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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 132
管理番号 1057001 
審判番号 審判1997-11824 
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-05-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1997-07-16 
確定日 2002-03-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第2162688号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2162688号商標の指定商品中「加工野菜および加工果実」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2162688号商標(以下「本件商標」という。」)は「FUDOU」「不動」の各文字を上下二段に書してなり、第32類「果実、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和62年4月24日登録出願、平成1年8月31日設定登録、その後、平成11年9月28日に商標権存続期間の更新登録がなされているものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めるとして、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証(平成12年2月25日付け弁駁書に添付された甲第1号証と甲第2号証については、それぞれ甲第5号証、甲第6号証とした。)を提出している。
(1)請求の理由
本件商標における指定商品中の「加工野菜および加工果実」については、継続して3年以上日本国内において正当な理由なく、商標権者又はその許諾を受けた使用権者等による使用がなく、かつ、その不使用については正当な理由があるとも認められない。請求人は、漢字を「不動豆」と縦書きすると共にその回りを細綾と太線との二重線により縦長長方形に囲んでなる商標を、平成7年9月20日に商品区分第29類の「豆,煮豆およびその他の豆の加工品」を指定商品として商標登録出願(甲第3号証)をしたところ、平成9年6月6日付で本件商標を引用して、商標法第4条第1項第11号の規定に該当する旨の拒絶理由通知書(甲第4号証)を受けた。よって、本件商標における指定商品中の「加工野菜および加工果実」については商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録の取消を請求する。
(2)-1 被請求人が平成9年10月7日付で提出した審判事件答弁書及び証人尋問申請書に対する弁駁として
被請求人は、本件商標を指定商品中の「あんぽ柿」に使用している旨を主張すると共に乙第1号証ないし乙第8号証(枝番を含む。)を提出している。しかしながら、被請求人が提出した答弁書における理由及び乙号証のいずれからも、被請求人が本件商標を確実に使用していることの確証は得られない。以下、各乙号証について反論する。
(A)乙第1号証について
提出の趣旨からして問題なし。
(B)乙第2号証について
本件商標の使用態様であるとした(A)、(B)、(C)の写真は、何時、何処で、誰が、撮影したのかが全く不明であるから証拠能力を認めることはできないと共に写真全体からは次の如き大いなる疑問が生ずる。
(イ)包装用箱は一見して損傷が激しく、これが現実に販売されている商品であるとは思えないが、如何なる流通機構のもとにどの様な店で販売されているのかを具体的に明示して頂きたい。
(ロ)包装用箱における蓋の表面及び裏面に貼付したラベル(乙第3号証の1)は、包装用箱全体の損傷と比較して無損傷であると共に同じラベルを蓋の表裏に貼付することは極めて不自然である。
