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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1057275 
審判番号 審判1998-35281 
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-06-19 
確定日 2002-04-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第3325058号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3325058号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3325058号商標(以下、「引用商標」という。)は、「A/X AXIISEXCHANGE」の構成を横書きしてなり、第25類「 被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成4年10月19日登録出願、同9年6月20日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用商標
請求人の引用する登録第2617988号商標は、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、平成3年11月19日登録出願、同6年1月31日に設定登録されたものである。同じく、登録第2583989号商標は、第21類「装身具、かばん類、袋物,宝玉およびその模造品、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成3年11月19日登録出願、同5年10月29日に設定登録されたものである。同じく、登録第2613061号商標は、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成3年11月19日登録出願、同平成5年12月24日に設定登録されたものである。同じく、登録登録第2673065号商標は、第23類「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成3年11月19日登録出願、同6年6月29日に設定登録されたものである。同じく、登録第第2588489号商標は、第24類「運動用特殊衣服、運動用特殊ぐつ、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成3年11月19日登録出願、同平成5年10月29日に設定登録されたものである(以下、これらを総称して「引用商標」という。)。そして、上記した引用商標の構成は、いずれも「AX ARMANI EXCHANGE」の欧文字を横書きしてなるものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第171号証を提出した。
1.本件商標は、以下の理由により、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号によって無効にすべきものである。
(1)請求人の使用する引用商標の著名性について
請求人は、世界的に著名なイタリアのデザイナーである「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオアルマーニ)の設立した会社であり、そのデザインに係る商品の取り扱い及び商標権等の知的所有権の管理をしており、各引用商標の実質的な権利者であり、これらの請求人の所有する著名な各引用商標を引用する。
「GIORGIO ARMANI」は、1975年以来、特に紳士服のデザインにおいて、世界的な名声を博し、また数多くの賞を受賞し、「ARMANI」(アルマーニ)の略称をもって知られている。彼のデザインする紳士服は、「アルマーニのスーツ」、「アルマーニの服」等と呼ばれ、また他の商品もこれにならって、「アルマーニの〇〇〇」と言われるようになっており、彼のデザインする商品及び略称その「ARMANI」は、取引者、需要者の間に広く知られ、著名となっているものである(甲第6号証ないし甲第16号証)。
また、これらの著名性については、別件商願平6-24032号登録異議申立事件、商願平6-24033号登録異議申立事件において認められていることからも(甲第17号証及び由第18号証)、明らかな事実である。
さらに、「GIORGIO ARMANI」がデザインする「EMPORIO ARMANI」や「ARMANI JEANS」、「A|X ARMANI EXCHANGE」等の「ARMANI」の文字を含んだ他の商品ラインも、彼のデザインする商品としての高い信用が形成されている。
「A|X ARMANI EXCHANGE」は、ジーンズ等のカジュアルウェアに関して「basic(基本)」を商品コンセプトとし、世界的に著名となったデザイナー「GIORGIO ARMANI」がデザインする1ブランドとして、1991年に発表されたものである。
