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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 042
管理番号 1042195 
審判番号 審判1998-35332 
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-07-22 
確定日 2001-06-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第3133754号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.本件商標
本件登録第3133754号(以下「本件商標」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」(以下「本件役務」という。)を指定役務として、平成4年9月30日に使用に基づく特例の適用を主張して登録出願、同8年3月29日に特例商標として設定登録がなされたものである。

2.請求人の引用商標
(1)登録第2269852号商標(以下「引用商標A」という。)は、「アイコム」の片仮名文字よりなり、昭和61年5月15日に登録出願、平成2年9月21日に設定登録、その後、同12年5月9日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。
(2)登録第2431298号商標(以下「引用商標B」という。)は、「アイコム株式会社」の文字よりなり、平成1年8月2日に登録出願、同4年6月30日に設定登録がなされたものである。
(3)登録第2513298号商標(以下「引用商標C」という。)は、「アイーコム」の片仮名文字よりなり、平成1年10月27日に登録出願、同5年3月31日に設定登録がなされたものである。
(4)登録第2634003号商標(以下「引用商標D」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、第11類「民生用電気機械器具を除く電気機械器具、ラジオ受信機、テレビジヨン受信機、音声周波機械器具、映像周波機械器具を除く電気通信機械器具、電子応用機械器具、電気材料」を指定商品として、平成1年12月20日に登録出願、同6年3月31日に設定登録がなされたものである。
(5)登録第4094707号商標(以下「引用商標E」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、平成1年12月20日に登録出願、同9年12月19日に設定登録がなされたものである。
(6)登録第2593221号商標(以下「引用商標F」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、第11類「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、同磁気デイスク、同磁気テ―プ、同光デイスク」を指定商品として、平成1年12月20日に登録出願、同5年10月29日に設定登録がなされたものである。
(7)登録第912916号商標(以下「引用商標G」という。)は、「ICOM」の欧文字を斜体で書してなり、第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和44年6月19日に登録出願、同46年7月29日に設定登録され、その後、同56年8月31日、平成3年10月29日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。
(8)登録第2269854号商標(以下「引用商標H」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、昭和62年7月20日に登録出願、平成2年9月21日に設定登録、その後、同12年5月9日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。
そして、前記(1)ないし(3)、(5)、及び(8)の指定商品は、いずれも第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料 」とするものである。

