• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない 005
審判 全部無効 称呼類似 無効としない 005
管理番号 1033120 
審判番号 審判1998-35132 
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-03-30 
確定日 2001-01-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第3171284号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3171284号商標(以下「本件商標」という。」は、平成5年9月24日に登録出願され、「アバデン」の片仮名文字を左横書きしてなり、第5類「薬剤」を指定商品として、同8年6月28日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用商標
請求人が本件商標を商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するとして、登録無効の理由に引用する登録第1633007号商標(以下「引用商標」という。)は、昭和53年9月11日に登録出願され、「アバン」の片仮名文字と「AVAN」の欧文字とを二段に左横書きしてなり、第1類「化学品、薬剤、医療補助品」を指定商品として、同58年11月25日に設定登録されたものであるが、その後、商標権の存続期間の更新登録が平成5年11月29日になされ、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第28号証を提出している。
(1)本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当し、同法第46条第1項により、無効にすべきものである。
商標及び商品の類似について
本件商標と引用商標とを比較すると、前者が「アバデン」、後者が「アバン」と称呼されることは、それぞれの構成に照らして明らかである。そこで、本件商標の称呼「アバデン」と引用商標の称呼「アバン」とを比較検討すると、両者は称呼の識別上重要な要素を占める語頭音を含め、2音目までの構成音及びその配列を共通にし、僅かに第3音における「デ」の音の有無の差異を有するものである。しかして、該差異は、聴者に聴き取り難い中間部に位置するものであることより、かかる差異が称呼の全体に及ぼす影響は極めて小なるものと言わざるを得ない。
しかして、かかる徴差を有するにすぎない両称呼を時と所を異にして、一連に称呼したときは、相紛らわしく、混同を生ずるおそれを有するので、かかる称呼を有する両商標は称呼上類似の商標と言うべきものである。
また、請求人は、引用商標を昭和61年12月よりその製造・販売にかかる医療用医薬品「脳代謝・精神症状改善剤」の販売名として使用を開始して以来(甲第3号証)、今日まで引き続き使用している(同第4号証)。そして、その間、引用商標を使用した商品について、積極的に販売促進に努め、盛んに宣伝広告を行うと共に(甲第5号証乃至同第13号証)、これを大量に販売している(同第14号証乃至同第20号証)。発売以来、当該商品の売上は順調に推移し、昭和62年(1987)年から連続して脳代謝賦活剤分野における売上高・シェア共にトップの座を維持しており(同第14号証乃至同第20号証)、請求人の重要商品の一つとなっている。
かかる請求人による使用の結果、引用商標「アバン/AVAN」は請求人の製造・販売にかかる「脳代謝・精神症状改善剤」を指称するものとして、本件商標の登録査定時には、取引者、需要者とりわけ医師・薬剤師間において広く認識されていたものである。
このことは、甲第21号証乃至同第24号証のとおり、大阪商工会議所、日本製薬工業協会、日本薬剤師会、大阪医薬品協会といった団体においても認定されているところである。
ちなみに、平成6年審判第1845号審決においては、商標「OSTEN/オステン」の使用にかかる商品「骨粗鬆症治療剤」の1991(平成3)年度の売上高が95億円、市場占有率が12.6%に達していることをもって、引用商標が「その取引者、需要者に相当程度知られていた」との認定がなされているところ(甲第25号証)、引用商標「アバン/AVAN」を使用した商品については、売上高及び市場占有率共にこれを大きく上回るものである(同第14号証乃至同第20号証)。
ところで、商標の類否は、同一又は類似の商品に使用された両商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者にあたえる印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかもその取引の実情を明らかにしうる限り、その具体的な取引状況に基づいて判断されるべきであり、このような取引の事情には、引用商標の周知・著名性も含まれる。このことは、平成4年(行ケ)第82号判決(甲第26号証)のほか多数の判決において判示されているところである。
そこで、上記のような引用商標に関する取引の状況を踏まえて、本件商標と引用商標とを比較するに、本件商標及び引用商標に対して、時と所を異にして接する取引者、需要者は、上記のとおり、両者の称呼から受ける音声上の印象が必ずしも明確でないことによって、本件商標がその指定商品中「薬剤」、殊に「脳代謝・精神症状改善剤」に使用されたときは、あたかも当該商品が請求人或いは請求人となんらかの関係がある者の業務にかかる商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがあり、かかる意味においても、両商標は称呼上類似の商標とされるべきものである。
また、商品の類似についても、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは相抵触することは論ずるまでもなく明らかである。
