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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) 003
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) 003
管理番号 1045416 
審判番号 審判1999-35240 
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-05-25 
確定日 2001-08-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4075364号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4075364号の指定商品中「せっけん類,化粧品」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4075364号商標(以下「本件商標」という。)は、「アルカンシェル」の片仮名文字を横書きしてなり、平成5年7月5日登録出願、第3類「せっけん類,化粧品,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤,つや出し剤」を指定商品として、同9年10月31日に設定登録がなされているものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第710342号商標(以下「引用商標」という。)は、「ARCANCIL」の欧文字を横書きしてなり、昭和40年3月27日登録出願、第4類「せつけん類(薬剤に属するものを除く)歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く)香料類」を指定商品として、同41年6月16日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第12号証を提出している。
(1)商標法第4条第1項第11号について
a)本件商標の称呼
本件商標は、「アルカンシェル」の片仮名文字よりなる商標であるから、これより「アルカンシェル」の称呼を生ずることが明らかである。
b)引用商標の使用実績および称呼
引用商標は、フランス国の法人たる請求人が、1935年以降現在に至るまで、商品「化粧品(口紅,ネイルポリッシュ,アイぺンシル等)」に継続して使用している商標であって、世界各国において使用され登録されており、請求人のフランス製の化粧品を表示するものとして広く知られている(甲第5号証ないし同第7号証)。
このことから、引用商標「ARCANCIL」は、フランス語読みされて「アルカンシル」と称呼される。日本においても、引用商標は「アルカンシル」の片仮名文字により、雑誌等によって紹介されている(甲第8号証及び同第9号証)。
なお、被請求人は、本件商標の審査過程において、引用商標の称呼を「アーカンシル」と特定し主張しているが、引用商標がフランス語読みされて「アルカンシル」の称呼を自然に生ずることは上記したところから明らかである。
c)本件商標と引用商標の比較
そこで、本件商標より生ずる「アルカンシェル」と引用商標より生ずる「アルカンシル」の両称呼を比較するに、両者は共に6音構成であって、称呼の識別上重要な要素を占める第1音から第4音「アルカン」を全て共通にし、かつ、語尾音「ル」までも共通にするものであって、異なる点は僅かに第5音の「シェ」と「シ」の1音の差異にしかすぎない。
しかして、該差異音「シェ」と「シ」は、その伴う母音が「e」と「i」で異なるものの「e」と「i」は母音として近似しているばかりでなく、その子音は共に無声の摩擦音である。
してみれば、「アルカンシェル」と「アルカンシル」の両称呼は、簡潔な称呼とは云い難い6音にあって、前記差異音が比較的聴取し難い語尾部に位置することも相俟って、両称呼を一連に称呼するときは、互い相紛れるおそれがあるものというべきである。
別件商標「CILSTAR」(「シルスター」の称呼)の拒絶査定に対する審判事件(昭和55年審判第11456号)において、その引用商標「SHELLSTAR」(「シェルスター」の称呼)とは、前記差異音は「子音共通の近似音といえるものであって、この音の差異が各称呼全体に及ぼす影響は必ずしも大きいとはいえず、したがって、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、その語感は相似たものとなって、聴者をして彼此聞き誤るおそれがあるものと判断するのが相当である」と説示されている(甲第10号証)。
さらに、請求人は、引用商標の仮名表記である「アルカンシル」の文字よりなる商標を登録出願(商願平10-20433)したところ、本件商標に類似するとして拒絶理由通知を受けている(甲第11号証及び同第12号証)。
してみれば、「アルカンシェル」の称呼を生ずる本件商標は、「アルカンシル」の称呼を生ずる引用商標と、称呼において類似する商標であることが明らかである。
d)指定商品の比較
本件商標は、その指定商品中「せっけん類,化粧品」につき、引用商標の指定商品と同一である。
よって、本件商標は、その登録出願日前の出願に係る請求人の引用商標に類似する商標であって、かつ、その指定商品も抵触することが明らかなものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、既に述べたとおり、請求人が、1935年以降現在に至るまで、商品「化粧品(口紅,ネイルポリッシュ,アイベンシル等)」に継続して使用している商標であって、本件商標の登録出願前から、請求人の商品を表示するものとして世界的に広く知られている(甲第5号証ないし同第9号証)。
そして、本件商標が、請求人の引用商標に類似するものであることも既に述べたとおりである。
本件商標は、前記商品「化粧品」を指定商品とするほか、「かつら装着用接着剤,つけまつげ用接着剤」等の商品を指定商品とするものであるが、これら商品は「化粧品」と密接な関連性を有する商品である。
してみれば、本件商標が、その指定商品に使用された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)結び
以上に述べたとおりであって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当し、商標登録を受けることができないものとすべきところ登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、「請求人の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出している。
(1)商標法第4条第1項第11号について
請求人は、引用商標からは「アルカンシル」の称呼が生じ、「アルカンシェル」の称呼が生じる本件商標は引用商標と称呼において類似する商標である旨主張する。
