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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない 128 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 128 |
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管理番号 | 1025722 |
審判番号 | 審判1998-35157 |
総通号数 | 15 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2001-03-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1998-04-13 |
確定日 | 2000-09-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2083917号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第2083917号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、昭和61年4月18日登録出願、第28類「酒類(薬用酒を除く)」を指定商品として同63年10月26日に登録がなされたものであるが、その後、平成10年10月26日に商標権の存続期間が満了し、その抹消の登録が同11年7月7日になされているものである。 2 請求人の主張 請求人は、「本件商標の登録を無効とする。」旨の審決を求め、その理由(要旨)を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第25号証(枝番号を含む)を提出している。 (1) 商標法第4条第1項第7号について 本件商標は、「御柱を地上で曳く」とする意味から、長野県諏訪市及び下諏訪町にある諏訪大社の神事として、諏訪信仰という宗教心に裏打ちされて一千年以上にわたって行われてきた「御柱祭」、「御柱」の一過程である「里曳」を表し、まさに「御柱祭」、「御柱」そのものの内容を表すもので、「御柱祭」、「御柱」と同一あるいは類似の標章である。 「御柱祭」は、また「諏訪の御柱」ともいわれ、単に「御柱」というのみで、「御柱祭」を指すものであるというほど、知れわたっている(甲第2号証ないし同第25号証)。 本件商標は、諏訪信仰を信奉する人々のみならず、諏訪大社に参拝に来る人々にとっても、あたかも「御柱祭」、「御柱」を表示していると認識されるおそれがあるものであり、これと同様の意味を有していると認識されるものである。 そして、信仰の対象として、かつ、神事を表示するものと認識される「御柱祭」、「御柱」を意味する本件商標が、諏訪大社にも、諏訪信仰にも関係のない者によって、ほしいままに、商品に附して使用されるのは、信仰心上問題がある。 よって、「御柱祭」、「御柱」とは、何ら関係のない者が、単に自己の商売の利に資するためにのみ、文化財の指定まで受けている神事の名称である「御柱祭」、「御柱」と同一の意味内容を有する本件商標を使用することは、諏訪信仰を信奉する人々の宗教心を損ない、宗教上確立した秩序を著しく傷つけるものである。 また、「御柱祭」、「御柱」は、諏訪大社が行う神事として広く人々に信用され、かつ、信仰されているものであり、この「祭」には多くの人々の信仰への期待や信頼がかかっている。同時に、人々は、諏訪大社に対しても、多大な信用や信頼をおいており、この信用や信頼に本件商標はただ乗りするために「御柱」の文字を使用していると思われる。他人の信用にただ乗りすることは、法の定めるところではない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 (2) 商標法第4条第1項第16号について 「御柱祭」、「御柱」が、諏訪大社の神事として古くから行われていること、これが、いくつもの宗教的儀式である神事を経て行われること、また、これらの神事が総体的に「御柱祭」、「御柱」とされていることは、甲第2証ないし同第13号証より明らかであり、全国的にも広く知られていることである。 このように諏訪大社によって行われる神事の総称である「御柱祭」、「御柱」の名称は、全国的にも広く知られているところであり、このような名称と観念上同一又は類似している本件商標をその指定商品に使用するときは、「御柱祭」、「御柱」の神事、儀式を経た商品であるか、あるいは、「御柱祭」、「御柱」の神事、儀式に使用されるための商品であるかのように、誤認・誤解を生じさせるものである。 よって、本件商標は、これをその指定商品に使用するときは、一定の宗教儀式に関与する、あるいは関与した商品であるかのごとくみなされ、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。 3 被請求人の答弁 被請求人は、これに対して何ら答弁していない。 4 当審の判断 (1) 商標法第4条第1項第7号について よって、判断するに、本件商標は、別掲のとおり、「御柱地▼曳▲」(「▼曳▲」の文字の態様については、別掲1参照。以下、同じ。)の文字を書してなるものであるところ、これを構成する前半部の「御柱」よりは「尊い柱」の意味合いを、また、後半部の「地▼曳▲」は「家屋の建築で、地鎮祭の後に施行する儀式」等の意味を看取させるものであるが、これらを一連に表してなる「御柱地▼曳▲」よりは、特定の意味合いを看取させないものである。 