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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない 128
審判 全部無効 外観類似 無効としない 128
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 128
管理番号 1037269 
審判番号 審判1998-35113 
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-03-23 
確定日 2001-02-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第2528126号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件審判請求に係る登録第2528126号商標(以下「本件商標」という。)は、「開運花子」の漢字を縦書きしてなり、第28類「酒類」を指定商品として、平成2年11月16日登録出願、同5年4月28日に登録されたものである。
2 請求の趣旨
本件商標の登録を無効とするとの審決を求める。
3 請求の理由
(3-1) 無効事由
本件商標は商標法第4条1項第11号及び同第15号に該当し、その登録は同法第46条1項第1号により無効にすべきものである。
(3-2) 商標法第4条第1項第11号違反
(1) 引用商標Aについて
引用商標Aは、商標登録第593523号登録原簿(甲第2号証)及び昭和37年商標出願公告第8917号公報(甲第3号証)に示すとおり、「開運」を筆文字にて縦書きに書して成り、第28類「日本酒」を指定商品として、同36年3月4日に商標登録出願され、同37年7月17日に登録されたものであり、平成4年9月28日付けにて更新登録がなされている。
(2) 引用商標Bについて
引用商標Bは、商標登録第1694903号登録原簿(甲第4号証)及び昭和58年商標出願公告第90578号公報(甲第5号証)に示すとおり、酉の市で縁起物として売られる熊手の中央下部に「開運」を筆文字にて縦書きに書して成り、第28類「酒類(薬用酒を除く)」を指定商品として、昭和56年7月14日に引用商標Aの連合商標として商標登録出願され、同59年6月21日に登録されたものであり、平成6年9月29日付けにて更新登録がなされている。
(3) 引用商標A及び同Bの著名性
引用商標A及び同Bを付した日本酒は、甲第6号証乃至同第127号証が示すとおり、昭和53年から今日まで約20年間にわたり美味しい酒、愛飲家が勧める酒として、一般読者向けの各種著名雑誌、一般読者及び取引者向けの各種専門誌、取引者向け業界紙等に繰り返し掲載されると共に、請求人は積極的な広告宣伝活動も行ってきた。また、引用商標A及び同Bを付した日本酒は、甲第128号証乃至同第180号証が示すとおり、各種の鑑評会や品評会にておいて数々の賞を受賞してきた。
これらの広告宣伝活動や数々の受賞実績の結果、引用商標A及び同Bは、日本国内において一般消費者及び取引者の間で周知、著名になっている。すなわち、本件商標の登録出願時及び登録査定時に「開運」が日本酒に使用される商標として周知、著名であったことは顕著な事実である。
(4) 「商標審査基準第4条第1項第11号 4.(6)」の適用
「商標審査基準第4条第1項第11号 4.(6)」には、「指定商品について著名な商標と他の文字とを結合した商標は、原則として、その著名な商標と類似する。」と記載されている。
本件商標「開運花子」は、前半部の「開運」と後半部の「花子」とに容易に分離して認識把握することができる。なぜなら「開運」は「運が開ける」という意味を持つ語であり、「花子」は日本人女性の一般的な名であって、両者は明確に区別され、互いに独立した意味を有するものであるからである。そして、本件商標は、前半部の「開運」と後半部の「花子」両文字が結合して一つの熟語的意味合いを形成するものでもないから、これを常に一体のものとして把握し、かつ、一連に称呼しなければならない特段の事情を有するものではない。
一方、本件商標の前半部の「開運」は、前述の甲第6号証乃至同第180号証が示すとおり、請求人・株式会社土井酒造場が使用する登録商標「開運」として日本酒の商品分野において周知、著名であるため、簡易迅速を尊ぶ取引きの場においては、独立して「開運」と称呼、観念されることが少なくない。
さらに、本件商標は7音と比較的冗長に亘る音構成からなるため、簡易迅速を尊ぶ取引きの場においては最も注目しやすい前半部「開運」を捉えて該文字より生ずる称呼「カイウン」をもって略称し、この略称によって取り引きされる場合も少なくない。
