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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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取消200531137 | 審決 | 商標 |
審判199931384 | 審決 | 商標 |
取消200331101 | 審決 | 商標 |
審判199931222 | 審決 | 商標 |
取消200330345 | 審決 | 商標 |
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審決分類 |
審判 全部取消 商標の同一性 無効としない 025 |
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管理番号 | 1059904 |
審判番号 | 取消2001-30338 |
総通号数 | 31 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2002-07-26 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2001-03-21 |
確定日 | 2002-05-27 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4125490号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4125490号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第25類「被服(但し、和服を除く。),ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物(但し、げたを除く。),運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成8年12月16日登録出願、平成10年3月20日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出している。 1.本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その指定商品中のいずれについても使用された事実が存しない。 2.答弁に対する弁駁 (1)被請求人は、被請求人の商号の一部である「アシック」を英文字表記した「asics」の頭文字である「a」をロゴ化した商標を採択し、頻繁に使用している。 被請求人は当該商標について、登録第2656041号(旧分類第17類「被服、その他本類に属する商品」、以下「登録A商標」という。)、及び登録第2667638号(旧分類第24類「運動用特殊靴、その他本類に属する商品」、以下「登録B商標」という。)を受けているものであり、平成13年には、当該商標について、多数の分類を指定して、商願第2001-38980号を出願している(甲第1号証ないし甲第3号証)。 そして、乙第1号証ないし乙第13号証は、登録A商標若しくは登録B商標の使用を示すものであり、本件商標の使用を示すものではない。 本件商標は、登録A、B商標の上下を逆にした(180度回転させた)構成よりなるものであり、両者は社会通念上同一の商標とはいえないものである。 例えば、日本語の漢字や平仮名を複数組み合わせてなる文字商標の場合、登録商標とは構成文字の角度が若干異なって表されていたとしても、これに接する取引者、需要者は、当該文字を正確に認識、理解し、使用商標を登録商標と同視する場合があることは否定できないが、欧文字や数字の1文字、図形等は、角度が異なって表された場合、全く異なる印象を受ける場合が多いものである。 特に、登録A、B商標は、欧文字「a」を高度に図案化したものであり、上下を逆にすることにより、全く異なった印象を受けるものであるから、これらの商標に接する取引者、需要者は、登録A、B商標を、本件商標と同視する場合は無いことは明らかである。 したがって、登録A、B商標は、本件商標とは、社会通念上同一の商標とはいえないものであるから、登録A、B商標の使用の事実により、本件商標が使用されているとはいうことが出来ない。 (2)乙第1号証ないし乙第6号証の商品「運動用特殊靴」のカタログに関し、被請求人は靴底(接地面)に付されている商標に言及している。 通常は、靴底(接地面)に商標を付する際に、靴先を上にする、若しくは靴の内側を上にするのが一般的であり、踵の部分を上にして商標が付される場合はないものであるから、乙第1号証ないし乙第6号証において、靴底(接地面)に表示されている商標は、明らかに登録B商標の使用であり、本件商標の使用でない。 また、乙第1号証(第83頁)「GELBRAVEH/THH507」の靴底(接地面)に、靴先を上にして「asics」の文字が配されていることからも、被請求人は、本件商標ではなく、登録B商標を使用していることが明らかである。 さらに、カタログに記載されている全ての商品について、取引者、需要者が最初に目にする靴の表面部に、登録B商標と同一の構成よりなる商標が表示されているものである。 したがって、本件商標に接する取引者及び需要者は、商品を購買する際に当該商品の特殊性より靴底についても注意を払う場合が無いとは言えないが、靴の表面部に付された登録B商標を見た後に、靴底を見るのが通常であること、及び、上述したとおり、通常は靴先を上にして商標が付されるのが一般的であることから、靴底(接地面)に付された商標は、登録B商標の使用と認識、理解するものであり、本件商標と認識、理解する場合は無いというべきである。 (3)乙第7号証ないし乙第9号証の商品「運動用特殊衣服」のカタログに関しても、登録B商標の使用の事実が示されているのみであり、本件商標の使用の事実は示されていないものである。 ア.乙第7、8号証のカタログには、その表紙及び商品「運動用特殊衣服」の上着及びパンツに明らかに登録B商標が付されているものである。 そして、被請求人が本件商標の使用と主張する袖中央ライン及びパンツの中央ラインは、カタログからは看取することが出来ないものである。 被請求人はそのライン部分について拡大写真を添付しているが、当該拡大写真がカタログに掲載された商品のライン部分であることは、判断出来ないものである。 また、その拡大写真には、欧文字「asics」の文字が被請求人が本件商標の使用と主張する図形と交互に配されているものであり、「asics」の文字が交互に上下を逆さまにして配されていることからすると、当該商品に接する取引者、需要者は、商品の目立つ箇所(上着の胸元、パンツの太股の部分)に登録B商標が表示されていることと相俟って、当該拡大写真に示された図形は登録B商標と認識、理解するものであり、本件商標の使用には該当しないことは明らかである。 イ.乙第9号証の商品「リストバンド」の写真は、本件商標と同一に見せるために、不自然な角度に商品を置いて写真を撮ったことが明らかであり、そこに付された商品のサイズ等表示するラベルの方向を考慮すると、本件商標の使用ではなく、登録B商標の使用であることが明らかである。 (4)乙第10号証ないし乙第13号証の商品「被服」のカタログに関しても、登録A商標の使用の事実が示されているのみであり、本件商標の使用の事実は示されていないものである。 ア.乙第10号証のカタログには、商品「被服」の上着及びパンツに明らかに登録A商標が付されているものである。 そして、被請求人が本件商標の使用と主張する袖中央ライン及びパンツの中央ラインは、カタログからは看取することが出来ないものである。 被請求人はそのライン部分について拡大写真を添付しているが、当該拡大写真がカタログに掲載された商品のライン部分であることは、判断出来ないものである。 また、その拡大写真には、欧文字「asics」の文字が被請求人が本件商標の使用と主張する図形と交互に配されているものであり、「asics」の文字が交互に上下を逆さまにして配されていることからすると、当該商品に接する取引者、需要者は、商品の目立つ箇所(上着の胸元、パンツの太股の部分)にワンポイントとして登録A商標が表示されていることと相俟って、当該拡大写真に示された図形は登録A商標と認識、理解するものであり、本件商標の使用には該当しないことは明らかである。 イ.被請求人は、乙第11号証のカタログに、商品「Tシャツ」の胸部分に本件商標が表示されている旨を主張しているが、本件商標の使用ではない。 胸部分に模様が付されたTシャツが掲載されており、模様の一部として、本件商標とも登録A商標とも角度が異なる図形が配されている。 しかし、当該図形は、明らかにTシャツのデザインであり、商標としての機能、すなわち自他商品識別機能を果たすものではない。 