「GIORGIO ARMANI」が高級品のイメージをもって需要者・取引者に広く知られているのに対し、「A|X ARMANI EXCHANGE」ブランドは、そのイメージを継承したカジュアルラインとして開発・販売されており、これらの商品を取り扱う店舗は「A|X ARMANI EXCHANGE STORE」又は「A|X SHOP」等のように呼ばれ、欧米を中心に世界的に店舗展開がされているものである。
これらの「A|X ARMANI EXCHANGE」ブランド商品や、それを取り扱う「A|X ARMANI EXCHANGE STORE」は、「A|X ARMANI EXCHANGE」が発表された1991年の後半から1992年の前半にかけて、「PLAY BOY」や「NEW YORK TIMES」等の数々の著名な雑誌や新聞に次々と広告が掲載され、またその後も多数の刊行物によって世界中で紹介され(甲第19号証ないし甲第166号証)、「GIORGIO ARMANI」がデザインするカジュアルラインの1ブランドとして広く知られたものである。
また、これに伴って、請求人は「AX ARMANI EXCHANGE」の商標を、世界中の46カ国を越える国で出願・登録しており(甲第167号証)、また日本においても、各引用商標をファッションに関連する商品について出願し、登録されている(甲第1号証ないし甲第5号証)。
そもそも、「A|X ARMANI EXCHANGE」の「A|X」部分は、「ARMANI EXCHANGE」を表すものであり(甲第37号証及び甲第120号証)、請求人が使用する商標は「A|X ARMANI EXCHANGE」及びその略称としての「A|X」である(甲第19号証及び甲第48号証)。また、前述の刊行物においても、しばしば「A|X」として紹介されている。
以上のことから、「AX ARMANI EXCHANGE」の商標は世界各国で出願・登録されるとともに、「A|X ARMANI EXCHANGE」のブランド商品は、世界的に大量に販売され、「A|X clothes」や「A|X items」と呼ばれるなど、「A|X ARMANI EXCHANGE」だけでなく、その略称である「A|X」についても需要者・取引者に周知・著名となっていると言える。
したがって、本件商標の出願時である1992(平成4)年10月19日においては、すでに請求人が紳士服等のファッション関連商品に使用する商標「AX ARMANI EXCHANGE」またはその略称「A|X」は、著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI」がデザインするカジュアルブランドとして、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、世界中の需要者・取引者の間に広く知られるに至っていたというべきである。
(2)商標・商品の類似について
本件商標は、アルファベットで「A/X AXIISEXCHANGE」からなり、その構成より「エイエックス アクシスエクスチェンジ」の称呼が生ずる他、語頭部から「エイエックス」、後半部から「アクシスエクスチェンジ」等の称呼が生ずる。
一方、各引用商標はいずれもアルファベットで「AX ARMANI EXCHANGE」からなり、その構成より「エイエックス アルマーニ エクスチェンジ」の称呼が生ずる他、語頭部から「エイエックス」、後半部から「アルマーニ エクスチェンジ」等の称呼が生ずる。
これらの称呼の中でも、特に迅速を重んじる取引の際においては、語頭部分の簡潔な称呼が好んで使用されることが考えられ、特に本件商標の後半部は語頭部分に比して著しく長く、また読みづらいため、本件商標及び各引用商標からは、その語頭部分より「エイエックス」の称呼が共に生じるから、両商標は同一の称呼を持つ商標であると言える。
また、本件商標が各引用商標と同一又は類似の指定商品を含むものであることは、商標公報及び商標登録原簿より明らかである(甲第1号証ないし甲第5号証)。
(3)第4条第1項第10号について
本件商標は、著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI」がデザインするカジュアルブランドであり、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、世界中の需要者・取引者の間に広く認識されている各引用商標「AX ARMANI EXCHANGE」及びその略称「A|X」と称呼において類似する商標であって、同一又は類似の商品について使用をするものである。
したがって、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接する需要者・取引者は、恰も請求人の業務に係る商品であるかの如く認識し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
(4)第4条第1項第11号について
