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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない 124 審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない 124 |
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管理番号 | 1052021 |
審判番号 | 審判1994-19076 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2002-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1994-11-17 |
確定日 | 2001-11-27 |
事件の表示 | 平成1年商標登録願第91935号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は、「MONOCOQUE」の欧文字を横書きしてなり、願書記載の商品を指定商品として、平成1年8月14日に登録出願されたものであるが、指定商品については、同3年11月21日付提出の手続補正書により第24類「おもちゃ,娯楽用具,スキー,ストック及びその他の運動具」と補正されたものである。 2 原査定の拒絶の理由 原審において、商標登録異議の申立てがあった結果、「『MONOCOQUE(モノコック)』の語は、航空機等の縦通材がなく、外板及びフレームだけからなる単一構造体を表すものであり、これがスキー板にも応用され一般に使用されている事実が登録異議申立人提出の甲各号証によっても認められるものである。してみれば、本願商標は、これをその指定商品中『スキー』に使用するときは、商品の品質、構造を表示するにすぎず、これを前記構造以外のスキーに使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと判断するのが相当である。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当する。」との理由によって、本願について拒絶の査定がなされたものである。 3 請求人の主張の要点 請求人は、参考資料1ないし10及び請求人のスキーの販売台数をグラフとした内部資料を提出して、概略以下のように主張している。 (1)スキーの上面部材と側面部材とを一体化して立体的な形状とすることにより、従来芯材のみに持たせてきた強度を、該形状の上面部材及び側面部材にも受け持たせた構造のスキーは、この種業界で請求人が最初に開発した全く新しい形状のスキーであり、これに請求人は本願商標を使用している。 また、同業他社は、同様の形状のスキーに、請求人のスキーと区別すべく、それぞれ独自の商標を使用し、該商標をもって、それぞれのスキーの構造の特徴を説明している。 さらに、これらの新形状のスキーは一般に「キャップ構造」、「キャップスキー」と総称されている。 そして、本願商標と同一の商標が、カナダで商標登録を受けている。 これらを勘案すれば、本願商標が請求人に係る商標として取引者、需要者に認識され、商品の品質として認識されることはない。 (2)請求人は、本願商標は、商標法第3条第2項の登録を受けて登録されるものと思料するが、証拠を収集中であるから、証拠が整い次第、理由補充を行う(平成11年1月20日審判理由補充書)。 本願商標を付した商品「スキー」の販売台数が、1990年ないし1999年に計114万台を超えており、該販売台数の多さから本願商標は請求人の業務に係る商品「スキー」を表示するものとして取引者、需要者間で広く認識されている。 そして、現在も商標法第3条第2項の適用を受けるための証拠を整理中であり、これが整い次第提出する所存である(平成12年2月28日付回答書)。 4 当審の判断 (1)(イ)本願商標は、上記のとおり、「MONOCOQUE」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、「monocoque」は、「モノコック」と読まれるフランス語由来の英語であって、登録異議申立人美津濃株式会社(以下「申立人」という。)提出の「情報・知識imidas 1992」(甲第1号証)には、「単一構造体、モノコック構造、車体や台車とを一体化した自動車の構造をいう。」と、同「JIS工業用語大辞典第3版」(甲第3号証)には、「外板及びフレームだけからなる応力外皮構造」と、そして、「現代用語の基礎知識2000」(2000年1月1日自由国民社発行)には、「1.(飛行機、船舶の)張殻構造。外圧をほとんど外殻で受けとめる構造。2.(車の)単体構造車体。ボディとシャーシを一体化した構造。」とそれぞれ記載されている。 (ロ)申立人提出の「別冊スキージャーナルスキーセレクション’91」(甲第4号証)の309ないし311頁には、請求人の取扱うスキーの説明に「モノコック構造」の語が使用されており、同311頁には「既成の板のほとんどがコア(芯材)+補強材であったのに対し、モノコックは外殻構造で剛性を出すというもので・・・」との記載がある。同「All Ski Materrials世界のスキー用具’93 skier’93・NO.1別冊付録」(甲第5号証)には、「’93スキー流行図鑑」の、「スキーは板状から立体的なフォルムに・・・」の見出しの記事中に、「その火付け役となったのが、モノコック構造の登場。サイドウォールからトップをボディ,構造材をシャーシとすればその両方を合体させて強度を出す。クルマのモノコックボディと同じ考え方。」と、また、「’93Trends Illustrated」の、「スキー構造のモノコック化,さらに進展」の見出しの記事中に、「モノコックスキーにとって3シーズン目となる今シーズン、新しくモノコック構造を導入したメーカーが増えているのも、スキーヤーの支持の高さを反映している。特に、国産メーカーの積極的な取り組みが目立つ。」と、さらに「The Legends of Ski-Materials」の、「90’s-そしてこれからどこへ向かうのか・・・」の見出しの記事中に、「スキーの構造でも、’90年代初めに大きなムーブメントが起こった。