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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 018 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 018 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない 018 |
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管理番号 | 1051885 |
審判番号 | 無効2000-35130 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2002-02-22 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2000-03-10 |
確定日 | 2001-12-10 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4094685号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4094685号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成8年8月9日に登録出願、後掲に示すとおり、「GENERATION GAP」の欧文字と「ジェネレーションギャップ」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」を指定商品として、平成9年12月19日に設定の登録がされたものである。 2 引用商標 請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標(以下、「引用各商標」という。)は、以下の(1)ないし(3)に示すとおりである。 (1)登録第1342698号商標は、後掲に示すとおり、「gap」の欧文字を横書きしてなり、昭和49年9月26日に登録出願、第21類「装身具、袋物,その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和53年8月25日に設定の登録がされ、その後、平成1年3月29日及び同10年5月6日の2回に亘り商標権存続期間の更新登録がされたものである。 (2)登録第2237980号商標は、後掲に示すとおり、「GAP」の欧文字を横書きしてなり、昭和62年10月2日に登録出願、第21類「皮製ベルト、布製ベルト、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成2年6月28日に設定の登録がされ、その後、平成12年4月11日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。 (3)登録第3035793号商標は、別掲に示すとおり、「GAP」の欧文字と「ギャップ」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、平成4年7月13日に登録出願、第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」を指定商品として、平成7年3月31日に設定の登録がされたものである。 3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする。との審決を求める、と申立て、その理由の要旨を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第431号証を提出している。 (1)商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、下段に振り仮名を付した欧文字からなる商標であり「GENERATION(ジェネレーション)」及び「GAP(ギャップ)」の2語からなる結合商標である。そして、本件商標を構成する「GAP(ギャップ)」は、引用各商標として請求人が使用するものであり、請求人のアパレル商品等の商標として著名性を認めることができるから、本件商標は、外観、称呼、観念において引用商標と類似である。 また、本件商標は、長い呼称を有し、かつ、その一部の「GAP(ギャップ)」の部分が特に顕著であるので、当該一部によって簡略化される可能性があるから、本件商標は引用各商標と類似する。 そして、本件商標の指定商品は、引用各商標の指定商品に含まれる。 (2)商標法第4条第1項第8号について 請求人の正式名称は「The Gap,Inc.」であるが、「GAP」は請求人の名称又は略称として一般に使用されており、外国においても国内においても、本件商標の出願時において著名であった。したがって、本件商標は、請求人の名称又は著名な略称である「GAP」を含む商標である。 (3)商標法第4条第1項第7号について 引用各商標は、日本国内においてもそうであるが、米国等諸外国において、本件商標の出願時点から既に請求人の商標として周知かつ著名であり、被請求人は出願時点で国内著名商標又は外国著名商標であることを知りながら、同商標の顧客吸引力を無償で利用しようとして、本件商標の出願を行っていたものと考えられるから、本件商標の登録は公序良俗に違反する。 (ア)件外登録異議の決定について 被請求人を出願人とする本件商標と同一商標の登録出願(商願平06-099940)に対し、請求人は登録異議の申立てを行っていたが、その登録出願は商標法第4条第1項第7号に該当するとした異議決定(甲第431号証)の中で、請求人の商号「THE GAP」がアメリカの社会現象「GENERATION GAP」に由来する事実の周知性、及び「GAP」商標の周知性を認定した(甲第1号証、甲第148号証、甲第161号証、甲第328号証、甲第372号証、甲第374号証、甲第376号証及び甲第385号証)。 さらに、被請求人が、申立人の商標「GAP」の由来を熟知していたこと、及び申立人の商標「GAP」が著名な顧客吸引力を有することを認定している。 