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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない 003
管理番号 1058450 
審判番号 審判1998-35336 
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-06-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-07-24 
確定日 2002-03-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第4034918号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4034918号商標(以下、「本件商標」という。)は、「モイスチュアサイエンス」の片仮名文字と「Moisture Science」の欧文字とを二段に横書きしてなり、平成7年11月17日に登録出願、第3類「化粧品、せっけん類」を指定商品として、同9年7月25日に設定登録がなされているものである。

第2 請求人の引用商標
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2110684号商標(以下、「引用商標」という。)は、「サイエンス」の片仮名文字と「SCIENCE」の欧文字とを二段に横書きしてなり、昭和56年9月22日に登録出願、第4類「化粧品、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成1年2月21日に設定登録され、その後、商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は「本件商標の登録を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第85号証(枝番を含む。)を提出している。
1.請求の理由
文字よりなる商標を常に一連不可分のものと把握されるものとするには、これを外観及び称呼の面のみならず、観念の面からもこれを観察し、これらのいずれにおいても、当該商標からこれをいずれかの部分で分離して観察するのを相当とする特段の事由を見出し得ないものであることが、当該商標に求められると解するのが相当であり、当該商標が、例えば、相互に関係がないか、あってもそれが稀薄な二語よりなるものであることが明瞭なものであって、そのうちの一語が当該商標を使用する商品の品質等を表示するものであるような場合には、当該商標には、観念上これを分離して観察するのを相当とする特段の事由が存するというべきである。
また、化粧品業界においては、肌や頭髪が乾くことは、肌や頭髪を傷めるということから、この乾くことを防ぎ、「肌や頭髪に潤いを与える化粧品、せっけん類」、すなわち、肌や頭髪への保湿効果を有する化粧品やせっけん類(以下「保湿効果を有する化粧品やせっけん類」という。)が取引されていて、これら商品が保湿効果を有するものであること、すなわち、商品の品質を表示するものとして、「モイスチュア」およびこれと実体的には同一のものとみるべき「モイスチャー」の語が広く一般に使用されているのが実情である(甲第3号証)。
そこで、これを本件商標についてみると、本件商標は、その構成からみて「モイスチュア」と「サイエンス」、「Moisture」と「Science」の文字よりなるものと容易に看取されるものであるところ、これらを「モイスチュアサイエンス」、「Moisture Science」と表記したことにより、例えば、これらは全体として親しまれている一語を形成するに至っているから、それぞれ一連不可分のものとみるべきものである、といったような、これらを一連不可分のものとしてのみに把握しなければならないとする特段の事情は見出せない。
してみれば、本件商標は、相互に関連を有しないか、関連を有していたとしても、その関連が稀薄な「モイスチュア」(Moisture)と「サイエンス」(Science)の語よりなるものというべきであって、他に観念上、両者を一体不可分のものみなければならないとする特段の事由は、見出せない。
しかして、「モイスチュア」と「Moisture」は、前記の「保湿効果を有する化粧品、せっけん類」の品質を表示するものとして、化粧品業界において広く一般に使用されている「モイスチュア」及び「モイスチャー」と同一かあるいは通ずるものである。
