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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 016
管理番号 1048971 
審判番号 無効2000-35162 
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-03-31 
確定日 2001-10-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第4117129号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4117129号商標(以下、「本件商標」という。)は、別記に示すとおりの構成よりなり、平成8年3月25日に登録出願、第16類「観賞魚用水槽及びその附属品」を指定商品として、平成10年2月20日に設定登録がなされているものである。

第2 請求人の主張
請求人は「本件商標の登録を無効にする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出している。
(1)本件商標は、塗り潰した2個の矩形図形を僅かな間隔をおいて横に並置し、左方の矩形図形内に白抜きローマ字2文字のゴッシク体GEと図案化したXからなるものを上段に、英文字「corporation」からなる白抜き文字を下段に配置した二段横書した構成とし、右方の矩形図形内に白抜きで英文字「Five Plan」を横書したものである。2個の矩形図形は互いに分離されていて、且つ、左方の矩形図形内の上段の文字の大きさに対して下段の文字の大きさを約5分の1程度にし、且つ、図案化したXは塗り潰した矩形図形内に文字GEと上下同じレベルで左上から右下に向かう斜めの白抜きの直線と、文字GEと同じ下のレベルから右斜め上方に向かい矩形を突き抜ける5本の白抜きの線から構成されている。この右斜め上方に向かい矩形を突き抜ける5本の白抜きの線は塗り潰した矩形図形の一部を構成している(甲第1号証)。従って、左方の矩形図形内で文字GEと図案化した他の部分とは著しく異なった外観を呈しているため、左方の矩形図形内の構成からローマ文字2文字のゴッシク体GEが図案化したX及び英文字corporationから分離着目されるものと認められる。取引の実際における経験則に基準を置けば、本件商標全体から文字GEが他の部分から分離独立して看取されるものである。
(2)請求人は、1892年に設立されたアメリカ合衆国ニューヨーク州法人であり、名称の原語表記は「GENERAL ELECTRIC COMPANY」であるところ、通常、略して「GENERAL ELECTRIC」、また、その2語の頭文字をとって「GE」と呼称されている。日本国内において、新聞、雑誌等で請求人の活動を報道するに際し、請求人を指称するものとして、GE、GE社、アメリカのGE、米国GE(ゼネラル・エレクトリック)、米国ゼネラル・エレクトリック(GE)が平成8年3月25日(本件商標登録出願日)前から用いられている。そして、最近に至るも新聞、雑誌等に掲載される事件は殆ど毎日に及び枚挙にいとまがない状況である。
請求人の名称の略称「GE」が日本国内で周知著名であることは特許庁においても認められている(甲第2号証、特許庁昭和59年審判第2992号平成5年7月28日審決、及び、甲第3号証、昭和60年審判第13035号平成5年7月28日審決)。
(3)(1)において記述した様に、本件商標は、取引の実際における経験則に基準を置けば、文字GEが商標の他の構成部分から分離独立して看取されるものである。
従って、本件商標は、請求人の名称「GENERAL ELECTRIC COMPANY」の著名な略称「GE」を含むものである。そして、本件商標の登録について当該他人たる請求人の承諾を得ていない。
(4)上述の理由により、本件商標は、請求人の名称「GENERAL ELECTRIC COMPANY」の著名な略称「GE」を含むものであることは明らかであり、なおかつ、当該他人たる請求人の承諾を得ていない。
よって、本件商標の登録は商標法第4条第1項第8号の規定に該当するものであるから、商標法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証を提出している。
1.本件商標について