以上の事情を勘案すれば、本件商標「開運花子」からは「カイウンハナコ」の他に、「カイウン」の称呼が生じることは明らかであり、引用商標A及び同Bと称呼上同一であるから「商標審査基準第4条第1項第11号 4.(6)」に該当するといえる。
したがって、本件商標は引用商標A及び同Bの著名な登録商標と類似するものである。また、本件商標の指定商品中「日本酒」については、引用商標A及び同Bと指定商品が同一であり、「洋酒,ビール,果実酒,中国酒,薬味酒」については、引用商標Bと指定商品が同一である。
(3-3) 商標法第4条第1項第15号違反
前記の甲第6号証乃至同第180号証が示すとおり、本件商標の登録出願時には日本酒の商品分野において、株式会社土井酒造場が使用する「開運」は日本全国にわたり周知、著名な商標となっていた。したがって、本件商標「開運花子」を競業関係にある被請求人が「日本酒」に使用すると、恰も、請求人・株式会社土井酒造場の取り扱う商品と誤解され、需要者において出所の混同を生じせしめるものとなることは明白である。
実際の取引きの場における本件商標の使用形態の一例である甲第181号証によると、瓶の肩もぎりに「HANAKO」の筆文字と「KAIUN HANAKO」の活字体文字が表示され、瓶の胴ばりには筆文字の「開運」と「花子」が二段に分離され、しかも書き出し位置をずらして表示されている。
すなわち、被請求人目身が瓶の肩もぎりに「HANAKO」と独立して記載するとおり、「開運」と「花子」はそれぞれ独立の単語であり、両者を一連に結び付ける特段の事情がないことは明らかである。
したがって、本件商標の使用形態によれば、当該商品に接する需要者には、胴ばりの上部に表示された著名な「開運」の文字に強く引き付けられ、その結果、請求人・株式会社土井酒造場の著名な「開運」ブランドの中の一商品である「花子」として認識される。
このように、実際の取引きの場における本件商標の使用形態を見ても、需要者に出所の混同を生じさせることは明らかである。
(3-4) 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15条の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効とされるべきものである。
4 被請求人の答弁に対する弁駁
(1) 被請求人は、本件商標の構成上及び全体から生ずる「運を開く花子さん」「運を開いてくれる花子さん」の如き意味合いから「開運花子」を前半部の「開運」と後半部の「花子」に分離して解さねばならない特段の理由はない旨主張し、乙第1号証乃至同第39号証として提出している。
しかしながら、前記の乙各号証をもって被請求人の主張の根拠とすることはできない。
なぜなら、「開運」の文字を構成中に有する商標で、引用商標Aの商標権者により独立の商標登録がなされたもの、又は引用商標Aの商標権者とは異なる他人の名義により登録がなされたものは、特定の意味を有する一体不可分の熟語として一般世人に十分親しまれたものである点で、本件商標の「開運花子」とは性質を異にするからである。
すなわち、「開運小判」(乙第1号証)、「開運金的」(乙第3号証)、「開運達磨」(乙第4号証)、「開運蓬菜」(乙第5号証)、「開運招福福達磨」(乙第9号証)等は、それを所持したり使用すること、又はその場所に行くことによって運が開けてくる、いわゆる縁起物としての意味合いを有する言葉として一般世人に親しまれた熟語から成る商標である。
一方、「開運必勝」(乙第2号証)、「開運大吉」(乙第6号証)、「開運繁盛」(乙第7号証)等は、大願成就の願いを込めた言葉として、初詣、願掛け、お払い等の際に使用される一般世人に親しまれた熟語から成る商標である。
これに対し、「開運花子」は「運が開ける」という意味の「開運」と日本人女性の名前「花子」が結合されたに過ぎず、これが被請求人が主張するように「運を開く花子さん」「運を開いてくれる花子さん」という意味合いが生ずるとしても、「開運花子」は一体不可分の熟語として一般世人に十分親しまれた言葉であるとはいえない。
さらに、「開運金賞」(乙第29号証)、「寿開運」(乙第36号証)及び「祝開運」(乙第37号証)が引用商標Aの「開運」の連合商標、すなわち、「開運」と類似する商標として登録されていたことからも、特定の意味を有する一体不可分の熟語として一般世人に十分親しまれたもの以外は「開運」と類似する商標として認定されていることは明白である。
すなわち、前記の連合登商標の存在は、たとえ同書、同大、等間隔に纏まりよく構成されていても、「開運」と他の文字部分の意味上のつながりが稀薄であり、全体として親しまれた熟語的意味合いを示すものではないものは、「開運」と結合された文字を分離して把握されることを示している。そして、本件商標「開運花子」の場合も、「開運」と「花子」の意味上のつながりが稀薄であり、全体として親しまれた熟語的意味合いを示すものではないという点で前記の連合登録商標と同類の商標であるといえる。
