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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 取り消して登録 030
管理番号 1040028 
審判番号 審判1998-18237 
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-11-18 
確定日 2001-06-27 
事件の表示 平成 8年商標登録願第115253号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願商標
本願商標は、後記のとおりの構成よりなり、第30類「コーヒー及びココア,茶,調味料,氷,菓子及びパン,即席菓子のもと」を指定商品として、平成8年10月11日登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
本願商標は、ストローを用いて飲料を飲んでいる黒人を認識させる人物を戯画化した図と、「カルピス」の白抜き文字との組み合わせたものであるが、当該図形は、黒人を不快ならしめるものであって、人種的偏見と差別を助長するものであり、穏当を欠く。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第3 請求人の主張の要点
1 請求の趣旨
結論掲記の審決
2 請求の理由
(1)本願商標の外観構成
本願商標の外観構成は原査定認定どおりであるが、本願商標の構成中に、「黒人を認識させる人物を・・・」との表現、本願商標の図形が「直ちに黒人を認識させる」との認定判断については、否認する。すなわち、本願商標を初めて目(視覚)で見たときに、本願商標の外観構成から、条件反射的に「黒人である」との印象は受けず、ましてや黒人をバカにするような「不快感」は生じない。
(2)拒絶理由の基準の曖昧さ
「黒人がストローでコップの中の飲料を飲んでいる」図形であると認定した点、及び「当該図形は、黒人を不快ならしめるものである」と認定した点は、それぞれ何を基準に判断したのか曖昧である。
本願商標の外観構成から黒人を不快ならしめるとの印象は何ら生じない。
(3)判断の恣意性
原査定における本願商標の図形の認定判断は、本願商標の外観構成のどこが人種差別に該当するのか、どこが黒人に不快感を与えるのか、或いは黒人の意味合いを正確に把握せず、本願商標が公序良俗違反のおそれの生ずる原因である事実(社会的事実)を具体的に指摘せず、商標法第4条第1項第7号の規定を適用したが、このような認定判断は相当でない。
(4)本願商標の観念
原査定は、本願商標の外観構成を見て「黒人が・・・穏当でない」と認定判断したが、誤りである。
本願商標の図形から生じる全体的な観念(印象)は、日本人の平均的な基準者からして「コップ内の飲料(カルピス)を飲む場合に、タキシードに正装し、リボンを付け、シルクハットを被り、上品にストローで味わって、おいしそうに飲む」とのイメージが彷彿される。
また、本願商標の外観構成は、著しく劇画化されているため、その題材は、人間かもしれないし、架空のキャラクターかもしれないと考えざるを得ない。
本願商標の図形は、品の良い美的図形商標である以上、黒人を不快感を与えるような意味合いを有する観念、称呼を生じない。
(5)差別的用語との関係
本願商標には、黒人を差別する差別的用語を含んでおらず、図形自体から直ちに黒人を差別したり、不快感を生じさせる特段の表現は見当たらない。
3 証拠方法
請求人は、審判請求書に記載のとおり甲第1号証ないし甲第25号証を提出した。

第4 当審の判断
1 本願商標について検討する。
(1)本願商標は、後記のとおり下部に黒地の長方形内に「カルピス」の片仮名文字を書し、その上部の矩形内に図案化された人物が手前に置かれたコップから飲料をストローで吸っている図形を描いてなるものであって、当該人物の具体的な構成は、白いシルクハット型の帽子を被った頭部は、右側に傾け、顔は黒色で正面を向き、半月状の目に縦縞模様の目玉を配し、唇をややハート型に描き、首にはカラーとリボンを付け、首から下は脚を除き肩から腰に相当する胴体部分と手を除き肩から手首までに相当する腕の部分を略3:2の割合で逆V字の形状に表現、前記した人物が唇でストローをくわえて手首の前に置かれたコップから飲料を吸っているものである。
(2)請求人提出の甲第5号証(三島海雲著「初恋50年」)、同第7号証(日刊工業新聞記事)、同第8号証(朝日新聞記事)、同第9号証(徳島新聞記事)、同第10号証(北海道新聞記事)、同第11号証(愛媛新聞記事)、同第12号証(神奈川新聞記事)、同第13号証(朝日新聞記事)、同第14号証(報知新聞記事)、同第15号証(読売新聞記事)、同第16号証(荒俣宏著「広告図鑑の伝説」)、同第17号証(「STYLING1987年3月号」)及び審判請求の趣旨によれば、本願商標中の図形マーク(以下「本件図形マーク」という。)は、大正6年にカルピス食品工業の創立者である故三島海雲が、第一次世界大戦で窮乏していた欧州の美術家を救済しようと、独、仏、伊でポスター募集を行い、1942点の応募作品の中から、ドイツのミュンヘンのオットーデュンケルという図案家の作品を、大正12年に採用、爾来65年間もの長きに亘って、「初恋の味」の文句とともに乳酸飲料に使用したものであって、健康的な、そしてコッミックな、明るい雰囲気をもったマークであること、請求人は1990年1月から本件図形マークの使用を自主的に一時的中止をしていること、いまでも専門家の間では世界有数のマークといわれていること、我が国では黒人は健康美の象徴とされ、差別の意図はないうえ、立体派の流れをくむ文化的な遺産であり、消費者には黒人の黒い肌と乳酸飲料の白色が好対照をなし、涼しげな印象を与えるマークとしてファンも多いことが認められる。
(3)以上の認定事実よりすると、本願商標中の本件図形マークは、現代においても斬新デザインであり、請求人の乳酸飲料について長期間に亘り使用され、需要者の間に広く認識されていたものであり、本件図形マークを請求人が中止した時点である1990年頃においても、我が国における取引者、需要者に、黒人は健康美の象徴であり、乳酸飲料を飲む構図はしゃれたデザインであって、全体として涼しげな印象を与えるものとして認識されていたものというべきである。そして、我が国の一般的な取引者、需要者が、本件図形マークに接した場合に、黒人を不快ならしめるものであって、人種的偏見と差別を助長するものとの印象を持っているとする事実を認めることはできない。その他、本件図形を含む本願商標について、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるとする事実はない。
(4)そうすると、本件図形について、黒人を不快ならしめるものであって、人種的偏見と差別を助長するものであり、穏当を欠くと認定し、その上で、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものとし、本願を拒絶した原査定は、誤りであり、取消しを免れない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本願商標

審決日 2001-06-05 
出願番号 商願平8-115253 
審決分類 T 1 8・ 22- WY (030)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大塚 順子 
特許庁審判長 廣田 米男
特許庁審判官 大島 護
江崎 静雄
商標の称呼 カルピス 
代理人 三浦 光康 

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