そうすると、この本件商標中の「モイスチュア」「Moisture」の文字は、その指定商品に含まれている「保湿効果を有する化粧品、せっけん類」との関係においては、これら商品が「保湿効果を有するものである」という品質を表示するに止まり(ちなみに、「MOISTURE」「モイスチュア」あるいは「モイスチュアー」を自他商品の識別力なしと認定した審査、審決例については、甲第4号証ないし甲第7号証)、本件商標にあって自他商品の識別標識として機能するのは、「サイエンス」「Science」の文字といわざるを得ない。
一方、引用商標が「サイエンス」の称呼及び「科学」の観念を生ずるものであることは明らかである。
したがって、本件商標と引用商標は、「サイエンス」の称呼及び「科学」の観念を同じくするものであり、そして、本件商標と引用商標が「保湿効果を有する化粧品、せっけん類」という同一の商品について使用されたとき、本件商標を使用した商品に接する取引者、需要者は、その構成中の「サイエンス」「Science」の文字に強く注意をひかれ、ひいて、この商品を、「サイエンス」と「SCIENCE」の文字よりなる引用商標を使用している商品の出所と同一の出所より出たものと認識する場合も、決して少なくないとみるのが相当である。
したがって、かかる意味において、両商標は、その称呼「サイエンス」及び「科学」の観念において紛らわしい類似のもといわざるを得ず、また、両商標の指定商品は、共に「保湿効果を有する化粧品、せっけん類」を含むものである。
以上よりすれば、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に該当し、これに違反してなされたものであるから、同法第46条の規定により無効とされるべきである。
2.答弁に対する弁駁
(1)本件商標より生ずる観念及び本件商標の要部について
本件商標より生ずる自然の観念が何であるかは、本件商標がその指定商品中の「保湿効果を有する化粧品・せっけん類」について使用された場合にあっても、なおその構成中の「Moisture」(モイスチュア)の文字の意味が、当該商品が保湿効果を有するものであること、すなわち、商品の品質を表示しているものとは把握されることなく、上記の効果とは関連のない「潤いの科学」「湿気の科学」「水分の科学」といった意味の中に不可分一体に融合するに至っていると把握されるものであるか否かの判断に係るというべきである。
そこで、この点についてみると、被請求人は、「Moisturise」であればともかく、「Moisture」(モイスチュア)には、「保湿効果を有する」とまでの意味はないと主張しているが(請求人もこれを否定するものではない)、これが英語の講学の場であれば格別、商取引の場においては、常に正確な語義どおりに把握されるとは限らず、甲第3号証で示す業界各社の「モイスチュア」あるいは「モイスチャー」の文字の使用例、甲第4号証ないし甲第7号証で示す審査例及び今般新たに提出する甲第8号証ないし甲第43号証で示す審査・審判例(これらの審査・審判が、取引の実際を踏えてなされているものであることは言うを俟たないところである。)からみると、商取引の場では、「Moisture」(モイスチュア)の文字の意味は、「保湿効果を有する化粧品・せっけん類」との関係においては、常に被請求人主張のごとき観念の中に一体不可分に融合しているものと把握されるとは限らず、その品質(“保湿効果を有する”という。)を表示するものと把握される場合も、少なからずあるとみるのが相当である。
これに対して、「Science」(サイエンス)の文字は、本件指定商品の品質等を表示するものとはいえないから、本件商標にあって「科学」の観念及び「サイエンス」の称呼が生ずること明らかな「Science」(サイエンス)の文字が、自他商品の識別標識として機能する部分、すなわち要部と把握される場合も、また少なからずあるとみるのが相当である。
ところで、商標の要部に関して、被請求人は「モイスチュアエッセンス」、「モイスチュアミルク」、「モイスチュアフォーム」、「モイスチュアジェル」なる標章における要部は、これらから「モイスチュア」を除いた部分となると主張しているが、甲第4号証ないし甲第43号証及び甲第44号証ないし甲第85号証を総合すると、保湿効果を有る化粧品・せっけん類との関係においては、上記の標章は、全体として自他商品の識別力を有しないものというべきであるから、そこに要部なるものが存在する余地はない。
したがって、被請求人の前記指摘例は、請求人の本件商標の要部認定の不当をいう被請求人の主張に沿うものというを得ない。
(2)本件商標と引用商標との類似について
本件商標と引用商標の指定商品は、共に「保湿効果を有する化粧品・せっけん類」を含むものであるから、当然のことながら、本件商標を使用した「保湿効果を有する化粧品・せっけん類」と、引用商標を使用した上記の商品が、同一市場に流通することになる。
