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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z19
管理番号 1025483 
審判番号 審判1999-1954 
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-08 
確定日 2000-09-06 
事件の表示 平成9年商標登録願第120788号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、商標の構成を別掲に示すものとし、第19類「法止側溝」を指定商品として、平成9年5月26日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の理由
原査定は、「本願は、『法止側溝』と記載された商品を指定商品とするものであるところ、本願商標は、先の物件提出書に係る『商標登録出願指定商品説明書』をも勘案するならば、その指定商品自体の形状と認識されるものであるから、これをその指定商品に使用したときは、その商品の形状を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、本願商標が使用の結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていることを証する資料の提出もない。」旨認定して本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは、前示したように、商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるものではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感に関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
さらに、意匠法等により保護されている形状について、その理由をもって、当該形状が自他商品識別標識としての機能を果たしているということはできないばかりか、意匠権等に重ねて又は、その権利の消滅後に当該形状を商標登録することにより保護することは、知的所有権制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることとなる。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
(2)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲のとおりの形状よりなり、指定商品については、平成10年7月25日付提出の「物件提出書」によれば、「側溝を一体形成してなるコンクリート製組立擁壁」と認められるものであるところ、本願商標に係る形状は、「法止ブロックの擁壁面前側に側溝を設けて一体化した」こと及び「擁壁面の後部を凹設し、この凹状箱型の擁壁後部で土留めを行うようにした」ことを特徴とするコンクリート製組立擁壁の形状の一形態を表すと認められるものである。そして、その形状は、商品の利便性等の機能をよりよく発揮させあるいはその美感を高める等の目的で採用されたものと認められるものである。また、この種商品は、工事の場所や工事の目的等によって、使用される商品の形状等が異なることが通例であると認められるものである。
そうとすれば、本願商標をその指定商品「側溝を一体形成してなるコンクリート製組立擁壁」について使用しても、取引者、需要者は、単に商品の形状の一形態を表示したものと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
(3)請求人は、本願商標に係る形状が、意匠登録されており、従来例と同様なものではなく、斬新な特徴をもった立体形状であるから、自他商品の識別力がある旨主張する。
しかしながら、本願商標に係る形状が、仮に意匠登録を受けているものであるとしても、意匠法における保護は、同法の目的に基づいて、保護の対象、要件、権利の範囲、効力等が定められているものであって、これらに従った登録意匠の実施と商標の使用とは明らかに異なるものであるから、意匠登録による独占を理由に自他商品の識別力を有するに至っているとは認められないばかりでなく、かえって、意匠権消滅後は何人も実施が予定されているものであるから、請求人の主張は採用できない。
そして、本願商標に係る形状が、他の同種商品と比べて斬新な形状をしていても、それは専ら、商品の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであることは上記したとおりであり、また、現に意匠登録を受けているということはこれを裏付けているものであるから、商品の形状の斬新さが、直ちに本願商標に関し自他商品の識別力に影響を与えるものとは認め難いといわなければならない。
なお、商品等の形状については、本来的又は直接的には他の知的財産権制度で保護されるものであることなど、平面商標とは明らかに異なるものであるため、商標法においては、立体商標制度の導入にあたっては、商標法第4条第1項第18号(商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状)等が設けられ、前掲工業所有権審議会答申でも、「・・・、指定商品やその容器の形状そのものの場合には不登録とする運用を厳しくすること」としている(前掲答申31頁参照)。
また、請求人は、本願商標が自他商品の識別力を有するに至っている旨主張し、甲第1号証の1ないし同号証の25を提出している。
しかしながら、提出に係る証明書は、請求人があらかじめ証明内容(本願商標が、請求人の販売する商品「法止側溝」として、周知著名である旨)を記載した書面を用意して、これを11都道県の25業者(新潟県10業者、愛知県3業者、東京都2業者、北海道2業者、富山県2業者、他の県各1業者)が証明しているものであり、この証明書のみをもって、本願商標が使用により自他商品の識別力を有するに至っているものと認めることができない。
なお、証明書記載のパンフレット等配布数、法止、法止側溝販売実績(昭和55年ないし平成10年)記載の具体的な数量、金額等については、証明に係る業者が証明し得る内容とは認められないものである。

4 結 論
以上のとおり、本願商標は指定商品の形状を表示するものとし、商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、正当であって取り消す限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本 願 商 標

審理終結日 2000-06-21 
結審通知日 2000-07-04 
審決日 2000-07-18 
出願番号 商願平9-120788 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z19)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 栄二 
特許庁審判長 工藤 莞司
特許庁審判官 久保田 正文
宮川 久成
代理人 吉井 雅栄 
代理人 吉井 剛 

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