(ハ)包装用箱における器体の裏面に貼付された商品説明書(乙第3号証の3)の大きさが、包装用箱の大きさに比して極めて大きく不自然である。
(ニ)特に(C)の写真は写りが不鮮明で、「生産者No.」及び「袋詰月日」の記載を確認することができない。
(ホ)干し柿は半生製品で保存には通気性を必要とするが、写真の干し柿は非通気性のプラスチックフイルム製袋で包装されており、この状態では短時間で青かび発生の原因となるので、販売商品としては極めて不自然である。
(ヘ)被請求人は、この使用態様で本件商標を使用していると主張するが、商品説明書に表示された生産者の表示(住所)が被請求人とは異なると共に販売者の表示もなく、被請求人との関連性が全く不明である。
(C)乙第3号証の1〜3について
(イ)ラベル(乙第3号証の1)、シール(乙第3号証の2)及び商品説明書(乙第3号話の3)は、何時、何処で、誰が、印刷したのかが全く不明であるから証拠能力を認めることはできない。
(ロ)商品説明書(乙第3号証の3)における生産者の欄に表示された生産者と被請求人とは明らかに相違している。
(D)乙第4号証の1及び2について
本件審判請求の予告登録前3年以内のものではないので、証拠能力を認めることができないと共に住所が相違しており被請求人の領収書控ではない。
(E)乙第5号証の1及び2について
(イ)事実確認の必要性があるので「物品受領書」における御得意先「本田」の正確な住所及び氏名を明示して頂きたい。
(ロ)領収書控は領収者の住所が相違するので被請求人のものではない。
(F)乙第6号証の1及び2について
(イ)「合格不動柿五組目録」なる収納袋及びこの袋内に納められる「ご案内」には、配布者である「舟生倶利迦羅不動尊」(被請求人が、弁駁書において「舟生倶利伽藍不動尊」と表示しているため、請求人もそのように表示しているが、「舟生倶利迦羅不動尊」とするのが適当であるから、当審においては、以下、「舟生倶利迦羅不動尊」と表示する。)の表示がなく、極めて不自然である。
(ロ)収納袋(乙第6号証の1)に表示されている「合格不動柿五組目録」及び「1、合格不動柿 五個」と本件商標とは、構成が顕著に相違しており、本件商標の使用には当たらない。
(ハ)「合格不動柿五組目録」なる収納袋を配布していると主張する「舟生倶利迦羅不動尊」と被請求人との関係が不明確である。
(ニ)請求人は「合格不動柿五組目録」の詳細を知るため「舟生倶利迦羅不動尊」の所在を調査したが、遺憾ながら「福島県伊達郡梁川町」において、その存在を確認することができなかった。よって、その所在を明確にされたい。
(G)乙第7号証について
(イ)申込期間の表示からして、本件審判請求の予告登録前3年以内のものではないため、証拠能力がない。被請求人は「現時点でもこのポスターは宣伝広告のために使用されているが、前記申込み期間経過後に使用するときには、乙第7号証のポスターの下側部分すなわち、申込期間・・・と表示されている印刷部分を含む、それ以下の表示を切り離して使用しているのが実状である。」(答弁書第3頁第29〜32行目)と主張しているが、この部分を切り離したら、広告した「不動柿」の申込先が不明確となり、明らかに広告目的を達することが出来ないのであるから、この主張には信憑性がない。
(ロ)ポスターを貼って広告する「舟生倶利迦羅不動尊」と被請求人との関係が不明確である。
(H)乙第8号証の1及び2について
本件審判請求の予告登録前3年以内のものではないため、証拠能力がないと共に「合格不動柿五組目録」に基づく品を送ったのか、祈願木礼だけ、お守りだけを送ったのかの確証が得られない。
(I)証人尋問申請書に対して
被請求人が主張する答弁の理由及び乙号証が全く不明確であるため、先ず、これらの点を明確にすることが先決であり、現時点においては証人尋問の必要性がないものと思料する。
(2)-2 被請求人が平成9年10月7日付、平成11年2月22日付及び平成12年5月30日付けで提出した審判事件答弁書(第1回)、(第2回)及び(第3回)に対する弁駁として
