして、この「ゾーンアナライザーシステム」の商標を使用してきたのは、紛れもなく被請求人本人である。したがって、被請求人が数多く提出した甲各号証のいずれにも、商品標識として「ゾーンアナライザーシステム」の語を使用する例は、被請求人のパンフレット(甲第8号証)以外には見出し得ないのは当然といえば当然のことである。
(4)商標法第4条第1項第16号違反について
前述するように、「アナライザー」を含む語であっても多くの登録例があることから、単に「アナライザー」の語を含むからといって、それが、直ちに商標法第4条第1項第16号に該当するものではないことは明らかである(乙第2号証)。
(5)商願平1―38078号拒絶理由(甲第15号証)について
甲第15号証に対し、請求人は、商標法第4条第1項第16号違背を回避するため、その指定商品を限定し、問題の商標法第3条第1項第3号違反については、実質的反論をすることなく、単に「ZA―F」を商品記号とするのは正しくないとの意見を述べているにすぎない。
すなわち、請求人は、当該拒絶理由のうちの「Zone Analyzer」の文字が「液抽出における管体の溶質の位置と拡がりを分析する機械器具」を意味するとの認定に実質的に反論しなかった結果、この件は拒絶査定となってしまったものと推察される。いわば、その争い方に誤りがある以上、本件とは全く事案が異なるのである。

4.当審の判断
(1)利害関係について
請求人が本件審判の請求をすることについて、当事者間に利害関係の争いがあるので検討するに、請求人は本件商標の指定商品「測定機械器具」等の製造・販売を業とする者であり、被請求人とは、同業者と認め得るところ、同業者であれば、登録商標が識別力を有するか否か、すなわち、本件商標の商標権の存否によって、その権利に対する法律的地位に直接の影響を受けるか、あるいは、その可能性があるとすれば、その帰趨が問題となることはいうまでもないから、請求人は、本件審判を請求することについて法律上の利益を有するものというべきであり、したがって、その請求を不適法なものとして却下することはできない。
(2)商標法第3条第1項第3号について
請求人提出の証拠についてみるに、「広辞苑」(甲第3号証)及び「コンサイス外来語辞典」(同第4号証)によれば、「ゾーン(zone)」は「地帯、区域、範囲」等を、「アナライザー(analyzer)」は「分析装置、分析機」等を、「システム(system)」は「組織、系統、方式」等をそれぞれ意味すること、また、甲第5号証の「微生物科学」と同第6号証、同第8号証、同第12号証及び同第13号証の「パンフレット」及び同第9号証の「MICRO SCOPE(1972)20」には、「zone」「ゾーン」「アナライザー」の語が使用されていること、そして、同第11号証及び同第21号証の「現代商品大辞典」には、「アナライザ」「システム」の語が使用されていることがそれぞれ認められる。
しかしながら、「ゾーン」「アナライザー」「システム」の各語がそれぞれ上記意味合いを有する語であるとしても、これらを結合してなる本件商標「ゾーンアナライザーシステム」が、その指定商品「測定機械器具」について、特定の意味合いを有し、かつ、その指定商品の特性、効能及び用途等を表示するものとして直ちに認識されるものとはいい難く、また、これを取引上普通に使用している事実も見出せないから、むしろ、本件商標は、全体として特定の意味合いを看取させることのない一種の造語と認識し、把握されるとみるのが相当である。
してみれば、本願商標は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものといわなければならない。
(3)商標法第3条第1項第2号について
請求人の提出に係る甲第6号証、同第8号証、同第12号証及び同第13号証の「パンフレット」、同第9号証の「MICRO SCOPE(1972)20」及び他の甲各号証を検討しても、上記のとおり、本件商標を構成する「ゾーンアナライザーシステム」の文字が測定機械器具の製造・販売業者間において慣用的に用いられているものとは認めることができないものであり、また、その事実も見出し得ない。
(4)商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、前記のとおり、商品の特性、効能及び用途等を表示するにすぎないものとはいえないから、本件商標がその指定商品について使用された場合、商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるものとすべき事実は認められない。
(5)請求人の主張について
(ア)請求人は、測定機械器具を取扱う製造・販売業者のいずれもが「ゾーンアナライザーシステム」という表示の使用を必要とし、又は、将来必要とするから一私人たる被請求人に独占権を付与するに値せず、本件商標は、独占不適応である旨述べている。
しかしながら、当該商品の製造・販売業者のいずれもが如何なる理由で前記表示の使用を必要としているのか不明であるだけでなく、その点を裏付ける何らの証拠も示されていないので、その主張を採用することができない。
(イ)請求人は、「ゾーンアナライザーシステム」の標章中に「アナライザー」の文字を含んでいるため、これを「分析機能を有しない測定機械器具」に使用した場合には、「分析機能を有する測定機械器具」であると誤認を生ずるから、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当すると主張している。
しかしながら、一般に「アナライザー」は、その性質上、測定機械器具の属性ともいうべき機構、機能を備えているとみられるものであり、かつ、本件商標の構成は、前記のとおり、全体として一種の造語とみられるものであって、特定の商品の品質等を表示するものではないから、これをその指定商品「測定機械器具」について使用しても、その品質について誤認を生ずるおそれはないとみるのが相当である。
したがって、この点を述べる請求人の主張は採用の限りでない。
(ウ)請求人は、甲第15号証を提出し、同一の事例又は類似の事例には、同一の審査基準を適用すべきである旨主張しているが、請求人主張の商標登録出願(商願平1―38078号)と本件とは、商標の構成が明らかに異なるものであって、事案を異にするから、それに基づく請求人の主張は採用することができない。
(エ)このほか述べる請求人の主張は、前記認定を覆すに足りない。
(6)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第2号、同第3号及び同法第4条第1項第16号のいずれにも違反して登録されたものとはいえないから、その登録は、商標法第46条第1項の規定により、無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標

審理終結日 2002-06-05 
結審通知日 2002-06-10 
審決日 2002-06-24 
出願番号 商願平5-26479 
審決分類 T 1 11・ 13- Y (009)
T 1 11・ 12- Y (009)
T 1 11・ 272- Y (009)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 俊司小林 由美子田中 敬規 
特許庁審判長 原 隆
特許庁審判官 鈴木 新五
小池 隆
登録日 1996-07-31 
登録番号 商標登録第3174301号(T3174301) 
商標の称呼 ゾーンアナライザーシステム、ゾーンアナライザー 
代理人 大滝 均 
代理人 熊谷 福一 
代理人 井上 春季 

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