被請求人は、引用商標からは「アーカンシル」の称呼が生じるものと思料するが、仮に請求人が主張するように、引用商標からは「アルカンシル」の称呼が生じるとしても、本件商標より生ずる「アルカンシエル」の称呼とは、その音構成に明らかな差異が認められるものであるから、称呼上、両者は容易に区別し得るものである。
したがって、本件商標と引用商標とは称呼上明らかに非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、引用商標が本件商標の登録出願前から請求人の商品を表示するものとして世界的に広く知られている旨主張する。
しかしながら、請求人の提出にかかる甲第5号証ないし第9号証からは、引用商標が請求人の業務にかかる商品「化粧品」を表示するものとして広く知られているものと認めることはできない。
してみれば、本件商標は引用商標と類似しない商標であって、他に混同を生ずるとすべき格別の事情も見出し得ないから、本件商標を指定商品に使用した場合、その商品が請求人又は請求人と関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれのないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
(3)上記被請求人の主張に客観性を与えるものとして、平成10年異議第90527号の異議決定謄本の写しを提出する(乙第1号証)。
請求人は本件商標に対し、本件審判請求と同様の理由による商標登録異議の申立てをおこなったが、当該異議決定謄本中にあるように、上記被請求人の主張と同様の理由により、本件登録を維持する旨の決定がなされている。

5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標との類否について判断するに、本件商標は、上記のとおり、「アルカンシェル」の片仮名文字よりなるものであるから、これより「アルカンシェル」の称呼を生ずるものである。
他方、引用商標は、上記のとおり、「ARCANCIL」の欧文字よりなるところ、該文字を英語風に読んだ場合には「アーカンシル」の称呼を生ずるものであることは否定し得ないが、我が国において、「Arcadia」(桃源郷)、「Archimedes」(古代ギリシャの科学者、数学者名)がそれぞれ「アルカディア」、「アルキメデス」と発音され、音読されているように「ar」の部分が「アル」と発音され、音読される例があること、また、請求人の取扱う「arcancil」の文字商標を使用した化粧品が雑誌等で「アルカンシル」として紹介されていることから、引用商標よりは「アルカンシル」の称呼をも生ずるものとみるのが相当である。
そうとすれば、引用商標よりは、「アーカンシル」及び「アルカンシル」の称呼を生ずるものといわなければならない。
そこで、本件商標より生ずる称呼中の「アルカンシェル」の称呼と引用商標より生ずる「アルカンシル」の称呼とを比較すると、両称呼は構成音中の「アルカン」及び「ル」の5音を共通にし、相違するのは、第5音目の「シェ」と「シ」の音である。しかしながら、上記相違する「シェ」と「シ」の音にしても、比較的聴取されがたい語尾に近い部分に位置するばかりでなく、両音は、子音(∫)を共通にし、しかも、その母音も「e」と「i」の近似するものであるから、該差異音が両称呼全体に及ぼす影響は少なく、両称呼をそれぞれ一連に称呼した場合には、全体の語調、語感が相近似し、これらを互いに聴き誤るおそれが少なくないものと認められる。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観及び観念において相違する点があるにしても、称呼上相紛らわしい類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品中「せっけん類,化粧品」と引用商標の指定商品とは同一又は類似のものであるから、本件商標の指定商品中上記商品については商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人提出の甲第5号証ないし同第9号証によれば、引用商標が商品「化粧品」について使用されていること及び諸外国において登録されていることは確認し得るとしても、これら提出の証拠のみでは引用商標が請求人の業務に係る商品「化粧品」を表示するものとして我が国はじめ世界的に広く知られているものと認めることはできない。
また、本件商標の指定商品中「かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤,つや出し剤」と商品「化粧品」とは、その生産部門、販売部門、用途等を異にする非類似の商品であり、密接な関連商品とはいい得ないものである。
そして、他に本件商標と引用商標とが混同を生ずるとすべき格別の事情も見出し得ないところである。
してみれば、本件商標をその指定商品中「せっけん類,化粧品」以外の指定商品に使用した場合には、その商品が請求人又は請求人と関係のある者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがないものと判断するのが相当であるから、本件商標の指定商品中上記指定商品については商標法第4条第1項第15号に該当しないものである。
(3)むすび
したがって、本件商標は、上記5(1)のとおり、その指定商品中「せっけん類,化粧品」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項により、その登録を無効にすべきものである。
しかしながら、本件商標の指定商品中「せっけん類,化粧品」以外の指定商品については、上記5(2)のとおり、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではないから、その登録を無効とすることができない。
なお、被請求人は、本件商標についての譲渡等の交渉を請求人と行っているから、審理の猶予を希望する旨述べているが、被請求人提出の平成13年4月18日付回答書によれば、被請求人の条件提示に対し、請求人は回答した形跡はみられず、請求人との譲渡等の交渉が両者合意の上で、現在も行われているものとみられないから、審理の猶予の必要性はないものと判断した。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-05-30 
結審通知日 2001-06-12 
審決日 2001-06-25 
出願番号 商願平5-72073 
審決分類 T 1 11・ 262- ZC (003)
T 1 11・ 271- ZC (003)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 中村 俊男 
特許庁審判長 寺島 義則
特許庁審判官 久保田 正文
上村 勉
登録日 1997-10-31 
登録番号 商標登録第4075364号(T4075364) 
商標の称呼 アルカンシェル 
代理人 田中 克郎 
代理人 水野 勝文 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 岸田 正行 

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