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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 132
管理番号 1059785 
審判番号 審判1998-31284 
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-07-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1998-12-03 
確定日 2002-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第2183782号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2183782号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第32類「加工食料品(但し、加工穀物を除く)」を指定商品として、昭和61年12月15日に登録出願、平成1年10月31日に設定登録され、その後、平成11年6月8日に商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標は、その指定商品中『肉製品,加工水産物(かつお節,削り節,とろろこんぶ,干しのり,焼きのり,干しわかめ,干しひじき,寒天を除く。)』についての登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証の1及び2を提出している。
1.本件商標は、その指定商品中の「肉製品,加工水産物(かつお節,削り節,とろろこんぶ,干しのり,焼きのり,干しわかめ,干しひじき,寒天を除く。)」について、継続して3年以上日本国内において使用された事実が存しない。
2.答弁に対する弁駁
(1)乙第2ないし5号証について
ア.乙第2ないし5号証に示された、缶に貼付された紙片(以下「紙片」という。)は、何の変哲もない白い紙片であり、ここに、被請求人が登録商標と主張する商標(以下「使用商標」という。)及び品名などの文字が書かれているが、紙片全体の構成は非常に簡単、かつ、あっさりしており、即座に作成することが可能なものである。
また、缶の表面にはこすり傷が付いていていくらか劣化しているのに、紙片は傷や汚れやなど一切なく、まっ白であって、缶と対比すると不自然さがある。
したがって、従来からこの紙片が使用されていたかどうか疑わしいというべきであり、これらの写真だけで登録商標が使用されていたことの証明とはなりえない。
請求人は、紙片そのものの提出、紙片の使用開始時期・作成者・作成年月日及び乙第2ないし5号証の写真の撮影年月日・撮影者の住所及び氏名についての説明を求める。
イ.被請求人は、「本件商標の二段横書きしてなる欧文字の部分と使用状態の横書きに表示されている欧文字の部分は、ともに被請求人の商号を英文で表示したものであって」と主張するが、国内向けの商品に貼られた紙片に既に「高砂香料工業株式会社」と表示されているのに、さらに英文名称を付するということは一般的に行われていないので、この説明もすべきである。そうでなければ、缶に貼った一片の紙片の写真だけで、登録商標を使用していることの証明とはならない。
(2)使用商標について
ア.乙第2ないし5号証に示された使用商標は、赤い図形の左に同書同大に「TAKASAGO INTERNATIONAL CORPORATION」と一連に書き、該図形及び一連の文字の下に赤い線を引いてなるものであるところ、「コーポレイション」は、株式会社あるいは有限会社の意味として使用され(甲第1号証;カタカナ語辞典)、わが国において「○○コーポレイション」といえば、一般的にそれは会社の商号を表示したものと解釈される。
したがって、「TAKASAGO INTERNATIONAL CORPORATION」の文字を見た需要者は、この文字からこれが「タカサゴ インターナショナル コーポレイシヨン」という商号を表示していると思うことは必定である。この場合、「会社」を意味する「CORPORATION」の文字を省略して、単に「タカサゴインターナシヨナル」と称呼される場合があることは事実であるとしても、「タカサゴインターナシヨナル」と一気に称呼するのに冗長さはないので、これが単に「タカサゴ」と称呼されることはない。このことは、使用商標が、一連に書かれた「TAKASAGO INTERNATIONAL CORPORATION」の下に赤い線が引かれていて、ことさらこれらの文字の全体を称呼するようにし向けられていることからして、使用商標が省略して称呼される場合に少なくとも「タカサゴインターナシヨナル」と称呼される態様だからである。
イ.同書同大で一列に書かれた商標が、やはり同書同大で二段書きに変更して使用されたのであれば、特別、意味が異ならない限り、登録商標の使用と認められる場合があるとしても、本件の場合は、登録商標は二段書きで、しかも上段の「TAKASAGO」の文字は非常に大きく書かれ、下段の「INTERNATIONAL CORPORATION」の文字は非常に小さく書かれており、同書同大一列の使用商標は、登録商標と形態を全く異にしているから、本件商標と著しく形態を異にしたものであって、登録商標の使用とはいえない。