3.請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第18号証(枝番号を含む。)を提出している。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標AないしFとは、その指定役務と指定商品とが類似するものであって、商標も類似するものである。
(ア)外観・称呼・観念の類否について
本件商標は、別掲に表示したとおりの構成よりなるところ、その構成中の「工業」及び「株式会社」の文字は、業種及び会社の組織形態を表示するものとして、商号中に一般に採択・使用されているものであるから、これらの部分は、自他商品について格別の識別力を有するものではない。
また、その構成中の「システム」の文字部分は、商品ないし装置の機能的な組み合わせ等を意味する用語として、本件商標の指定役務及び引用商標Aの指定商品の分野において一般に使用されていることは顕著であり、このことは、電子機器関連の業界において、商号中に「システム」の語を含む会社が多数存在していることが認められていることからも明らかであって、該文字部分は、自他商品について格別の識別力を有するものではない。(甲第18号証)
そうとすれば、特に簡易迅速を旨とする取引の実際においては、本来自他商品の識別機能を有しない文字部分、即ち、「システム」、「工業」及び「株式会社」の部分を省略し、これを省いた構成文字、即ち、「アイコム」の文字部分に注目し、「アイコム」と称呼されることがある。また、「アイコム」は、オリジナリティの高い完全な造語であり、極めて識別力の高い部分であるから、本件商標の要部は「アイコム」にあり、これよりは「アイコム」の称呼をも生ずるものである。
他方、引用商標AないしFからは、いずれも「アイコム」なる称呼を生ずるものである。
したがって、本件商標と引用商標AないしFとは、「アイコム」の称呼を共通にする類似の商標である。
なお、本件商標と引用商標Aとは、外観が同一もしくは類似するものであるので、両者は、外観が類似するものであり、観念についても、本件商標は何ら一般的な観念を想起させるものでなく、引用商標Aは、オリジナリティの高い完全な造語であるから、比較することができないものである。
(イ)役務と商品の類否について
本件商標に係る役務「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」が提供される場合は、磁気ディスクやCDーROM等のプログラム記憶媒体を介して提供されることが一般的である。
したがって、本件商標の指定役務が提供されるときに用いられるプログラム記憶媒体と、引用商標AないしCの指定商品中の「電子応用機械器具である電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テープその他の周辺機器)」とは類似するものである。
また、第9類の商品としてのプログラムを記憶させた磁気ディスクと第42類の電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守の役務は、添付した新聞・雑誌の記事等(甲第14号証)に見られるように、商品としての電子応用機械器具もしくは電気通信機械器具の記事と、役務としての電子計算機のプログラムに関する記事は、共通の新聞の紙面もしくは共通の雑誌に掲載されることが多い。例えば、コンピュータ技術者向けの月刊誌である「インターフェース」誌のソフトウェアに関する特集記事が掲載された別冊付録に、請求人の広告記事が掲載されている。
また、マイクロコンピュータ総合誌なる月刊誌「ASCII」にはアマチュア無線のハムフェアに関する記事が詳細に紹介されている。そこには、請求人を始めアマチュア無線関係の各社の商品等が紹介されている。また、会社人事・機構改革の紹介記事や役員人事の紹介記事においては、請求人である「アイコム株式会社」は「情報・通信」の分類もしくは「電機」の分類に掲載されている。また、システムハウス関連や各種ソフトウェアの紹介記事と同一紙面に請求人である「アイコム株式会社」の新商品の紹介記事が掲載されている。
このようなことからも、商品としての電子応用機械器具もしくは電気通信機械器具と、役務としての電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守は、相互に類似する商品・役務といえる。
現に、請求人が、旧第11類(新第9類)において出願した、引用商標Fは指定商品を「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、同磁気ディスク、同磁気テープ、同光ディスク」として登録されている。
即ち、電子回路、同磁気ディスク、同磁気テープ、同光ディスクに記憶された電子計算機用プログラムの略称として一般的に使用される「ソフト」なる用語は、旧第11類(新第9類)の分野においても、商品として極めて一般的に流通しているものであり、旧第11類(新第9類)の「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、同磁気ディスク、同磁気テープ、同光ディスク」と、第42類の「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」とは、商品と役務の用途が一致する等、明確には分離できない類似する商品・役務であると言わざるをえない。
即ち、「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」の役務が提供される場合も、「電子計算機による計算処理その他の情報の処理」なる役務が提供される場合も、電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、同磁気ディスク、同磁気テープ、同光ディスクを介して提供されることが一般的である。
したがって、本件商標の指定役務は、引用商標AないしFの指定商品と類似するものである。
(2)商標法第4条第1項第10号について
引用商標A及びH(以下「引用商標」という。)は、本件商標の出願の日前において既に周知の商標であるので、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定に基づいて拒絶されるべきものである。
(ア)周知性について
引用商標は、添付した新聞・雑誌の記事等(甲第12号証)によれば、本件商標の出願の日前において既に周知の商標である。
甲第12号証は、何れも本件商標の出願前の日付であり、電波新聞や日刊工業新聞に限らず、日本経済新聞や朝日新聞等の一般的な日刊紙にも頻繁に引用商標A、H、及び「アイコム株式会社」の関連記事が記載されており、請求人の商号商標である引用商標は、本願商標の出願前から既に周知であったことを証明している。
特に、大阪証券取引所の2部上場にあたっては、頻繁に「アイコム株式会社」に関する記事が掲載され、当事者に限らず広く一般社会に認知されるに至った。また、請求人の代表者が日本アマチュア無線機器工業会(JAIA)の会長に選任されたこともあって、さらに、広く認知されるに至った。
2部上場の後は、甲第13号証に示すように、今日に至るまで、各紙の株式欄には継続して株価が紹介されていることはいうまでもない。
甲第14号証によれば、1990年(平成2年)10月1日から、本件商標の出願前の1992年(同4年)8月18日発行の新聞・雑誌に、請求人に関する記事、及び請求人のアマチュア無線機器に関する広告記事が引用商標とともに掲載されている。
また、本件商標の出願後も、1997年(同9年)9月号、及び1998年(同10年)3月号のアマチュア無線に関する月刊誌「CQ Ham Radio」には、請求人のアマチュア無線機器に関する広告記事が、引用商標とともに掲載されている。特に、これらの月刊誌には、請求人のアマチュア無線機器に関する広告やこれらの機器を制御するためのプログラムを記憶させた磁気ディスクの広告記事が引用商標とともに掲載されている。
同様に、1997年(同9年)8月1日発行及び1998年(同10年)3月1日発行のマイクロコンピュータに関する月刊誌「DOS/V magazine」には、請求人のアマチュア無線機器に関する広告やそれらの機器を制御するためのプログラムを記憶させた磁気ディスクの広告記事が、引用商標とともに掲載されている。また、甲第15号証によれば、1994年(同6年)1月号から1997年(同9年)1月号のアマチュア無線に関する月刊誌「CQ Ham Radio」には、請求人のアマチュア無線機器に関する広告記事が、引用商標とともに掲載されている。
したがって、引用商標は、本件商標の出願前から現在に至るまで需要者の間に広く認識されていることが明らかである。
そして、本件商標は、これらの周知の商標と類似する商標である。