請求人は、被請求人が提出した審判事件答弁書に記載された本件商標の使用実態につき、調査担当を現地に赴かせ、証拠の事実確認を試みたところ、被請求人が提出した答弁書における理由及び乙号証中に、これが真実であるとは到底認識することができない点があるので、以下に反論する。
(A)乙第5号証1及び2について
乙第5号証の1及び2についての証拠方法からは、これが真実であると認識することは到底できないので、これによる本件商標の使用事実を下記理由により否認する。
(イ)「物品受領書」及び「領収書控」に記載された日付の「平成9年1月28日」に、取引者である本田信一氏が「福島県伊達郡梁川町清水25-1(この住所の正確な表示は福島県伊達郡梁川町字清水町25番地1)である」において「本田屋」なる名称のもとに営業を営んでいた事実はない。すなわち、本田信一氏は平成7年4月に「本田屋」を閉店するともに、その借地を貸主である田口氏に返還して、息子である本田善一氏らと「福島県伊達郡梁川町粟野字中塚原3番地1」に居住していた。そして、その本田信一氏が転居後における同住所の家屋には、丹野ヨシ子さんと娘さん及びお孫さんの3人が平成8年4月から移り住み現在に至っている(甲第1号証参照)。なお、その家屋の外装は本田信一氏らが住んで居たときそのままで、内部だけは一部を改装して住んでいるとのこと(甲第2号証参照)である。
(ロ)本田信一氏は、少なくとも平成7年から平成9年の間に福島県伊達郡梁川町字清水町25番地1の地において、「本田屋」なる名称で自分が製造した味噌と醤油以外の商品の商いをした事実はない。審判事件答弁書(第2回)における「5、理由(2)」において、この「本田屋」は、主に味噌・醤油を製造販売すると共に、それ以外の食料品や日用品なども取り扱う個人商店であり、本商品「不動柿」も前記商品と共に店頭に並べられて販売されていた。・・・と主張しているが、この点につき、本田信一氏の長年わたる味噌・醤油の製造販売を手伝って来られた息子の本田善一氏は、「父は、自分が製造した味噌と醤油以外の商品を販売したことはない」と言っていること、及び、近所の住人で、味噌や醤油を本田さんにおいて買っていたと言う複数人の人も、「本田さんが味噌・醤油以外の商品を店頭販売していたことはない」とのことからしても、この乙5号証の1及び2についての商取引が真実であると認識することはできない。また、被請求人が「本田屋」は、主に味噌・醤油を製造販売すると共に、それ以外の食料品や日用品なども取り扱う個人商店であるとの主張についても、上記複数人の人は、本田さんは商品を陳列する様な店頭はなく、買いに来た人の注文に基づく「量り売り」であったとのことである。さらには、本田信一氏が営んでいた「本田屋」の所在地は、甲第1号証をもって提出した「清水町25番地1」の近辺を表示した地図において、現在は「・丹野ヨシ子・飯塚由美子」と表示されている個所であるが、大通りからは相当深く入り込んでおり、その近在住民以外の人が「本田屋」の前を通ることは殆どなかったとのことであり、現に、今回の調査にさいしても約2時間ほど居た調査担当者も、通行人は1人もなかったとの報告をしている。さらにまた、本田信一氏が当該清水町の住所に移り住む前からこの町に住んで居り、かつ、その後の本田信一氏とは懇意にしていたと言う人の話によると、本田さんは味噌・醤油製造用の原材料である大豆、米、麦等の穀物を購入した際の搬入は、飛び番地の同番地(清水町25番地1)であるA印個所の遠藤盛氏宅前にトラックを駐車させて積み荷を降ろし、そこからは手押し一輪車で自宅まで、細い路地を利用して搬入していたとのことである。なお、本田屋に通ずる向かって右側の道は、近年拡幅されたとのことであるがトラックは入れない。そして、入り口のB印個所の道路も道幅が狭く、トラックがそこに駐車すると他の自動車の通過が出来なくなることから、この道は利用しなかったものと思われる。