特に、胸部分に配された模様は、その構成要素が渾然一体となって一つのデザインを形成しているものであり、当該商品に接する取引者、需要者が、胸部分に配されたデザインから、当該図形部分のみを抽出し、かつ当該図形を自他商品識別標識である商標として理解、認識し、商取引にする資する場合はないというべきである。 したがって、乙第11号証をもって、本件商標が使用されているとは到底いうことが出来ない。 ウ.乙第12、13号証の商品「被服」のカタログに関しも、商品の目立つ箇所にワンポイントとして登録A商標の使用の事実が示されているのみであり、本件商標の使用の事実は示されていない。そして、被請求人が本件商標の使用と主張する袖中央ライン及びパンツの中央ラインは、カタログからは看取することが出来ないものである。 また、そのライン部分についての拡大写真をもってしては、本件商標の使用ということが出来ないことは、乙第10号証のところで述べたとおりである。 (5)被請求人は、「本件商標のように一つのまとまった図形商標であって、しかもその構成において、渦巻・回転の要素のある図形商標にあっては、その角度・位置が判明し難く、極めて安定感に乏しく、まして、激しい動きを伴うスポーツシューズやスポーツウェア等に直接付して使用した場合、係る図形商標に接する消費者、需要者は、商標の角度・位置を認識するよりむしろ全体のイメージとして、方向を特定しない渦巻・回転状の図形を脳裡に深く刻むものと思料する。」と主張する。 確かに、角度・位置が判明し難い図形商標であれば、取引者及び需要者が当該図形商標を全体のイメージとして脳裡に深く刻む場合があることは否定できないものである。 しかしながら、そもそも角度・位置が判明し難い図形商標とはどの様なものか不明確であり、また、安定感に乏しい図形商標の場合には、安定感に乏しい構成自体に特徴を有する場合が多く、これに接する取引者、需要者は当該構成を厳密に記憶するものと考える。 本件商標の場合、右斜め上方部分が左斜め下方部分に比べ大きく表されていることから、安定感に乏しい印象を受けるの対し、登録A、B商標は、左斜め下方部分が右斜め上方部分に大きく表されていることから、安定感に富んでいる印象を受けるものであり、両者は、それぞれ全く異なった印象を受けるものであって、社会通念上同一の商標とはいうことができないものである。 特に、前述したとおり、登録A、B商標は、被請求人の商号の一部である「アシック」を英文字表記した「asics」の頭文字である欧文字「a」をロゴ化した商標であり、被請求人の商標として、取引者及び需要者の間で著名となっていることは周知の事実である。 そうとすると、取引者及び需要者は、登録A、B商標の角度・位置等の構成、及びその構成上の特徴を明確に記億しているものであるから、乙第1号証ないし乙第13号証に接した取引者、需要者は、登録A、B商標の使用であることを容易に認識・理解するものであり、本件商標の使用と認識・理解する場合はないというべきである。 (6)なお、商標の上下位置関係を明確に確認することが出来る、商品カタログの表紙や、スニーカーの側面及び正面においては、甲第1号証ないし甲第13号証(乙第1号証ないし乙第13号証の誤記と認める。)を見る限りにおいて、登録A商標若しくは登録B商標のみが使用されており、反転した本件商標は使用されていない。 また、被請求人に係るホームページ(乙第4号証)においても、登録A商標若しくは登録B商標のみが使用されているものである。 すなわち、被請求人は、本件商標を反転した構成の登録A、B商標を統一的に使用してることは明らかであり、当該事実からも、被請求人が本件商標の使用と主張する甲第1号証ないし甲第13号証(乙第1号証ないし乙第13号証の誤記と認める。)に示された商標が、いずれも登録A、B商標の使用であることは、容易に理解されるものである。本来使用する商標の天地反転した商標の取得を広く認めることは、徒に第三者の商標の選択の余地を狭めるものであり、到底認めることはできないものであり、本件商標を実際に使用しているのあれば、商品カタログの表紙等の商標の上下位置関係を明確に確認することができる証拠によって、本件商標が使用されている事実を証明できるはずであり、かつ、本件審判事件において、被請求人は、登録商標が使用されている事実を明確に確認することができる証拠を提出する義務を有するものである。 