また、上述したとおり、使用商標から生じる可能性のある称呼は「タカサゴインターナショナル」であるのに対し、本件商標はその形態からして単に「タカサゴ」のみの称呼を生ずるものであるから、両商標は、それらから生じる称呼が異なっており、このことからも使用商標は、本件商標と同一性がないものである。
ウ.被請求人は、乙第28号証を提出して本件商標を使用していると主張するが、インボイスを発行しただけでは、「日本国内において、商品に関する取引書類に標章を付して展示し、又は頒布する行為」とはいえない。しかも、インボイスの左上の表示は英文の住所、電話番号、ファックス番号等と一体的に表示されたものであって、左側にある図形との一体性が崩れており、したがって、このインボイスを見た取引者はローマ字3行でこのインボイスの発行会社を表示したと理解するので、左上の表示が登録商標の使用に該当しないことは明らかである。また、左上の図形と同じ図形が右側のやや上部に表示され、その左上に大字のローマ字で「MARKS:」と書いてあるので、これが商標の使用に該当するものであり、この商標の使用は、登録商標の使用ではない。
3.以上のとおり、乙各号証をもってしては、被請求人は、本件審判請求登録前3年以内に本件商標を使用していたとは認められることはできないから、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消されるべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし28号証(枝番を含む。)を提出している。
1.乙第2ないし5号証について
(1)被請求人は、乙第2ないし5号証に示したとおり、本件商標の指定商品中の「肉製品,加工水産物(かつお節,削り節,とろろこんぶ,干しのり,焼きのり,干しわかめ,干しひじき,寒天を除く。)」に属する商品である「ビーフパウダー」、「アサリエキス」、「ニボシパウダー」、「昆布エキスパウダー」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用している。
なお、乙第2ないし5号証の写真の撮影者及び撮影年月日は、「証拠方法」欄に記載したとおりである。
(2)紙片について、請求人は、「何の変哲もない白い紙片であり、ここに、被請求人が登録商標と主張する商標及び品名などの文字が書かれているが、紙片全体の構成は非常に簡単且つあっさりしており、」と主張するが、食品メーカー等に販売する業務用の「ビーフパウダー」、「アサリエキス」、「ニボシパウダー」などの商品に付す紙片には、必要事項のみを明確・簡潔に記載し、詳細は別途品質規格書(乙第6ないし9号証参照)やMSDS(製品安全データシート)に記載するということが、この種商品の取引において通例となっている。紙片の現物(品名等を記載していないもの)及び品名等を記載した別の紙片を提出する(乙第20、21号証)。以上のとおり、乙第2ないし5号証の紙片は、決して不自然なものではなく、実際に使用されているものである。
(3)紙片について、請求人は、「国内向けの商品に貼られ紙片に既に『高砂香料工業株式会社』と表示されているのに、さらに英文名称を付するということは一般的に行われていない」と主張するが、現に被請求人においては、いわゆる「Tマーク」を導入した1990年(平成2年)から日本語名称と英文名称を併記して使用している(乙第26号証)。
乙第26号証は、被請求人が新しいコーポレート・マーク(「Tマーク」)を導入したことをアピールする1990年(平成2年)2月1日付け日本経済新聞に掲載された広告面の写しであり、ここには、日本語名称「高砂香料工業株式会社」の下に英文名称「TAKASAGO INTERNATIONAL CORPORATION」と併記されている。
2.使用商標の構成態様について
(1)使用商標の構成態様は、Tマークの横に、「TAKASAGO INTERNATIONAL CORPORATION」の文字が横書きに表示されており、本件商標の構成態様とは全くの同一ではないが、本件商標の二段横書きしてなる欧文字の部分と使用状態の横書きに表示されている欧文字の部分は、ともに被請求人の商号を英文で表示したものであって、識別機能としては同じであり、社会通念上同一と認められる商標である。
(2)請求人は、「乙第2ないし5号証の使用商標は、単に『タカサゴインターナショナル』と称呼され、単に『タカサゴ』と称呼されることはない。」旨主張するが、被請求人の英文名称である「TAKASAGO INTERNATIONAL CORPORATION」は、一般的に諸外国にも関係している国際的な会社であることを示す「INTERNATIONAL」も、会社組織であることを示す「CORPORATION」と一緒に省略されることが多く、被請求人の英文名称は単に「タカサゴ」と略称されるとするのが相当である。