本件商標は、塗り潰した2個の矩形図形を僅かな間隔をおいて横に並置し、左方の矩形図形内に白抜きローマ字2文字のゴッシク体GEと図案化したXからなるものを上段に、英文字「corporation」からなる白抜き文字を下段に配置した二段横書きした構成とし、右方の矩形図形内に白抜きで英文字「Five P1an」を横書きし、2個の矩形図形は互いに分離されていて、且つ、左方の矩形図形内の上段の文字の大きさに対して下段の文字の大きさを約5分の1程度にし、且つ、図案化したXは塗り潰した矩形図形内に文字GEと上下同じレベルで左上から右下に向かう斜めの白抜きの直線と、文字GEと同じ下のレベルから右斜め上方に向かい楕円の外郭に到達する5本の白抜きの線から構成され、また、図案化したXの左上から右下に向かう斜めの白抜きの直線と、右斜め上方に向かい楕円の外郭に到達する5本の白抜きの線との交差角度は、通常の「X」における2本の直線の交差角度と大差のない交差角度に設定されている、構成を有するものである。
而して、近時のレタリング技術の進歩、発達、そして世間一般にレタリング文字が蔓延している状況に鑑みれば、一般需要者のレタリング文字、デザイン化された文字に対する観察力は数十年前に較べれば遙かにレベルアップしているものであり、通常の知識及び判断力を有するものであれば、本件商標の「図案化したX」は、まさに「X」としてしか認識しようのないものである。しかもその「X」は、その片側の左上から右下に向かう斜め直線が、「GE」と同様に白抜きにされているものであるから、前記一般需要者の観察力及び取引の実際における経験則に基準を置けば、左方の矩形図形内には、「GEX」が書き表されていると認識されるものであって、文字「GE」が「X」の文字部分を含む他の部分から分離独立して看取され、「ジーイー」と称呼されることはありえないものであるというべきである。
仮に、「GE」を分離させた場合、残余の部分、すなわち図案化された「X」と左方矩形図形とによって構成される部分自体が何も意味を有しない。
また、本件商標の商標権者は、ジェックス株式会社であって、その略称「ジェックス」を表記する文字として「GEX」を採用し、さらにそれをデザイン化したものが本件商標の左方矩形図形であるから、本件商標からは、第1には右方矩形図形から「ファイブプラン」の自然的称呼が生じ、第2には、左方矩形図形から「ジェックス」の自然的称呼が生じるものである。もとより、「GEX」を一字一字称呼することにより、「ジーイーエックス」の称呼が生じる可能性も皆無とは言えないが、「ジーイーエックス」よりも称呼の短い「ジェックス」、しかも商標権者の略称である「ジェックス」の方が圧倒的優位な称呼であるというべきであり、このような称呼の仕方が取引の経験則に従ったものである。
2.請求人の著名な略称
「GE」が、請求人「GENERAL ELECTRIC COMPANY」の著名な略称であることは商標権者も首肯する。
しかしながら、「GE」は、確かに請求人の著名な略称であるが、それ自体が極めて個性的、創造的な性格を有するものではなく、ありふれた欧文字の2字、すなわち、世間一般には商品記号として普通に使用されうる単なる欧文字2文字にすぎないものである。
また、該略称「GE」が、請求人の多角的な事業活動によって著名性を獲得するに至ったものであることを認めるとしても、本件商標の指定商品である「観賞魚用水槽及びその附属品」について使用された事実はないし、これらの商品と販売場所を同じくする、観賞魚を含むいわゆるペット及びそれらの餌(飼料)について使用された事実はない。仮に、それは商標権者のみが認識不足であるとしても、本件審判においてそのような事実があることを証明する証拠が示されているわけではない。
しかも、請求人の多角的な事業活動において取り扱う商品を産業用と民生用とに大別するならば、産業用が大半であって、民生用の商品はほとんど見受けられないものである。
そうであれば、請求人の著名な略称「GE」と商品「観賞魚用水槽及びその附属品」との関連性は極めて希薄であるというべきである。
また、そもそも略称とは、「正式の呼び名の代わりに使う、簡単な通称。」(乙第1号証)であるから、単なる表記ではなく称呼を伴うものでなければならず、略称「GE」は、「ジーイー」と称呼されてこそ始めて、請求人の著名な略称であると認識されるものであるというべきである。
3.商標法第4条第1項第8号の適用について
本号が、人格権保護を目的として設けられた規定であることは、逐条解説によって明らかにされているところであるが(乙第2号証)、その保護が行き過ぎ、権利の濫用にならないように、審査基準も設けられているところである(乙第3号証)。
すなわち、「本号でいう『著名』の程度の判断については、商品又は役務との関係を考慮するものとする。」とされている。
また、自己の著名な略称が他人によりその商品の商標として使用され、それによって世人が著名な略称と当該商品との間に、なんらかの関係があるかのように認識し、そのために著名な略称を有するものがこれを不快とし、その人格権を毀損されたものであると感ずるであろうことが、社会通念上客観的に明らかであると認められるような場合において、初めて本号の適用があるべきであるとの趣旨の判例も見受けられる(乙第4号証)。
そこで、上記のような法的性格、審査基準及び判例を踏まえた上で、本件商標が、請求人の著名な略称を含むものであるか否かについて検討してみると、