(2) 甲第181号証によると瓶の肩ばりに「HANAKO」の筆文字と「KAIUN HANAKO」の活字体文字が表示され、瓶の胴ばりには筆文字の「開運」と「花子」が二段に分離され、しかも書き出し位置をずらして表示されている。
そうとすると、「商標審査基準第4条第1項第15号 6.」の「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあるかどうかの認定に当たっては、取引の実情等個々の実態を充分考慮するものとする」という基準に照らした場合、実際の取引きの場では本件商標「開運花子」が「開運」と「花子」が二段に分離され、しかも、書き出し位置をずらして表示されている以上、「開運」と「花子」はそれぞれ独立の単語であり、両者を一連に結び付ける特段の事情がないことは明白である。そして、本件商標の使用形態によれば、本件商標は引用各商標「開運」の商標権者である請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあることは疑いの余地がない。
(3) 被請求人は、請求人が提出した甲各号証を詳細に検討しても、立証趣旨等が不明ある旨主張している。
しかしながら、「商標審査基準第4条第1項第15号 3.」において準用した、「商標審査基準第3条第2項 2.(1)、(2)」に従ったものであり、請求人が提出した甲各号証は全て前記「商標審査基準第3条第2項 2.(2)2,5,8」のいずれかに該当するものであり、引用商標A及び同Bの周知、著名性を立証する有効な証拠である。
(4) そして、被請求人は、甲第9号証や同第108号証の記載内容を指摘した上で、これら甲号証は、いずれも第三者の取材記事とみられるものであって、第三者の眼でみれば請求人の主張する周知、著名度の程度が明白であり、また、「開運」が日本国内において一般消費者及び取引者の間で周知、著名になっている、とするのは単に請求人の一方的な解釈にすぎない旨主張している。
しかしながら、前記のとおり、「商標審査基準第3条第2項 2.(1)、(2)」を準用した「商標審査基準商標法第4条第1項第15号 3.」に照らした場合、商標の周知、著名性の認定に際しては、証拠書類の個々の宣伝の記載のみを勘案するのではなく、広告宣伝の方法、回数及び内容を総合的に勘案しなければならない。この点から特定の記載内容のみを根拠とする被請求人の主張は審査基準を逸脱したものであるといえる。
(5) さらに、被請求人は、請求人が提出した程度の証拠で周知、著名性が立証できるとは到底いい難く、本件商標の登録出願時及び登録査定時に「開運」が日本酒に使用される商標として周知、著名であったことは顕著な事実であるとする請求人の主張も空虚なものといわざるを得ない旨主張している。
しかしながら、前記のとおり、商標の周知、著名性の判断に際しては、証拠書類の個々の宣伝の記載のみを勘案するのではなく、広告宣伝の方法、回数及び内容を総合的に勘案しなければならないという審査基準に照らせば、「開運」とともに掲載されている数多くの蔵元の商標も、また、多数発行された「金賞受賞酒銘柄」などの全ての蔵元の銘柄も周知、著名性を認めなければならない旨の被請求人の主張は誤りであることは明らかである。
(6) 甲第182号証乃至同第184号証は、引用商標A及び同Bの周知、著名性を売上金額や広告宣伝費等の具体的な数値によって立証するものである。請求人の製造する日本酒には全て引用商標A又は同Bが付されているから、甲第182号証乃至同第184号証の各数値は全て引用商標A及び同Bに関わるものである。
さらに、引用商標A及び同Bが周知、著名であることは、昭和61年8月15日発行「ビッグ・コミック・オリジナル」(甲第185号証)、同61年12月10日発行「アイディアパパのまんが料理教室酒肴編」(甲第186号証)、平成元年6月15日発行「週刊コミックモーニング」(甲第187号証)等の本件商標の登録出願前に発行された雑誌中に掲載された漫画に取り上げられていることからも明らかである。
これらの雑誌はいずれも発行部数も多く、しかも日本全国に頒布されている。特に甲第187号証の「週刊コミックモーニング」に連載されていた「夏子の酒」は単行本として出版され、さらにはゴールデンタイムのテレビドラマの原作となる程の人気漫画である。このように頒布数が多い雑誌に掲載される人気漫画の、しかも登場人物をして名酒をいわせること自体が周知、著名性の証拠に他ならない。
また、日本酒は味の良否が重要であり、名酒、地酒の利き酒にはマニアックと言えるほど神経を払うものである。そのような取引者、需要者の特質を考慮すると、人気漫画の登場人物をして名酒といわせた引用商標A及び同Bは、単に生産量の点からだけでなく取引者、需要者間で広く知られていたものといえる。