被請求人は、乙第27号証(1999年版会社年鑑)に示すとおり、国際的にも著名な香料業界のトップメーカーであり、しかも日本語名称と英文名称が直訳の関係にないことから共通項として「タカサゴ」の称呼が抽出されることもあって、国内外において、その関連業界により「タカサゴ」ないし「タカサゴコウリョウ(=高砂香料)」と略称されており、少なくとも国内において「タカサゴインターナショナル」と略称されることはない。
(3)請求人は、使用商標は、本件商標と著しく形態を異にしているので、登録商標の使用とはいえない旨主張する。
確かに、本件商標の構成態様と使用商標の構成態様とは、全くの同一とはいえないが、どちらも左側に「Tマーク」を配すると共にその横に欧文字で「TAKASAGO INTERNATIONAL CORPORATION」と書してなる構成態様は一緒であり、唯一本件商標が欧文字「TAKASAGO」と「INTERNATIONAL CORPORATION」を二段横書きしてなるのに対して使用商標においては横一連に書されている点が相違する。
しかしながら、どちらの商標も被請求人の英文名称を表したものと容易に認識させるので、ともに「タカサゴインターナショナルコーポレイション」と称呼され、左側に配された「Tマーク」と相俟って商標の識別機能としては同一であり、結局、本件商標と使用商標は社会通念上同一のものと認められるとするのが相当である。
乙第28号証(1997年6月22日付けインボイスの写し)には、本件商標の構成態様に極めて近い商標が表示されている。
3.取引書類等
(1)乙第6ないし9号証は、乙第2ないし5号証に示された商品の品質規格書のコピーであるが、これにより、「ビーフパウダー」が「牛肉」を主原料とする粉末状の加工食品(加工肉)であること、「アサリエキス」が「アサリ煮熟液」を原材料とするペースト状の加工食品(加工水産物)であること、「ニボシパウダー」が「煮干」を原料とする粉末状の加工食品(加工水産物)であること、「昆布エキスパウダー」が「昆布」を原材料とする粉末状の加工食品(加工水産物)であることが分かる。そして、これらの加工食品は、「肉製品,加工水産物(かつお節,削り節,とろろこんぶ,干しのり,焼きのり,干しわかめ,干しひじき,寒天を除く。)」に該当する商品であることが明らかである。
(2)乙第10、11号証は、「ビーフパウダー」(乙第2号証)を群馬県多野郡新町2330所在のカネボウフーズ株式会社、新町工場へ納入した際の1998年10月31日付け及び1998年11月30日付けの請求書(控)のコピーである。これらより、被請求人が「ビーフパウダー」を1998年9月25日、9月30日、10月12日、10月23日、11月6日、11月11日に上記カネボウフーズ株式会社へ出荷したこと分かる。
(3)乙第12号証は、「アサリエキス」(乙第3号証)を東京都千代田区神田和泉町1-11末広ビル4F所在の宝化成株式会社へ納入した際の1998年10月20日付け請求書(控)のコピーである。これより、被請求人が「アサリエキス」を1998年10月6日に上記宝化成株式会社へ出荷したこと分かる。
(4)乙第13、15号証は、「ニボシパウダー」(乙第4号証)を札幌市西区24軒3条7丁目3-35所在のベル食品株式会社へ納入した際の1998年10月20日付け及び1998年(平成10年)11月20日付け請求書(控)のコピーである。これより、被請求人が「ニボシパウダー」を1998年10月2日及び11月2日に上記ベル食品株式会社へ出荷したことが分かる。
また、乙第14、16号証は、ベル食品株式会社が前記商品を受け取ったことを示す物品受領書のコピーである。
(5)乙第17号証は、「昆布エキスパウダー」(乙第5号証)を銚子市八幡町663所在の宝醤油株式会社銚子工場へ納入した際の1998年10月31日付け請求書(控)のコピーである。これより、被請求人が「昆布エキスパウダー」を1998年10月2日と10月19日に上記宝醤油株式会社へ出荷したことが分かる。
(6)乙第22号証(登録第968613号商標に係る商標権存続期間更新登録願の願書とそれに添付した登録商標の使用説明書)によれば、少なくとも1991年(平成3年)11月には、乙第2ないし5号証に示した紙片と同様のものが同様の態様で使用されていたことが窺い知れる。
(7)乙第23号証の1(被請求人が販売した商品「チキンパウダー」の写真)、乙第23号証の2(該「チキンパウダー」をベル食品株式会社が受領したことを示す1998年12月15日付けの物品受領書)、乙第23号証の3(該「チキンパウダー」が掲載された請求書の写し)、乙第24号証の1(被請求人が販売した商品「カニエキスパウダ-」の写真)、乙第24号証の2(該「カニエキスパウダ-」を株式会社タイショー及び上記ベル食品株式会社に販売した売上実績表)、乙第25号証の1(被請求人が販売した商品「ホタテエキス」の写真)、乙第25号証の2(該「ホタテエキス」を八戸缶詰株式会社に販売した売上実績表)によれば、被請求人の社標として周知著名である「Tマーク」の横に欧文字で「TAKASAGO INTERNATIONAL CORPORATION」と横書き表示された商標が、「肉製品,加工水産物(かつお節,削り節,とろろこんぶ,干しのり,焼きのり,干しわかめ,干しひじき,寒天を除く。)」に該当する商品に、遅くとも1994年(平成6年)11月以降現在に至るまで継続して使用されていることが明らかである。