(ハ)乙第5号証の1に記載されている「あんぽ柿(不動柿)」の単価は「6,000」であり、仮に、これを仕入れた本田屋が販売して利益を得るためには、常識的にみても、小売額は1万円以上であったと思われるが、そのような高価なあんぽ柿を短期間に店頭で完売することは不可能と思料する。すなわち、現在、町のお店で市販されているあんぽ柿は、伊達みらい農業共同組合(福島県伊達郡保原町字7丁目33-3所在)製造に係るものが殆どで、段ボール製の包装用箱に約1kg(透明袋で1個ごと密封された9個又は10個)が箱詰めされ、特秀、秀(青)、秀(赤)、秀(無印)に等級分したものが沢山販売されており、調査担当者が立ち寄った店での値段は、特秀の箱語が金2,000円、1個売は金150円であった。なお、上記の値段は12月から2月末までの間でも、お正月の前後を盛りとして多少の変動がありますと店員が言っていた。この様な値段で、近くの果物店、八百屋、スーパー等では幾らでも購入することができる時季下で、しかも、大通りからは相当深く入り込んでおり、その近在住民の人でなければ「本田屋」の前を通ることは殆どない地において、被請求人から仕入れた高価なあんぽ柿が50箱も短期間に本田屋で売り尽くされたとは到底考えられない。
(ニ)被請求人は、乙第5号証で立証しているとおり、平成9年1月28日に本田信一氏との間で、あんぽ柿の売買により金309,000円の売り上げをしているが、この乙第5号証の1及び2をもって、その商取引の事実及び本件商標の使用を容認することは到底できないので、この物品受領書及び領収書控を綴じた1冊ごと及び当該売上台帳又はこの売上を記載した出納簿等の写を提出願いたい。それにより乙第5号証の信憑性を更に確認する。
(B)「物品受領書」及び「領収書控」の追加提出願い
被請求人は、乙第4号証の1及び2をもって、平成4年1月28日付で本田信一氏との商取引に基づく「物品受領書」及び「領収書控」を提出しているか、これは本件審判請求の予告登録前3年以内のものではない。そこで、平成4年1月28日付の上記「物品受領書」及び「領収書控」が保管されていたのであるから、当然平成7年及び平成8年における本田信一氏との間で継続的に商取引された事実としての「物品受領書」及び「領収書控」が保管されているものと思料する。したがって、平成7年及び平成8年の当該「物品受領書」及び「領収書控」を追加提出願いたい。
(C)被請求人は、請求人は平成12年2月25日付で提出した審判事件弁駁書における弁駁理由に対し、「単なる状況写真に憶測を加えて主観的な主張を展開しているに過ぎない。」と主張すると共に審判事件答弁書(第2回)で主張していた「本田屋」での販売形態を、店頭販売から口コミや紹介顧客(得意先)への販売及び屋台による販売に大きく変更した。
(イ)請求人は、「本田屋」自体が味噌・醤油の営業を廃止したとの弁駁していない。すなわち、「物品受領書」及び「受領書控」(乙第5号証の1及び2)に記載された平成9年1月28日の時点に「取引者である本田信一氏が福島県伊達郡梁川町清水25-1の住所において本田屋なる名称のもとに味噌・醤油の営業を営んでいた事実がない」ことを主張したものである。なお、本田屋は平成7年4月に移転した福島県伊達郡梁川町粟野字中塚原3番地1において、「うつわの店 本田屋」及び「味噌の 本田屋」なる看板のもとに、陶磁器製品を主体としたお店を開店し、味噌・醤油も小規模ながらお店の一角に、1kg650円と530円の2種類をビニール袋詰した状態で5〜6個陳列して販売されていること、また、本田信一氏が既に他界されたことも承知している。
(ロ)被請求人は、『なお、「本田屋」は、「清水25-1」の借地を貸主に名目上返還した後も、味噌樽や醤油樽等の倉庫として事実上、借り続けており、住まいが変わった後も同所において引き続き味噌・醤油の販売は継続され、併せて本件商品の販売も行われていたし、現に行われている。(第3回答弁書第2頁第11〜14行目)』と主張しているが、現地を確認した調査担当者は、確かに廃棄処分もできない状態の味噌や醤油の仕込み樽の数個が放置されてはいたが、その家屋で味噌や醤油の販売が継続されている形跡は全く見られなかったと報告しており、そのことは、先に提出した甲第2号証の写真からしても、調査当時も入り口には大きなゴミが散乱していると共に人がまともに出入りすることが来ない状態に他人の洗濯物が吊るされている現実からしても十分窺い知ることができ、その主張は到底信用することができない。