しかして、本件商標にあって「Moisture」(モイスチュア)の文字が、「保湿効果を有する化粧品・せっけん類」との関係においては、その品質を表示するものと把握される場合も少なからずあること、及びこの場合における本件商標の要部は、「Science」(サイエンス)の文字といわざるを得ないことは前記のとおりである。
しかるところ、引用商標は、これら両文字と同じ綴り字からなり、同一の観念・称呼を生ずる「SCIENCE」(サイエンス)の語からなるものである。
そうすると、本件商標は、取引者、需要者の注意を強くひく部分(すなわち要部)を引用商標と共通にするものということに帰着するから、かかる両商標が、それぞれ同一の商品(保湿効果を有する化粧品・せっけん類)について使用されたとき、これら両商品に接する取引者、需要者が、両商品を同一の出所より出たものではないかと、その出所を混同する場合も決して少なくないとみるのが相当である。
したがって、かかる意味において、両商標は、「科学」の観念及び「サイエンス」の称呼を同じくする類似のものといわざるを得ない。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と答弁し、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出している。
(1)観念における両商標の類否について
請求人の主張では、本件商標は、「モイスチュア(Moisture)」の部分と「サイエンス(Science)」の部分が、「相互に関係がないか、あってもそれが希薄な二語よりなる」とのことである。そして、「モイスチュア(Moisture)」の部分は、「当該商標を使用する商品の品質等を表示するものである」ため、本件商標を観察するに際しては、「観念上これを分離して観察するのを相当とする」と述べている。しかしながら、請求人の上記主張は、「モイスチュア(Moisture)」の認定が正確になされていないために、本件商標から生じる観念を、誤って認識しているものと思われる。
まず、請求人は、「モイスチュア」が「保湿効果を有する」の意であるとの前提のもとに、「モイスチュア」を指定商品「化粧品」等に使用した場合には、品質表示に当たるとしている。ここで、当該部分が「Moisturise」であれば、「湿らせる、水分を与える、潤いを与える」という他動詞であることから(乙第2号証)、請求人は、おそらくこの単語と「Moisture」とを混同して、上記主張を行ったものと推測する。
ところが、「Moisture」は名詞であり、正しい意味は「湿気、湿り、潤い、水分、水蒸気」である(乙第3号証)。そして、「Science」は「科学」の意味であるため、本件商標「モイスチュアサイエンス/Moisture Science」から生じる観念は、「潤いの科学」、「湿気の科学」、「水分の科学」等と理解するのが素直であり、一般的にもそのように理解されるものと考える。そして、これらの観念は、全体としてまとまりよく一連に生じるものであり、また、「潤い」も「科学」も、指定商品「化粧品」に対して相互に無関係であるとは言えないものである。してみると、本件商標に関しては、「モイスチュア」と「サイエンス」を、観念上分離して観察しなければならない、合理的な理由は何ら見当たらない。
以上より、本件商標からは「潤いの科学」という観念が生じるのに対し、引用商標からは、「科学」という観念しか生じ得ない。そして、両観念が誤認混同を生じることのない非類似のものであることは明白であるため、両商標は、その観念において、全くの非類似の商標であることを主張する。
(2)商標の要部の認定について
請求人は、本件商標中「モイスチュア(Moisture)」の部分は、「保湿効果を有するものである」という品質を表示するに止まるため、自他商品の識別標識として機能し得ず、本件商標において識別機能を有するのは「サイエンス(Science)」の部分である旨を主張している。
ここで、審判請求理由補充書に添付された資料「日本の化粧品総覧」(甲第3号証)を検討すると、確かに「モイスチュア〜」という化粧品は、市場に多数存在している。例えば、「モイスチュアエッセンス」、「モイスチュアミルク」、「モイスチュアフォーム」、「モイスチュアジェル」といった具合である。それでは、これらの商標が付された商品が、実際に市場で取引きされる際に、「モイスチュア」の部分は識別力がないから考慮に入れずに、需要者・取引者が取引きをするであろうか。請求人の上記理論に従えば、「モイスチュアエッセンス」であれば単に「エッセンス」の部分のみが、「モイスチュアミルク」であれば単に「ミルク」の部分のみが、商標の要部として識別機能を発揮していることになる。