(2)第4条第1項第15号について
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないとしても、次のとおり、商品の出所につき混同を生ずるおそれがあるため、同法第4条第1項第15号に該当する。
引用商標「アバン/AVAN」は、上記のとおり、少なくとも本件商標の出願時には、請求人の「脳代謝・精神症状改善剤」を指称するものとして医薬品取引市場において極めて広く認識されるものとなっているものであるところ、かかる引用商標と僅かに中間部の「デ」の有無の差異を有するにすぎない本件商標が、その指定商品「薬剤」、就中「脳代謝・精神症状改善剤」について使用されたときは、引用商標を容易に直観・想起させ、もって、取引者、需要者をして、当該商品が請求人の「アバン」商品のシリーズ商品・姉妹商品として、恰も請求人或いは請求人と何らかの関係がある者の業務にかかる商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずること必至である。
請求人の上記主張は正当なものであることは、先例によっても裏付けられる。
(3) 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものとして、また、仮にこれに該当しないものであるとしても、同第15号に該当するものとして、同法第46条第1項の規定により登録を無効とすべきものである。
(4)請求人は、被請求人の3の答弁に対し、何ら弁駁していない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び同第3号証を提出している。
(1)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当とする無効理由に対する答弁
本件商標 「アバデン」は4音構成からなり、引用商標 「アバン」 は3音構成からなっている。本件商標「アバデン」は、3音目「デ」が強調音であるので、称呼の全体に及ぼす影響は大きいと言える。また、語頭2音が識別上重要な要素を占めるわけではない。引用商標「アバン」と本件商標「アバデン」を、称呼において類似にすることは技術的に不可能である。従って、本件商標と引用商標は、称呼において互いに紛れることがないものといえる。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当とする無効理由に対する答弁
前述の通り、本件商標「アバデン」と引用商標「アバン」は、称呼上紛れることはないといえる。よって、薬剤について使用したとしても、取引者、需要者に混同を生ずることはない。
また、引用商標「アバン」に関する現状において、イデベノンを成分とするこの商標は、他の薬剤の商標として使用することは請求の内容の如く出来ないといえる。現在、「アバン」(成分:イデベノン)は、行政処分により使用が不可能になっている。
(3)本件商標は、称呼、観念及び外観のいずれにおいても引用商標と非類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号及び同第15号には該当しない。

5 当審の判断
まず、本件商標と引用商標との類否について判断するに、本件商標及び引用商標は、それぞれの構成文字に相応して「アバデン」及び「アバン」の称呼を生ずるものというのが相当である。
そこで、本件商標より生ずる「アバデン」の称呼と引用商標より生ずる「アバン」の称呼とを比較するに、両称呼は、「ア」「バ」「ン」の各音を共通にし、第3音において「デ」の音の有無の差異を有するものである。
しかして、該差異音「デ」の音は、濁音で強く発音され、かつ、前者は「アバ」「デン」と2音節風に称呼されるのに対し、後者は「アバン」と一気一連に称呼されるものであるから、それぞれ一連に称呼したときは、全体の語調、語感が異なり充分聴別し得るものである。
また、本件商標と引用商標の構成は、それぞれ前記したとおりであるから、外観において互いに区別し得る差異を有し、また、いずれも特定の観念を生じさせない造語よりなるものであるから、観念において比較することができないものである。
してみれば、本件商標と引用商標は、称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標と認められるものである。
つぎに、引用商標が、請求人の業務に係る商品「脳代謝・精神症状改善剤」の名称として、本件出願日前より「日本醫事新報」をはじめ各種の医薬品関係の雑誌等に掲載され、また、各種の医薬品関係の雑誌上で宣伝、広告され、取引者、需要者の間において広く認識されているとしても、本件商標と引用商標とは、上記のとおり、商標が著しく相違する非類似の別異の商標と認められるものであるから、本件商標をその指定商品について使用しても、引用商標を連想、想起することはなく、請求人若しくは同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-10-11 
結審通知日 2000-10-24 
審決日 2000-11-21 
出願番号 商願平5-97253 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (005)
T 1 11・ 272- Y (005)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野上 サトル信永 英孝 
特許庁審判長 寺島 義則
特許庁審判官 久保田 正文
宮下 行雄
登録日 1996-06-28 
登録番号 商標登録第3171284号(T3171284) 
商標の称呼 アバデン 
代理人 朝日奈 忠夫 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