本件商標と各引用商標は、その構成より、共に「エイエックス」の称呼を生じ、指定商品においても、同一又は類似の指定商品を含むものであるから、各引用商標と類似する本件商標が、各引用商標と同一又は類似する指定商品に使用された場合、これに接する取引者・需要者は、恰も請求人の業務に係る商品であるかの如く認識し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(5)第4条第1項第15号について
請求人の使用する各引用商標「AX ARMANI EXCHANGE」及びその略称「A|X」は、世界的に著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI」がデザインするカジュアルブランドであり、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、世界中の需要者・取引者の間に広く認識されているものである。
一方、本件商標「A/X AXIISEXCHANGE」は、請求人が使用する商標として著名な各引用商標の略称である「A|X」の文字をその構成中に含むものである。
したがって、請求人の使用する各引用商標「AX ARMANI EXCHANGE」及びその略称である「A|X」の世界的な著名性に鑑みれば、これと同一の文字を含む本件商標「A/X AXIISEXCHANGE」がその指定商品について使用された場合には、これに接する取引者・需要者は、恰も請求人又はその関連会社の取り扱い業務に係る商品、またはそのシリーズ商品であるかの如く認識し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(6)第4条第1項第19号について
本件商標は、世界的に著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI」がデザインするカジュアルブランドとして著名な各引用商標「AX ARMANI EXCHANGE」の略称「A|X」を含むものである。
すなわち、各引用商標 「AX ARMANI EXCHANGE」及びその略称「A|X」は、本件商標の出願時である1992(平成4)年10月19日においては、すでにファッション関係の取引界において極めて広く知られていたのであるから、「被服」等のファッションに関係する商品を指定している本件商標出願人が、その出願時に、著名なこれらのブランド及び商標の存在を知らなかったとは到底言い難い。
そして、本件商標出願人が、これらの著名な各引用商標「AX ARMANI EXCHANGE」及びその略称「A|X」の存在を知らずに、著名な「A|X」を含んだ構成からなる本件商標を出願したとは考えられず、また本件商標全体としても特定の意味観念を生ずるものではない。
そもそも商標というものは、自己の商品等を他人の商品等と区別するための標識として使用されるものであることは言うまでもなく、その商標の採択・使用に当たっては、他人の商標と判然と区別できるように格別の留意がなされて然るべきであり、これに反して他人の商標の名声や信用にフリーライドするが如き商標の使用・採択に対しては、厳格に対処するべきである。
本件商標は、著名な各引用商標「AX ARMANI EXCHANGE」の略称である「A|X」を含んだ構成からなり、世界的に著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI」のデザインする商品としての高い名声と信用にフリーライドする目的を持って使用されるものという他はない商標である。このような著名商標へのフリーライドは、「GIORGIO ARMANI」の持つ名声と信用の毀損、出所混同、出所表示機能の希釈化を引き起こすおそれがあり、したがって、本件出願は、信義則に反する不正の目的で出願されたものであると言える。
このような商標の登録を認めることは、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護するという商標法の目的に合致しないことが明らかである。
したがって、本件商標は、他人の著名な商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
2.答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、無効審判請求人の請求適格について、「このような我が国の商標保護慣行を悉く無視する不届き極まる無効審判請求は、商標法第56条が準用する特許法第135条にいう不適法な審判請求の典型例として直ちに審決をもって却下されるべきである」と主張する。
しかし、以下のとおり、被請求人の主張はいずれも妥当ではない。
(イ)被請求人は、「平成8年改正前商標法第17条で準用する特許法第58条第4項によれば、登録異議申立の決定に対して、不服を申立てることはできない。」とした上で、「請求人側は登録異議申立理由と同じ理由および証拠に基づき商標法第46条の商標登録無効審判請求という形態により、登録異議申立ての決定に対して事実上の不服申立てを行なったのが、本件無効審判請求の実像である」と主張する。
しかしながら、前記条項における「不服を申立てることができない」の意味は、「行政不服審査法による異議申立、審判の請求、訴の提起等を認めない」ことを意味するものであり、商標法第46条による無効審判請求のことを意味するものではない。