しかしながら、被請求人が本件商標の使用として提出した証拠は全て、靴底、運動用特殊衣服の上着の袖中央ラインやパンツの中央ライン等の商標の上下位置関係を明確に判断し難いものである。 (7)以上のことから、被請求人は、本件商標とは社会通念上同一とはいうことができない登録A、B商標の使用を示す証拠のみを提出し、当該証拠をもって、「本件商標の使用である」旨の主張していることは明らかである。 したがって、甲第1号証ないし甲第15号証(乙第1号証ないし乙第15号証の誤記と認める。)からは、被請求人である商標権者が、本件審判の請求前3年以内に日本国内において、本件商標を請求に係るその指定商品に使用していたとは到底認めることができないものである。 第3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証(枝番を含む。)を提出している。 1.被請求人は、我国有数のスポーツ用品メーカーである。本件商標は、被請求人の商品を示すマークとして、スポーツシューズ、スポーツウエアに付されて使用され、日本全国のスポーツ用品店等を通じて継続的に販売されている。 2.使用の事実について (1)乙第1号証(2001 ASICS Athletic Shoes カタログ;2000年12月発行)の32頁の商品名「タイガーパウ オルビット」(品番TTP588;陸上競技種目のトラック専用シューズ)、36頁の商品名「タイガーパウ LJMEGA」(品番TFP323;陸上競技種目の走幅跳用シューズ)、36頁の商品名「タイガーパウ TJMEGA」(品番TFP324;陸上競技種目の三段跳用シューズ)、83頁の商品名「GELBRAVE 2」(但し、「2」はローマ数字で表記、品番THH507;ハンドボール用シューズ)には、その靴底(接地面)に本件商標が表示されている。 (2)乙第2号証(2000 ASICS ATHLETIC SHOES カタログ;1999年12月発行)の32頁の商品名「タイガーパウ オルビット」(品番TTP588;陸上競技種目のトラック専用シューズ)、36頁の商品名「タイガーパウ LJMEGA」(品番TFP323;陸上競技種目の走幅跳用シューズ)、36頁の商品名「タイガーパウ TJMEGA」(品番TFP324;陸上競技種目の三段跳用シューズ)には、その靴底(接地面)に本件商標が表示されている。 (3)乙第3号証(1999 ASICS ATHLETIC SHOES カタログ;1998年12月発行)の34頁の商品名「タイガーパウエフオートGT」(品番TTP570;陸上競技種目のトラック専用シューズ)、36頁の商品名「タイガーパウ LJMEGA」(品番TFP323;陸上競技種目の走幅跳用シューズ)、36頁の商品名「タイガーパウ TJMEGA」(品番TFP324;陸上競技種目の三段跳用シューズ)、45頁の商品名「トップシード DC」(品番TLL586;テニス用シューズ)、72頁の商品名「ボンバー CB」(品番TS1811;サッカー用シューズ)には、その靴底(接地面)に本件商標が表示されている。 (4)乙第4号証(2001 ASICS Athletic Shoes カタログ;2000年12月発行)の24頁の商品名「STORMRACER」(品番TJG239)、25頁の商品名「ADOCK BG」(品番TJG242)には、その靴底(接地面)に本件商標が表示されている。 (5)乙第5号証(2000 ASICS ATHLETIC SHOES カタログ;1999年12月発行)の19頁の商品名「GELPRODIGY」(品番TJG695)には、その靴底(接地面)に本件商標が表示されている。 (6)乙第6号証(1999 ASICS ATHLETIC SHOES カタログ;1998年12月発行)の20頁の商品名「GEL‐130LYTE」(品番:TJG666)、20頁の商品名「GELASTR0」(品番TJG694)、商品名「GELULTRA」(品番TJG639)、商品名「GELPRODIGY」(品番TJG695)、25頁の商品名「GEL‐130(W)」(品番TJG646)には、その靴底(接地面)に本件商標が表示されている。 (7)乙第7号証(2000 SPRING & SUMMER ASICS FOOTBALL GEAR COLLECTION カタログ;2000年2月発行)の4頁の品番「XFTIO0・200・101・201」、「XF7100」、5頁の品番「XF5000・5500・5501」、6頁の品番「XFW575・675・576・676」、7頁の品番「XFW577・677」、10頁の品番「XF1000・1800」、20頁の品番「XFJ100・200・201」、「XF8600」、21頁の品番「XFJ575・675」の袖中央ライン又はパンツの中央ラインには、本件商標が表示されている。