したがって、本件審判請求と異議申立てでの提出証拠が共通であり、かつ、第25類も第18類もファッション業界のビジネスの中核に位置づけられること等を考えあわせると、本審判手続においても、上記異議事件と矛盾のない事実認定がなされ、被請求人の本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当し無効であるとの判断がなされるべきである。 (イ)引用各商標の周知・著名性 請求人は、昭和44年にアメリカ合衆国カリフォルニア州にて設立され、その後、全世界に規模を拡大し、現在では、米国、日本、カナダ、英国、フランス、ドイツ、その他の地域に、Gap、Gap Kids、Gap Outlet Storeのブランドで2092店の店舗を、全ブランドで合計2932の店舗を有する世界有数の衣料品小売業者であり、年商は90億米ドルを超える(日本においては、平成11年度において51の店舗を有している。)。請求人は、昭和49年に自社ブランドの「GAP」を導入、その品質、デザイン、品揃えのよさ、合理的価格設定から全米のみならず海外においても爆発的人気をよびおこし、その後更に新たな自社ブランドを拡張、現在では、「GAP」「GAP KIDS」「Old Navy Clothing Co.」「BANANA REPUBLIC」等の各ブランドの衣料品等の販売を世界各国で行っている。中でも「GAP」ブランドは、リーバイスに次ぐ世界第二位の売上を誇る衣料品ブランドにまで成長した(甲第1号証、甲第5号証)。 請求人は、昭和44年の会社設立当初から「the gap」、「The Gap」及び「THE GAP」を会社の商号及び商標として用い、「THE GAP」を店舗の名称等営業表示(甲第6号証)として使用し、店舗の宣伝広告、商品の包装等にも使用してきた。さらに、請求人は、米国で「FOR EVERY GENERATION…THERE'S A GAP」を商標として利用している。また、請求人による小売展開の特徴として、請求人が有する前記各ブランドと同一名称の店舗でのみで、当該ブランド商品を販売しており、「GAP」ブランドについては「THE GAP」又は「GAP」という名称の直営店舗でのみ請求人は商品を販売している。 請求人は、早くから「THE GAP」及び「GAP」として積極的に著名な新聞、雑誌、テレビ・コマーシャル等を通じて全米のみならず、日本、イギリス、カナダ、フランス、ドイツ等に於いて広く宣伝広告活動を行っており、特に雑誌については、世界的に広く読まれている雑誌に数多く宣伝を載せ、その中には日本国内で広く販売されているものも多い(甲第7号証ないし甲第26号証)。請求人は、多額の宣伝広告費用を支出している(甲第27号証及び甲第28号証)。 請求人は、昭和50年代初め、小売業チェーンとしてのアメリカにおけるその比類なき成功から、経営方針、販売戦略につき日本のアパレル業界及び小売業界の注目を集めることとなった(甲第29号証)。昭和55年、請求人の現会長ドナルト・フィッシャー氏が来日した際には、報道関係者約20名をまじえて記者会見を行い、同氏が東京、大阪で行った講演会には、各々100人を超える小売業者が出席した(甲第30号証)。さらに、請求人は、昭和55年初頭より繊維の業界紙のみならず(甲第31号証ないし甲第187号証)、日経新聞、日経流通新聞、日経産業新聞、日経金融新聞等の新聞記事の中で「THE GAP(ザギャップ)」又は「GAP(ギャップ)」として紹介され(甲第188号証ないし甲第258号証)、そのユニークな経営方針が脚光を浴びたばかりか、昭和58年頃から日本の企業から請求人との業務提携や、販売代理店としての選任を求める依頼の手紙が請求人のもとに殺到している(甲第259号証及び甲第260号証)。 請求人は、昭和58年より日本への衣料品の輸出を開始し、日本の小売業者を通じて販売している。 他方、新聞雑誌等あるいは数多くの日本人海外旅行者を通じて請求人は、日本国内に広く紹介されており(甲第261号証ないし甲第263号証)、特にアメリカやカナダ等への旅行者を中心に請求人のブランドが注目され、海外における日本の旅行客によるクレジットカードによる売上げもかなりの金額に及んでいる(甲第264号証及び甲第265号証)。また、朝日新聞、読売新聞といった一般の全国紙(甲第266号証及び甲第274号証)や若者向け全国版ファッション雑誌(甲第275号証ないし甲第430号証)に請求人の特集が数多く掲載され、一般消費者の注目度は非常に高かった。 以上からも明らかなように、引用各商標は、本件商標の出願時点から既に周知かつ著名であった。 そもそも、請求人の商号は、本件商標である「Generation Gap」という語に由来するものである。創業者であるドナルド・フィッシャー氏は、人々が「Generation Gap」について話し合っているのを聞いて、それを新しい店の商号にしようと考えた。しかるに、商号とするには長すぎるとの意見があり、結局、「Gap」と命名したのである(甲第1号証)。請求人の商号決定にまつわるこの逸話は、そのサクセス・ストーリーと共に各種の雑誌等において紹介され、請求人の「GAP」商標とあわせて、ファッション関係者及び一般消費者に広く知られるところとなっている(甲第148号証、甲第161号証、甲第328号証、甲第372号証、甲第374号証、甲第376号証及び甲第385号証)。これらの事実及び請求人の取扱商品と本件商品の類似性に鑑みれば、出願人において「GAP」の由来を熟知した上で、「GAP」の優れたイメージ、若者層での人気を積極的に利用しようとしたものと強く推認される。かかる著名表示の冒用行為は断じて許されるべきではない。したがって、本件商標の登録は、公序良俗に反するものとして無効とされるべきである。 (4)以上の次第であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、第8号、又は第7号に該当し、無効とされるべきである。 4 被請求人は、何ら答弁するところがない。 5 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、「GENERATION GAP」と「ジェネレーションギャップ」の文字よりなるところ、これらは「生まれ育った世代の違いから生じる価値観の差」の意味合いの熟語として、一般に良く知られる英語ないしは外来語であって、「ジェネレーションギャップ」の一連の称呼のみを生ずるものとみるのが自然であり、常に前記一連の称呼及び観念をもって取引に資される固有の商標というのが相当である。 