(ハ)被請求人は、平成12年2月22日付で提出した第2回答弁書における第1頁下2行に『本件商品「不動柿」も前記商品と共に店頭に並べて販売されていた。』と明言しておきながら、この度は、『店頭での展示販売を目的としておらず、口コミや紹介の顧客(得意先)に販売していたものであるから、「本田屋」の立地条件の良し悪し、規模の大小は、全く問題にならない(第3回答弁書第2項第27〜29行目)』とした主張は、正に、福島県伊達郡梁川町清水25-1の住所においては、商品「不動柿」の店頭における陳列販売はしていなかったことを表明したものであり、当初の主張とは大きな矛盾であり何れが真実であるのか信じがたい。また、被請求人は、本件商品「不動柿」は、受験シーズンにおける合格祈願の記念商品であるとか、縁起物であるとか主張しているが、この様な特殊商品が「舟生倶利迦羅不動堂」とは離れた町の片隅にある味噌・醤油の小売業者により販売されているものに、果たして御利益があるのか、そして受験生はその様な高価な商品を当該小売業者から好んで購入するものか、いささか疑問が生じる。
(ニ)本田屋の営業を事実上継承していると称する本田千枝子氏が『受験シーズンである12月頃から3月頃の間の一定期間、乙第6号証の1,2及び甲(乙の間違いであると思料する)第7号証に示す「舟生倶利迦羅不動堂」の境内において屋台を開設し、前記不動堂の受験合格祈願者に本件商品「不動柿」を販売していた。(第3回答弁書第2頁第33〜36行目)』と新しい主張をしているが、本田屋は平成9年1月28日に、商品不動柿を50ケースも仕入れる直前に、何ケースの不動柿を仕入れて、前記「舟生倶利迦羅不動堂」の境内に開設した屋台で販売したのか、それを証明する「物品受領書」及び「領収書控」を提出願いたい。これらの証拠物件の提出が無い限り、被請求人の根拠のない単なる空論であると見做さざるを得ない。
(ホ)被請求人は、乙第5号証の1及び2として提出した証拠方法の「物品受領書」及び「領収書控」に関連した商品「不動柿」の小売販売を、本田信一氏の娘である本田千枝子氏が主体となって口コミや紹介により行い、さらには屋台での販売等も行っていると新たな主張をしたので、これらの事実に詳しい本田千枝子氏の証人尋問を申請し、混迷した被請求人の主張を解明する所存である。

3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証(枝番号を含む。)を提出した。 .
(1)本件商標は、甲第1号証に示されるように、英文字の「FUDOU」と漢字の「不動」を上下2段に併記した構成からなる。ところで、被請求人は、本件商標を、次のような態様で使用している。すなわち、本件商標を構成する漢字部分の「不動」を縦書にした上で、当該2文字に続けて「柿」なる商品名を一体に配して成り、全体として「フドウガキ」なる自然の称呼が生ずる態様で使用している(乙第2号証〜参照)。ちなみに、登録商標が二段併記されている場合において、上段および下段の各部が観念を同一にするときは、それらのうち一方を使用しても、登録商標の使用にあたり、また、横書きによる表示態様を縦書きに変更した場合であっても、これまた、使用にあたることは、特許庁の不使用取消審判における「登録商標の使用の認定に関する運用事例」からみて明白である。このように、本件の使用態様である縦書きの「不動柿」は、本件商標の使用に当てはまる。
(2)次に、前述の使用態様とした商標「不動柿」を、いかなる商品に使用しているかについて述べると、具体的には「あんぽ柿」である。この「あんぽ柿」が干し柿の一種である商品の普通名称であることは、乙第1号証たる商願平7-116644号の拒絶理由通知書の記載からも裏付けられる。同通知書には「この・・・商標は・・・指定商品との関係において干し柿の一種である『あんぽ柿』を容易に認識させるものであるから、これをその指定商品中『あんぽ柿』以外の商品に使用するときは、・・・品質の誤認を生じさせる。」と認定している。かかる認定を受けた商標は、同通知書の下段に添付したとおりのもので、本件とは直接の関わりをもたないが、「あんぽ柿」が干し柿の一種を指す普通名称であることを立証する資料としては、大いに役立つので、この通知書を援用しておく。