ライン部分の拡大写真を添付する。なお、上記ウエアはサッカー用ウエアである。 (8)乙第8号証(ASICS 1999 SPORT SWEAR カタログ;1998年12月発行)の54頁のレディスランニングトップ・パンツ(品番XTN707・807)の各種色番の側部分には、本件商標が表示されている。 (9)乙第9号証(リストバンドの写真及び販売の事実を示す資料) 本件商標がその指定商品中の被服に含まれるリストバンド(品番XBG013)に使用されている事実及び販売の事実を示す。 (10)乙第10、11号証(ASICS 2001 SPORTS WEAR & GOODS カタログ;2000年12月発行)の14頁の品番「XGT350・353・454」、17頁の品番「XGT450・451・452・453」、28頁の品番「XGT504・604」、67頁の品番「XGT353・453・505・605」、82頁の品番「XGJ113・213・214」、83頁の品番「XGJ510・511・610・300・400」、84頁の品番「XGJ803・804」の袖中央ライン又はパンツの中央ラインには、本件商標が表示されている。ライン部分の拡大写真を添付する。また、34頁のTシャツ(品番XG6137)の各種色番の胸部分には、本件商標が表示されている。 (11)乙第12号証(キッズ用カタログ;2001年2月発行)の品番「XGKI13・213・214・511・610・804」の袖中央ライン又はパンツの中央ラインには、本件商標が表示されている。ライン部分の拡大写真を添付する。 (12)乙第13号証(ASICS 2000 SPORTS WEAR & GOODSカタログ;1999年12月発行)の17頁の品番「XGT331・431・432」、18頁の品番「XGT333・433・302・402・403」、24頁の品番「XGT141・241・242」、30頁の品番「XG5033・5034・5533」、128頁の品番「XGJI08・208、XG8507」、129頁の品番「XGJ503・603・712」、130頁の品番「XG8331・8332・8831」の袖中央ライン又はパンツの中央ラインには、本件商標が表示されている。ライン部分の拡大写真を添付する。 3.(1)請求人は、「例えば、日本語の漢字や平仮名を複数組み合わせてなる文字商標の場合、登録商標とは構成文字の角度が若干異なって表されていたとしても、当該文字を正確に認識し、使用商標を登録商標と同視する場合があることは否定できないが、欧文字や数字の1文字、図形等は、角度が異なって表された場合、全く異なる場合が多いものである。」として、「登録A、B商標を、本件商標と同視する場合はない」旨主張する。 しかしながら、本件商標のように一つのまとまった図形商標であって、しかもその構成において、渦巻・回転の要素のある図形商標にあっては、その角度・位置が判明し難く、極めて安定感に乏しく、まして、激しい動きを伴うスポーツシューズやスポーツウエア等に直接付して使用した場合、係る図形商標に接する需要者等は、商標の角度・位置を認識するよりむしろ全体のイメージとして、方向を特定しない渦巻・回転状の図形を脳裡に深く刻むものと思料する。 したがって、請求人の上記主張は、係る商標の独特の態様、さらにはその商標を使用する対象商品、使用状況を考慮しないものである。 (2)請求人は、乙第1号証ないし乙第6号証の靴底(接地面)に付した商標について、「通常は、靴底(接地面)に商標を付する際に、靴先を上にする、若しくは靴の内側を上にするのが一般的であり、踵の部分を上にして商標が付される場合はないものであるから、登録B商標の使用であり、本件商標の使用でない。」旨主張する。 しかしながら、靴の踵の部分を上にして商標等が付された事実として、乙第14号証A(日本スポーツ企画出版社発行のスマッシュ2000年4月号別冊付録「2000 ザ・テニスカタログ」)及び同B(同社発行のスマッシュ2001年4月号別冊付録「2001ザ・テニスカタログ」)において、テニスシューズの靴底の接地面の踵部に「K-SWISS」の文字を表示している。