当該条項の趣旨は、「別途、同一の理由に基づいて無効審判を請求することができるから」という理由によるものであり、請求人が登録異議申立理由と同じ理由および証拠に基づいて無効審判を請求することは、この趣旨に則ったものであり何ら問題はない。
(ロ) 被請求人は、登録異議申立における異議決定の理由を再現しているが、請求人は本件無効審判請求にあたり、その証拠を追加し、その証拠に基づいて改めて本件商標が無効である旨を主張するものである。したがって、当該異議決定は、あくまで登録異議申立における理由及び証拠に基づいた決定であるから、そもそも本件無効審判を何ら拘束するものではない。
(ハ)、被請求人は、「提出された膨大な証拠資料の中に、市場で需要者に誤認混渚を生じさせた事実の証明は全くない」旨主張するが、そもそも商標法第4条第1項第15号に該当するか否かは「出所混同が生じた事実」を要件とするものではなく、「出所混同のおそれがあること」を要件とするものある。
(ニ)被請求人は、「本件無効審判請求は、商標法第56条が準用する特許法第135条にいう不適法な審判請求の典型例として直ちに審決をもって却下されるべきである」と主張する。
しかしながら、そもそも商標法第56条が準用する特許法第135条にいう不適法な審判請求の典型例とは、「請求期間後の請求」又は「請求適格のない者の請求」や「補正を命じて補正をしない場合(133条の場合は除く)」であって、本件商標に対する無効審判請求はこのいずれに該当するものではない。
(2)被請求人は、請求理由および証明の不合理性について主張する。
しかしながら、請求人が各証拠によって証明するものは、甲第6号証ないし甲第18号証においては、デザイナー「GIORGIO ARMANI」(ジヨルジオアルマーニ)及び彼のデザインする商品、そしてその略称である「ARMANI」(アルマーニ)が世界的に著名である事実であり、甲第12号証及び甲第19号証ないし甲第196号証おいては、その著名な「ARMANI」(アルマーニ)がデザインする1ブランドである「AX ARMANI EXCHANGE」及びその略称「A|X」が、同様に世界的に著名に至っているという事実である。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、「一義的に、無効審判請求人に請求適格が存在しない理由を以て請求を却下する、との審決を、予備的に登録無効審判請求の理由はない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める」と答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
1.答弁の理由
(1)審判請求人の請求適格について
(イ)本件商標の成立過程において、請求人(登録異議申立人の名義は、ジョルジョ、アルマーニ、ソシ工夕、ベル、アッチオー二となっているが、事実上同一人である)は登録異議申立を行い(乙第1号証)、これに対して被請求人は答弁書を提出したところ(乙第2号証)、登録異議申立の理由はないとする異議決定が行われ(乙第3号証)、登録査定された(乙第4号証)。平成8年改正前商標法第17条で準用する特許法第58条第4項によれば、登録異議申立の決定に対して不服を申し立てることはできない。
そこで、請求人側は登録異議申立理由と同じ理由および証拠に基づき商標法第46条の商標登録無効審判請求という形態により、登録異議申立の決定に対して事実上の不服申立を行ったのが、本件無効審判請求の実像である。
(ロ)先に述べた請求人側の登録異議申立に対する理由なしとする登録異議決定の理由は、乙第3号証に示すとおりである。そして、この登録異議決定の理由は、少なくとも商標保護慣行を心得る者の判断として普通のことに過ぎない。
事実、請求人側が登録異議申立の理由を裏付ける証拠として提出した資料や本件無効審判請求の理由を支持する証拠として提出したまるで紙爆弾のような甲第1号証から甲第167号証に至る膨大な資料の中に、本件商標と請求人の周知著名と称する商標とがその指定商品との関係において市場で需要者に誤認混淆を生じさせた事実の証明は全くない。
ましてや、請求人の引用する甲第1号証ないし同第5号証の登録商標は、1996年7月22日付で請求人に移転登録されており、請求人の名においてこれらの登録商標が周知著名となっている事実の証明など膨大な書証の中に皆無である。
つまり、請求人の側に、本件商標の登録を無効にする利益などからきしないのであり、単に登録異議申立の企てをし損じた腹いせの愚挙に過ぎない。
(ハ)もとより、商標登録無効審判請求について法律上の正当な利益を必要とする慣行が確立されており(乙第5号証)、審判手続の形態において、事実上登録異議申立手続のやり直しを要求する請求は先に指摘した平成8年改正前商標法第17条で準用する特許法第58条第4項の立法趣旨に著しく背くものであり、しかも仮に請求人の主張するとおり本件商標と請求人の引用商標とが類似するとするならば、商標法第37条に規定される看做侵害が成立することになり、さらに不正競争防止法第2条に規定される不正競争行為も成立することにもなり、我が国の商標保護慣行の実務は大混乱に陥ることが必定である。