4.被請求人の主張
被請求人は何等答弁をしていない。

5.当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、平成4年9月30日に使用に基づく特例の適用を主張して出願されたものであるが、商標法等の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則第4条第2項によれば、この法律の施行の日(同4年4月1日)から6月間にした役務に係る商標登録出願については、新法第4条第1項(第11号及び第13号に係る部分に限る。)及び第8条第1項の規定は適用しないとされているから、本件商標が、商標法第4条第1項第11号に該当するとする請求人の主張は理由がない。
(2)商標法第4条第1項第10号について
本件役務は、「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」であるのに対し、引用商標の指定商品は、旧第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料 」であるところ、旧別表第11類掲記の機械器具は多種多様なものにわたっており(現行では、第9類及び第11類に含まれている。)、例えば、「電気機械器具」には、民生用電気機械器具として電気洗濯機、電気冷蔵庫等があり、また、「電気通信機械器具」には、放送用機械器具としてラジオ受信機、テレビジョン放送受信機があり、「電子応用機械器具」には電子計算機がある。そして、これらの機械器具には、電子計算機のプログラムが格納されることが多く、今日において、マイコンチップに埋め込まれたプログラムが多くの電化製品に組み込まれて使用されていることは、当庁においても顕著な事実である。この場合において取引の対象、形態等の観点からみれば、電子計算機のプログラムがこれらの機械器具の部品に相当するものということができる。他方、これら機械器具に収められずに機能する電子計算機のプログラムも存在するのも事実である。
そもそも、電子計算機のプログラムはそれ自体で取り引きされる性質を有し、例えば、原始的ではあるが、プログラムの内容を印刷して提供することもあり得るし、近似はインターネットを介してプログラムが供給される機会も多くなっているから、プログラムと電気機械器具等の供給が別個に消費者に提供される可能性も高い。プログラムの提供がその提供者自らの手によって電気機械器具等に組み込まれることもあり得る。電気機械器具等がパーソナルコンピューターのように汎用性の高い製品であれば、そのためのプログラムは機械器具との取引上の独立性は高く、プログラムと機械器具とは別個に消費者に供給される可能性は高まるということができる。さらに、本件役務である「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」が、一般的には引用商標の指定商品とは別個に提供されるものであることはいうまでもない。
これらの事実関係からすると、本件役務と、引用商標の指定商品とは取引の対象、取引の形態、流通経路を一部共通にする場合があり得るとしても、多くの取引の対象、形態、流通経路について共通するものではないというべきであり、一部共通する場合のあり得ることをもって、両者が直ちに類似するものであるということはできない。
なお、請求人は、「引用商標は『プログラムを記憶させた磁気ディスク等』という商品について、本件役務と引用商標に関するこれらの商品とは、役務の提供と商品の製造、販売が同一事業者によって行われているのが一般であり、役務と商品の用途が一致し、役務の提供場所と商品の販売場所とが一致し、需要者の範囲が一致する」と主張しているところ、その主張するそれらの観点からみて、本件役務とが「プログラムを記憶させた磁気ディスク等」という商品との間において共通する場合も存することは否定することができないが、前記商品が流通することを予定している商品であるのに対し、本件役務は「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」であって、商品と設計・作成又は保守との相違があるし、前記事実関係より共通しない他の取引態様も多く存在し得るものであるから、これら共通する態様のある点をもってしても、本件役務と、引用商標について請求人が主張する商品とが類似するものと認めることができない。
してみれば、本件役務と、引用商標について請求人主張の商品とは非類似のものであるといわざるを得ない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に違反して登録されたものとはいえないから、本件商標の登録は、同法第46条第1項の規定により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標

引用商標D

引用商標E

引用商標F

引用商標H

審理終結日 2001-04-16 
結審通知日 2001-04-27 
審決日 2001-05-10 
出願番号 商願平4-280002 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (042)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 清瀧本 佐代子 
特許庁審判長 為谷 博
特許庁審判官 久我 敬史
中嶋 容伸
登録日 1996-03-29 
登録番号 商標登録第3133754号(T3133754) 
商標の称呼 アイコムシステムコーギョー、アイコムシステム、アイコム 
代理人 杉本 巌 
代理人 杉本 勝徳 

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