これに対して、請求人に係る引用各商標は、その構成前記のとおり「gap」、「GAP」及び「GAP」と「ギャップ」とするものであって、「透き間、溝、隔たり」等の語義を有する英語ないしは外来語として一般に知られている語であるから、いずれの場合も、それら文字より生ずる「ギャップ」の称呼をもって取引に資されるものといえる。 そこで、両者の類否についてみると、本件商標は、その構成文字に相応して「ジェネレーションギャップ」の一連の称呼を生ずるものであること前記のとおりであり、一方、引用各商標は、「ギャップ」の称呼を生ずるものであるから、両者はその構成音数、音の配列を著しく異にし、彼此聞き誤るおそれはなく、また、外観の点においては、両者は全体の外観印象を異にし、彼此見誤るおそれはなく、さらに、観念の点においては、本件商標と引用各商標とは、それぞれ前記した意味合いの熟語と単語という点で両者は判然と区別し得るものであるから、結局、両者は何ら相紛れるおそれのない非類似の商標であって、互いに別個の商標とすべきものである。 そして、たとえ、引用各商標または請求人の使用に係る「GapKids(ギャップキッズ)」「BabyGap(ベビーギャップ)」の各商標が同人の業務に係る「男性、女性、子供用のカジュアルウェアー」を表示するものとして、また、これらの販売店を営む専門小売店舗の名称として、本件商標登録出願時に需要者の間に広く認識されていたこと、さらに、雑誌「BRUTUS」(平成7年10月15日号:甲第372号証)において「・・・GAPとは創業時60年代の流行語、ジェネレーションギャップやジェンダーギャップのギャップ。そして、ジーンズ屋らしく足と足のスキマというSEXYな意味もこめられているというのが米での通説」との記述のほか、請求人の提出に係る証拠(甲第1号証、甲第148号証、甲第318号証、甲第359号証、甲第374号証、甲第376号証、甲第385号証及び甲第408号証)により、請求人の店舗名の由来が60年代後半に起きたアメリカの社会現象の一つ「ジェネレーションギャップ(Generation Gap)」にあることは認め得るとしても、そのことにより、引用各商標(「gap」、「GAP」及び「GAP」と「ギャップ」)の語より直ちに「ジェネレーションギャップ(Generation Gap)」の語を連想、想起するものとはいい難く、その合理的必然性は見出せない。そうとすれば、本件商標の指定商品の分野における需要者のこの種外国語ないしは外来語に接する場合の一般的な注意力の程度等を勘案した場合においてなお、両者は別個のものとして認識され、引用各商標から本件商標を想起し得るものとは認め難く、この点において件外登録異議の決定を引用しつつ、両者を類似のものと述べる請求人の主張は妥当でなく、採用の限りでない。このほか、本件商標と引用各商標とを類似のものとすべき事由は見出せない。 (2)商標法第4条第1項第8号について また、請求人の正式名称は「The Gap,Inc.」であるところ、各種新聞記事及び雑誌等において、「THE GAP(ザギャップ)」又は「GAP(ギャップ)」として紹介され、すでに、本件商標登録出願時に需要者の間に広く認識されていた名称又は略称となっていたことは認め得るとしても、本件商標は、前記認定のとおり、「ジェネレーションギャップ」の称呼により、かつ、「生まれ育った世代の違いから生じる価値観の差」の意味合いの熟語として、一連一体に認識し把握されるものであり、これを殊更、「GENERATION 」と「GAP」、「ジェネレーション」と「ギャップ」とに分離して見なければならない格別の理由はないものというべきであるから、引用各商標を含むもの若しくは請求人の名称の略称を含むものとは認識されないものといわざるを得ない。 (3)商標法第4条第1項第7号について さらに、本件商標は、「生まれ育った世代の違いから生じる価値観の差」を意味する熟語として知られているものであり、引用各商標が商品「衣料品」について使用され、需要者の間に広く認識され、かつ、著名になっていることを考慮するも、本件商標の指定商品とは、その製造業者、取引系統、販売場所などにおいて相違し、かつ、本件商標と引用各商標とは別個の商標として認識し把握されるものであって、その構成自体がきょう激、卑わい若しくは差別的な印象を与えるような文字からなるものではないから、これをその指定商品について使用することが社会公共の利益・社会の一般的道徳観念に反するものとすべき事実は認められず、他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められないものである。また、本件商標の使用が著名商標にただ乗りする不正な競争行為、いわゆるフリーライド行為に基づくものであることを客観的に示す証左も認められない。 (4)以上、(1)ないし(3)のとおり、本件商標は、請求人の主張する前記各法条の規定に違反して登録されたものとはいえないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
〈別 掲〉 (1)本件商標 ![]() (2)引用登録第1342698号商標 ![]() (3)引用登録第2237980号商標 ![]() (4)引用登録第3035793号商標 ![]() |
審理終結日 | 2001-07-10 |
結審通知日 | 2001-07-16 |
審決日 | 2001-07-27 |
出願番号 | 商願平8-89180 |
審決分類 |
T
1
11・
23-
Y
(018)
T 1 11・ 22- Y (018) T 1 11・ 26- Y (018) |
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
原 隆 |
特許庁審判官 |
高野 義三 野上 サトル |
登録日 | 1997-12-19 |
登録番号 | 商標登録第4094685号(T4094685) |
商標の称呼 | ジェネレーションギャップ |
代理人 | 大武 和夫 |