4.連合商標について
乙第2ないし5号証及び乙第10ないし17号証には、本件商標と連合商標の関係にあった登録第1862807号商標が表示されている。
この登録第1862807号商標(乙第18号証)は、被請求人の社標であるTマークを表示したもので、指定商品を「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(他の類に属するもの及び加工穀物を除く)」とするものである。
したがって、本件商標に関する使用の事実は、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)の附則第10条第2項の規定により、旧商標法第50条第2項の規定に基づく連合商標の使用の事実によっても立証されるところである。
5.以上の各証拠資料から明らかの如く、被請求人(商標権者)は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標及び連合商標の関係にあった商標を、その指定商品中の「ビーフパウダー」、「アサリエキス」、「ニボシパウダー」、「昆布エキスパウダー」等について、本件審判請求の登録前3年以内に使用しているものである。

第4 当審の判断
1.本件について、使用商標の使用者が商標権者(被請求人)であること、使用に係る各商品が取消請求に係る「肉製品,加工水産物(かつお節,削り節,とろろこんぶ,干しのり,焼きのり,干しわかめ,干しひじき,寒天を除く。)」に属する商品であること、及び商標権者が使用に係る各商品についてした取引の時期が本件審判の請求の登録前3年以内であることについては、当事者間に争いがない。
そこで、使用商標が本件商標と社会通念上同一のものであるか否かについて検討する。
(1)本件商標は、別掲のとおり、黒塗りの正方形を上下にほぼ2等分するように白抜きの細線を横に引き、さらに該2等分された下方の黒塗りの長方形を左右に2等分するように白抜きの細線を縦に引いた図形を左に配し、該図形の右に、「TAKASAGO」の文字を書してなるものであるが、文字の上部は図形の上部と同じ高さに揃え、文字の下部は、図形の上部から約4分の3の位置まで来るように、大きく書してなるものである。そして、該「TAKASAGO」の文字の下に「INTERNATIONAL CORPORATION」の文字を書してなるものであるが、該「INTERNATIONAL CORPORATION」の文字は、文字の下部を図形の下部に揃えるように、かつ、左右の長さは、上段の「TAKASAGO」の文字に揃えるように小さく書してなるものである。
これに対し、使用商標は、本件商標中の図形と同じ構成よりなる図形を左側に配してなるところ、本件商標中の図形の黒塗りの部分を赤色にしたものである。該図形の右に「TAKASAGO INTERNATIONAL CORPORATION」の文字を横書きしてなるものである(「TAKASAGO」、「INTERNATIONAL」、「CORPORATION」の各文字の間には半字程度の間隔がある。)。そして、該図形と文字の下に、赤色の線を引いてなるものである。
してみると、本件商標と使用商標とは、その構成中の図形部分については、色彩を同一にするものとすれば、いずれの構成も同一のものであり、また、文字部分の綴りも同一である。そして、両者の異なるところは、大きく書した「TAKASAGO」の文字と小さく書した「INTERNATIONAL CORPORATION」の文字とを上下二段にするか、あるいは同書同大の「TAKASAGO INTERNATIONAL CORPORATION」の文字を横書きにするかにあるものと認められる。
なお、使用商標中の赤色のアンダーラインは、付記的なものであり、要部とは認められない。
(2)ところで、取引の実際においては、登録商標が配列、配置等について少なからぬ変更が加えられて使用されていることは、その実情に照らし明らかなところである。
また、被請求人は、その名称を「高砂香料工業株式会社」とするものであるところ、乙第19、26、27号証によれば、社名の英文表示を「TAKASAGO INTERNATIONAL CORPORATION」とすることが定款で定められ、「高砂香料工業株式会社」と「TAKASAGO INTERNATIONAL CORPORATION」とを併記して広告等に使用していることが認められる。
(3)そこで、前記(2)の取引の実情に照らし、前記(1)で認定した本件商標と使用商標の構成態様の相違が、社会通念上同一の範囲内のものか否かについてみるに、一般的に、商標を観察する場合は、全体をもって観察し、当該商標から生ずる称呼についても、構成全体からどのような称呼が生ずるかをまず検討すべきものである。