そうとすれば、本件商標は、特定の意味合いを有しない造語を表してなるとみるのが相当である。 この点について、請求人は、本件商標よりは全体として「御柱を地上で曳く」とする意味から、諏訪大社の神事として行われてきた「御柱祭」、「御柱」の一過程である「里曳」を表し、まさに「御柱祭」、「御柱」そのものの内容を表すものである旨主張している。 ところで、請求人の提出している証拠中、本件商標の登録査定時(昭和63(1988)年10月26日)(以下単に「査定時」という。)前に発行等されたと認められる甲第2号証(「諏訪大社」 南信日日新聞社 昭和49年3月3日発行)、甲第8号証(郷土叢書「諏訪の御柱祭」 甲陽書房 昭和31年4月20日再版発行)、甲第9号証(「日本三大奇祭 おん柱 諏訪大社式年造営御柱大祭」 上田善太郎 昭和49年3月10日発行)、甲第14号証(「オール諏訪 No.25」 諏訪文化社 昭和60年4月1日発行)、甲第15号証(「オール諏訪 No.32」 諏訪文化社 昭和61年6月1日発行)、甲第16号証(「カラーグラフおんばしら 御柱祭」 市民新聞グループ 昭和55年4月発行)、甲第18号証の1ないし14(「岡谷市民新聞」、「市民新聞グループ-岡谷市民新聞・下諏訪市民新聞・諏訪市民新聞・茅野市民新聞共通版」等 昭和60年5月6日ないし同61年3月5日発行のもの)、甲第19号証の1ないし16(「南信日日新聞」 昭和61年3月25日ないし同61年5月13日発行のもの、「信濃毎日新聞」 昭和61年3月29日ないし同61年5月19日発行のもの)、甲第23号証の4(「南信日日新聞」 昭和61年1月1日発行)、甲第23号証の5(「市民新聞グループ-岡谷市民新聞・下諏訪市民新聞・諏訪市民新聞・茅野市民新聞・たつの新聞・みのわ新聞・南みのわ新聞共通版(全面広告)」 昭和61年1月1日発行)を徴するも、「御柱地▼曳▲」、「御柱地曳(地引)」あるいは「地▼曳▲」、「地曳き」、「地曳(地引)」の語は、見当たらない。また、「御柱」の語については、御柱祭に使用される「柱」を指すものとして使用されていること、また、岡谷市、下諏訪町、諏訪市、茅野市及びその近隣市町村において、「御柱祭」の略称等として使用され、「御柱(おんばしら)」といえば、「御柱祭」を表す語として親しまれていることが認められる。 しかしながら、上記各証拠は、主として、一部特定地域に限るものであり、全国向けに発行され、頒布等されているものではないこと、また、諏訪大社の「御柱祭」が、7年ごとに行われる(甲第2号証等)ものであり、毎年、マスコミ等に取り上げられるものではないことからすれば、査定時において、「御柱」の語は、「御柱祭」の略称等及び「御柱祭」に使用される「柱」を指称するものとして、全国的に広く知られていた語であるとは認め難い。 また、上記以外の甲各号証も、査定時後発行等されたものあるいは発行年月不明等のものであるばかりでなく、査定時において、「御柱」の語が、「御柱祭」の略称等として、全国的に広く知られていたと認めるに足る記載もない。 そして、日常人々により使用されている辞書類(「広辞苑」第三版 (株)岩波書店 昭和58年12月6日 第一刷発行、「学研 新世紀大辞典」 (株)学習研究社 1976年9月10日 新訂第11刷発行)にも、「御柱」のみならず、「御柱祭」の語を見ることができないことから、「御柱」に「地▼曳▲」を結合した本件商標は、取引者、需要者に、特定の意味合いを有しない造語を表してなると理解させるものとみるのが相当である。 してみれば、本件商標は、その構成文字自体が矯激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでなく、また、これをその指定商品について使用しても、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念等に反するものとも言い得ないものであるから、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とは認められないものである。 (2)商標法第4条第1項第16号について 本件商標は、上記のとおり、「御柱」の文字と「地▼曳▲」の文字とを一連に表してなる造語と認識されるものであり、商品の品質等を表示したと認められないものである。 したがって、本件商標をその指定商品について使用しても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものとは認め難い。 (3)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものでなく、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
【別 掲】 1 本件商標(登録第2083917号商標) |
審理終結日 | 2000-06-30 |
結審通知日 | 2000-07-11 |
審決日 | 2000-07-27 |
出願番号 | 商願昭61-40252 |
審決分類 |
T
1
11・
272-
Y
(128)
T 1 11・ 22- Y (128) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 栫 生長、為谷 博 |
特許庁審判長 |
寺島 義則 |
特許庁審判官 |
宮下 行雄 久保田 正文 |
登録日 | 1988-10-26 |
登録番号 | 商標登録第2083917号(T2083917) |
商標の称呼 | オハシラジビキ、ミハシラジビキ、オンバシラジビキ |
代理人 | 阿部 佳基 |