(3)進んで、本件商標の具体的使用態様、すなわち現実にはどのような形態で使用されているのかの点について詳述する。まず、乙第2号証たる商標の使用態様を示す3枚の写真について説明しておく。同写真中(A)は、前記の「あんぽ柿」を収納した状態の包装箱(蓋を閉じた状態)と、箱の蓋を開いた状態とを横に並べて撮影した写真、同(C)は、前記包装箱の上面と裏面を撮した写真、同(B)は前記包装箱内に収納された個装状態の「あんぽ柿」を示す写真である。前記の各写真からも知られるように、前記包装箱の上面と蓋の裏面には、それぞれ、乙第3号証の1として示すラベルが貼付され、一方、個装した「あんぽ柿」には同号証の2で示す小さなシールが貼り付けられている。また、前記包装箱の裏面(底面側)には、乙第3号証の3として示す説明書が添付されている。乙第2号証ならびに乙第3号証の1〜3の各資料からも明らかなように、本件商標は「不動柿」なる態様で、干し柿の一種である「あんぽ柿」に対して使用されていろ。前記乙号各証で示す商品の取引例について具体的資料の一部を提示しておく。乙第4号証の1および2は、前記取引先の一例である小売業者の一人である「本田屋」との間で取り交わした平成4年1月当時の物品受領書と代金領収書の写しであって、乙第5号証の1および2は、平成9年1月の取引を示すもので、「本田屋」との間の物品受領書ならびに代金領収書の控えであって、いずれも本件商標を現実に使用しての取引事実を示すものである。乙第6号証の1および2として示す資料は、社寺の一つである舟生倶利迦羅不動尊(福島県伊達郡梁川に所在)において配布している「合格不動柿五組目録」なる収納袋と該袋内に納められている案内状であり、これらの資料からも裏付けられるように、本件使用商品である「干し柿」(この場合には、原材料として蜂屋柿を用い、これを脱渋した製品)が箱内に5個収納され、かつ、この箱には前記の干し柿以外に、祈願札、守護符、合格祝盃など、合計5品目が納められた上で、需要者の一人である受験生またはその近親者に配布されているのである。既に指摘したように社寺で配布する前記品目の一つとして「干し柿」が存在し、そのものには「・・・不動柿・・・」なる表示が施されているから、取引形態は特殊であるが、この事例もまた、本件商標の使用にあたるとみるのが至当である。
(4)乙第7号証は本件商標である「合格・不動柿」が前記の舟生倶利迦羅不動尊において配布されていることをPRする宣伝ポスターであって、同号証として提示したポスターは該ポスターの下部に「申込期間1988年11月6日〜12月15日(大安)」と記されているように、1988年11月当時に使用された宣伝ポスターである。現時点でもこのポスターは宣伝広告のために使用されているが、前記申込み期間経過後に使用するときには、乙第7号証のポスターの下側部分すなわち、申込期間・・・と表示されている印刷部分を含む、それ以下の表示を切り離して使用しているのが実状である。
(5)ところで、前記乙第7号証であるポスターに表示された申込期間の下段には申込先として「梁川郵便局私書箱7号」が指定されている。そのため、当時である昭和63年当時においては、前記の申込に応じて前記の合格・不動柿などを 代金と引き替えに、いわゆる「ユーパック」(郵便局取り扱い小包郵便)により発送していた。換言すれば、一種の通信販売手段を利用して個人宛てに不動柿なる商品を直売していた事実があり、それらの事実を証するため、乙第8号証の1および2として前記郵パックの宛名書控えならびに「お届け済のお知らせ」なる資料を提示しておく。