(1)本件商標中の文字「GE」は、請求人の主張するように、図案化した他の部分から分離独立して看取されるものではなく、むしろ、それとは逆に、「GE」に続く図案化された「X」との不離一体性を感じさせるものである。
(2)「GE」は、確かに請求人の著名な略称であるとしても、それ自体が極めて個性的、創造的な性格を有するものではなく、ありふれた欧文字の2字、すなわち、世間一般には商品記号として普通に使用されうる単なる欧文字2文字にすぎないものである。
(3)本件商標の指定商品である「観賞魚用水槽及びその附属品」はもとより、その周辺の商品である観賞魚を含むいわゆるペット及びそれらの餌(飼料)についても、請求人の著名な略称「GE」が使用されている事実は存しない。
(4)請求人の取り扱う商品は、産業用が大半であって、民生用の商品はほとんど見受けられない。
(5)「GE」は、「ジーイー」と称呼されてこそ初めて請求人の著名な略称「GE」が想起されるものであるが、「ジェックス」を自然的称呼とする本件商標における「GE」の文字部分を、あえて「ジーイー」と称呼することは、簡易迅速を尊ぶ取引界の実情に反する。
(6)本件商標中の「GE」の文字を含む左方の矩形図形は、「Five Plan」の文字を含む右方の矩形図形の半分以下の大きさであって、これに比例して、「GE」の文字は「Five Plan」の文字の約4分の1の大きさであること、これに加えて「GE」の文字が個性的な書体ではないことから、右方の部分を差し置いてまで取引者、一般需要者の注意をことさら引きつける要素はない。
そうであれば、通常の判断力を有する取引者、一般需要者が本件商標を観察した場合、本件商標の構成中に「GE」の文字が存在することを認識することがあるとしても、そこから直ちに「GE」の文字が請求人の著名な略称であることを想起することは有り得ないものというべきである。
すなわち、本件商標がその指定商品「観賞魚用水槽及びその附属品」の商標として使用されても、世人が当該商品と請求人の著名な略称との間に、何らかの関係があるかのように認識することは有り得ないということである。従って、請求人が不快と感じるような事態が起こり得ないのであるから、請求人がその人格権を毀損されたと感じることは、社会通念上客観性を有しないものというべきである。
4.結び
上述の次第で、本件商標は商標法第4条第1項第8号の規定に該当しない商標であるから、その登録は無効とされるべきものではない。

第4 当審の判断
本件商標は、別記に示すとおり、左側の黒塗りの長方形内に大きな「GE」の欧文字及び「X」と思しき文字と小さな「corporation」の欧文字とを二段に表し、また、右側の黒塗りの長方形内には大きな「Five Plan」の欧文字をそれぞれ白抜きで表してなるものである。
ところで、近年のレタリング技術の発達は目覚ましく、需要者は、新聞、雑誌、広告、テレビ等において、色々レタリング化さた欧文字、漢字、数字に接しているところである。
そうとすれば、本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標中、左側の黒塗りの長方形内に表されている「GE」に続く文字は欧文字の「X」をレタリング化したにすぎないものと理解し、全体として「GEX」の欧文字を表したものと容易に看取し得るものと言うのが相当である。加えて、本件商標には、上記「GEX」の文字の下に「会社」を意味する英語の「corporation」の文字が表されているものであるから、該欧文字部分は「GEX corporation」なる会社名を表したものと理解されるものである。
してみれば、本件商標は、その構成中に「GE」の文字を有するとの理由のみをもって、その構成中に他人の名称の著名な略称を含むものと言うことはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本件商標

審理終結日 2001-05-18 
結審通知日 2001-05-29 
審決日 2001-06-18 
出願番号 商願平8-31741 
審決分類 T 1 11・ 23- Y (016)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神田 忠雄 
特許庁審判長 寺島 義則
特許庁審判官 江崎 静雄
上村 勉
登録日 1998-02-20 
登録番号 商標登録第4117129号(T4117129) 
商標の称呼 ジェックスコーポレーションファイブプラン、ジェックスコーポレーション、ジェックス、ファイブプラン、ジイイイエックス 
代理人 生沼 徳二 
代理人 黒瀬 靖久 
代理人 松本 研一 
代理人 清水 久義 
代理人 高田 健市 

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