(ニ)このような我が国の商標保護慣行を悉く無視する不届き極まる無効審判請求は、商標法第56条が準用する特許法第135条にいう不適法な審判請求の典型例として直ちに審決をもって却下されるべきである。
(2)請求理由および証明の不合理性について
(イ)請求理由の主張および立証を念のため眺めると、「GIORGIO ARMANI」が著名であり、「ARMANI」が有名であり、「A|X」が著名であり、さらに「A|X ARMANI EXCHANGE」が有名であると主張し、思考混乱の中に著名商標が数多く登場する。そして、この錯綜した認識こそが、正に請求人において、何れが周知著名商標なのか理解し得てない証左なのである。真の周知著名の事実に混乱等あろう筈がない。
商標の周知著名の事実は、得体の知れない紙爆弾を多量に投げかけて立証し得るものではなく、取引書、取扱い店の証明、公的機関の証明等により客観的に立証されなければならない。
(ロ)請求人の主張、立証を好意をもって理解するとすれば、「GIORGIO ARMANI」か「ARMANI」の何れからの様態において知られているということになろう。そして、その周知性や著名性を仮に認めるとしても、本件商標「A/X AXIISEXCHANGE」に何れも関係はなく、商標法第4条第1項第10号の該当性などあり得ない全く空虚な請求理由なのである。
(ハ)本件商標と請求人の引用商標とが現実の市場において何ら誤認混同を生じていない事実は、請求人自ら膨大な資料を提出して反面立証するところであり、登録異議決定理由とおり、両商標は別異のものであって、商標法第4条第1項第11号、第15号並びに第19号の何れにも該当しない。
2.弁駁に対する答弁
(1)標章「ARMANI」が請求人の主張通り、圧倒的周知な存在であるなら、これを全く含まない本件商標が引用商標に類似しないことに、異議決定書を参照するまでもなく、商標の類否判断として議論の余地はなく、異議申立手続と無効審判手続との間に一事不再理の原則が機能しないことを利用して本件のような審判請求を行うのは無効審判請求権の濫用として非難されるべきである。
(2)証拠方法補充書で引用する二つの事例は、二つの商標の要部が互いに「A|X」と「EXCHANGE」の文字を含む構成となっていることから、両商標の類似性を認定したものであって、本件商標のように商標の要部を構成する文字「AXIISEXCHANGE」を「アキシーズエックスチェンジ」と発称せざるを得ない標章とは事例が異なる。記号「A|X」や文字「EXCHANGE」に商標としての自他商品識別機能や出所表示の機能は薄く、文字「AXIIS」や「ARMANI」に商品や出所を識別する機能が集中することは請求人の立証方法からも、また商標の本質からも明らかであり、引用の事例を以て、本件商標と引用商標が類似するとの判断には到底なり得ない。請求人の論法によれば、よく利用される記号「AX」と取引を意味する普通の言語「EXCHANGE」の組合せを含む全ゆる商標の選択を排除することになり兼ねず、不当極まりない。

第5 当審の判断
1.本件審判の請求適格について争いがあるので判断する。
無効審判を請求する者は、当該審判を請求するについて法律上の利益を有することを要すると解されるところ、請求人は、本件商標の使用によって出所の混同を生ずるおそれがあると思料する登録商標の所有者及び使用者であり、本件商標の登録の有無によって、商標の所有者・使用者としての地位に直接影響を受ける者といい得るから、本件審判請求について法律上の利益を有する者というべきである。
また、被請求人は、本件審判は本件商標の設定登録前になされた登録異議申立の結果(理由なしの決定)に対して事実上不服を申立てることとなり、平成8年改正前の商標法第17条において準用する特許法第58条第4項の立法趣旨に著しく背くものであり、不適法な審判請求として却下されるべきである旨主張する。
しかしながら、前記条項では登録異議決定に対し直接的に行政不服審査法による異議申立、審判の請求、訴えの提起等不服の申立を認めていなかったけれども、それは設定登録後においては無効審判を請求することができるからである等との理由によるものであって、当該異議申立と同じ理由による無効審判の請求を排斥する趣旨ではないと解すべきであるから、被請求人の主張は認められない。他に本件審判請求が不適法であるとしてこれを却下しなければならない事由は認められない。
2.そこで本案に入って審理する。
(1)引用商標等について
請求人提出の証拠によれば、イタリアのデザイナー「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオアルマーニ)は世界的に著名なデザイナーであって、そのデザインに係る商品(紳士服等)に「ARMANI」「〇〇〇 ARMANI」商標が使用されて、それが被服の取引者・需要者を中心として広く認識されるに至っているものと認められる(甲第6号証ないし同第18号証)。