(6)以上、各項にわたって詳細に主張したように、本件商標である「不動」は、「加工果実」の一つである干し柿について現実に使用されているから、本件審判請求人の請求は排斥さるべきである。なお、被請求人は、以上に詳述した本件商標の使用事実を証明するため、乙号各証として提出した各資料を基に本件商標の使用実態をさらに具体的に、かつまた詳細に立証する用意があるので、前記の各物証を提出することに併せて証人尋問の申請を行っておく。
(7)以上の通り、被請求人は、請求人が本件審判を請求する前3ヶ月以上前から、本件商標をその指定商品中「加工果実」に属する商品「あんぽ柿」に使用し続けている。したがって、指定商品「加工野菜及び加工果実」についての本件商標の登録は取り消されるべきではない。
(8)平成10年5月26日付け審判事件弁駁書に対する答弁について
(イ)乙第2号証の写真は、乙第5号証の1及び2の資料で示した取引先である「本田屋」を通じて販売された本件商品「不動柿」の販売形態を示すものである。この「本田屋」は、主に味噌・醤油を製造販売すると共に、それ以外の食料品や日用品なども取り扱う個人商店であり、本件商品「不動柿」も前記商品と共に店頭に並べられて販売されていた。請求人は、この乙第2号証の成立について否認しているようであるが、被請求人は乙第2号証の成立及び真否についても証人調べを介する等十分立証の用意がある。ところで、本件商品「不動柿」は、乙第3号証で示したラベル等において「合格」と記載しているように、受験の合格祈願に関連する商品として売り出しているため、毎年、受験シーズンである12月頃から3月頃のみの期間を限定して販売する季節商品である。したがって、乙第2号証として示した写真は、平成9年3月頃までに販売していた本件商品が在庫として残っていたものを被請求人の代表者である立花孝全が撮影して証拠資料として提出したものである。また、前記「本田屋」の所在地は福島県伊達郡梁川町清水25-1であり、店主は本田信一であったが、現在は、店主が病気のために閉店され、借地であった前記住所の土地は貸主に返却されている。
(ロ)乙第3号証及び第7号証で示したラベル等の印刷物は、横山印刷株式会社(福島県伊達郡梁川町字右城町42-2)に作成させたもので、昭和63年10月から11月頃にかけて、ラベル、シール、商品説明書は5万枚、ポスターは500枚注文したものを平成9年の本件商品の販売時期まで継続して使用してきた。
(ハ)乙第6号証として示した資料における「舟生倶利迦羅不動堂」(「舟生倶利迦羅不動尊」の本尊である)は昌源(禅)寺(福島県伊達郡梁川町舟生寺下)の境外仏堂であり(所在地:福島県伊達郡梁川町舟生字堂前68番地)、被請求人の代表取締役、立花孝全が住職を勤めている。この事実を裏付ける資料として、乙第9号証の1及び2に昌源寺の会報と立花孝全の名刺を提示する。すなわち、本件商品「不動柿」は、被請求人の代表取締役が「舟生倶利迦羅不動堂」の住職であるという立場を活用して、前記「舟生倶利迦羅不動堂」において代表者自らが販売していたものである。その販売形態は、住職である立花孝全が受験生又はその親近者から合格祈願の祈祷を依頼された際に、前記祈祷の一環として本件商品「不動柿」を、お札等と共に箱に収納した形で配布していた。この際の本件商品「不動柿」は、乙第2号証(B)で示した形態、すなわち、あんぽ柿をパッケージフィルム内に収納し、乙第3号証の3のシールを貼付した状態である。
(ニ)乙第7号証として示したポスターは、本件商品「不動柿」の申し込み先が記載されているが、申し込みを受けて郵送による販売を行っていたのは昭和63年だけであり、次の年からはこの郵送による販売方法を中止し、前述のように「本田屋」及び「舟生倶利迦羅不動堂」での直接販売のみを行うようになった。したがって、平成元年以降は、前記ポスターには申込先、申し込み期間等の記載が必要でなくなり、当該申し込み期間・・・等が表示されている部分を切り取って、宣伝広告用のポスターとして使用していたものである。