モノコックがそれだ。クルマの技術をフィードバックしたようなこの一体構造は、スキーの性能を飛躍させるひとつの方向として、いまイチバン熱い視線を浴びている。この先、数年は衰えることのない先端技術として、モノコックを軸としたモデルは数多く登場してくるのに違いない。」とそれぞれ記載されている。 そして、上記甲第5号証の「HEAD」の広告頁には、「これがHEADのアドバンスト・モノコックだ。T-1トーション・コントロール誕生。」の見出しで、「ソストフレックス&ハードトーションの新開発モノコックモデル。」、「T-1は、HEAD技術陣が総力をあげて開発したモノコックモデル。CAPラジアルスキーで確立したABS樹脂加工技術でスキーを完全一体成型し、・・・」と、同「PURSERLINE(「LINE」の文字部分は小さい)」の広告頁には、「DEMO」の見出しの「QR-MBR」のスキー板の説明部分に「モノコック構造(PUコア×グラスファイバー)」と、同「サロモン&テーラーメイド株式会社」の広告頁には、「EQUIPE」の見出しのスキー板「9000EQUIPE 1S」、「9000EQUIPE 2S」の説明部分には、「コンポジット素材とチタナルを組み合わせたモノコック構造、・・・」と、同「9000EQUIPE 3S」の説明部分には、「・・・、コンポジット素材を使用したダブル・モノコック構造を採用。」と、同「8000EQUIPE」の説明部分には、「強化エポキシ-グラスを使用したダブル・モノコック構造は力強いエッジグリップを約束。」と、「SALOMON」の広告頁には、スキー板の断面略図とともに、「MONOCOQUE STRUCTURE<モノコック構造>」及び「サロモンスキー・コンセプトの中核となるモノコック構造は、・・・」と、同「株式会社スワロースキー」の広告頁には、「モノコック・リスポンス」の見出しの下、「グラスなどの強化材がダイレクトにエッジに力を伝えるモノコック構造。」と、「MONOCOQUE」の見出しの下、スキー板「[NEW]SUPER MONOCOQUE TITANAL」の説明部分に、「モノコック構造のフォルムそのものにチタナールを採用。」、「モノコック構造(構造図参照)」と、同「[NEW]MONOCOQUE DEMO」の説明部分に、「モノコック構造とチタナールの組み合わせ、・・・」、「モノコック構造(構造図参照)」、同「MONOCOQUE TITANAL」の説明部分に、「モノコック構造(共重合素材+チタナール+グラスファイバー、硬質発泡ウレタンコア)」、同「[NEW]MONOCOQUE REASONA」、「[NEW]MONOCOQUE SELETTO」、「MONOCOQUE LADY」、「MONOCOQUE SPORTS」の各説明部分に、「モノコック構造(共重合素材+グラスファイバー、硬質発泡ウレタンコア)」とそれぞれ記載されている。 (2)上記4(1)(イ)によれば、「monocoque(モノコック)」の語は、自動車のボディとシャーシの一体化した構造等を表す語として一般に知られているとみられるものである。 そして、上記4(1)(ロ)によれば、スキーを取扱う業界においては、スキーのトップ(上面)とサイドウォール(側面)とを一体化し、さらに、これと構造材とを一体にした立体的構造のもの等、一体成型構造のスキーを、自動車のボディとシャーシとが一体化された構造を「モノコック(monocoque)」あるいは「モノコック構造」と称しているのと同様に、「モノコック」「MONOCOQUE」「モノコック構造」等と称しているとみられ、これらの語は、スキーの一体成型された構造を表すものとして、請求人はじめ複数のメーカーにより商品のカタログ、広告等において、スキーの構造の説明に使用されていると認められるところである。 してみれば、「MONOCOQUE」の文字よりなる本願商標を、その指定商品中「一体成型構造のスキー」に使用したときには、これに接する取引者、需要者は、商品の品質(構造)を表示したものと理解するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を有しないものといわざるを得ず、また、前記構造以外のスキーに使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと判断するのが相当である。 (3)請求人はスキーの上部とサイドウォールを一体成型した一体成型構造の商品を最初に開発、販売し、該スキーの中央部に「MONOCOQUE」の文字を使用していること、また、該構造のスキーが上級スキーヤーに圧倒的に支持されたことから、同業他社もこれに追随して、一体成型構造のスキーを開発したが、それらのスキーは「キャップ構造」、「キャップスキー」等とも総称され、「モノコック(MONOCOQUE)」とは称されていない旨主張している。 しかしながら、「MONOCOQUE」の文字よりなる本願商標の識別性については、上記4(2)の認定、判断のとおりであり、また、請求人は、相当の期間が経過した現在に至っても、本願商標が、商品「スキー」について商標法第3条第2項に該当するに至っている事実を立証する証拠を何ら提出せず、かつ、補正後の指定商品は「スキー」以外の商品も含むものであるから、請求人のこの点に関する主張は採用できない。 (4)したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当するとして拒絶した原査定は、妥当であって取り消す限りでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-06-15 |
結審通知日 | 2001-06-26 |
審決日 | 2001-07-10 |
出願番号 | 商願平1-91935 |
審決分類 |
T
1
8・
13-
Z
(124)
T 1 8・ 272- Z (124) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田代 茂夫、伊藤 三男 |
特許庁審判長 |
寺島 義則 |
特許庁審判官 |
上村 勉 久保田 正文 |
商標の称呼 | モノコック |
代理人 | 加藤 伸晃 |
代理人 | 井上 義雄 |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 岡部 正夫 |