このように、「開運」の文字からなる引用各商標は、請求人が「日本酒」について使用し、同人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時において取引者、需要者間に広く認識されていたことは顕著な事実である。
(7) 結論
以上のとおり、本件商標「開運花子」は、引用商標A及び同Bの周知、著名な登録商標と類似し、引用各商標の商標権者である請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであり、その登録は同法第46条第1項第1号により無効にすべきである。
5 答弁の趣旨及び理由
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を次のように述べている。
(1) 本件商標は、「開運花子」の漢文字を、同書、同大、等間隔に纏まりよく縦書きして構成されており、これにより「カイウンハナコ」との一連の柔らかな称呼を生じ、その称呼も冗長とはいえず、全体から「運を開く花子さん」「運を開いてくれる花子さん」の如き意味合いを容易に認識することができるのであり、「開運花子」を前半部の「開運」と、後半部の「花子」に分離して解さねばならない特段の理由はない。
そして、引用各商標の構成は、前述のように「開運」の漢文字及び「開運」の漢文字と図形とからなるものであって、本件商標「開運花子」とは外観上において明確に区別される差異を有することは明らかであり、また、引用各商標からは「カイウン」の称呼を生じるに対し、本件商標からは「カイウンハナコ」との称呼を生じ、双方の構成音数は明らかに異なり、それぞれ一連に称呼しても語調語感が相違することは明白であって、互いに相紛れるおそれはない、といわざるを得ない。
更に、引用各商標の「開運」は「運が開ける」ことのみを意味するにすぎないものであるのに対し、本件商標の「開運花子」は、「運を開く花子さん」「運を開いてくれる花子さん」の如き意味合いを容易に認識することができ、観念上においても充分に識別できる差異を有するものである。
したがって、本件商標は、称呼、外観及び観念のいずれの観点からみても、引用各商標とは、非類似の商標、といわざるを得ないのである。
(2) 請求人は、甲第6号証乃至同第180号証を提出すると共に、引用各商標が請求人会社の取扱い商品を表示する商標として日本国内において一般消費者及び取引者の間で周知、著名になっている旨主張している。
しかしながら、甲各号証は、いずれも企業として当然に行なうべき自社商品の宣伝、広告又は宣伝、広告のために採用された記事であるにすぎなく、また、自社商品が飲料店に陳列されている写真、記事についても、単に自社で製造し、販売した商品が需要者にまで至った結果を写真、記事にしたにすぎないものであり、しかも、請求人が提出した甲各号証を詳細に検討しても、立証趣旨等が不明である。
これらの甲号証は、いずれも第三者の取材記事とみられるものであって、第三者の眼でみれば請求人の主張する周知、著名度が、この程度であることが明白に浮き出てくるのである。すなわち、平成8年頃でさえ、「開運」の販路は静岡県内と「東京方面で20パーセントを売っている」にすぎないのであり、この程度のことで、「開運」が日本国内において一般消費者及び取引者間で周知、著名になっている、とするのは、単に請求人の一方的な解釈にすぎない、といわざるを得ない。
(3) 更に、請求人が提出した品評会、鑑評会における種々の賞状にしても、品質向上のために、国税庁醸造研究所、各地方国税庁、各酒造組合などにおいて、それぞれ別個に開催されている鑑評会、品評会に出品した多数の優秀な清酒に対して、多数枚発行されている賞状のうちの一部にすぎないものである。
(4) 請求人は、「開運」の商標が周知、著名であることを前提として、「指定商品について著名な商標と他の文字とを結合した商標は、原則として、その著名な商標と類似する」との「商標審査基準」を示している。
しかしながら、「開運」の商標が、請求人会社の取扱いに係る商品を表示する商標として取引者、需要者間に広く認識されているとは到底認められないものであることは、前記のとおりであるから、「開運」の商標が周知、著名であることを前提として前記商標審査基準を引用した請求人の主張は、排斥されて然るべきである。
また、仮りに引用各商標が、その指定商品について、周知、著名に至っているとしても、本件商標「開運花子」は、引用各商標とは非類似の商標である上に、これをその指定商品に使用しても、引用各商標を想起、乃至は連想することは全くなく、却って、「カイウンハナコ」との一連の柔らかな称呼を生じると共に、「運を開く花子さん」「運を開いてくれる花子さん」の如き格別の意味合いを有する本件商標は、引用各商標「開運」との間に、商品の出所について混同を生ずるおそれはない、と確信するところである。