(ホ)乙第10号証の1及び2(被請求人の登記簿謄本と会社案内)の資料から分かるように、「東京都久留米市南沢3-13-28」は被請求人の会社登記簿上の住所であり、「福島県伊達郡梁川町大字粟野北ノ内80番地3」は、事業所(工場、開発室等も含む)の住所である。ちなみに、乙第10号証の2の会社案内には、福島事務所の住所として「福島県伊達郡ヤナガワテクノパーク」と記載されているが、この地名は前記「粟野北ノ内80番地3」の通称である。福島事務所宛の郵便物は、前記「粟野北ノ内80番地3」では、特に宅配便等の配達員が配達することができないという事情があるために、もっぱら「ヤナガワテクノパーク」の通称を取引書類に使用しているのが実情である。

4 当審の判断
被請求人が、「あんぽ柿」について使用していると主張する商標について検討するに、乙第2号証、乙第3号証の1及び2をみると、不動尊らしき図形とその両側に「合格」「不動柿」の文字が書されたラベル(シール)が、「あんぽ柿」の包装用袋と包装箱の蓋に貼られていることが認められ、また、乙第7号証のポスターには、不動尊らしき図形とその両側に「合格」「不動柿」の文字が大きく書されていることが認められる。そして、これらの「合格」「不動柿」の各文字は、同じ書体、同じ大きさの文字で、不動尊らしき図形を挟んでバランス良く書されているものであるから、「合格」と「不動柿」の部分に分離して認識されるとみるよりは、「合格不動柿」と一連に結合して認識されるとみるのが自然である。このことは、乙第6号証の1の「合格不動柿五組目録」と表示された袋に「1、合格不動柿 五個」の文字が一連に記載されていることからも裏付けられる。そして、「合格不動柿」の文字中「合格不動」の部分が商標であると理解されるというべきである。
そこで、本件商標と、前記商標「合格不動」を比較するに、本件商標は、前述のとおり「FUDOU」「不動」の各文字を上下二段に書してなるものであるところ、前記商標「合格不動」とは、称呼、観念、外観のいずれの点においても明らかに相違するものであり、社会通念上同一の商標ということもできない。
したがって、乙第2号証ないし乙第3号証(枝番号を含む。)、乙第6号証ないし乙第8号証によっては、本件商標を「あんぽ柿」について使用しているものとは認めることができない。
また、乙第4号証ないし乙第5号証の「物品受領書」及び「領収書控」の「品名」の欄には「あんぽ(不動柿)」の記載が認められるが、取引書類を作成するに際しては、商品名(商標)等を短縮した表示で記載することが少なからず行われていることから、これらの証拠によっても、本件商標を「あんぽ柿」について使用しているものとは認め難いものである。
そして、その他の被請求人の提出に係る証拠を総合しても、本件商標が、本件取消請求に係る指定商品のいずれかについて、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において使用された事実を認めることはできない。
なお、請求人および被請求人により、証人尋問の申請があったが、本件については上記認定のとおりであるから、その必要を認めない。
してみれば、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定商品中「加工野菜および加工果実」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-01-22 
結審通知日 2002-01-25 
審決日 2002-02-05 
出願番号 商願昭62-45293 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (132)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小松 英世沖 亘 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 山下 孝子
上村 勉
登録日 1989-08-31 
登録番号 商標登録第2162688号(T2162688) 
商標の称呼 フドー 
代理人 吉田 隆志 
代理人 橘 哲男 
代理人 奥田 百子 
代理人 朝倉 正幸 
代理人 瀧野 秀雄 
代理人 神田 正紀 

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