しかしながら、実際の取引きにおいては、「モイスチュア」の部分は他の部分と密接不可分に結合し、「モイスチュアエッセンス」、「モイスチュアミルク」は一体として、需要者に識別されていることに、異論はないものと考える。つまり、「モイスチュア」は他の部分と一連に結びつくことにより、商標全体として識別力を発揮し得るものであり、当該部分を無理矢理切り離し、識別力が全くないものとして扱う請求人の主張は、現実の取引状況に鑑みても、妥当なものではない。
以上と同様に、本件商標も「モイスチュア」と「サイエンス」が一連に表示されているため、全体として1つの識別力を発揮していると考えるのが相当であり、本件商標の要部は「サイエンス」ではなく、「モイスチュアサイエンス」全体であると確信する。
したがって、引用商標との類否判断においては、「モイスチュアサイエンス」全体と「サイエンス」を比較するのが相当であり、請求人の上記主張は、到底採用し得ないものである。
(3)結論
上記(2)で述べたように、本件商標は全体として1つの商標と認識されるものであるため、本件商標と引用商標の類否判断は、「モイスチュアサイエンス/Moisture Science」全体と「サイエンス/SCIENCE」の比較により行うのが相当である。それを踏まえた上で、両商標の外観・称呼・観念を観察すると、両商標の観念が非類似であり、そして、外観と称呼の比較に関しても、本件商標が全体としてのみ認識される以上、両商標が非類似であることは、誰の目からも明らかである。
ついては、本件商標と引用商標とは、外観・称呼・観念が非類似の商標であり、よって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではなく、無効事由に該当するものではない。
以上、本審判の請求は理由がないものである。

第5 当審の判断
本件商標は、上記のとおり「モイスチュアサイエンス」の片仮名文字と「Moisture Science」の欧文字よりなるところ、その構成文字全体は、外観上まとまりよく一体的に表されており、これより生ずると認められる「モイスチュアサイエンス」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、例え「モイスチュア」「Moisture」の文字部分が「湿気、潤い、水分」等を意味する語であるとしても、かかる構成においては商品の品質、用途等を具体的に表示するものとして直ちに理解し得るものといい難いところである。
そうとすれば、本件商標は、その構成文字全体をもって一体不可分の造語よりなる商標というのが相当であるから、その構成文字に相応して「モイスチュアサイエンス」の一連の称呼のみを生ずる商標といわざるを得ない。
他方、引用商標は、その構成文字に相応して、「サイエンス」の称呼を生ずること明らかである。
そして、本件商標より生ずる「モイスチュアサイエンス」の称呼と引用商標より生ずる「サイエンス」の称呼とは、その構成音数が著しく相違するものであるから、称呼上明らかに聴別し得るものである。
また、本件商標と引用商標とは、外観上互いに区別し得る差異を有し、かつ、本件商標は一連の造語よりなる商標と認められるものであるから、引用商標が如何なる観念を生じさせるものであっても、両者は観念上比較すべくもないものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼、外観および観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標と認められるものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたもということはできない。
してみれば、本件商標は、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-05-30 
結審通知日 2001-06-12 
審決日 2001-06-25 
出願番号 商願平7-119759 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (003)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬場 秀敏 
特許庁審判長 寺島 義則
特許庁審判官 江崎 静雄
上村 勉
登録日 1997-07-25 
登録番号 商標登録第4034918号(T4034918) 
商標の称呼 モイスチュアサイエンス、モイスチャーサイエンス 
代理人 瀬戸 昭夫 
代理人 高橋 詔男 
代理人 渡邊 隆 
代理人 志賀 正武 
代理人 高柴 忠夫 
代理人 成合 清 

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