そして、本件商標と使用商標とは、配置、文字の大きさにおいて異なるところがあるとしても、書された文字は全体として、「TAKASAGO」「INTERNATIONAL」「CORPORATION」の各文字を書してなるものであり、これより生ずる称呼はいずれも「タカサゴインターナショナルコーポレーション」である。
この点に関し、請求人は、本件商標より生ずる称呼は、「タカサゴ」のみであると主張する。
確かに、本件商標は、「TAKASAGO」の文字が大きく書され、看者の注意を強く惹くものであるところから、該「TAKASAGO」の文字より「タカサゴ」の称呼を生ずる場合があるといえるが、上記したとおり、本件商標の文字部分全体から生ずる称呼は、「タカサゴインターナショナルコーポレーション」であり、この全体称呼のほか、大きく書された「TAKASAGO」の文字より「タカサゴ」の称呼をも生ずるというのが相当であって、常に「タカサゴ」の称呼のみが生ずるというものではない。したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
そうであるとすれば、前記した取引の事情及び被請求人が「高砂香料工業株式会社」の文字とともに「TAKASAGO INTERNATIONAL CORPORATION」の文字を併記して広告等に使用している事実等を併せ考えると、使用商標は、本件商標と同一性の範囲内における変更であって、商標の識別性に影響を与えない程度の変更とみるのが相当である。
2.請求人の主張について
(1)請求人は、「乙第2ないし5号証の紙片は、何の変哲もない白い紙片であり、紙片全体の構成は非常に簡単、かつ、あっさりしており、即座に作成することが可能なものである。」、「缶の表面にはこすり傷が付いていていくらか劣化しているのに、紙片は傷や汚れやなど一切なく、缶と対比すると不自然さがある。」などと主張する。
しかしながら、使用に係る各商品は、一般の消費者を対象とするものではなく、食品メーカー等に販売する業務用の商品であると認められるから、これら商品の包装容器としての缶に貼られている本件紙片には、商品の内容・容量・販売者等最小限の必要事項が明確に把握できる程度のものが表示されていれば足りるのであって、購買者の注意を喚起させるようなキャッチフレーズ等を表記しないのがむしろ通常であることは、その取引の実情に照らし明らかといえる。
したがって、本件紙片が、この種商品の通常の取引と比べて格別に不自然な点があるとか、偽造されたものであるなどの要素は見出せない。そして、この点の判断を左右するに足りる証拠は見出せない。
(2)請求人は、「国内向けの商品に貼られた紙片に既に『高砂香料工業株式会社』と表示されているのに、さらに英文名称を付するということは一般的に行われていないから、缶に貼った一片の紙片の写真だけで、登録商標を使用していることの証明とはならない」旨主張する。
しかしながら、国内向けに販売する商品に、登記簿上の会社の名称と英文表示とを併記することが一般的でないとする証拠はないばかりでなく、乙第2ないし5号証に表示された「高砂香料工業株式会社」は、「販売者」としての表示であることは明らかであり、使用に係る各商品に使用されている商標は、紙片上段に表示されている図形と「TAKASAGO INTERNATIONAL CORPORATION」の文字よりなるものである。そして、上記使用商標が本件商標と社会通念上同一のもであることは、前記認定のとおりである。
(3)したがって、上記についての請求人の主張は採用できない。
5.以上のとおりであるから、本件商標の商標権者は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、取消請求に係る指定商品中の「加工肉、加工水産物」について、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用していたというべきである。
したがって、本件商標の指定商品中、取消請求に係る「肉製品,加工水産物(かつお節,削り節,とろろこんぶ,干しのり,焼きのり,干しわかめ,干しひじき,寒天を除く。)」について登録は、商標法第50条の規定により取り消すべきものとすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本件商標


審理終結日 2002-03-06 
結審通知日 2002-03-11 
審決日 2002-03-25 
出願番号 商願昭61-131460 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (132)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯島 袈裟夫沖 亘 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 上村 勉
茂木 静代
登録日 1989-10-31 
登録番号 商標登録第2183782号(T2183782) 
商標の称呼 タカサゴ 
代理人 伊藤 浩平 
代理人 長南 満輝男 
代理人 細井 貞行 

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