同じく、乙第14号証C(ミズノ株式会社発行のカタログ「SPORTSCATALOGUE’99」)においても、同様に「M」のロゴマークを踵の部分を上にして付されている。 したがって、乙第14号証AないしCからも明らかなように、請求人の上記主張は否定されるものである。 百歩下って、上記請求人の主張を認めたとしても、乙第15号証(岡本三昭堂スポーツ発行のカタログ「Okamoto WRESTLING 2000.4〜2001.3」)において、被請求人のレスリングシューズの踵部に、靴先を上にして本件商標が付された事実を証明している。 (3)請求人は、乙第7、8号証に対し、「・・被請求人はそのライン部分について拡大写真を添付しているが、当該拡大写真がカタログに掲載された商品のライン部分であることは、判断できないものである。」と主張するが、乙第7、8号証のカタログ中、特に選手が着用している状態の写真を見ればその使用の事実は一目瞭然である。 また、カタログ中に示される本件商標の表示自体は確かに小さくとも、その各商品群から確実にその使用を窺い知ることができるものである。 したがって、請求人の上記主張は、被請求人の使用事実を曲解したものといわざるを得ない。 さらに、乙第9号証(リストバンドの写真)について、請求人は、「不自然な角度に商品を置いて写真を撮った」如き主張をするが、何等根拠のない主張である。 (4)請求人は、乙第10号証に対し、「被請求人が本件商標の使用と主張する袖中央ライン及びパンツの中央ラインは、カタログからは看守することが出来ないものである。」、「被請求人はそのライン部分について拡大写真を添付しているが、当該拡大写真がカタログに掲載された商品のライン部分であることは、判断出来ないものである。」と主張するが、これについても、確かにカタログの標記は小さいが、各カタログ中に標記したパンツの部分拡大図を見れば充分認識できるものである。 なお、その他乙第12、13号証についても、同様の理由により使用の事実を主張するものである。 第4 当審の判断 1.本件について、本件商標の使用者が商標権者(被請求人)であること、使用に係る商品が本件商標の指定商品中に属する商品であること、及び商標権者が使用に係る商品について使用した時期が本件審判の請求の登録前3年以内であることについては、当事者間に争いがない。 そこで、使用に係る商標が本件商標と社会通念上同一のものであるか否かについて検討する。 (1)本件商標は、別掲(1)のとおり、渦巻き状の図形を表してなるものであるところ、渦巻きの中心部といえる楕円形を右上にし、該楕円形を形成する線の始まりは、細い線で描かれ、その線が渦巻きの中心部の楕円形の中程にいくに従ってだんだん太くなり、楕円形の中程から下部の末尾に至るまでにだんだん細くなるように一筆書き風に描いたことを特徴とする図形であり、抽象的図形の一種といえる。 これに対して、登録A、B商標は、別掲(2)のとおり、渦巻き状の図形を表してなるものであるところ、渦巻きの中心部といえる楕円形を左下にし、該楕円形を形成する線の始まりは、細い線で描かれ、その線が渦巻きの中心部の楕円形の中程にいくに従ってだんだん太くなり、楕円形の中程から上部の末尾に至るまでにだんだん細くなるように一筆書き風に描いたことを特徴とする図形であり、抽象的図形の一種といえる。そして、登録A、B商標は、これを180゜回転させれば、本件商標と相似形の関係にあるものということができる。 (2)ところで、使用に係る商品の一つである「運動用特殊靴」の取引の実情についてみるに、運動用特殊靴について商標を使用する場合、その靴底に付すことは一般的に採択されているものと認められるところ、該運動用特殊靴の主たる需要者は、運動の専門家に限定されるものではなく、一般の消費者をも含むものである。 また、使用される商標が抽象的な図形によって構成される場合は、その需要者は、特徴のある部分の印象によって商品の出所を識別する場合が多いこと、及び使用される商標は、種々の態様においてなされ、その向き、大きさ等において極めて多様であるばかりでなく、他の登録商標と併用して使用されることは、商取引の経験則に照らし明らかである。 そして、運動用特殊靴の靴底に付された商標をその需要者が見る場合、常に靴のつま先部分を上と判断して、商標の構成態様を認識するものとは限らず、商品を手に取るなどした場合に、目に触れる商標の特徴のある部分の印象によって、商品の出所を識別するというのが相当である。 (3)前記(2)の運動用特殊靴の分野における取引の実情に照らして、運動用特殊靴について使用されている商標が本件商標と社会通念上同一のものであるか否かについてみると、乙第1号証ないし乙第6号証及び乙第15号証によれば、運動用特殊靴の靴底には、渦巻き状の図形が描かれ、該図形は、渦巻きの中心部といえる楕円形を形成する線の始まりは、細い線で描かれ、その線が渦巻きの中心部の楕円形の中程にいくに従ってだんだん太くなり、楕円形の中程から末尾に至るまでにだんだん細くなるように一筆書き風に描いたことを特徴とする図形であり、その特徴は、本件商標の特徴と一致するものである。 したがって、運動用特殊靴について使用されている商標は、商標の構成上の印象及び外観において、本件商標と社会通念上同一のものというべきである。 2.運動用特殊衣服について使用されている商標についてみるに、乙第7号証及び乙第10号証ないし乙第13号証にれば、運動用特殊衣服の袖及びパンツの中央ラインには、「asics」の文字及び該文字を逆さまにした文字が交互に表示され、これらの文字の間に、本件商標、登録A商標が交互に表示されていることが認められる。 また、乙第9号証によれば、リストバンドに渦巻き状の図形が描かれ、該図形は、本件商標の特徴と一致するものと認められる。 してみると、運動用特殊衣服について使用されている商標は、本件商標と同一、若しくは、商標の構成上の印象及び外観において、本件商標と社会通念上同一のものというべきである。 3.請求人の主張について (1)請求人は、運動用特殊靴について使用されている商標に関し、「本件商標と登録A、B商標は、全く異なった印象を受けるものであるから、使用に係る商標は、本件商標とは社会通念上同一の商標とはいえない。」、「商標を靴底に付す場合は、靴先を上にするものであるから、使用に係る商標は、本件商標の使用ではない。」などと主張する。 しかしながら、前記1.で認定したとおり、使用に係る商標と本件商標とは、印象等の点において共通するものであるから、社会通念上同一の範疇のものというべきである。また、商標を靴底に付す場合は、靴先を上にするのが一般的であると認めるに足りる証拠は見出せない。 (2)請求人は、運動用特殊衣服について使用されている商標に関し、「『asics』の文字が交互に上下を逆さまにして配されていることからすると、当該商品に接する取引者、需要者は、商品の目立つ箇所(上着の胸元、パンツの太股の部分)にワンポイントとして登録A商標が表示されていることと相俟って、当該拡大写真に示された図形は登録A商標と認識、理解するものであり、本件商標の使用には該当しない」旨主張する。 しかしながら、取引の実際において、商品一般に使用される商標は、常に一つだけとは限らず、他の登録商標と併用して使用されることは、運動用特殊衣服についても同様であり、上着の胸元等に登録A商標が表示されていることをもって、本件商標が使用されていないとすることはできない。 (3)したがって、上記についての請求人の主張は採用できない。 4.以上のとおりであるから、本件商標の商標権者は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、取消請求に係る指定商品中の「運動用特殊靴、運動用特殊衣服」について、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用していたというべきである。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべきものとすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(1)本件商標 (2)登録A、B商標 |
審理終結日 | 2002-04-02 |
結審通知日 | 2002-04-05 |
審決日 | 2002-04-16 |
出願番号 | 商願平8-141819 |
審決分類 |
T
1
31・
11-
Y
(025)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福島 昇 |
特許庁審判長 |
三浦 芳夫 |
特許庁審判官 |
野本 登美男 茂木 静代 |
登録日 | 1998-03-20 |
登録番号 | 商標登録第4125490号(T4125490) |
代理人 | 吉武 賢次 |
代理人 | 小泉 勝義 |
代理人 | 神谷 巖 |
代理人 | 矢崎 和彦 |
代理人 | 中川 拓 |