5 当審の判断
(1) 商標法第4条第1項第11号違反について
本件商標と引用各商標の類否について判断する。請求人は、「商標審査基準第4条第1項第11号 4.(6)」を援用して、本件商標は、その構成中の「開運」の文字部分より称呼が生じ、引用各商標と類似する旨主張して、甲各号証を提出している。該審査基準は、引用商標が著名であることを前提としているものであるところ、引用各商標の著名性について、甲各号証についてみるに、甲各号証は、いずれも清酒に関して、地酒について網羅的に紹介したものや請求人自らが宣伝広告したもの、静岡県内清酒品評会等での受賞の事実を示したものが殆どで、販売先も大半が静岡県内と推認されるところ(甲第108号証)であり、また、甲第182号証による平成2年乃至同5年の請求人の醸造量等は、全国の蔵元や銘柄の数、清酒の需要者、消費量と比較すると決して多いとはいえないものである。
加えて、引用各商標の要部である「開運」は、一般に親しまれ、かつ、日常的に使用される語であって、しかも、「開運招福」の如く結合語としての使用例が顕著な語でもある。現に、乙各号証によれば、酒類の商標の一部として多数採択されていることが認められる。このような性質の語「開運」は、自他商品の識別標識として、特定の商品について著名性を獲得するには非常に困難な部類の語に属するといえるものである。
してみれば、甲各号証の中には、甲第187号のように引用商標「開運」が一部の愛飲家においては知られた清酒の商標であることを示すものも存在するが、甲各号証により認定される宣伝広告や醸造高等の事実では、引用各商標は、本件商標の登録出願時又は登録査定時において、全国的に乃至は清酒の取引者、需要者の間において、著名性を獲得していたものとは認めることができないというべきである。
したがって、引用各商標が指定商品「日本酒」について著名であることをもって、本件商標の「開運」の文字より称呼を生ずるとする請求人の主張は採用することができない。その他、本件商標中の「開運」の文字と「花子」の文字を分離観察して類否判断をしなければならない事情は見当たらず、本件商標と引用各商標は外観、称呼又は観念のいずれにおいても類似するものとは認められない。
(2) 商標法第4条第1項第15号違反について
請求人は、引用各商標は本件商標の登録出願時において、商品「日本酒」について全国的に周知、著名な商標であったとして、本件商標を指定商品「日本酒」に使用するときは、請求人の業務に係るものと出所の混同のおそれがあった旨主張している。
しかしながら、前記(1)において認定したように、引用各商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に全国的乃至は清酒の取引者、需要者の間において、周知、著名であったとは認められないものである。
加えて、引用各商標の要部「開運」が前示のような性質の語であることからすれば、引用商標が静岡県内において広く知られ、また、一部の愛飲家において知られているものであるとしても、本件商標は、これを指定商品「日本酒」に使用したときは、取引者、需要者が引用各商標を連想、想起して、請求人の業務に係る日本酒の如くその出所について混同を生ずるおそれがあるものではなかったというべきである。
請求人は、取引の実情を考慮すべきとして、甲第181号証を提出しているが、本件審判の判断時は、本件商標の登録出願時及び登録査定時であるところ、請求人主張の事実は登録後のものと推認されるものであるから、採用できないものである。

6 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号により、無効とすべきものではない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-07-11 
結審通知日 2000-07-25 
審決日 2000-08-07 
出願番号 商願平2-129142 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (128)
T 1 11・ 261- Y (128)
T 1 11・ 262- Y (128)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須藤 晟二郎山本 良廣 
特許庁審判長 工藤 莞司
特許庁審判官 大島 護
江崎 静雄
登録日 1993-04-28 
登録番号 商標登録第2528126号(T2528126) 
商標の称呼 カイウンハナコ 
代理人 木内 光春 
代理人 阿部 幸孝 

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