そして、甲各号証によれば、1991年に、カジュアルウエアに関して「basic(基本)」を商品コンセプトとして、「ARMANI EXCHANGE」商品が発表され、それ以来、同商品に引用商標が継続して使用されていることが認められ、かつ、その商標の構成中に前記著名な「ARMANI」の文字を有してなるものであるから、それ故に前記の著名な「ARMANI(アルマーニ)」と関連を有する商標として広く認識されるに至ったといえるものである。
また、引用商標の略称又は「ARMANI EXCHANGE」を表すものとして、標章「A|X」又は「A/X」(以下、単に、標章「A|X」という。)が、雑誌「BRUTUS 1992年9月15日号」(甲第12号証)の157頁に紹介記事があるほか、雑誌「Forbes 1991年10月28日号」(甲第37号証)をはじめ本件商標の出願前の発行に係る多数の各種英文雑誌・新聞等において頻繁に紹介され、また広告が掲載されたことが認められ、さらに、「A/X」、「A/X SHOP」」又は「A/X STORE」等の表記によって前記「ARMANI EXCHANGE」商品を取り扱う店舗名等として使用されている事実が認められるところである(甲第19号証ないし同第167号証)。
してみれば、本件商標の登録時はもとよりその出願時において、当該標章「A|X」は、前記「ARMANI EXCHANGE」商品について使用される標章として、取引者・需要者間で広く認識されるに至っていたものと推認することができるものである。
(2)標章の類似性について
本件商標は、前記したとおり「A/X AXIISEXCHANGE」の文字よりなるものである。そして、その構成中前半の「A/X」と後半の「AXIISEXCHANGE」との間には半文字程度の空白(スペース)があり、視覚上分離して看取されるものである。さらに、両文字部分が常に不可分一体のものとして認識されるとすべき事情もなく、全体の文字数からみて構成においてやや冗長といわざるを得ないものである。しかして、簡易迅速を尊ぶ取引においては、本件商標の構成中語頭部に位置する「A/X」に着目し、これに注意を惹き印象をとどめて取引にあたる場合も決して少なくないとみるのが相当である。
そして、本件商標の当該前半部と引用商標の略称である標章「A|X」とを比較すると、ともに同じ欧文字「A」と「X」との間に「/」又は「|」の記号を介在させたものであって、介在する記号間に若干の傾斜の差があるけれども、その差異は微差であって、両者はその構成の軌を一にする極めて近似した標章と認められるものである。
なお、被請求人は、「A/X」や「EXCHANGE」に商標としての自他商品識別機能等が薄い旨主張するが、前記主張を認めるに足りる証拠はない。
(3)出所の混同のおそれの有無について
本件商標の指定商品は、引用商標の使用商品と同一又は類似する商品(被服)を含み、その余の商品についても、いずれもファッション関連商品として引用商標の使用商品と関連性の高い商品といえるものである。
しかして、標章「A|X」は前記のとおり、被服等の取引者・需要者に広く知られた標章であると認められるものであり、また、前記(2)のとおり本件商標はその前半部分にこれと極めて近似した標章を有するものであるから、本件商標をその指定商品に使用するときは、取引者・需要者がこれを引用商標と関連づけて認識し、請求人と何等かの関係を有する者の取扱に係る商品であるかの如く、商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあると判断するのが相当である。
してみれば、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
なお、被請求人は、出所の誤認混同を生じさせた事実の証明がない旨の主張をするが、本条項に該当するとするには、現に出所の混同が生じたことを要するものではなく、「出所の混同のおそれ」をもって足りると解されるから、当該主張によって前記認定・判断を妨げられないものである。
3.したがって、他の請求人主張の理由について論及するまでもなく、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項によりその登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-12-26 
結審通知日 2002-01-04 
審決日 2002-02-27 
出願番号 商願平4-301591 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (025)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 茂久小松 裕 
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 小川 敏
野上 サトル
登録日 1997-06-20 
登録番号 商標登録第3325058号(T3325058) 
商標の称呼 エイエックスアキースエクスチェンジ、アキースエクスチェンジ、エイエックスアクシスエクスチェンジ、アクシスエクスチェンジ 
代理人 浜田 治雄 
代理人 田中 克郎 
代理人 稲葉 良幸 

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